市川森一第3弾。
射撃の名手、ソガ隊員が婚約しました。相手は名門大学に通うお嬢さんです。
これだと、ソガ隊員が主役のお話のようですが、本当の主役はタイトルにもある通り、誰にも知られずに、悲しくも勇敢に戦い抜いた、ひとりの地球人青年のお話なのです。
STORY
「京南大学。日曜日の午後は、人影もなく静かだ…」(浦野光)
大学構内を歩く女子学生。 ←には、見えないが…
とある研究室の前を通りかかると、怪しい物音をする。
ドアを開け、中に入ると、異形の怪物が机の影に…。
逃げ出す女子学生。 ←には、見えないが…
次の瞬間、机の影から出てきた怪物は、白衣の人間に変わっていた。
宇宙空間を行き来する人工衛星。
「果てしなき宇宙の謎を求めて、今日も幾多の人工衛星が地球の周りを回っている。この年、日本のある大学が教育機関としては史上初めての科学観測衛星の打ち上げに成功した」(浦野光)
作戦室。
科学雑誌を読みながら、ひとり盛り上がるソガ。
「この衛星の打ち上げをリードした京南大学物理学科の偉業は、各界から高く評価され、一介の私立大学に過ぎなかった京南大学の名は、一躍世論の注目を集めている。…どうだ、おい!…見たか、これ。すごいじゃないか!」(ソガ)
自分のことのように喜び、フルハシにからむソガ。
「うるさいなぁ、すごいのはわかっているよ」(フルハシ)
ムッとするフルハシ。
「わかってないねぇ…」(ソガ)
にやけるソガ。
「フフ…フルハシ隊員、わかってあげなさいヨ」(アンヌ)
アンヌ、笑いをこらえながら、
「ねぇ、ソ・ガ・ク・ン!」(アンヌ)
「ソ・ガ・ク・ン…?」(ソガ)
顔が曲がるソガ。
「ソガ君とはなんだ!君とは、ソガ君とは?」(ソガ)
はっとしたソガ、鼻の下を伸ばしながら…、
「えっ…キミわかってんの?」(ソガ)
アタシ知ってるのよ、といった表情でアンヌ。
「ナ・ン・ブ・サ・エ・コさん…。京南大学英文科二年生、……ウフッウフッ……」(アンヌ)
「ヘヘヘ…」(ソガ)
「ヘンナ笑い声出すなヨ…」(フルハシ)
雑誌で顔を隠す不機嫌そうなフルハシ。
「で、何なの、そのサエコさんって…?」(フルハシ)
一度はムッとして雑誌の陰に顔を隠したフルハシだったが、顔を雑誌の隙間から出して、興味深々にニヤニヤしながら尋ねる。
「未来のソガ夫人。ねぇ、ソ・ガ・ク・ン!」(アンヌ)
「おい、ソガ!…ホントか、おい…」フルハシ)
照れ隠しに口笛を吹くソガ。駆け寄るフルハシ。
「10日前に婚約したんです」(アンヌ)
「…チキショー」(フルハシ)
悔しがるフルハシ。騒ぎを静観しているアマギに向かうソガ。
「おい見たか、婚約者の大学なんだ」(ソガ)
今度は、アマギに自慢するソガ。
「それは、あまり自慢できんな…」(アマギ)
ムッとした口調のアマギ。
「どうして?」(ソガ)
「そいつが今、司令部で問題になってるんだ」(アマギ)
「えっ、サエコさんが?」(ソガ)
慌てふためく、ソガ。
「バカ!人工衛星のほうがだよ!」(アマギ)
ソガをこづくアマギ。
作戦室に笑いが生じた…。
その時、作戦室のドアが開いた。
出かけていたダンが戻ってきたのだ。
しかし、ダンは騒ぎを尻目に、ひとり参謀室へ…。
「フッ…、イチカワ、やるな…」(クラタ)
というクラタ隊長のセリフが聞こえてきそうなオープニングですね。ウルトラ警備隊の各隊員キャラクターを見事に物語っているシーンです。本来は、三枚目キャラだったはずのソガがそのセンではしゃぎ、この手の情報には誰よりも早そうな女の子のアンヌがからかって、女には縁のなさそうな気はやさしくて力持ちのフルハシが悔しがる…。そして、同年輩で何かとライバル視しているらしいアマギには、絵で画いたようなリアクションで反発させます。各キャラクターが視聴者に認知されていて、生き生きとしているからこそ成立するシーンです。最近のドラマでこの芸当ができるのは、「水戸…」と「渡る世間…」くらいなものでしょうね。
