ノンマルトの使者
第42話
ウルトラセブンでいちばん好きな作品を聞かれると、私は『ノンマルトの使者』と答えることにしています。アンヌが出ずっぱりで活躍するし、リゾートファッションなど、自由な服が着られたからです。私服で出演するときはほとんど自前と記憶しています。このときも自前で、帽子をかぶったり、いろいろと工夫しました。」(ひし美ゆり子、※2)


アンヌ自身の好きな、アンヌの代表作ですので、シナリオを再録します。
このシナリオは決定稿ですが、完成作品とは異なる部分もあります。





SCENARIO



(F・I)
1:海上
      海底開発基地センターの船上基地になっている"シーホース号"が停泊している。

2:その船内・一室
      インターホンで海底基地に連絡をとっている係員A。
係員A  「こちら船上基地、コンプレッサー快調に回転中。気圧・エアは順調か?」

3:海底基地
      ドーム型の開発センター。
      シーホース号とサマザマなパイプで繋がれている。

4:その一室
      ガラス張りの窓の向こうは、神秘な海底世界である。
      係員B、計器をみながら応答している。
係員B  「気圧2、エア良好」
係員Aの声「了解(くだけて)おい、田村めしは食ったか」
係員B  「食った食った。カレーライス2皿、パイナップルの缶詰、干ブトウ…めしはうまいし、海はきれいだ。
       交通地獄の地上とはおさらばして、このまま海底人間になりたいよ」
係員Aの声「テストが終わったら、いよいよ本格的な作業が始まるんだ。調子に乗りすぎて下痢するなよ」
係員B  「了解、了解」
      係員C、さっきから大きな魚とにらめっこしている。珍しそうにこちらを見ている魚。
係員C  「この野郎、邪魔物が来たって顔してやがる。刺身にして食っちまうぞ」
係員B  「相手だって、お前さんを人間バーベキューにして食いたいなんて考えているかも知れないぜ」
      二人、笑いながら海底を眺める。
      群生する海草。
      その間を目も綾な色とりどりの魚群が泳いでいる。

N  A  「海底−それは、我々人類の第二の故郷である。そこには、豊かな地下資源と食糧が無限に隠され
       ている。人類は、今、宇宙開発と共に、海底の開拓を着々と進めている。やがて、理想的な海底都
       市や海底牧場が生まれ、地上よりもすばらしい世界が出来上がるだろう」

5:海岸
      子供の足が波打ち際を走ってくる。
      その足が止まる。
      そこに若い女の首がころがっている。
      子供、すきとおるような無垢な瞳で見降ろす。
子 供  「お姉ちゃん」
      首がパチっと目をひらく。
      砂に首までうまったアンヌである。
子 供  「お姉ちゃん、ウルトラ警備隊の隊員だろう」
アンヌ  「……」
      うるさそうに目を閉じる。
子 供  「だったら、あれ、やめさせた方がいいぜ。ウルトラ警備隊が注意したら、きっときいて呉れると思うん
       だ。僕、もうずいぶん前から、やめろ、やめろって言ったんだけど、ちっとも聞いてくれないんだよ」
      アンヌ、仕様がなく起き上がる。
アンヌ  「うるさいわねぇ。あれ、あれって、何によ」
子 供  「あれだよ」
      と指さす。
      沖にシーホース号がみえる。
アンヌ  「あれがどうかしたの?」
子 供  「困るんだよ。すぐやめないと大変なことになるよ」
      ダンが海から上がってくる。
子 供  「ね、頼んだぜ、ホントだよ」
      子供、逃げるように走る。
      アンヌ立って見送る。
アンヌ  「変な子……」
ダ ン  「どうしたんだい?」
アンヌ  「海底開発センターのシーホース号が大変なことになるんだって……」
ダ ン  「大変なことって?」
アンヌ  「よくわからないわ」
      ダン、タオルで塗れた体を拭きながら、
ダ ン  「海底の開拓は宇宙の開発よりも身近なテーマだよ。何が大変なものか」
      二人、乗用車の方へ向かう。
      と!
      沖のシーホース号が、突然轟音と共に爆発炎上する。
      愕然となる二人。
      シーホース号、徐々に沈んで行く。
      と、波間に黒い潜水艦のようなものが現われる。
アンヌ  「あれは……?」
ダ ン  「……!?」
      ダン、乗用車の方に走り、ビデオシ―バーを取る。
ダ ン  「モロボシより作戦室へ…作戦室応答願います」

6:基地・作戦室
      無線機の前のキリヤマ。
キリヤマ「どうした?二人ともクラゲにでもさされたのか?…(緊張)何ッ!?シーホース号が沈没!?…」
      フルハシ、ソガ、アマギ集まる。
キリヤマ「よし判った。すぐ帰って来い。フルハシ!ハイドランジャー出動スタンバイ!」
      フルハシたち三人、ヘルメットをつかんでとび出す。

7:防衛軍・海底基地
      ハイドランジャーが発進する!

