セブンシリーズ屈指の名セリフが登場します。

「地球を守るためなら、何をしてもいいのですか?」

「それは、血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ…」


セブンワールドの根幹を成す大命題を提示する作品です。
地球人の「地球ナショナリズム」ともいうべき問題、すなわち「地球を守るため、地球人が生き残るためならば、他の惑星を破壊しても、異星人を滅ぼしても仕方がない」という考え方への疑問をベトナム戦争が泥沼化しつつある当時の世相に反映させた名作です。
同様の観点から描かれた作品は、他にいくつかありますが、「血を吐きながら…」の名セリフを有する本作品が、出色であるといえるでしょう。





STORY



オープニング・ナレーション。
「地球防衛国際委員会のセガワ博士、宇宙生物学の第一人者マエノ博士らをメインスタッフとして、この防衛軍基地内の秘密工場で、今、恐怖の破壊兵器が完成しようとしていた。それは惑星攻撃用の超兵器R1号である」(浦野光)


作戦室、惑星攻撃用超兵器「R1号」の図面を前に盛り上がる一同。
「新型水爆8000個の爆発力だって…?」(ダン)
「しかもこれは実験用だぞ!」(フルハシ)
「すごいわ…、ねぇダン!」(アンヌ)
「いよいよ48時間後に発射するそうだよ」(フルハシ)
「発射するって、この基地から?」(ソガ)
「そうだよ」(アマギ)
はしゃぐフルハシたちを尻目に、うかない表情のダン。
「ダン、これで地球の防衛は完璧だなぁ…地球を侵略しようとする惑星なんか、ボタンひとつで木っ端微塵だぁ!」(フルハシ)
なおも考え込むダン。
「我々は、ボタンの上に指をかけて、侵略しようとする奴を待っておればいいんだ!」(フルハシ)
「それよりも地球に超兵器があることを知らせるのよ」(アンヌ)
「そうか、そうすれば侵略してこなくなる」(フルハシ)
「そうよ!…使わなくても、超兵器があるだけで平和が守れるんだわぁ…」(アンヌ)



まさに、冷戦時の核配備競争における正統派論調です。
太陽系第3番惑星に、史上初めての核兵器がお目見えしたのは45年7月。米国がマンハッタン計画で完成させた原子爆弾でした。この最初の原爆は、広島と長崎を攻撃し、脅威の破壊力を無残な被害とともに、全世界に示しました。米国は、最初に凄まじい攻撃力を誇示して他国の鼻先を押え、自国の優位性を誇る目論見だったのです。しかし、これは見事に裏切られます。米国の原爆独占を恐れた各国は、独自に原爆製造を始めたのです。そして、49年にはソ連、52年には英国が、相次いで原爆実験を成功させました。
このため米国は、さらに強力な破壊力を持つ超兵器として、水素爆弾を開発しました。水爆とは、凄まじい攻撃力を持つ原爆を起爆剤にして核融合を起こさせるという、トンでもない代物です。米国は52年、マーシャル諸島エニウェトク環礁で初実験を試みました。しかし、翌53年には、ソ連も水爆の保有を発表したのです。
核兵器開発競争に関わった人たちは心の底から、核兵器は使わなくてもあるだけで平和が守れる、と信じていたのでしょうか…。



廊下を歩くフルハシとダン。
ダン、思いつめたような表情で、フルハシに詰め寄る。
「フルハシ隊員!」(ダン)
「何だ?」(フルハシ)
「地球を守るためなら、何をしてもいいのですか…」(ダン)
「えっ…」(フルハシ)
思わぬ質問に絶句するフルハシ。
「返事をしてください!」(ダン)
「……」(フルハシ)
「…よし!」(ダン)
突然、走り出そうとするダン。
「おい、ダン!いったい何処に行くんだ?」(フルハシ)
実験の中止を求めて参謀室に行こうとするダンを制止するフルハシ。
「忘れるなダン、地球は狙われているんだ。今の我々の力では守りきれないような強大な侵略者がきっと現れる。その時のために…」(フルハシ)
「超兵器が必要なんですね」(ダン)
「決まっているじゃないか!」(フルハシ)
「侵略者は、もっと強烈な破壊兵器を作りますよ!」(ダン)
「我々は、それよりも強力な兵器をまた作ればいいじゃないか!」(フルハシ)
フルハシの言葉に、目を背けるダン。
そして、絞り出すように、言い放つ…。
「…それは、血を吐きながら続ける…、悲しいマラソンですよ」(ダン)



