2003年1月〜12月のバックナンバー


第10便     関西の顔 「新快速」   東海道本線京都発



関西鉄道界の花形と言えば、あなたは何を連想されますか? 
ひかりレールスターだったり、近鉄ビスタカーだったり、それは人によって実に様々でしょう。
しかし私の独断と偏見であえて選ばせてもらえば、それはもう新快速しかありえません。
あらゆる意味で、この列車は東京とは独自の世界を形成する関西の象徴だと思えるゆえです。
まずは、その利便性の高さ。
大阪発着時間帯は午前6時に始まり、何と23時台まで続きます。
特に日中は完全15分ヘッドのパターンダイヤで、平日にはそのパターンは21時台まで崩れません。
日中の大阪発着時刻は上り、下りともに毎時0、15、30、45分という分かりやすさです。
次に、その速達性。
名車221系を発展させた後継車両を投入し、時速130キロ運転を開始することにより、
大阪ー京都間で停車駅が以前より二つ増えたにもかかわらず、
同区間の所要時間をノンストップで走っていた時よりも何と2分も短縮して、わずか27分で駆け抜けます。
さらには、その快適性。
座席は二人がけの転換クロスシートが主流で、
扉口のスペースを広くとって引き出し式のシートを配し、着席定員を増やすという芸の細かさです。
そして、最後に経済性。
これらのサービスを受けるのに、特別料金は要りません。乗車券のみでOKなのです。
快速だから当たり前といえばそれまでなのですが、この列車は普通の快速の概念をはるかに越えています。
鉄道における移動の利便性、速達性、快適性はいずれもすべて関西が上回ると私は思っていますが、
新快速はまさにその象徴といっていいでしょう。
最近新快速の利用客がとみに増え、編成も以前より長くなった新快速は
関西の底力を見せつつ、今日も京阪神を時速130キロで疾走しています。

                         2003年1月11日  第10便   東海道本線京都発


第11便  デフレの申し子「ひかりレールスター」       
                         東海道新幹線新大阪発 



昨年の8月、初めて「ひかりレールスター」に乗ってきました。
「現在、乗降客がやや減少中」とも伝えられる山陽新幹線の中にあって、比較的好成績を残していると言われる列車だけに、
ひそかに期待していたものがありましたが、その期待に違わぬ質の高い走りに魅了されました。
11月に九州へ行った時に、行きはもう今はなき100系ひかり、帰りはレールスターを乗り比べてさらにはっきりしたのですが、
加速減速の時の前後の揺れがほとんどなく、スムーズに最高速から低速まで速度が変化するさまは感動ものです。
バブル絶頂期の新幹線を支えた100系は久しぶりに乗ってみると、加速の時には引っ張られるような、
また減速の時に突っ込むような車体の揺れが感じられました。
それに比べれば、レールスターの走りの快適性は抜群です。
しかも指定席は中央通路を挟んで左右に2列の座席が並ぶ横4列で幅も広く、リクライニング角度も深い重厚な座席です。
また新大阪〜博多間の所要時間は、のぞみより十数分遅いにすぎません。
なのに、料金は普通のひかりと同じです。
しかも自由席があるので、さらに安く行くこともできます。
ビジネスシートやサイレントカー、普通個室など、車内設備も多様です。
編成が8両と短いので、ホームでの移動が少なく済むことも助かります。
まさにいいことづくめ、なのです。
この列車のコンセプトは、要するに
「のぞみほど速くはないが、普通のひかりに乗るよりは速くて快適で、値段も同じ」
ということなのでしょう。
速さを追い続けた新幹線の歴史が一段落して、それ以外の価値観を前面に初めて出した列車と言う意味では、
レールスターは新幹線史の転換点ともなる歴史的存在と言えるのではないでしょうか。
考えてみれば、16両ものフル編成をすべて指定席にして最高速で走り続ける「速けりゃ何でもいい」のぞみは、
経済効率至上主義の高度成長期の日本が最後に行き着いた姿を表しているとも言えます。
その意味では、少し時代にそぐわない感がしないでもありません。
それに対してレールスターは、ちょっと位遅くてもゆとりと安さを選択する低成長デフレ時代の申し子とも言えます。
自由席や様々なサービスを盛り込み、停車駅を増やし、8両のハーフ編成で乗客の多様なニーズにきめ細かく対応しようとする
この列車の姿は、価値の多様化とデフレが進行する現代日本の今後あるべき姿の一つを示しているように思えてなりません。
一つの絶対的基準への従順から多様な価値の選択へ、また限定的な価値の極限までの追求よりもバランスのとれた
全体的な価値の享受へと、日本の市民社会の成熟の座標軸を先取りしつつ、今日もレールスターは山陽路を快走しています。


                        2003年2月15日  第11便  東海道新幹線新大阪発


第12便    生き返ったローカル線   東海道本線京都発



写真は、京都駅に停車中の特急「スーパーはくと」です。
京都・大坂から鳥取、倉吉へと向かう陽陰連絡特急です。
登場以来、多くの乗客の好評を博したため、今秋のダイヤ改正で増発とスピードアップが図られ、さらに便利になりました。
大坂ー鳥取間の所要時間は全便2時間30分を切っています。
同区間を走る高速バスの所要時間が3時間10分なのに比べ、かなり速いです。
鳥取にはまだ高速道路が開通していないという事情が鉄道側に有利に働いているようです。
昔、大阪から鳥取へは福知山・播但線から山陰本線経由で4時間ほどかかっていました。
しかし、山陽本線の上郡から因美線の智頭までストレートに北上する智頭急行が開業したことで、所要時間は劇的に短縮されました。
もともとこの智頭急行は国鉄智頭線として建設されていましたが、
赤字問題で建設がストップしていたものを別経営の会社線として開業させたものです。
JR西日本はこの智頭急行に目をつけ、ここに特急を乗り入れさせることで
鳥取への短絡ルートとしてのかつての智頭線の構想を実現させることに成功したのです。
建設途中でストップしているローカル線の有効活用として最も素晴らしい成果をあげた智頭急行の上を
今日も「スーパーはくと」は多くの乗客を乗せて快走しています。

                        2003年12月10日  第12便  東海道本線京都発