8:海底
      ハイドランジャー、岩かげから姿をあらわす。

9:ハイドランジャー内部
      フルハシ、アマギ、ソガ、海底に目を向けている。
フルハシ「おい、みろ!!」
      三人、のり出すように眼下を見る。
      みるも無残に破壊された海底開発センターの様相。
      フルハシ、無線のマイクを取る。
フルハシ「ハイドランジャーより作戦室へ……」

10:基地・作戦室
キリヤマ「全滅!?……」
      呆然となるキリヤマ。
      ダンとアンヌが入ってくる。
アンヌ  「隊長、シーホース号が沈没する時、潜水艦のようなものを……」
キリヤマ「潜水艦?間違いないか」
アンヌ  「一瞬のことで、ハッキリみたわけじゃないんですけど…」
キリヤマ「似てたのか?」
アンヌ  「そんな感じが……ねぇ、ダン」
ダ ン  「それより隊長、爆発の一寸前に事件を予告してきた子供がいるんです」
キリヤマ「予告!?」
アンヌ  「妙な子なんです。やめさせろ、やめさせろって……」
キリヤマ「顔は憶えているのか?」
アンヌ  「ええ、左の頬に小さなホクロがありましたわ。近くの漁師の子供だと思うわ」
キリヤマ「よし、その子を捜すんだ」
アンヌ  「はッ」
      ダンとアンヌ、出る。

11:漁村の道
      アンヌが漁師にたずねている。
      ポインターの中で、ダンがみている。
      首をふる漁師。
      アンヌ、戻ってくる。
(O・L)

12:浜
      漁師たちが、漁網を干している。
      ダンとアンヌ来てたずねる。
      漁師たち、首をふる。
(O・L)

13:走るポインター
アンヌ  「そうだわ、学校できけばすぐわかるかも…」

14:学校・校門前
      教室から子供たちの歌が流れてくる。
      ポインターが来てとまる。
      アンヌ、下車すると校門に入って行く。
(O・L)

15:基地・作戦室
      隊員たちが全員そろっている。
アンヌ  「授業中で駄目だったわ。後で連絡を呉れることになっています」
キリヤマ「ご苦労」
ダ ン  「(フルハシに)生存者は?」
フルハシ「船と海底基地の係員が、たった二人だけ奇蹟的に近くの病院へ収容されたよ」
ダ ン  「会って来たんですか?」
フルハシ「ああ」
ソ ガ  「突然のことで原因は全く判らんそうだ、彼等にも…」
アマギ  「シーホース号の係員が、その子供のことをうわごとのように言っていたよ」
ダ ン   「……?」
アマギ  「あの子が、何かを知ってるって……」
      そこへマナベ参謀が、小型テープレコーダーを持って入ってくる。
マナベ  「先っき、長官のところに、子供から妙な電話がかかって来たんだ。録音したものだ」
      とテーブルの上に置いてスイッチを入れる。隊員たち、囲む。
子供の声「海底はノンマルトのものなんだ」
マナベの声「そのノンマルトって何だい?」
子供の声「人間が、海底を侵略したら、ノンマルトは断然闘うよ」
マナベの声「坊や……」
子供の声「ねぇ、長官にちゃんと伝えておくれよ。海底はノンマルトのものだから、侵略したりすると、大変なこと
       が起こるよ」
      ガチャンと受話器がはずれる音。
マナベの声「坊や!坊や!……」
      参謀、スイッチを切る。
アンヌ  「あの子の声だわ」
キリヤマ「ノンマルト!?何のことだ」
      フルハシ、笑う。
フルハシ「嘘っ八で言ったところが偶然にも、本当に起こったんで、調子に乗ってるんだよ、きっと」
ソ ガ  「近頃の子供ならやりかねんな」
フルハシ「大体、事件そのものが、故意なのか、事故なのかハッキリしないんだ。こんな悪質な子供のイタズラ
      電話なんか気にすることないよ」
      ダン、考え込むように離れる。
      リングマスターが鳴る。
      ソガ、取る。
ソ ガ  「はい、こちら作戦室……一寸お待ち下さい。アンヌ……」
      と渡す。
アンヌ  「友里ですが……ああ校長先生。先ほどはどうも……えっ……そうですか…はい、すぐうかがいます
       ……では、後ほど…」
      と切る。
アンヌ  「みつかりそうよ、その子……」
ダ ン  「行こう!」
      二人、とび出して行く。
フルハシ「無駄だと思うがね」

