1 タキシラヘ
普通列車だと思って乗った列車が急行列車だったり、通過するはずの駅で列車が停まってしまったり、
とこの国の鉄道は実に大らかです。たった一分の遅れでもわざわざお詫びの車内放送を流す
日本の鉄道の異常なまでの正確さはいったい何なのだろう、と思ってしまいます。
自分が小学生の頃からそんな鉄道を相手に分刻みの乗り換えスケジュールをこなして
旅していた人間だけに、そのことを骨身に感じます。
2 温かきトウモロコシ
写真掲載不可。
私も人の子です。30を越えた人間として、このテーマでの写真の掲載には抵抗があります。
皆さんの「惻隠(そくいん)の情」に甘えたいと思います。
3 出会いと別れ
ガンダーラの遺跡群を、英国人男性と一緒に見て廻りました。その彼も、午後の列車で
南部の州へと旅立って行きました。しかしその後も、私は遺跡を一人で見て廻りました。
出会いには人とのものもあれば、土地や物とのものだってあります。人との別れで
感傷に浸る私の心を、これら遺跡との出会いが存分に慰めてくれたのです。
旅人は、一人であっても孤独に陥らずに済むたくさんの味方を持っているのです。
4 融合する文明
このレリーフには西アジア、インド、ギリシアの各文明の造形的特長が見られる
そうです。ガンダーラ芸術は、まさに文明融合のお手本的な存在と言えるでしょう。
こうしたことは、人間についても起こりえます。人間は、文明の作り手です。しかしいったん文明に
属した途端、今度は逆にその文明の色に染められていくからです。
人間にもまた、文明の所産としての一面があるのです。
5 三世の生
朝日に煙るダルマラージカの仏塔を目の前にした時、何だか不思議な感じがしたよ。だって、この塔は
今から2000年以上も前に作られたっていうじゃないか。その間にオイラのご先祖さんが何人死んだんだろう、
なんて思っちまったのさ。こうなりゃ、とても一人ではかなわねえ、てんで、オイラはご先祖さんも未来に生まれる
子孫たちも全部呼び出してきてみんなで手をつないで対抗したらどうだろう、なんてたわいもないことを考える始末さ。
もっとも子孫についてはオイラの種を受け入れてくれる人が必要なんだが、
情けないことにこればっかりはどうしようも自信がないときてるのさ。
あー、無常だね。