これに続くシーンの決めがまたいいです。盛り上がる作戦室の連中の前に、いきなりこの手の騒ぎにはいちばんオクテ(だって宇宙人なんだもん)のダンを登場させます。今回までもいくつか、脱線によるキャラクター描写はありましたが、ダンはだいたい後ろの方で突っ立っていたのが定石でした。これは主人公のヒーロー性を保持するお約束なのでしょう。さて今回のダンはどうするのか、と思う間もなく、スルーして参謀室に行ってしまうではありませんか…。当然、カメラもその後を追いかけ、騒ぎのシーンは強制終了させられて、話の流れに引っ張り込まれるのです。見事なツカミといえるでしょう。
それにしてもアマギは、ソガに対して口も態度も悪いですね。#18から呼び捨てになり、今回はバカ呼ばわり、#37ではウスノロ呼ばわり…。1年違いの同年輩のライバル関係ということなのでしょうか…。
参謀室。
「秘密調査部からの資料です」(ダン)
「うむ…、それでニワ教授のことは?」(キリヤマ)
「やはり、偽者でした」(ダン)
「するとスパイか…」(タケナカ参謀)
「そうだとして、いったいどこの国の?それにあの関係者が何のために打ち上げたんでしょう?」(キリヤマ)
「そこだよ。第一あれは地球の科学力を遥かに超えている」(タケナカ参謀)
「もしか、宇宙人では?」(ダン)
「この際、衛星の内部も調査してみますか?」(キリヤマ)
「こいつが大学の教材用という名目だけにちょっと厄介だなぁ…」(タケナカ参謀)
どうやら京南大学の打ち上げた観測衛星に問題があるらしい。
京南大学へ婚約者サエコに会いに来た、背広姿のソガ。
サエコに、ニワ教授のことを尋ねていると、ニワ教授が助手のイチノミヤと構内を歩いていた。
「イチノミヤを知っているの?」(ソガ)
「ええ、高校の先輩なの。あの頃はとっても親切な人だったのに、すっかり変わってしまったわ…」(サエコ)
「僕と一緒に彼を助け出してもらいたいんだが…」(ソガ)
「助けるって…?」(サエコ)
「君が日曜日に見たという怪物の影…、ニワ教授のもうひとつの姿かもしれないんだ…」(ソガ)
「えっ…」(サエコ)
「イチノミヤは利用されているんだ。宇宙人に…」(ソガ)
サエコを促がすソガ。
「正門にウルトラ警備隊の車が止まっている。そこまでイチノミヤを連れ出してもらいたいんだ」(ソガ)
婚約者を危険に巻き込むソガ君。
ソガ隊員役の阿知波信介さん。セブン以後、しばらくして俳優業に見切りをつけてマネージャー業に転進しました。その理由は、俳優を辞めてマネージメントするに値する原石を見つけたからでした。ソガ君によって磨きこまれた原石は、見事なダイヤとなって芸能界に羽ばたきました。女優の多岐川由美さんです。後に2人は結婚と離婚をしますが、その辺の詳しい事情は、女性誌でもご参照ください。
とにもかくにも、多岐川由美さんの売り出しに成功した若き敏腕マネ−ジャー:ソガ君は、俳優養成所の同期生にして、青春スターとして確固たる地位を築いていた七曲署の人情家:ゴリ押しのゴリさん(ゴリラのゴリではない)こと、竜雷太さんと芸能プロダクションを設立します。アクターズ・プロモーションの誕生です。社長は筆頭男優兼任のゴリさん。ソガ君は副社長。女優筆頭が夫人の多岐川由美さんでした。ソガ君は、婚約者を危険に巻き込むどころか、嫁さんを食い物にしていたのです…!?