16:走るポインターの中
      ハンドルを握るダン。ジッと何か考え込でいる。
アンヌ  「どうしたの、ダン?」
ダ ン  「いや、何でもないよ(と明るく)」
      が、ダンの顔はすぐ固くなる。
ダ ン  「(内心の声)ノンマルト!僕の故郷M78星雲では、地球人のことをノンマルトと呼んでいる。ノンマルト
       は人間のことである。それはどういう意味だろうか。人間でないノンマルトがいると言うのか?」

17:小学校・校長室
      ホクロのある子供が立っている。
      ダン、アンヌ、校長がいる。
      アンヌ、校長に首をふる。
校 長  「はい、御苦労さん」
      子供、出る。
校 長  「はい、次……」
      ホクロのある子が入ってくる。
アンヌ  「ちがいます」
校 長  「はい、次……」
      別の子供が来る。
アンヌ  「ちがいます」
校 長  「次の子……」
      子供、入ってくる(大きすぎるホクロ)
      アンヌ、笑って首をふる。
校 長  「はい、次……」
      子供、入ってくる。
      これもちがう。
校 長  「はい、次……」
      女の先生が顔を出す
先 生  「校長先生、もう、しまいです」

18:校庭
      ガッカリして出てくるダンとアンヌ。
アンヌ  「変ねぇ、この附近の子じゃないのかしら…」
ダ ン  「あるいわね」
アンヌ  「妙だわ」
      二人ポインターに乗る。

19:海岸沿いの道
      走ってくるポインター

20:走るポインターの中
      海の方をみているアンヌ。
      アンヌ、ハッとなって。
アンヌ  「ストップ!ストップ1」
      ダン、とめる。
アンヌ  「あの子……?」
      と車を降りる。
      向うの岩場に子供の後姿。
      アンヌ、走る。ダン追う。

21:海岸・岩場
      子供が海に向って立っている。
      アンヌ、そっと近づいてくる。
アンヌ  「君」
      子供、ふり返る。
アンヌ  「やっぱり!……随分さがしたわよ。君、名前なんて言うの?」
子 供  「真市」
アンヌ  「そう。ねえ、真市君、なぜ、海底開発センターがこわれてしまったの?」
真 市  「ノンマルトが怒ったのさ」
アンヌ  「なぜ?」
真 市  「海底はノンマルトのものだもん!」
      ダン、近くの岩かげで二人の対話に耳をかたむけている。
アンヌ  「ノンマルトって何んなの?」
真 市  「本当の地球人さ」
アンヌ  「地球人??」
真 市  「ずっとずっと大昔、人間より前に地球に住んでいたんだ。でも、人間から海に追いやられてしまった
       のさ。人間は、今では自分たちが、地球人だと思ってるけど、本当は侵略者なんだ」
アンヌ  「人間が、地球の侵略者ですって?」
真 市  「……」
アンヌ  「まさか……まさか……」
真 市  「(真剣な表情)………」
アンヌ  「君……ノンマルトなの?」
真 市  「人間はずるい、いつだって自分勝手なんだ。ノンマルトを海底から追いやろうとするなんて……」
アンヌ  「バカね。真市君は人間なんでしょ。だったら人間が人間のことを考えるのは、当然のことじゃない。
       海底は私たちにとって、大切な資源よ」
真 市  「でも、ノンマルトには、もっともっともっと大切なんだ!!」
アンヌ  「わたしは人間なんだから人間の味方よ。真市君もそんなこと言うべきじゃないわ!」
      真市、怒りの目でアンヌを見る。
      ダン、岩かげからとび出す。
      ハッとなる真市。
ダ ン  「真市君!」
真 市  「人間がやるんなら、ノンマルトもやるよ。僕知らないからね!」
      真市、海にとび込む。
      ハッとなるダンとアンヌ。
      少年はなかなか浮かび上がってこない。
      不審そうに顔を見合わせる二人。
      ダンのビデオシーバーが鳴る。
ダ ン  「はい、こちらダン!」
キリヤマの声「キリヤマだ!城南大学の海底探検部の船が襲われた!すぐ戻れ!」
ダ ン  「了解!」
      二人、走る。

22:基地・ホーク1号の中
      フルハシとアマギがイライラしている。
      ダン、とび込んでくる。
フルハシ「発進!!」

23:基地・全景
      発進するホーク1号。
      キリヤマ、ソガ、イライラしている。
      とび込んでくるアンヌ。

24:ハイドランジャー・内部
キリヤマ「発進!!」

25:海と空
      あまり大きくなく"くろしお丸"に八本足の蛸と亀をミックスしたような海の怪物がからみついている。
      成る程、背中の感じは一見潜水艦のようである。
      怪物、"くろしお丸"をかかえ込んでのしかかる。
      飛来するホーク1号!