53年当時、米国の水爆は核融合原料の水素に、主として液化水素を使用していたため、なかなか軽量化が進みませんでした。当時の水爆はかなり大型だったので、航空機に搭載できるほどの小型軽量化が急がれていたのです。ロケット技術が未完成だった当時、航空機に搭載できない破壊兵器に戦略的価値は無に等しかったからです。
一方、53年に水爆保有を発表したソ連は、米国よりも軽量であることを誇示しました。ソ連は、核融合原料に軽量の重水素化リチウムを使っていたためでした。そのうえ、55年には航空機搭載型水爆の実験に成功し、戦略兵器としての優位性を誇示しました。米国も負けじと、翌56年、飛行機で運べるまで、水爆の軽量化に成功し、ソ連と肩を並べます。まさに命がけの開発競争です。
そして、62年のキューバ危機は、冷戦の構図を構造的に決定づけました。以後、セブンの時代を経て最近まで、両国は、地球上の覇権をかけたゴールなきマラソンを血を吐きながら続けていたのです。



「当時、米ソでくりひろげられていた軍拡競争を頭にいれているんだと思うけど、『血をはきながら続ける、悲しいマラソン』というセリフがあった。人間のエゴを強烈に批判していたね。
当時の僕にはあまりピンとこなかったけど、今になってみるとすごい」(森次晃嗣:談、※1)



参謀室。
タケナカ参謀、キリヤマ隊長と「R1号」開発チームの二人の博士。
「で、実験はどこでするんですか?」(キリヤマ)
「ギエロン星を選びました」(マエノ博士)
「えっ、ギエロン星?」(キリヤマ)
「ええ、シャール星座の第7惑星。あの星でしたら、地球への影響は全くありません…。それに、生物もいません」(マエノ博士)
「生物がいないというのは、確実なんですか?」(キリヤマ)
「ええ、大丈夫です。実験場所を選ぶのに6ヶ月もかかって検討したんです」(マエノ博士)
「我々は、ついに超兵器を持ったということを宇宙の侵略者たちに知らせるということも目的の一つなんだ」(セガワ博士)
「実験が成功すれば、ギエロン星は宇宙から姿を消すでしょう…」(マエノ博士) ←かわいい顔して言うことは恐い。


実験は開始された。
基地内にカウントダウンが鳴り響く。
「…ゼロ、発射!」
ギエロン星に向けて飛び立つR1号。
順調に飛行し、ギエロン星に近づく。
そして、衝突。爆発するギエロン星…。
「宇宙震を観測!」(勝部通信隊員)
「大成功です。ギエロン星は完全に粉砕されました」(宇宙観測艇8号)
「信じられない破壊力だ。これでR2号が完成すれば地球の防衛は完璧だ」(タケナカ参謀)
喜びにわく作戦室。
「レーダーがギエロン星の破片と思われる影をキャッチしました」(宇宙観測艇8号)
ひとり、作戦室を出るダン。
それに気付き、後を追うアンヌ。
「ダン、どこに行くの?」(アンヌ)
「宇宙パトロールの時間だよ」(ダン)
吐きすてるように言い放ち、発射場へ向かうダン。
廊下でひとり、言葉もなく、後姿を見送るアンヌ…。
その時ふと、ダンが言っていたことを思い出した…。
(回想)
「…それは、血を吐きながら続ける…、悲しいマラソンですよ」