ソガの特命で、イチノミヤに接近するサエコ。
「信じていただけないかもしれませんけど、ニワ教授は宇宙人かもしれないんです」(サエコ)
イチノミヤを助手席に乗せたサエコが切り出す。
「それで、僕をどこへ…」(イチノミヤ)
「ある人に頼まれて、あなたを連れ出すように言われたのです」(サエコ)
「ある人って?」(イチノミヤ)
「アタシの婚約者で、ウルトラ警備隊の隊員です」(サエコ)
「えっ!」(イチノミヤ)
運転するサエコからハンドルをつかみ、アクセルを吹かす。
「は、離して…」(サエコ)
待機するダンの目前を疾走するサエコの車。
墓地まで走った車は木に接触してようやく止まる。
「教授が宇宙人だということをなぜ知ってる?」(イチノミヤ)
「なんですって、それじゃあなたは…」(サエコ)
「教授が宇宙人なら、どうだというんだ」(イチノミヤ)
「だったら…侵略者じゃないの?」(サエコ)
「ハッハッハ、宇宙人といえば、すぐ侵略者か。教授は違う。彼は僕の電送移動機を作ってくれた。地球の学者が見向きもしなかった電送移動の
理論を、あの宇宙人だけは認めてくれたんだ」(イチノミヤ)
「あなたは利用されているんだわ!あたしたちは、地球人じゃあないの…」(サエコ)
「君たちに何がわかる?…僕は、人間を信じちゃあいない、もういいから、これ以上邪魔をしないでくれ!」(イチノミヤ)
ポインターがやってきたので、サエコを振り払って逃げるイチノミヤ。
こだわりの脚本家:市川森一氏の一般的な作品評価は、一言でいうと「ファンタジーの衣を着せた青春の幻想」だそうです。なるほど!といえる評論ですね。
本作品の主人公は、悩める天才科学者の卵、イチノミヤです。イチノミヤは地球人では想像もつかないような素晴らしい電送理論の構築に成功しましたが、悲しいかな想像もつかないがために、誰にも見向きもされません。そこにつけ込んだ宇宙人の策略に引っ掛かり、自分の成果を受け入れた宇宙人を心底信用し、尊敬してしまうのです。
まさに、「青春の幻想」そのものではありませんか…。
ニワ教授の研究室で、銃を取り出すソガ。
「感づかれたのならば、話はしやすい。ニワ教授とは、仮の名…。シリウス系第7惑星のプロテ星人というのが、貴様の正体だろう」(ソガ)
「…で、私がそのプロテ星人であるという証拠は?」(ニワ教授)
「貴様が打ち上げた科学衛星からプロテ星に送った超音波を逆探知したのが、最初のきっかけさ…。宇宙人でもない限り、地球防衛軍の秘密基
地などには、用はないはずだ」(ソガ)
「なるほど…。で、私がその宇宙人だったら?」(ニワ教授)
「しばらく眠ってもらう」(ソガ)
ソガは、語気を強めてショック弾を撃つが、弾は当っても通用しない。
「次は私の番だね…」(ニワ教授)
ニワ教授は、通称「Vサイン光線」を発して、ソガを気絶させた。
ソガが気づくと、プロテ星人のスパイ衛星の中だった。
「科学衛星より宇宙船へ。到着予定時間を繰り上げてもらいたい。防衛軍が65分後にここに来る」(ニワ教授)
「了解。準光速に切り替え、30分以内に到着する」(宇宙船)
「貴様、何をしているんだ」(ソガ)
「お目覚めかな、ソガ隊員」(ニワ教授)
「今の宇宙船は何だ?」(ソガ)
「この衛星を持ち去るためにやって来る、我がプロテ星の宇宙船です」(ニワ教授)
「何?…すると、ここは…」(ソガ)
「地上3万6千キロ上空に静止している、科学観測衛星の中です。あなたをここにお連れしたのは他でもない、地球防衛軍の到着時間が知りたかったからです」(ニワ教授)
「バカな、そんな秘密事項をベラベラしゃべるとでも思ってるのか!」(ソガ)
「ところが、もうすっかりうかがいました」(ニワ教授)
「なに?」(ソガ)
「あなたがお掛けになっていらっしゃる椅子は、ただの安楽椅子ではありません。記憶探知器と申しましてな、あなたの記憶をひとつ残らず引き出す役目を果たしてくれました」(ニワ教授)
「くそぉ…」(ソガ)
「地球防衛軍がこの衛星を怪しいと思ったのはさすがだったが…、一足遅かったようだ…」(ニワ教授)
ソガを衛星に残して、電送移動機で地球に戻るニワ教授。