26:その機内
フルハシ「ノンマルトって奴のことか!」
ソ ガ  「船が危ない!攻撃準備!」
ダ ン  「準備よし!!」

27:海と空
      ホーク1号低空、怪物の甲羅に集中攻撃を浴びせる。
      足をバタバタやって暴れる怪物。
      船から離れて海底に逃げる。

28:海底
      怪物を追うハイドランジャー。

29:ハイドランジャーの中
キリヤマ「ミサイル発射!」
      ソガ、ボタンを押す。

30:海底
      ハイドランジャーからミサイルがとびだす。
      怪物の周辺で爆発!
      怪物、驚いて浮上する。

31:海と空
      怪物が浮上して来たところ、ホーク1号がビーム攻勢に出る。
      (幾度かくり返して)足が吹っとぶ怪物。次々に……。

32:海底
      怪物、泡をふきながら、海底深く沈んで行く!!
(深いO・L)

33:基地・作戦室
      隊員たち、帰ってくる。
フルハシ「やれやれ、人騒がせな事件もこれで落着というわけだ!」
ソ ガ  「コーヒーでもいれるか」
フルハシ「おお、頼むよ」
      ソガ、消える。
アマギ 「海底怪獣ノンマルトを生け獲りにして水族館に持って行けば、ひと稼ぎできたのに、おしいことしたな」
      笑い。
キリヤマ「これで海底の邪魔物も消えた。アマギ、報道班に連絡、テレビ、新聞、ラジオでニュースを流すよう要
      請してくれ」
アマギ 「はい」
      と、リングマスターを取る。
      マナベが入ってくる。
マナベ  「アマギ、一寸待った!今、例の子供から連絡があってね。ウルトラ警備隊がやっつけたのは、ノンマ
       ルトではなく、怪獣ガイロスだというんだがね」
キリヤマ「何ですって!!するとまだノンマルトは……」
マナベ  「その子の言によれば、ノンマルトは遂に原潜グローリア号で、地上攻撃を開始することになったと…」
キリヤマ「グローリア号!」
アマギ  「二ヶ月前、太平洋岸で行方不明になった英国の原子力潜水艦です」
ダ ン  「参謀、その子は?」
マナベ  「電話をかけて来た場所が判ったんで、隊員が急行したよ。今頃、つかまえた頃だろう」

34:岩場
      逃げてくる真市。
      追う二人の防衛隊員。
      反対側からもう一人の隊員があらわれ、鋏みうちにする。
      真市逃げ場を失う。
      その時、岩陰から筒のようなものが現われて、ビームが発射される。
      次々に倒れる隊員たち。
      向うにポインターがとまる。
      と岩陰から顔を出すノンマルト!恐ろしく怪奇な顔!
      ダンとアンヌが走ってくるのをみて、ノンマルトは海にとび込んで消える。
      いつの間にか真市の姿もない。
      ダンとアンヌ来て、隊員たちの死骸をみる。
アンヌ  「レーザーでやられているわ」
ダ ン  「レーザー?あの子、やっぱりノンマルトだったのかな」
      二人、辺りを見回す。
      アンヌ、隊員がやられた旨、基地に連絡を取る。
      その時、沖合いの海が急激に波立ち騒ぎ始める。
ダ ン  「アンヌ!」
      海面から浮上してくる原子力潜水艦。
アンヌ  「グローリア号だわ!」
      全貌を現わすグローリア号。
ダ ン  「(ビデオシーバー)モロボシより作戦室へ…」

35:海
      グローリア号、艦首を陸に向けると、一斉にミサイルを発射する。

36:漁港と町
      吹っとぶ停泊中の漁船。民家、山。

37:基地・作戦室
      大騒ぎ。隊員たちあわただしい。
キリヤマ「ホーク1号出動スタンバイ!」
フルハシ「糞ッ!一体どうなってんだい!」
      ヘルメットをつかんでとび出す。
      つづく、アマギ、ソガ。

38:海岸
ダ ン  「アンヌ!君は向うの岩陰に!」
      アンヌ、走る。
      炸裂する砲弾!
      ダン、別の岩陰に走る。
      沖合いのグローリア号、攻撃を続けている。

39:グローリア号・艦内
      ノンマルトが三人。
      ミサイルのボタンを押している。
      突然、艦内が大きく揺らぐ、爆発音。
      慌てるノンマルト達!