その時、作戦室では異変が生じていた。
「こちら宇宙観測艇8号、こちら宇宙観測艇8号。緊急情報、緊急情報!ギエロン星から、ギエロン星から攻撃を受け……」(宇宙観測艇8号)
「観測艇8号!観測艇8号!」(キリヤマ)
宇宙観測艇8号からの通信が途絶えたのだ。
「どうしたんだ?」(タケナカ参謀)
「おい、テープを回せ!」(キリヤマ)
(再生)「こちら宇宙観測艇8号、こちら宇宙観測艇8号。緊急情報、緊急情報!ギエロン星から、ギエロン星から攻撃を受け……」
「…攻撃?そう言ったな今?」(タケナカ参謀)
「そんなバカなことありません。ギエロン星には生物は住んではいません」(マエノ博士)
Piin Piin…、警報音が鳴る。
「隊長、奇妙な物体をキャッチしました」(勝部通信隊員)
「何だろう?普通の宇宙船じゃないぞ…」(キリヤマ)
「方角は?」(タケナカ参謀)
「ギエロン星のあった方角から真直ぐ地球に向かっています」(勝部通信隊員)
通信マイクをとるキリヤマ隊長。
「ホーク1号、こちら作戦室。応答せよ!」(キリヤマ)
「こちらホーク1号」(ダン)
「ギエロン星のあった方角から真直ぐ地球に向かっている飛行物体があるんだ。調査してくれ!」(キリヤマ)
「了解、調査します」(ダン)
「何だろう…。その飛行物体というのは…」(フルハシ)
不安な気持ちで宇宙空間に向かうホーク1号…。


ホーク1号で悔やむダン。
(僕は、絶対にR1号の実験を妨害するべきだった…。本当に地球を愛していたのなら、地球防衛という目的のために…。それができたのは僕だけだったのに…)(ダン)
「ダン!どうしたんだ?何を考え込んでるんだ…」(フルハシ)
「いやぁ…。あっ、フルハシ隊員、見てください」(ダン)
巨大な鳥のような飛行物体が飛んで来る。
「ホーク1号より作戦室へ。発見しました」(ダン)
「宇宙船か?」(キリヤマ)
「いや生物です。巨大な!」(ダン)
「なにぃ。生物…、生物だって?」(キリヤマ)
「そんなバカな!」(マエノ博士)


事態は急を告げる参謀室。
「信じられません。ギエロン星は温度270度、酸素0.6%。金星とよく似た、燃えない焦熱地獄です。そんなところに生物が住めるはずがありません」(マエノ博士)
「しかし、そこに生物はいた。しかも超兵器R1号の爆発のショックで変異したんだ」(タケナカ参謀)
「アタクシの責任です。ギエロン星を実験場に選んだのは、アタクシです…」(マエノ博士)
「私たち全員も賛成した。あなたひとりの責任じゃない」(セガワ博士)
「でも…」(マエノ博士)
「自分をいじめるのはやめたまえ」(セガワ博士)
←責任の所在など、どうでもいいだろう…。
参謀室に入ってくるソガとアマギ。
「隊長、新型ミサイルをホーク2号に取り付けました」(アマギ)
←セリフ間違い…、ホーク2号って…?
ホーク3号で出動するソガとアマギ。



ギエロン星獣の到着地の情景が印象的です。
夜間、教会のような廃墟に降り立った星獣を中心に、カメラは低い視点からゆっくりとパンします。
「キィッキィィニィ」
ギエロン星獣は、廃虚で、はしゃぐかのように跳ね回わります。まるで、復讐の地に降り立ったことを喜ぶかのように…。
惑星間で最終戦争が起き、超兵器を撃ち合った結果、すべての生命体が絶滅し、生き残った唯一の生命体は、放射能変異したバケモノであった、との示唆なのでしょうでしょうか。それにしても人間の業というものを考えさせる画面です。
「キィッキィィニィ」
もの悲しい星獣の声が、夜の墓場に響き渡ります。