ニワ教授には、成瀬昌彦さん。
なんともいえない独特の口調が、なんともいえない味を出しています。成瀬さんは、新劇の世界から脱した創作劇の自主上演を目指して、仲間とともに劇団青年座を立ち上げて、初代座長として活躍した筋金入りのベテラン演劇人です。このような芸達者な俳優さんが数多く出演しているのもセブンの作品世界を深く豊かなものにしている理由のひとつなのです。
ニワ教授の研究室。
「誰だ?」(ニワ教授)
「イチノミヤです」(イチノミヤ)
研究室に入るイチノミヤ。
「教授、すぐ出発しましょう。ウルトラ警備隊が追ってきます」(イチノミヤ)
「わかってます。宇宙船は30分後に出発します」(ニワ教授)
「迎えが来るんですね。そうか…とうとう来たか!」(イチノミヤ)
隣室の電送移動機前へ進んだイチノミヤ。
「アッハッハ…。これで地球を脱出できる…ハッハ…」(イチノミヤ)
嬉しそうなイチノミヤ。
「僕たちが行った後、この電送装置や科学衛星はどうするんです。置いていくんですか?」(イチノミヤ)
「もちろん、破壊していくよ。ただ、あの衛星だけは持っていくがね…」(ニワ教授)
「あんなもの2人でいくらでも作れるじゃありませんか…」(イチノミヤ)
「そうはいかん…。あの中には地球防衛軍の各国の秘密基地を観測した戦略資料が収めてあるんでねェ…」(ニワ教授)
「えっ、それじゃ、あの衛星は…」(イチノミヤ)
「さよう、科学観測衛星というのは表向き。実は、地球侵略のためのスパイ衛星だ。君の協力で、その目的も完了した。あれだけの資料が、プロテ星に持ち込まれれば、地球を侵略するなど、赤子の手をひねるようなもんだ」(ニワ教授)
「あなたは、僕の知識をそんなことのために…」(イチノミヤ)
「何を驚いているんだ。君があれほど軽蔑していた地球だ。どうなろうと知ったことではないだろう」(ニワ教授)
「ちきしょう…」(イチノミヤ)
ニワ教授に掴みかかるイチノミヤ。
「教授、衛星は渡せません」(イチノミヤ)
「これはまた…」(ニワ教授)
やれやれといった表情のニワ教授。
「あれほど地球を脱出したがっていた男が、今度はその地球を命がけで守ろうというのか…。いやはや、地球人というのはまったくわからん生物だ」(ニワ教授)
「お願いです。さっき言ったことはウソだと言ってください。あなたは侵略者なんかじゃない。僕がただひとり信じることのできた、優れた宇宙人の科学者だ」(イチノミヤ)
膝をついて懇願するイチノミヤ。
「イチノミヤ君。君の能力は私も欲しいとは思うが…」(ニワ教授)
軽く首を横に振る教授。
「やむを得んな…」(ニワ教授)
「…教授!」(イチノミヤ)
体当たりをくらわすイチノミヤ。
机の影に倒れこむニワ教授。
立ち上がった時、ニワ教授はプロテ星人の姿に変わっていた。
驚く、イチノミヤ。
突然、戸口にシャッターが下りてきて研究室は閉ざされる。
不敵に光るプロテ星人…。
ちょうどその時、ニワ研究室にやって来たダン。
ドアを開けるとシャッターがある…。当然、シャッターは開かない。
ダンは、ウルトラ・ガンにアタッチメントを取り付けて焼き切る。
研究室に入ったダン。
プロテ星人の姿を確認するとセブンに変身する。
セブンとプロテ星人の死闘が始まった。
今回の変身は、プロテ星人の懐から距離を得るために後方にジャンプしたダンが、倒れた棚の影に隠れ、再度ジャンプするとセブンになっている、というシーン構成です…。
棚の陰に隠れる瞬間、両手を目の前で十字クロスしていて、「デュワッ!」とか言ってるので、この瞬間にウルトラ・アイを装着したのかな、と思えなくもありません。しかし、やっぱり決まり事は守りましょうや…。たまに演出する一さんならともかく、満っちゃんはメイン監督なんだから…。
セブンVSプロテ星人。
深夜の大学構内が舞台。
飛びかかろうと歩み寄るセブン、するとプロテ星人は姿を消した。驚くセブン…。すると何もない暗闇から、いきなり投げ飛ばされる…。
プロテ星人の意図に気づいて透視するセブン。しかし、プロテ星人の姿は、闇夜の空間にいくつにも幾重にも映る…。
エメリューム光線、発射!