40:海
      ホーク1号が攻撃しているのだ。
      グローリア号、ホークに反撃!
      ホークの尾翼が火を吹く!

41:岩陰
      ダン、ハッとなって、ウルトラアイを出し着眼しようとする。
      その時、真市が現われる。
ダ ン  「君!」
真 市  「ノンマルトは悪くない!人間がいけないんだ!ノンマルトは人間より強くないんだ!攻撃をやめて!」
      ダン、別の岩陰に走り、着眼しようとするが、目の前にまた真市が立っている。
真 市  「早くとめて!ノンマルトがやられちゃうよ!ノンマルトが可哀そうだ!とめて!とめて!」
      ダン、別のところへ逃げる。
      真市、牛若丸のように、ダンの前に立っている。
      砲弾の音、激しい中で、対じする二人。
真 市  「ウルトラ警備隊のバカ!!」

42:海と空
      火を吹くホーク1号。

43:ホーク1号・機内
フルハシ「ガンマー号を捨てる、ソガ!君はα号へ、アマギと僕はβ号に移る!」
      三人、機内を出る。

44:海と空
      分離するホーク1号。ガンマー号、燃えて海に落下する。
      α号、β号、二面からグローリア号に集中攻撃!
      グローリア号、潜航する。
      と!?例の怪獣ガイロスが再びあらわれ、こちらに向って来る。

45:岩陰
      アンヌ、驚く!
      ガイロス、どんどん陸に向って移動。

46:別の岩陰
      目に涙を浮かべて、ダンをみる真市。
      ガイロスが向ってくる。
ダ ン  「真市君!僕は闘わなければいけないんだ」
      そういうと、真市の目の前で、ウルトラアイを着眼する。
      セブン登場!

47:海
      ガイロス、浜に向ってくる。
      上空から落下するセブン。
      八本足のガイロス対セブンの決闘が始まる。

48:海底
      逃げるグローリア号!
          × × ×
      遥か離れてハイドランジャーが追跡している。
          × × ×
      逃げるグローリア号!
          × × ×
      追うハイドランジャー!

49:ハイドランジャーの中
      キリヤマと防衛隊員数人。
      キリヤマ、オシログラフをみている。
キリヤマ「目標、南西15度!深底200!」

50:海
      ガイロスにからみつかれて、海面から消えるセブン!
      上空をとぶ、ホーク・α、β号。
      ガイロスの甲羅が浮かび上がる。
      α、β号、甲羅に集中攻撃を浴びせる。
      逆転して、セブンが上になる。
      蠢めく八本の足!
      セブン、アイスラッガーを取り、その足を切断する!

51:ハイドランジャーの中
防衛隊員「敵艦発見!距離1200!」
キリヤマ「ミサイル発射用意!」

52:海底
      逃げるグローリア号。
      ハイドランジャーから発射されるミサイル!
      連続的に射ち出される。
      グローリア号に命中する。

53:グローリア号・艦内
      火が吹き出る。
      倒れるノンマルトたち!

54:海底
      グローリア号、大爆発。海底の藻屑と消える。

55:ハイドランジャーの中
防衛隊員「隊長、あれは何でしょう!」
      眼下の海底に、ノンマルトたちの海底都市がみえる。
キリヤマ「ノンマルトの海底都市!」
      円形の建物が繋がり、海草が林のように繁茂している。
      そこは、海底の別世界である。
キリヤマ「(内心の声)もし、宇宙人の侵略基地だとしたら、ほうっておくわけにはいかん…我々人間より先に地
      球人がいたなんて……そんな莫迦な……やっぱり攻撃だ」
防衛隊員「隊長……?」
キリヤマ「攻撃して帰ろう!」
防衛隊員「(復唱)攻撃準備!!」

56:海岸
      セブン、ガイロスの残った足をつかんでふり回し、陸の方に投げる。
      円盤のようにとぶガイロス!
      砂浜に落下する。
      甲羅が息づいていたが、やがて動かなくなる。
      見降ろすセブン。
      やがて空に消える。

57:海底
      海底都市が次々に粉砕される。
      ハイドランジャー、攻撃を続ける。
      壊滅するノンマルトの都市!

