リオ+20 報告会 in 京都の概要 平成24年9月15日 於京都府立大学
このホームページに掲載しました概要は、基本的には当日の配布資料を参考にして作成しました。
なお、藤原敬氏のホームページに、京都での報告会を始めリオ+20に関する多くの情報が掲載されていますのでご覧下さい。
http://homepage2.nifty.com/fujiwara_studyroom/
リオ+20 我々の望む未来と森林
また、私(小澤)が京都で、スライドを用いて発表しました資料につきましては、森林環境協働ネットワーク(森協ネット)のホームベージに掲載しておりますので併わせてご覧下さい。(小澤)
発表目次
発表者 小澤普照
発表テーマ 92年リオサミット以降を振り返って
発表者 藤原 敬
発表テーマ リオ+20 我々の望む未来と森林
発表者 山本英明
発表テーマ 京都モデルフォレスト運動の今後の展開
(1)先ず、報告会世話人田中和博京都府立大学教授による本報告会開催の趣旨説明などを含む挨拶があり、以下のテーマと順序で発表が行われました。
報告会開催の趣旨、日程、世話人、後援団体等
発表者 小澤普照(報告会世話人・京都府立大学客員教授・森林環境協働ネットワーク)
20年前のリオサミットの期間中に日本政府・林野庁主催による主要国森林関係者会合がもたれた。
日本側のスピーチについては、大来多佐武郎氏(元外相・熱帯林問題に関する懇談会座長)からもなされた。
この会合でカナダ政府代表からモデルフォレスト運動開始の報告があり、同時に各国に対し協力依頼の呼びかけがなされた。
92
92年リオサミット主要事項
〇森林持続経営のための15項目の原則声明採択
〇アジェンダ21採択「森林減少への挑戦」(第11章)
〇生物多様性条約(署名開始・93年12月発効)
〇気候変動枠組条約(署名開始・94年3月発効)
〇砂漠化対処 (防止)条約(基本的合意・96年12月発効)
以上のほか、次の事柄について説明
〇国連の森林に関する組織強化、国連本部にIPF(森林に関する政府間パネル)が設置され、その後UNFF(国連森林フォーラム)に改組
〇世界の地域別森林の持続的経営のための基準・指標の設定と調査(モントリオールプロセスなど)の実施
モントリオールプロセスとは、93年我が国など12か国(米、加、日、中、露、豪、韓など)が、モントリオール(カナダ・ケベック州)に集まり基準・指標の作成に合意したことに始まる。95年7基準・67指標を採択、事務局は当初カナダ、現在は日本政府(林野庁)が担当、指標は当初の67から現在54となっている。モントリオールプロセスは、世界の森林の49%・温・亜寒帯林の83%をカバーしている
〇その他熱帯林やヨーロッパなどでも基準・ 指標づくりが進められている
〇森林認証の進展があり、2010年時点ではFSC(森林管理協議会)が約1億3千万ha、PEFC(PEFCプログラム)が約2億3千万ha
以下日本の動きとしては、2010年時点でFSC37万ha、SGEC(「緑の循環」認証会議)86万ha
〇97年、第3回気候変動枠組条約締約国会議(COP3)で京都議定書が採択
内容は39の先進国と移行国が90年比で温室効果ガスを第1約束期間の12年まで5%減、日本は6%、米国の批准が得られないなどの問題が生じ、2011年のCOP17(南ア・ダーバン)では13年以降17年または20年までを第2約束期間とすることは合意されたが、我が国は直接参加せず独自の目標を決めて努力することになった
〇木材貿易については批判を浴びていた木材輸入量は大幅に減少
〇CO2吸収源対策としての間伐等の森林整備は精力的に進められてはいるが、簡単に目標達成はできない状況
〇再生可能な木質エネルギー利用への努力
〇ボランティア活動の増加
〇森林・林業の活性化への努力
〇適正な木材利用の推進(公共物への木材利用の促進)
〇森林環境税・エコ政策など地方自治体の動きも活発化している
92リオサミットまでの日本の動き
日本政府による世界の森林持続経営に関する合意形成のための努力はどのように行われたか
〇リオサミット開催の2年前の1990年5月、林野庁長官の諮問機関としての「熱帯林問題に関する懇談会(大来佐武郎座長)より、「21世紀において人類
会議成果としての「横浜森林林業宣言」はリオサミットに向けた91年8月の準備会合で諸外国に紹介された
〇さらに91年9月、パリで開催された第10回世界森林・林業会議において、各国の閣僚・森林専門家と我が国の農林水産大臣及び林野庁長官との意見交換の場で横浜宣言を紹介し、相互の意志疎通を図ることに務めた