飛来するホーク3号。
新型ミサイルがギエロン星獣に発射される。
しかし、ミサイルなのに、なぜか爆弾倉から自由落下している…。
←そこが、新型なのダ…?
直撃弾を受けたギエロン星獣は、木っ端微塵に粉砕された。
彼の故郷の星と同様に…。


作戦室。
「隊長、あっけない最期でした」(フルハシ)
「うむ…。しかし、おかしいな…どうも」(キリヤマ)
「ええ、超兵器R1号の爆発でも死ななかった奴です」(ダン)
「うむ…」(キリヤマ)
納得のいかない表情のキリヤマ隊長。
「宇宙を飛行してきてエネルギーを使い果たしたのかもしれません…」(ソガ)
「そうですよ、きっと!」(アマギ)
「隊長、被害を最小限度に食い止めることができて、何よりだった」(タケナカ参謀)
「いやぁ、これからもどんな強力な侵略者が来るかもわからん。一日も早くR2号を完成させなきゃ…。理論的にはさらに強力な超兵器、R3号、R4号の製造も可能だ…」(セガワ博士) ←マッド・サイエンティスト…。


夜半の墓場では、砕け散ったギエロン星獣の破片が動き出した…。肉片はアメーバ状になって集まってくる。集まったドロドロは、やがて固形化し、元の身体を再生し始めた。
「キィッキィィニィ! キィッキィィニィ!」
復活の雄叫び。
復讐の怨念がこのような特異体質を産んだのか…?


非常警報が鳴り響く作戦室。
「参謀、大変なことになりました。ホーク1号・3号に大型ミサイルを取り付けました。全力でやってみます」(キリヤマ)
「隊長、ギエロン星獣が東京に侵入します」(勝部通信隊員)
「なにぃ…」(キリヤマ)
「キリヤマ隊長、頼む」(タケナカ参謀)
「ハッ、出動!」(キリヤマ)


ホーク1号と3号の攻撃。
大型ミサイルで執拗に攻めたてる。命中弾多数…。
しかし、復活したギエロン星獣の皮膚は固く、まったく通用しない。
黄色いガスを吐き散らすギエロン星獣。
ガイガーカウンターの針が狂ったように揺れ動く。
「放射能だ…」(キリヤマ)
「ええ、ギエロン星を爆破したR1号の放射能です」(ダン)
「大変なことになるぞ、今に…」(キリヤマ)


作戦室。
「セガワさん、エライことになった。R1号の放射能で、東京が危険です」(タケナカ参謀)
状況は悪化しつつある。
「何もかも、アタクシの責任です…」(マエノ博士)
「そうだ、我々委員の…」(セガワ博士)
「今はそんなことを言っている時じゃない。責任は私にも…」(タケナカ参謀)
意味のない自己批判に、しびれを切らしたキリヤマ隊長。
「風に乗って、放射能の灰は広がっています。東京が危険です!…警報を出してください!」(キリヤマ)
「タケナケ参謀!…この危機を救うものは、超兵器R2号だけです」(セガワ博士)
「でもR2号を使って、さらに巨大な生物に変化したら…」(マエノ博士)
「マエノ君、このままでも東京は危険なのだ。私はR2号の破壊力に賭けてみたい…。時間が欲しい…R2号させ完成すれば…」(セガワ博士) ←懲りない、マッド・サイエンティスト…。


全力で挑むウルトラ警備隊。
あまりに執拗な攻撃に業を煮やしたか、ギエロン星獣の反撃。
両手の先からスパークを発し、胸の前でリング状の光輪として発射する。
突然の攻撃を受けて被弾するホーク1号。
黒煙を噴きながら…不時着する。 ←久しぶりです。不時着カウンターC
地上に降りたダンは、セブンに変身する。