58:ハイドランジャーの中
キリヤマ「ウルトラ警備隊全員に告ぐ!ノンマルトの海底基地は完全に粉砕した。我々の勝利だ!海底も我々
      のものだ!」

59:空
      帰還するα、β号。

60:海岸
      ダン、悩む。
      アンヌが走ってくる。
アンヌ  「ダン!無事でよかったわ。早く帰って乾杯しましょうよ」
ダ ン  「うん……」
      その時、声!
      「ウルトラ警備隊のバカ!!」
      二人、ハッとなって声の方をふり向く。
      岩の上に、幻のように立っている真市。
      真市、怒りにふるえて叫んでいる。
真 市  「ウルトラ警備隊のバカ!!地球はノンマルトの星なんだ!人間こそ侵略者なんだ!」
      真市、岩をとび降りて、砂浜の方に走る。
      ビデオシーバーをみつめるダン。
キリヤマの声「これで、再び海底開発の邪魔をする者はいないだろう」
ダ ン  「(内心の声)真市君の言った通り、もし人間が地球の侵略者だったとしたら、ウルトラ警備隊の一員と
       して働く僕は、人間という侵略者の協力をしていることになる……だが、ノンマルトは本当に地球人
       だったのか?」
      ダンとアンヌ、走る。
      二人、広い砂浜にでてくる。
      だが、真市の姿はどこにもない。
      そのかわり、一人の婦人がうずくまっている。二人、近づく。
      婦人、小さな墓標に花をそなえている。
      ジッとみつめる二人。
ダ ン  「失礼ですが、海底開発センターの遺族の方ですか?」
婦 人  「いいえ……(立つ)この土地に避暑に来て、息子を亡くしたものです。もう二年になりますわ。今日が
       命日なものですから…」
アンヌ  「まあ……」
      と、墓標にきざまれた文字を見る。
      真市、安らかに……
アンヌ  「真市!」
      ダンも驚く。
      棒をのみこんだようになる二人。
      海に絶唱が流れる。
婦 人  「海の大好きな子でした。私も、海のように広い心をもった男の子に育ってほしいと思って、毎年ここに
       連れて来ていたんです…」
      ダン、海をみる。
ダ ン  「真市君は、霊となって、ノンマルトの使者として地上に現われていたのだ」
      広い広い海。
N A  「それにしても、ノンマルトは本当に地球の原住民だったのでしょうか?すべてが消滅してしまった今、
      それは永遠の謎となってしまった」
      花が波に揺れている。
(F・O)









ウルトラヒロイン初の水着公開です。
しかし、水着の前に、アンヌは身体を砂に埋めて顔だけ出しているという、ほとんど砂の上の生首状態で登場します。しかも、生首が映るとカモメが飛び立つというセンセーショナルな画面構成です。あの生首が、まさかアンヌだったなんて…、という感じの登場です。
なぜ、こんな画が必要だったのでしょうか?


「ウルトラセブンでいちばん好きな作品を聞かれると、私は『ノンマルトの使者』と答えることにしています。アンヌが出ずっぱりで活躍するし、リゾートファッションなど、自由な服が着られたからです。私服で出演するときはほとんど自前と記憶しています。このときも自前で、帽子をかぶったり、いろいろと工夫しました。そうです、みんな自分でやったんですヨ。当時は、スタイリストという職業はありませんでしたから。水着姿も、べつに抵
抗はありませんでした。満田監督を信頼してぃたし、私自身もノッていました。ところが、その信頼関係を破るような企みがあったのです。冒頭シーンで砂に埋もれた私に対し、スタッフは先にお風呂に入れと勧めます。旅館の広いお風呂にひとり、私はゆったりと入浴を楽しみました。このお風呂がクセモノだったのです。お風呂の周囲は魚が泳ぐ水槽になっていて、外のスタッフからは丸見え!それを知っていて、私にお風呂を勧めたので
す。」(ひし美ゆり子、※2)
シナリオのシーン5に、「砂に首までうまったアンヌである。」と、記されているので、ロケ現場に着いてから水槽風呂があるのを知って、アンヌの裸見たさに埋めたわけではなさそうです。
ところがシリーズの脚本家:上原正三氏は著作に、「シナリオライター二人、監督とプロデューサーの四人でシナハン(シナリオ・ハンティング)に
出かける。相手はいいところ撮影してもらいたいから最高の部屋、最高の食事で歓待してくれる」(上原正三、※7)と記しております。とすると、ロケ前から宿泊先に水槽風呂が存在していることは認知されていた、ということになりますよね…。ノンマルトはカッパちゃんとカップリングの伊豆半島ロケの作品ですので、シナハンで水槽風呂を見つけたことが、シナリオに反映され、犯行に及ぶ引き金になったのでしょう。


