阪神芦屋駅→芦屋カトリック教会→芦屋市役所→阪神芦屋駅→
三宮駅→北野通り→風見鶏の館→メリケン波止場(ポートタワー)
→阪急三宮駅→四条烏丸駅→国際会館駅
今までに、大阪・神戸は行く度となく訪れたことがあったが、何故か阪神電鉄
を利用したことはなかった。
というか、JRも阪神間の移動に限れば使ったことはなく、巨大な阪急梅田駅
と、梅田十三間の三複線に圧倒されたいがために、専ら阪急神戸線に乗って
いたからである。
今回初めて阪神電車(東京だと○○線と呼ぶところ、関西では○○電車と呼
ぶ)に乗ったのは、阪神尼崎駅の近辺に所用があり、そこから神戸へ向かい
帰路の阪急芦屋川駅から阪神芦屋駅にかけて、芦屋川沿いを探索しようと
考えていたからだった。
芦屋カトリック教会
阪神芦屋駅の西行ホームは芦屋川上まで延びていた。阪神尼崎駅から乗った特急
列車は、阪神電鉄ご自慢の高加減速車両(ジェットカー)で編成されていた。快足の
盗塁王、赤星選手のような車両である。特急列車が芦屋駅に到着し、短い停車時間
を終えて発車しようとしたその時、右側の視界に、特徴的な尖塔が飛び込んできた。
「ドロシー・アンダーソン登場」シーンに登場したあの教会だ。急遽予定を変更して、
慌てて飛び降りる。位置関係が良くわからないまま、とりあえず尖塔の方角へ向か
う。教会の建物は、ロケ当時とそれほど変わっていないと思われた。改修が行われ
たのだろうのか。周りの塀や外壁などは、経年を感じさせないほどに磨かれている。
石垣の道
写真撮影のため回りを確認したところ、もう一つ記憶にある風景が視界に入った。
「怪しい男に尾行されたドロシー・アンダーソンがタクシーに乗る」シーンの風景だ。
あの石垣と生垣の道は、なんと教会の川を挟んだ向かい側だったのだ。しかも教
会を撮った場所と同じ位置から、カメラを180度「回れ右」させただけ。時間の限ら
れた地方ロケの現場では、撮影機材をセッティングする時間も省かれたのだろう。
お屋敷町をのんびりと川沿いに散策する目論見は見事に崩壊した。「教会・道路・
市役所」の芦屋三点セットは、駅から半径200m以内という距離に位置していた。
神戸北野町山本通り
神戸は「坂の町」である。三宮から坂を登ると北野
山本通り。神戸観光の目玉、北野異人館町だ。
妙な変装(仮装?)で神戸を捜査する警備隊員た
ちのうち、アンヌのシーンはこの異人館町のメイン
ストリート、山本通りで撮られたらしい。しかし、場
所の特定はできない。
ここは観光客に徹して「風見鶏の館」でも見学する
としよう。
「風見鶏の館」は、1977年下期のNHK連続テレビ
小説「風見鶏」(主演:新井春美)の舞台となった。
ドラマのヒットのおかげで、それまでほとんど訪れ
る人のいなかった異人館へ、アンノン族と呼ばれ
た若い女性を中心とした観光客が激増した。
坂の町に溢れる異国情緒を堪能しよう。
メリケン波止場
港町神戸のランドマークといえば、突堤に威容を誇るポートタワー。青空に映える
真紅の無数のパイプによる幾何学模様が美しい。俗に「関西人のタワー好き」と揶
揄される。名古屋以西には、何かと「タワー」が多いからだ。名古屋テレビ塔、京都
タワー、通天閣、大阪タワー、ポートタワー。そのうえ名古屋城や大阪城などの復興
天守閣にも展望台が備えられる。煙と同様に、高い所が好きな御仁が多いのか?
ポートタワーでは、神戸港を捜索するダンやキングジョー襲来から避難する人々な
どのシーンが撮影された。現在ではポートタワーから海側にオリエンタルホテルなど
が整備された。再開発以前の突堤で一連の港湾シーンが撮影されたと思われる。
六甲山塊の麓が海に滑り込む、わずかな斜面に発達した「坂の町
神戸」は、都市機能の発達と港湾機能の拡充、そして住宅適地の
開発を「三位一体」として発展した。
斜面地における農作地開墾の方法として伝統的な工法がある。棚
田とか段々畑と呼ばれる階段式土地整備法のことだ。神戸市はこ
れを都市開発に応用した。
六甲山塊の低い峰を削り、その土砂で浅い谷を埋めて、平坦な住
宅地を造成する。その土地へのアクセスのためトンネルを掘り、道
路や鉄道を整備する。その建設残土で海を埋め立てる。埋め立て
た土地は都心地域として開発し、海側は突堤や埠頭として港湾機
能の強化を図った。江戸末期に寒村であった神戸は、開港以来、
この繰り返しによって拡大・発展してきたのである。
元町の海寄りに「旧居留地」という所がある。震災復興を祈念する
イベント「ルミナリエ」の行われる一帯であるが、その地名の通り、
かつては外国人居留地であった。
「旧居留地は、」江戸時代の長崎出島のように、周囲とは隔絶され
た埋立地であった。この地に住み着いた異国の商人たちは、周囲
の都市化が進むと、安息の地を求めて山寄りの斜面へ移動した。
これが今日の北野異人館街として残されているのだ。
海面への拡張が進み、ポートアイランドや六甲アイランドが整備さ
れた結果、港湾地域に昔日の面影はことのほか少ない。現在、画
面からロケ場所が特定し得るのは、気障なマドロスに扮したソガが
パイプをふかしているシーンくらいなものだ。
ソガがパイプをふかしたのは、第八突堤の摩耶大橋橋脚下である。
1975年に、高速道路用の第二摩耶大橋が隣接して架設されたので、今では赤の摩耶大橋と
青の第二摩耶大橋が並んで運河を跨いでいる。
赤の摩耶大橋は阪神淡路大震災で大きな被害を受けたが、画期的な工法により、被災半年
後には早くも復旧し開通した。その工法とは、2200トンもある橋桁をまるごと取り外して陸地へ
移動。必要な修理をおこなった後、逆工程で橋桁を取り付けるという、思い切ったものだった。
港町には、夕焼けがよく似合う。
画面でも、物語冒頭、ダンとアンダーソン、夕日の中を
走るダンなどのシーンがある。
物語冒頭のNAがかぶる朝のような港湾風景について
満田監督は、「あれは夕陽に見えるけど、実際は朝日
なんですよ。」と語っている。(扶桑社刊 森次晃嗣著
「ダン〜モロボシダンの名をかりて」より)
京都国際会館
三宮駅から阪急電車で大阪方面に向かい、十三駅で京都線に乗り換えて烏丸駅へ。
烏丸駅からは、京都市地下鉄で国際会館を目指す。国際会館駅の階段を上ると無機
質なコンクリート造りの巨大建造物に圧倒される。鎧武者のような硬骨なデザインだ。
近年では地球温暖化対策を決議した「京都議定書」を宣言した国際会議場だ。コンクリ
ートの組み合わさった威容は、キングジョーの胸部のようにも見えてくるから不思議だ。