セブンとギエロン星獣の格闘は、星獣が降り立った夜の不気味な光景から一転して、花が咲き河の流れる美しい田園風景です。躊躇しながらも、その迷いを断ち切るようが如く、あえて鬼神のように戦うセブンが印象的です。
一方、ギエロン星獣は、恨みのガスを吐きまくります。セブンは、ガスをよけながらトンボを切り、逆さまからアイ・スラッガーを放ちますが、見るからに固そうなギエロン星獣のボディは、簡単に弾き返します。次に、セブンは肉弾戦を挑みますが、アイ・スラッガーも効かないボディには、ダメージひとつ与えられません。
意を決したセブンは、ギエロン星獣の懐に飛び込み、片翼を力づくで引き千切ると、切れ目からは大量の羽毛が花畑を覆うように一面に飛び散ります。何かを暗示しているかのような画面構成です。そして、アイ・スラッガーをはじめてナイフのように使い、ギエロン星獣の喉元を掻き切るのです。切り口からは、黄色い血のようなものが霧状に噴出し、ギエロン星獣は息絶えます。シリーズ中で、もっとも見ごたえがあり、かつ、悲しみの大きい戦闘シーンです。
決まり手:アイ・スラッガー、手づかみ頚動脈切り。



戦いは終わった、しかし…
「タケナカ参謀、アタクシはどうしても、あのギエロン星獣を憎むことはできません。R1号の爆発のショックで、あんな恐ろしい宇宙怪獣になったけど、本当は美しい星ギエロンに住む平和な生物だったのかもしれません」(マエノ博士)
「同感だ…私も」(セガワ博士)
「私もウカツだった…。もっと万全の配慮が必要だった。セガワ委員、超兵器の開発競争だけが、地球を防衛する道ではない」(タケナカ参謀)
参謀室に入ってきたキリヤマ隊長。
「タケナカ参謀。放射能の汚染地域は完全に閉鎖しました」(キリヤマ)
「隊員たちは異常ないか?」(タケナカ参謀)
「ダン隊員だけが、多量の放射能を浴びておりましたんで、今消毒して、メデイカルセンターで休ませています」(キリヤマ) ←放射能なのに消毒ですか…?
「キリヤマ隊長、超兵器R2号が完成したら、地球の平和は絶対に守れると思うかね?」(タケナカ参謀)
「しかし侵略者は、それより強力な破壊兵器で、地球を攻撃してくるかもしれません」(キリヤマ)
「うむ、我々はさらに強力な破壊兵器を作る。地球を守るために…」(タケナカ参謀)
ふと思いついたような表情のキリヤマ隊長。
「…そういえば、ダンがしきりにウワ言をいったんです。…血を吐きながら続けるマラソン、だと…」(キリヤマ)
「ダン隊員がそんなことを…」(マエノ博士)
目を丸くするマエノ博士。
「ええ」(キリヤマ)
「参謀。人間という生物は、そんなマラソンを続けるほど、愚かな生物なんでしょうか?」(マエノ博士)
目からウロコが落ちたマエノ博士。


メディカルセンター。
暗い表情のダン。
そこにやって来たタケナカ参謀とマエノ博士。
「あのう…参謀、お願いがあるんですが…」(ダン)
「よし、わかった」(タケナカ参謀)
「まだ何も言ってません…」(ダン)
「いや、言わなくてもいい。私は今から委員会に出席するが、R2号の製造を直ちに中止するように提案してみよう」(タケナカ参謀)
「私も他の委員を説得するわ」(マエノ博士)
それを聞いて、喜ぶダン。
「ありがとうございます」(ダン)


タケナカ参謀とマエノ博士が出て行ってひとりになったダンは、ふと傍らのリスに目をやった。
小さなカゴの回転車で、リスは何も疑わずに走り続ける…。
とりつかれたように、リスを見つめるダン。
リスは走り続ける。
そう、まるで終わりのないマラソンのように…。





ALIENS&MONSTERS



再生怪獣:ギエロン星獣
身長:50m
体重:3万5千t
出身:ギエロン星
武器:スパーク光輪、放射能ガス
特技:木っ端微塵からもアメーバ状で再生できる
弱点:超怪物も頚動脈を切られた日には…





ACTOR&ACTRESS



可愛い顔して言うことは怖い、宇宙生物学の第一人者マエノ博士は、東宝の美人女優、田村奈己さんが演じました。復讐のためだけに生きるギエロン星獣を見て、自らの過ちを認め、考え方を改めるマエノ博士のフルネームは、「マエノリツコ」だそうです。
白衣姿の女性科学者で、言うことの怖いリツコというと…? 
……赤木リツコ博士!?