「新宿の酒場"ばっかす"、グラスの氷が溶けてコチンと鳴った。脚本の金城哲夫と私、新しいストーリー作りに頭を悩ます。…(中略)…二人とも段々のって来た…水割りをグイと飲み乾して二人は立上った」(満田かずほ寄稿、「ウルトラセブンSFヒーローの素晴らしき世界」より)

飲みながら盛り上がってきた金ちゃんと満っちゃん…。
「そうだアンヌを…」
「…砂だらけにして」
「先に風呂に入れて…」
「あの辺から覗こう!」
ってことになって、大いに盛り上がったのでしょう…。
…えっ、そんなことないって?
いえいえ、この業界は、大体そんな人たちです…。


#34「蒸発都市」以来、久しぶりの金城哲夫氏の脚本です。
原地球人かもしれない海底人ノンマルトと、地上でこの世の春を謳歌する地球人との摩擦を主題に置いた今回は、正調金城節ともいえる今までの勧善懲悪的ファンタジー路線とは、一線を画した作品に仕上がっており、金城氏が沖縄出身ということもあって、ウチナンチュウ(琉球人)とヤマトンチュウ(日本人)との確執をモチーフとしたともいわれています。


「…ウルトラセブンでは、ひとつにはシリーズに新味を出すために、そしてひとつには前シリーズでの佐々木=実相寺の作風に影響を受けつつ、ネガティブ・アプローチの作品が増えている。つまり、ウルトラセブンに対するドラマチックな問いかけがなされて、単なる勧善懲悪のフレームからかなりはみ出してきている。…(中略)…ウルトラマンでごく正調のヒーロー像をせっせと作りあげてきた金城哲夫ですら、ウルトラセブンでは佐々木=実相寺ばりに、ヒーロー像に辛口の揺さぶりをかけている。そこに登場する海底人たちは、地上の論理を押しつけて海を開発する人間たちとそれに味方するウルトラセブンを侵略者として切々と糾弾するのだった。」(樋口尚文、※8)

「そんなある日、噂の男が企画室にやって来た。TBSの担当プロデューサー橋本洋二だ。
前評判通りというか、小柄ながらきかん気が顔に出ている。テレビ局の人間というより官僚を思わせるスキのなさ、それが初印象。
『隊長は、出動しか言わないのですか?』
いきなりの先制パンチだ。
『はあ?』
金城もとまどいを見せる。局の担当プロデューサーがセリフにまで口出しすることはこれまであまりないことであった。
『キリヤマ隊長のセリフ、出動だけですかね』
『え?』
金城も、橋本が何をいっているのかよく呑み込めない様子だ。
『シナリオに登場するからには、例え通行人であろうとも、その人物なりの人生を背負って登場するわけでしょう』
橋本が切り出す。
『ああ、そりゃ、そうです』
と金城。
『ですから、その時、その場所、その瞬間、その人物にしか言えないセリフがあるはずです』
ウルトラ警備隊の隊長といえども、個人としての人生観や価値観をキチンと持っているはず。
毎回、出動!撃て!それだけ言うのであればロボットと同じではないかというのだ。過去のシナリオ全部に目を通してきたに違いない。確かに、毎回どんなストーリー展開にするか、ど
んな怪獣を登場させるか、そんなことには腐心するが、隊長のセリフについて思いをめぐらせ
た記憶はない。ウルトラQから約三年になろうとしている。書き慣れた私たちは、ついついドラマツルギーの基本を忘れてしまっていた。虚を突かれた思いだった。
『気をつけなければいけませんね。気をつけます』
金城が素直に反省した。
橋本は、円谷プロのこれまでのシナリオ作りを一変させた。シナリオは作家だけで作るものではない。プロデューサーも参加してまとめ上げて行くものだ。それが方針となった。」(上原
正三、※7)

局プロデューサーの交代は、番組改編期にあたる4月に先立って行われます。そうなると、
製作スケジュールから考えると、第3クールあたりから、新プロデューサーである橋本洋二氏の影響を受け始めたと考えられます。