しかし、素通りだ…!?
アイ・スラッガー!…首を落とされても変わらない。
これは、まさしく幻覚である。
プロテ星人の頭部から発する光には、幻覚を誘う作用があったのだ。
暖簾にうで押し状態のセブン…。
成田亨氏のデザイン段階では、プロテ星人はケムール人系のスマート・ボディだったそうです。造形の高山良策氏もそのように成型しましたが、撮影直前の現場で、ダイヤブロックを埋め込まれました。このためケムール人系のつるりん・ボディは、メフィラス星人系のゴツゴツ・ボディへ変貌したのです。
同じ頃、宇宙空間。
科学衛星に接近し、結合しようとするプロテ星の宇宙船。
そこにやって来たホーク2号。
「隊長、あれは?」(フルハシ)
ドッキングに成功し、科学衛星を持ち去る宇宙船。
後を追うホーク2号。
「今、撃てば、衛星ごと木っ端微塵だ」(フルハシ)
「とても追いつけんなぁ」(アマギ)
「全速力で追え!必ず捕まえてやる」(キリヤマ)
キリヤマ隊長の決意。
ニワ研究室。
赤い液体が流れてきて実体化。ニワ教授である。
「ハッハッハッハ。いつまでも私の抜け殻と戦っているがいい…」(ニワ教授)
プロテ星人は、人間サイズが実物で、巨人は虚像なのである。
隣室の電送移動機に乗るニワ教授。
そこにイチノミヤが追ってきた。
「イチノミヤ君。やはり私の星に来たいのか?」(ニワ教授)
「残念ながら教授。二人同時では再生不能ですよ」(イチノミヤ)
電送移動機上の教授に飛びかかるイチノミヤ。
「なに?」(ニワ教授)
教授の言葉が終わる間もなく始動する電送移動機。
イチノミヤは、自分を認めた宇宙人とともに、宇宙の果てに旅立っていった…。二度ともとの自分に帰れないことを承知の上で…。
誰にもその研究の成果を評価されず…。
誰にもその命を引き換えにした行為を知らされず…。
ひとりぼっちで戦い続けたイチノミヤ。
ひとりぼっちの地球人、イチノミヤの戦いは、ここに終わりを告げたのです。
相変わらず苦戦を強いられているセブン。
その時、本体が消滅したので、抜け殻のプロテ星人もセブンの前から姿を消す。
宇宙空間にテレポレーションして、科学衛星を伴った宇宙船を追う。
そして、セブンは科学衛星を取りかえした。
今度は逆に、宇宙船がセブンを追う。
「宇宙船の野郎、戻ってきやがったなぁ」(フルハシ)
「今だ、撃て!」(キリヤマ)
ホーク2号の機首レーザー砲が、宇宙船に一直線に進む。
命中!大爆発する宇宙船。
「森次−ダンはソガとのからみが多かったね」
「満田−そうだね。同じくらいの年齢ってのもあったから。本当はソガは、もっと三枚目の役どころだったんだけど、アチ(阿知波信介氏)が二の線で芝居しちゃうんだよ」
「森次−そうそう、二の線」
「満田−結局そういうウルトラマンのイデのような三枚目のキャラクターがセブンには存在しなくなっちゃった。アマギはずっと作戦室にいて、あまり口数も多くない役だったし」
「森次−アマギ(古谷敏氏)はピッタリの役だったね。実際に口数も多くなかったし、おとなしかった」
「満田−それでマムシさんが豪快な役で。ソガは三枚目だけど銃だけはうまいっていう設定だったのに、モロボシダンみたいだった。ソガが変身するんじゃないかって(笑)」
(森次晃嗣、満田かずほ:談、※1)
当初、ソガのキャラクターは、アラシの射撃の腕を持つイデのような三枚目(ただし発明パートはアマギ)と考えられていたようです。それをソガ君が二の線で演じてしまったため、当初のキャラ設定とは違った方向にズレてしまったようです。しかし、今となってはこれがよかった、と思います。アラシとイデを足して3で割ったキャラでは、どうだったでしょうか?少なくとも「ウルトラマン」とは作品世界そのものが変わっているのです。確かに子供心には、イデ隊員のようなオモシロイ人がいないのはつまらなかった記憶がありますが、仮にイデ隊員がウルトラ警備隊にいたところで、浮きまくってしまったことは想像に難くありません。やはり、イデのキャラは、科特隊のメンバーの中でこそ生きるものであって、ウルトラ警備隊には、ソガ隊員のあのキャラがシックリくるものなのです。