〇この後も先進国・途上国間の意見対立は続いていたが、我が国から、アジェンダ21に対する詳細な意見提出を行い、条約策定についても目標を維持しつつも世界森林憲章について内容を含め提唱も行った
〇このようなプロセスを経て、不一致の部分は残ってはいたものの、全体を原則声明というまとめ方に落ち着く公算が大きくなる中でリオサミットを迎えることになった
世界のモデルフォレスト運動の動き
カナダ国内のモデルフォレストの立ち上げ
90年9月カナダではグリーンプランの発表がおこなわれた
具体策としてモデルフォレストネットワークの確立
最初のモデルフォレストはコンペ方式で選ばれることになった
申し込み期限は91年12月、決定は92年6月とされた
94年国際モルフォレストネットワーク事務局の設立
世界各地にモデルフォレストが立ち上がる
日本政府の動き
〇アジア地域のモデルフォレスト立ち上げ資金拠出
1999~2001年まで合計158万1千ドルをFAOに拠出した、この資金により、中国、タイ、フィリピンにモデルフォレストが設立された
高知1996年11月、東京1998年3月、群馬1999年10月、三重1999年3月、山梨2000年10月、秋田2000年10月
京都モデルフォレスト設立のプロセス
〇2002年12月環境省主催の環の国くらし会議を京都で開催、山田知事京都の75%が森林、これを活かすことが温暖化防止の要との発言、会議後小澤に方法論について質問あり、モデルフォレスト運動の存在を話す
〇03年度国土調整費による琵琶湖・淀川流域の国土保全ネットワーク形成調査の実施・調査委員長に小澤が任命される、03年9月小澤 カナダ訪問ベッソー氏に来日を要請、 04年1月ベッソー氏来日、小澤の案内で京都に向かう、山田知事と会見
〇04年京都モデルフォレスト創造事業開始
〇06年3月シンポジウム「北東アジア地域における持続可能な森林マネージメント」開催
〇06年9月社団法人京都モデルフォレスト協会設立発起人会開催
〇06年(平成18年)11月社団法人京都モデルフォレスト協会の設立により本格活動開始
〇07年より国際ネットワークへの加入について打ち合わせ開始
〇08年3月ベッソー氏より国際熱とワークへの受け入れについて連絡あり
世界の持続可能な森林経営及びモデルフォレスト運動の発展に関連しての小澤の行動年表(92年まで林野庁長官として、以後は個人ボランティアあるいは京都モデルフォレスト関係者として)
〇91年世界シニアーフォレスター会議主宰・於横浜
〇91年世界林業会議・パリ開催出席
〇92年リオサミット出席、政府代表代理
〇96年(BC州ヴァンクーバー島モデルフォレスト訪問及び林業大学校などカナダ各地訪問)以降、98年(ハリファックスで開催のモデルフォレスト国際ネットワーク会議に参加及びファンディモデルフォレスト、フットヒルモデルフォレスト訪問)、03年(世界森林・林業大会に出席及び東オンタリオモデルフォレスト訪問
〇中国浙江省の臨安モデルフォレストには2回訪問、講演
〇フィリピン・ウロトモデルフォレストでのワークショップ参加
〇96年以降、高知をはじめ日本で開催された国際ワークショップにすべて参加、高知ではプレゼテーションも行う
〇05年4月小澤京都府参与の辞令受領
〇06年京都モデルフォレスト協会の発足に伴い、同協会顧問に就任
参考図書の紹介
地球サミット及びモデルフォレストについて詳述
93年12月、森林持続についての博士論文を東京大学に提出
〇モデルフォレスト運動論(小澤普照著)
京都モデルフォレスト、世界各国のモデルフォレストの紹介、京都モデルフォレストの発展策等について詳述
〇改訂現代森林政策学(遠藤日雄編著・小澤普照他共著)
行政担当者、学生の皆様、ボランティア活動関係者などにおすすめしたい
2012年5月 日本林業調査会から出版
本日のまとめ
森林や環境の持続はこれからが勝負
京都モデルフォレストもこれからの動きが重要
今振り返れば20年前は関係者が一丸となり情熱を燃やしてエネルギッシュに行動したとが思い出される
大来佐武郎先生を先頭にした支援態勢が素晴らしく、さらにITTO(フリーザイラー事務局長)などによる緊密な協力関係があったことを付け加えたい
発表者 藤原敬 全国木材組合連合会常務理事、ウッドマイルズ研究会
話の構成
リオ+20の目的と概要
191カ国の首脳がサインした「今後の地球の開発の方向」と森林の役割
グリーンエコノミーと森林
持続可能な開発目標と森林
「グリーンエコノミー中の世界」への日本の森林・林業・木材産業からの発信