「女性科学者としてゲスト出演している田村奈己さんは、東宝の私の先輩です。本編を見てもらえばわかるとおり、たいへん美しい方。彼女は『ウルトラマン』にも出演されていました」(ひし美ゆり子、※2)


セガワ博士には、同じく東宝所属の向井淳一郎さん。
「獣人雪男」や「地球最大の決戦」などのクセのある変な役どころが、特撮ファンにはウリの俳優さんですが、今回の大艦巨砲主義の権化みたいなマッド・サイエンティストというのもナカナカです。もう少しイッちゃてても良かったかも…。





EXTRA



セブンシリーズで、「地球ナショナリズム」問題を扱った作品集。

#6「ダークゾーン」(脚本:若槻文三)
地球を守るために、推進機関が故障して衝突軌道に入ったペガッサシティを破壊。
ペガッサ人は、地球にひとりを残して滅亡。

#14・15「ウルトラ警備隊西へ」(脚本:金城哲夫)
ペダン星に向けて打ち上げられた地球防衛軍の観測ロケットをペダン星人は地球からの侵略と判断して報復にやってくる。

#16「闇に光る目」(脚本:藤川桂介)
探査ロケットを侵略ロケットと判断してやってくる。
地球人の説得では信用しないが、セブンの言葉を信じて星に帰った。

#17「地底GO!GO!GO!」(脚本:金城哲夫)
侵略するでもなく、正体もわからない地底都市とロボットを一方的に破壊。

#26「超兵器R1号」(脚本:若槻文三)
水爆八千個分の破壊力を持つ「R1号」を無生物とされたギエロン星で爆発実験。
粉々になって吹っ飛んだギエロン星から放射能で変異した星獣が復讐にやってくる。

#41「ノンマルトの使者」(脚本:金城哲夫)
地球の先住人ノンマルトとの対決。
地球防衛軍は、ノンマルトを侵略宇宙人と判断。海中都市を攻撃して壊滅させた。


この一連の「地球ナショナリズム」問題は、地球人の立場から考えれば、「しようがない」とか「やむをえない」という言葉で簡単にかたづけることができます。しかし、本作品の主人公「ウルトラセブン」は、地球人ではなく、M78星雲から来た宇宙人(異星人)なのです。ここに、ともすれば地球人の代理戦争屋に見られかねないセブンの危うい存在意義が浮上してくるのです。
とどのつまり、セブンは、何のために、誰のために、戦っているのかという根本の問題です。セブンの戦う理由が、「地球と地球人を守るため」だけでは、地球人の論理でしかありません。なぜなら、地球人と侵略宇宙人との関係では、セブンは当事者ではなく、第三国人にすぎないからです。セブンが、己の戦いを正義の戦いと標榜するのなら、あくまでも「理不尽に侵略される地球
人に味方する」という、全宇宙的な錦の御旗が必要となるのです。地球人は、本当に理不尽に侵略されているのだろうか…。この答えは、セブンの苦悩とともに、段々とベールをはぐように示されてきます。その度にセブンは、迷います。なぜなら、セブンが戦う本当の目的は、「地球の防衛」であって、他惑星への侵略を包括する「地球人の繁栄幇助」ではないからです。


「僕は絶対にR1号の実験を妨害するべきだった。本当に地球を愛していたのなら…。地球防衛という目的のために、それができたのは、僕だけだったのに…」(ダン)


セブンは知ってしまったのです。
地球人は、異星人を心の底から信用していないことを、
地球人が、心の底に野心を持っていることを…。



                    










                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第26話「超兵器R1号」
              06/SEP/2001 初版発行  20/JAN/2002 第二版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved





脚本:若槻文三   監督:鈴木俊継   特殊技術:的場 徹   制作26話