そのせいか、満っちゃん担当回のソガ隊員は、妙に三枚目を強要されているかのような演出が見受けられます。代表は、#25「零下140度の対決」でしょう。防衛軍基地の大ピンチに、ソガ君ひとりで浮きまくりです。
チャイムに驚いた鳩が、一斉に飛び立つ京南大学。
校舎の屋上からそれを目で追うダン。
しかし、一緒のソガは、鳩を見ていない…。
「何を考え込んでいるんですか?」(ダン)
声をかけられて、我にかえったソガは、軽く笑みを浮かべた。
「いやぁ、あの天才児のことがふと…」(ソガ)
少し曇る表情…。
「生きていれば、立派な科学者になっていたと思ってね…」(ソガ)
「…死んだとは限らないでしょう。宇宙を彷徨っているうちに、元の姿を取り戻して、どっか遠くの星から、この地球を懐かしがって、見ているのかもしれないし。ひょっこり、この学校に戻ってくるかもしれない」(ダン)
遠い故郷を想うダン…。ダンもまた「ひとりぼっちの宇宙人」なのだ。
大学構内を歩くサエコは、またも研究室の前で怪しい物音を聞いた。
思わずドアを開けようとするサエコ…。
「おっと、また宇宙人がいるのかも知れませんよぉ」(浦野光)
躊躇して、開けずに立ち去るサエコ。
部屋の中では、窓が開いていて、風が吹いていた…。
「さっきの物音は、春風のイタズラだったようです…」(浦野光)
ALIENS&MONSTERS
宇宙スパイ:プロテ星人
身長:1m70p〜46m(虚像)
体重:65s〜1万2千t(虚像)
出身:シリウス系第7惑星プロテ星
特技:頭部の熱帯魚のような色彩で幻覚を誘う
特徴:体のゴツゴツはダイヤブロック
弱点:まったくわからん地球人という生物
※虚像に体重があるのか?というツッコミはご遠慮ください。文献にはそうあるもんで…。
ACTOR&ACTRESS
鼻の下を長く伸ばしたソガ君の婚約者、とても女子学生には見えない?大学2年生のナンブサエコ嬢を演じたのは、北林早苗さん。
後に、TVドラマ「水戸黄門」「遠山の金さん」などの時代劇シリーズに数多く出演されました。お姫様から町人の娘まで数多く演じられましたが、やはり「黄八丈」着せて、粋な簪の町屋の娘さんというと、「あっあの人…」という感じですよね…。
ひとりぼっちの悲しきヒーロー:イチノミヤには、剣持伴紀さん。
円谷作品では「怪奇大作戦」や「マイティ・ジャック」に顔を出され、声優としては「サンダーバード」に出演されました。
そして、ニワ教授の成瀬昌彦さん。
今回のウケがよかったためか、もっとハマった役で、セブンに再登板することになります。
LOCATION
早稲田大学と学習院大学(京南大学。名称とはうらはらに都の西北です)
多磨霊園(サエコの車で逃げるイチノミヤ)
EXTRA
さてさて、ソガ君の現況。
多岐川由美さんと離婚後、アクターズ・プロモーションをゴリさんに託して独立しました。
現在は、アクターズ・エージェンシーを経営し、明日の大スター発掘にいそしんでいます。
潟Aクターズ・エージェンシー
東京都港区南青山2−27−11 電話は内緒
代表的な所属俳優
黒部 進
(いわずと知れたウルトラマン。本名は吉本隆志。)
吉本多香美
(いわずと知れたウルトラマンの娘。テイガのレナ隊員。NHK「日本人の質問」出演中。本名は同じだが、結婚したので苗字は変わったはず…。)
「ウルトラセブン」ストーリー再録 第29話「ひとりぼっちの地球人」
06/SEP/2001 初版発行 21/JAN/2002 第二版発行
Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights
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脚本:市川森一 監督:満田かずほ 特殊技術:高野宏一 制作29話