まとめ 京都モデルフォレストへの期待
国連持続可能な開発会議
United Nations Conference on Sustainable Development
期間 2012年6月20日から22日
リオ・デジャネイロ(ブラジル)
国連加盟191か国等の首脳クラスが参加
各国政府関係者,国会議員,地方自治体,国際機関,企業及び市民社会から約3万人が参加
1992年の地球サミットから20年
二つの目的
持続可能な開発を達成し、人々を貧困から救い出すには、どのようにグリーン・エコノミーを構築すればよいのか、持続可能な開発に向けた国際的調整をどう改善すべきか
The Future We Want「我々の望む未来」
283のパラグラフ
①我々のビジョン、②政治的誓約の確認、③グリーン経済、④制度的な枠組み、⑤行動と点検の枠組(A個々の分野の記述、B持続可能な開発目標)、⑥実施手段
2011年に出版されたTowards a
green Economyより
「環境リスクと生態系の危機を大幅に減らしながら、人類の福祉と公平性を改善すること」、
(UNEP. 2010. Green Economy Developing
Countries Success Stories.UNEP, Geneva)
経済の状況を示す指標であるGDPを転換し、汚染、資源の減少、生態系サービスの低下、天然資源の減少などを反映したものとする必要がある
グリーンエコノミーの考え方は持続可能な発展に置き換わるものではなく、「持続可能な発展は経済制度の転換に大きく依存している」という認識の深まりを示している
政策転換には3つのステップが必要
第1が、環境の価値評価と、自然資源の減耗についての勘定が、経済開発政策と戦略に一体化すること
第2が、環境を保全するための行政が適切な役割を果たすために、有効な情報、助成措置、制度、投資、基盤基盤などが必要であること
第3が、継続する環境悪化、土地の保全、気候変動が、生物多様性や生態系弾力性などに影響を与えていること
「我々の望む未来」の中の森林
284のパラグラフのうち森林は4つのパラグラフ
森林に関する今までの合意を確認する内容、今までのコミットメントをしっかり実践することも、結構な高いハードル
パラグラフ156「全てのタイプの森林に関する法的拘束力を伴わない文書(NLBI)」(2007年UNFF7、2007年12月国連決議)
2015 年までに、①持続可能な森林経営を通じた森林の減少傾向の反転、②森林由来の経済的・社会的・環境的便益の強化、③保護された森林及び持続可能な森林経営がなされた森林面積の大幅な増加と同森林からの生産物の増加、④持続可能な森林経営を実施するための財政措置の増加と ODA の減少傾向の反転」といった期限を切った国際目標が合意
これが首脳レベルの約束として位置づけられたのが今回の宣言文
これが達成され、次のステップとして「大幅な増加」などといった、あいまいな表現でない目標をせっていできるか?
これからのこの目標に向けて成果が上がり、2015年の持続可能な開発目標の中で生かされていくことが重要
持続可能な開発目標と森林
成果文書の中で最も重要な決定事項は2015年までに「『持続可能な開発目標SDGs』の策定」
開発指標としてのGDPが格差の拡大、環境問題の深刻さ等を生じた反省にたち、作成された「ミレニアム開発目標MDGs」の成果を取り込み、先進国も含めたより包括的な指標SDGs作成を目指す
ミレニアム開発目標と森林
1980年代の市場依存主義の途上国開発援助への反省から出発
8つの目標(ゴール)、21のターゲット、60の指標
骨子となる目標は
①極度の貧困と飢餓の撲滅、②初等教育の完全普及の達成、③ジェンダー平等推進と女性の地位向上、④乳幼児死亡率の削減、⑤妊産婦の健康の改善、⑥HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病の蔓延の防止、⑦環境の持続可能性確保、⑧開発のためのグローバルなパートナーシップの推進
複数の分野を包括した数値目標の設定、達成期限を明確にし、透明性のある評価システム、これにむけて基金の設立など具体的な動きになっていることが評価
SDGsの中での森林
グリーンエコノミーに向けての日本の森林・林業の成果
地球環境の側面から木材利用を推進するコンセンサスを明示し、具体的手段を明示
違法伐採問題のための合法性証明木材の供給システムの構築
ウッドマイレージCO2の指標化
京都モデルフォレスト運動
公共建築物等の木材利用促進法
