2004年8月〜のバックナンバー
第13便
和歌山県の不思議
新大阪(東海道本線)
写真は、新大阪駅で発車を待つ新宮行き特急「スーパーくろしお」号です。
昔の古い車両を改造して、リニューアルしています。
完全新造車両の「オーシャンアロー」号と古い車両のままの「くろしお」号の中間のグレードの特急です。
しかし、この列車の行き先である和歌山県の地図を見ていて気づいたのですが、
和歌山という所は、北部を走る和歌山線をのぞけば、海沿いを走る紀勢本線以外に鉄道がほとんどないのです。
特に内陸部へ向かう線がほとんどありません。
昔は紀勢線から内陸に入る私鉄がいくつかありましたが、それも今は廃止され、
唯一残る南海貴志川線も廃線が取り沙汰されています。
実質的には、和歌山県の鉄道交通は海辺を走る紀勢本線一本に頼っていることになります。
内陸部の公共交通はバスに頼っていますが、それとて少なく、時刻表の地図でも空白が目立ちます。
県庁所在地の和歌山市が西北端に片寄っていることも考え合わせれば、
何ともバランスの悪い構造になっているというしかありません。
三重県境にある新宮市の人が県庁を訪れるには、特急に3時間ほど揺られなければならないのです。
さらに内陸となれば、もっと遠いことでしょう。
江戸時代、紀伊国(今の和歌山県)は和歌山藩紀伊徳川家1家による支配を受けました。
家老たちの城下町もあったのですが、安藤家は田辺、水野家は新宮と、どちらも海岸沿いに留まりました。
内陸に城下町が一つでもあったなら、ちょっとは内陸への鉄道も敷設されていたかもしれなかったのでしょうが・・・。
折りしも、高野山・熊野・吉野を中心とする紀伊半島の内陸部が今年、世界遺産に認定されましたが、
このことによって和歌山県内陸部への関心が高まっています。
海だけではない和歌山の魅力を、この機会を期に、和歌山県は大いにPRすべきでしょう。
それにしても大阪からこんなに近いにもかかわらず、こんなに未開発の内陸部を抱えている和歌山県はある意味、スゴイと言えます。
江戸時代には和歌山藩は石高で全国第5位、和歌山は全国で第7位の城下町でした。
御三家の一つとして、紀伊徳川家からは何人もの将軍が輩出しました。
そうした過去の栄光があるだけに、今の和歌山県の姿はあまりにもそれとはかけ離れているという意味で、
何となく「隠居県」といった感さえあります。
今一度の奮起を期待したいものです。
2004年8月14日 第13便 新大阪(東海道本線)発
第14便
地方の顔 3セク特急
新大阪(東海道本線)
写真は、新大阪駅で発車を待つ「タンゴエクスプローラー1号」です。
ここから北近畿タンゴ鉄道の久美浜まで行く、ディーゼル特急です。
この車両はJRのものではなく、北近畿タンゴ鉄道のものです。
北近畿タンゴ鉄道というのは、旧宮津線を受け継ぎ、新しく開通させた宮福線と合わせて開業した第3セクターの鉄道です。
第3セクターというのは地元の企業や地方自治体などからの出資をもとに経営するもので、北近畿タンゴ鉄道もこれに当たります。
主に第3セクター鉄道は赤字廃止路線を存続させるために、地方がその経営をJRから引き継ぐ形でできたものが多く、
その数は全国で30を越えます。
そのうち、JRから特急が乗り入れるもの(普通列車として乗り入れるものはのぞく)は、
北越急行(新潟)、伊勢鉄道(三重)、北近畿タンゴ鉄道(京都、兵庫)、土佐くろしお鉄道(高知)のみです。
これらは伊勢鉄道をのぞいて、みな自前の特急車両を持っており、これらを略して「3セク特急」と呼ぶのです。
そのうちで、JRとは別形式の独自の特急車両を持っているのはこの北近畿タンゴ鉄道だけです。
北近畿タンゴ鉄道はこの「タンゴエクスプローラー」の他に、「タンゴディスカバリー」という特急も京都まで走らせています。
この二つの列車に使われる車両は、別形式です。
座席の背もたれカバーに丹後ちりめんが使われるなど、郷土色を前面に出したこれらの特急車両は、
いわば、丹後地域の「走る広告塔」だといえます。
ひときわ目立つ独特のデザインで人目を引きつつ、郷土の期待を担いながら、
今日も3セク特急は都会と郷土を結ぶ架け橋として、走り続けています。
2004年9月11日 第14便 新大阪(東海道本線)発
第15便
席配置に思う
郡山(東北本線)
乗り物にとって、席の並び方は乗り心地に直結する大事なものです。
しかし、日本では輸送力の確保のために利用者の快適な移動を制限してしまっている例が多々あります。
ロングシートというのはその最たるもので、プライバシーなどかけらもありません。
写真は東北本線の普通列車の車内を写したものですが、おもしろい席配置になっていて、興味深かったです。
二列ずつ席が同じ方向を向いて、向い合わせに配されています。
そこで、2列ずつ席が前向きと後ろ向きで方向を分け合うことになります。
でも後ろ向きというのは、人間心理から言って気持ちのいいものではありません。
いっそ全部転換クロスシートにしたら、すべての席が進行方向前向きで常に統一されて、スッキリすると思うのですが。
一度フランスで急行に乗った時、車内全体がこのお見合い式でした。
車両の真ん中を境にして、後ろの席は前へ、前の席は後ろへ向けられているのです。
フランス人は平気なようでしたが、私には違和感がありました。
でも、こうしたことは個人的な好みが大きく左右すると思いますので、一概には決め付けられません。
でも私はロングシート車とクロスシート車があれば、クロスシート車に乗ります。
少しでもプライベートな空間を持ちたいですから。
どうして日本ではコンパートメント車が一般に普及しなかったのか、考えてみるのもおもしろいかもしれませんね。
2004年10月9日 第15便 郡山(東北本線)発