「ウルトラシリーズは、一見ひとつの流れに見えるが、金城哲夫・円谷一コンビに代表される英二直系の作品群と、TBS系の人々がつくった作品群との二路線ができていた。円谷路線を直球に見立てればTBS路線の作品は変化球が多く、それがシリーズに多様性を持たせ
幅をひろげた。作品の特色は担当したTBSのプロデューサーによっても生まれた。シリーズ最初の担当者かこいたかしが怪獣路線を敷き、「ウルトラマン」のコンセプトを決めたが、まもなく管理職になって現場の仕事を三輪俊道にゆずった。おだやかな人柄の三輪はそのコン
セプトを忠実に守って「ウルトラセブン」に発展させ、シリーズをゆるぎないものにした。「ウルトラセブン」のなかごろから加わった橋本洋二は、理論家肌で作品にテーマ性を求めた。その甲斐あって「ウルトラセブン」は十一ヶ月という長丁場をのりきることができたが、橋本の参
加は金城にとって運命的なものになった。」(山田輝子、※6)

玉川大学在学中から、円谷英二氏の知己を得て、脚本家の関谷新一氏に師事した金城哲
夫氏でしたが、師匠と弟子という徒弟制のような間柄でのシナリオ修行では、限られた時間の中で、シナリオを書き上げることが重要視され、テーマ性や深遠さなどはあまり問題とされなかったようです。つまり金城哲夫氏は、作家になるためのではなく、職人になるための
修行をしていたといってもいいでしょう。

「金城は橋本の考えの前に立ちすくむようであった。」(山田輝子、※6)
という金城氏でしたが、
「橋本にいわれるまでもない。」(山田輝子、※6)
とファイトを燃やしたことでしょう。
しかし、「特撮物に感情というテーマを与えようとした橋本洋二の断固たるポリシーは、それがすべての原因とは言えないまでも、金城哲夫の表現者として満たされていなかった部分を突いて、彼を唐突な帰郷にまで追いこむ大きなきっかけとなったにちがいない。」(樋口尚
文、※8)という見方が、金城哲夫氏のセブン終了後半年も経たない突然の帰郷を物語っているようです。

その点、大学できっちりとシナリオ制作の基礎過程を踏んでいた上原正三氏は、橋本プロデューサーと切磋琢磨しながら腕を磨き、金城哲夫氏の帰郷後も東京に止まり、「帰ってきたウルトラマン」「ウルトラマンエース」といった後期ウルトラシリーズのメインライターとして活躍
しました。また上原正三氏に加えて、市川森一氏、佐々木守氏、長坂秀佳氏ら、橋本プロデューサーと時には衝突をしながら仕事をした脚本家たちは、強いテーマ性と熱い人間ドラマを子供番組に持ち込んだ「橋本学校の卒業生」と呼ばれています。





                      










ALIENS&MONSTERS



蛸怪獣:ガイロス
身長:30m
体重:1万t
出身:地球の深海
特技:足を2・3本切られても平気
特徴:タコでぇす!
弱点:ブツ切、酢
※怪獣デザインコンクール入賞作品



地球原人:ノンマルト
身長:1m70p
体重:70s
出身:地球
特技:原潜の操縦
特徴:半漁人ではない
弱点:ちょっと無計画





ACTOR&ACTRESS



大メシ喰らいの海底基地係員に、科学特捜隊のイデ隊員:二瓶正也さんがゲスト出演しています。二瓶さんは東宝所属で、「ウルトラQ」にも3本ほど顔を出していますし、「マイティジャック」「戦え!マイティジャック」にもレギュラー出演して、クラタ隊長やアオキ隊員と共演しました。また、平成セブン「太陽エネルギー作戦」や、映画「ウルトラマンゼアス」にも出演されています。


謎の少年を探しにアンヌが訪れた小学校の校長先生には、天草四郎さん。
なんと本名は、天草紫郎(あまくさしろう)。しかも熊本出身です!





LOCATION



伊豆、弓ヶ浜



EXTRA



いくらシリアスでも、満っちゃんの回だからネ…。

謎の少年の情報を求めて聞き込みを開始するアンヌは、港で、海岸で、精力的に動き回ります。やる気マンマンのアンヌは、セブン始まって以来の快挙です!しかし、超マジアンヌの横では、手持ち無沙汰にしている男がいます…。そう、モロボシダンです。よそ見をしたり、キャッチボールの真似をしたりと、まったくやる気が感じられません。可愛いアンヌがガンバっているのに…。










                        





             「ウルトラセブン」ストーリー再録  第42話「ノンマルトの使者」
              30/SEP/2001 初版発行  31/JAN/2002 第二版発行
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脚本:金城哲夫  監督:満田かずほ  特殊技術:高野宏一  制作41話