国レベルで、地球環境の側面から木材利用を推進するコンセンサスの査証
「緑を守る」から、「伐採して循環利用」へのステップアップ
民間施設を含めた幅広い公共建築物の規定
さまざまなレベルでの行政計画への期待
違法伐採問題のための合法性証明木材の供給システムの構築
森林法のガバナンスは途上国だけでなく、各国が抱える困難な行政課題
行政だけでなく消費者、業界関係者の協力を得て初めて達成できる
合法性を証明した木材製品を供給できる8600社のネットワークは世界の宝
ウッドマイレージCO2の指標化
林業と消費者の距離が近いことは環境負荷にとって二つメリット
輸送過程の環境負荷を押さえることができる
生産地点の環境負荷と貢献を消費者が直接認定できる
国産材・県産材利用運動が持つローカル化の危険性を地球環境の視点からとらえ直す大切な運動
京都のウッドマイレージCO2の先進的な役割
京都モデルフォレスト運動の情報発進力
リオ+20で各国のモデルフォレスト関係者と意見交換
モデルフォレスト協会に参加しているビジネス関係者の拡がり注目
モデルフォレスト同士の連携の可能性
カナダの企業のアフリカプロジェクトの支援
東アジアのモデルフォレストから世界へ発信
まとめ
持続可能な循環社会構築を展望したリオ+20は十分な成果は上げられなかった面があるが、環境・社会的な公正性と経済の関係を深めたグリーンエコノミーと持続可能な開発目標は重要な問題提起
問題提起を受けて日本国内で目標に向けての森林関係者の努力が必要
日本の経験の共有化も重要なポイント
その中で京都の情報発信力に期待
(4)京都モデルフォレスト運動の今後の展開
発表者 山本英明 京都府農林水産部モデルフォレスト推進課長
構成
1 京都のモデルフォレスト運動
2 モデルフォレスト運動の取組
3 今後の展開方向
カナダのモデルフォレスト
豊かな森林資源の開発 自然環境、住環境の保全
・森林認証制度による規制の枠組み
・持続的な開発と環境保全の両立を支えるパートナーシップ
京都のモデルフォレスト運動
豊かな森林が水を育み 伝統、文化、産業を育み、支える
手入れの必要な森林の増加 森林環境、景観の保全
京都府 一つの対応策
幅広い府民参加による森林づくり運動(森林所有者、企業・団体、府民)
京都モデルフォレスト運動の取組
環境保全に関心の高い 京都の主要企業
京都府森林吸収量認証制度 (温暖化対策条例)
国際モデルフォレストネットワークとの関係強化
世界31カ国、58地域のネットワーク
モントリオール国際経済会議における山田府知事のスピーチ(2012.6.12)
今後の展開方向
京都モデルフォレスト運動の強みを活かす!
〇ゼロからの出発が森林づくり34拠点にまで拡大!(活動フィールド確立)
○森林づくりの応援団、サポーター企業が37団体!(連携の基盤が確立)
○森林づくりへの府民参加が拡大!(府民の力が集積)
年間参加者数は平成19年の4,900人が平成23年には6,000人にまで拡大
展開方向
① 企業・団体の参画による森づくり活動の一層の拡大
② より多くの府民が森づくりに参加できるよう活動の裾野を拡大
③ 活動を通して「人・物」が循環する地域活性化の仕組みづくり
④ モデルフォレスト国際ネットワークとの交流拡大
このため、最終的には、府内のモデルフォレスト森林で、行政、森林所有者、森林組合、企業・団体、NOP等のボランティア組織、府民の皆さんが、「地域の森づくり」をどのように進めるかについて話し合いの仕組みを構築し、共に活動できるような森林としての「モデルフォレスト」づくりを目指してまいりたいと考えております。
また、宣伝となりますが、こうしたモデルフォレスト運動を推進できる林業の技術、公共政策の知識をも持った人材を育成するため、本年4月に京都府立林業大学校を開校しております。
卒業生が、活躍できる森林・林業を、業界の皆様や府民の皆様と一緒に作ってまいりたいと考えております。
今後、国際モデルフォレストネットワークとの関係を強化して、国際交流や国際貢献にまで活動を拡大し、世界の森林環境との関わりを通して日本の、そして京都の森林について理解を深める機会を作ってまいりたいと考えており、現在、具体的な計画づくりに取り組んでいるところです。
お話しが長くなりましたが、私ども、府民の皆さんが、もっと気軽に、もっと楽しく森に入ってもらえるような 京都モデルフォレスト運動として発展させてまいりますので、引き続きご理解ご協力をいただきますようお願い申し上げまして、私からの報告とさせていただきます。ご静聴ありがとうございました。