SW大陸編 プロローグ(嘘含む)

ホルス・バルカン
 玄武の変から早1年。ホルスはここアバダの街でオーザムの庇護を受け、
平日は寺子屋で子供に学問と武術を教え、
日曜は教会で説法師として暮らす毎日である。
「人間は何にでも慣れるものだな」

 流刑を受けて最初のうちは、都で民の為、国の為、軍の為に
働けぬことの無念で寝付けぬものだったが、それもしばらくの間だった。
見かねたオーザムの申し出を受け、
教師と説法師の仕事を引き受けたのがよかったようだ。
 そしてアバダの人は彼に特別な感情を持たずに接してくれた。
都に居た時から教会での説教や奉仕などもしていたが、
彼が昇進するにしたがって、周りが「神火将」と接していたのを
ここでは思いしらされた。
 ここでの扱いは「神火将」ではなく、あくまで「ホルス」である。
そして子供達。子供達は純粋にホルスに懐き、ホルスの話を聞きたがり、
ホルスに武術を学びたがり、勉強から逃げ出した。
 子供達に勉学等を教えるのはホルスの性にあっていた。
元々軍人にはなりたくてなった訳では無いのだ。
謀反の嫌疑を晴らし都に堂々と戻り国の為に働く。
当初はそう思っていたが、1年近くこの暮らしを続けていると
未来の国を担う子供達に、勉学や人生、そして戦いの虚しさを教えるほうが
よほど国の為になるのではないかと思えてきていた。

だが、そんな平穏な暮らしにも終わりが近づいてきていた…

ラスカリーナ・グラフィーヌ
異世界からやって来たラスクだが、この世界の情報屋ともすぐに通じ
追ってる魔神の情報を探している。
そして今日魔神が絡んでいる事件があるという情報を受け取りに
いつもの場所へと向かう。
ラスクはその建物の前に立ち、いつも通り暖簾をくぐって店に入った。
入ってすぐ右手に、踏み台が置いてある。
君は当然のようにソレを手に取りカウンターへ陣取った。
そして君はいつもの様に言う「親父オススメをくれ」
するとオヤジは応えて、「今日は子持ち昆布の南蛮漬けソバでさぁ」
なるほど、子持ち昆布という事は、相手は配下を増殖させられる、
もしくはかなりのカズの配下が居るようだ。
南蛮漬け?ぬ!蛮族か。しかも封印されていると。
ラスクは一瞬でここまで悟るとオヤジに聞いた。
「いい昆布じゃないか、何処の産だ?」
オヤジが困り顔で答える。
「すいませんモノは良かったんですが産地がわからなくて」
成る程、オヤジの情報網を持ってしても封印の場所は特定できないか。
「東の方だとは思うんですがねぇ」
東?あの島の可能性もあるのか。
だが、あの島に足を踏み入れるのはまだ早い。
ここまで聞いたラスクは子持ち昆布の南蛮漬けソバを一気にすすった。
「オヤジお愛想だ。」
「ヘイ!毎度。こちらがお釣りです」
ごちそうさま、そう言い置きラスクは店を出た。
そして紙幣を確認する。
紙幣の間に封書が挟まっている。
これが運命への招待状だ。ラスクは確信し宿へと向かうのだった。

フェランド=プレガディオ
 奇妙だ。蛮族の襲撃はここ辺境西部では、さほど珍しくは無い。
NK2年の対蛮族戦線において、現辺境伯ジャナンドレアが輝かしく
決定的な勝利を収めたとは言え、蛮族自体が滅んだわけではないからだ。
 しかし、辺境西部に赴任してきて2年。この3ヶ月の蛮族の襲撃の
多さは異常だ。週に2度以上のペースで襲撃がある。
 幸い今のところは大きな被害が出ていないが、村人の不安は極限状態
と言ってもいいだろう。
 やっと形になった自警団の人間も負傷者が目立ってきている。
 蛮族の地で何かが起こっているのではないか?それも、人間にとっては
非常に危険な何かが胎動している。
 ジャナンドレアには、さらなる辺境への探査の許可を求める手紙を
送ったが、現在までに返事は無い。
 あの辺境伯が、民の危険を前にして動かないなどと言うことはありえない。
 と言う事は、動けない何かがあるのか?
 疑問を抱いても解決する術は無い。自問自答に飽きて、ふと森の奥に
目をやった時に聞きなれた従兄妹の声がした。
 おかしい。今は危険だし、遺跡の探索はしばらくできないからこちらには
来ないようにと手紙で送ったはずなのだが。
 それとも、来なければいけない何かが起こったのか。
 この3ヶ月の蛮族の襲撃の増加は終わりの始まりか、始まりの終わりだったのか
その答えが得られそうな気がした。

ヨハン=マクドナルド
 オレはデカいヤマを終えて、パタヤのビーチで羽を伸ばしていた。
 久々だ、こんなにくつろいだ気分で過ごす休暇は…。
 ビーチでカクテルを飲みながら、各地で散っていった戦友を偲んでいると、ボーイが追加の
ドリンクを持ってきた。はて?オレは頼んだ覚えはないんだが?
 案の定ドリンクにはメッセージが添えられていた。
 23:00ホテルのスカイラウンジで。か、せっかくの休暇が台無しだ。しかし、羽を伸ばすのも
良いが、やはり鉄火場の方がオレには似合っている。
 何故って?休暇を邪魔されたっていうのに、次なる戦場へ心踊らされているオレがいるからさ。

 23:00キッカリにそいつはスカイラウンジに入ってきた、眼帯に白いスーツを来た初老の男だ。
という事は、内国安全保障室じゃなくて、国家情報統制局のヤツか…。
 適当に飲み物をオーダーした後、ソイツは唐突に切り出した「トラウトマン大佐が行方不明だ。
蛮族に捕まった可能性がある」オレは飲んでいたドライ・マティーニを盛大に噴出すところだった。
 トラウトマン大佐が、蛮族にねぇ…。そりゃあ、あのオッサンは何処でも捕まるヤツだが、
よりにもよって蛮族にか…。
 「詳しい話は、おってする。今は一刻も早く首都へ向かってくれ」
 ヤツのこんな逼迫した表情を見るのは久々だ。コトがそんだけ大きいってコトか。
 オレは最後に確認する「なぁ?アークエンジェル、捕まったのは確かにトラウトマン大佐なんだな?」
ヤツは力強く頷いて「あぁ、そうでなければ、私がこんなところまでワザワザ足を運ばんよ」
 さて、面倒なコトになった。オレ達の中でトラウトマン大佐と言えば有名人だ。余人がいるところで
大っぴらに任務の話ができない、非常に重大な局面であるということのカバーネームだからだ。
 つまり、これは、アルタール1国に留まらず、世界が逼迫しているというコトか。
 これは、とっとと首都に向かったほうが良さそうだ。
 さらばパタヤビーチ。今度来るのは何時になることかね。