第2部第3章1〜6の写真


1 疎外する幻影



これは、ペシャワールでの夕食の風景だよ。白くて丸いのがナーン、細長いのがシシカバブさ。
どちらも植物で編んだゴザのようなものの上に置かれているから、そんなに非衛生的でもないよ。
カバブはうまいよ。ナーンも柔らかくてモチモチしてて、これまた最高にうまいよ。
オイラは気に入ったものなら一ヶ月同じメニューでも構わない性格だから、毎晩これでも充分さ。
道の上に直接皿を置くなんて店は、日本にはそうないだろう。その状況こそが楽しくて、食事もうまくなるのかもしれないな。
舌の感度があまりよくないオイラは、味そのものよりも、むしろ食う時の状況に酔っちまうところがある。
て言っても、味そのものもいいんだよ、ホント。
まあ、オイラはこんな感じで旅してる。旅には決まった形なんてないんだから、これでいいと思ってるよ。




2 ノープロブレムな国



ユースホステルのおじいさんとその愛犬だよ。
ユースホステルカードを作って持っていったら、一泊65円で泊めてくれたよ。その夜はインド系イギリス人と二人でツイン部屋に
寝たから、超お得だった。まあ、僕たち二人の他には誰も宿泊者がいなかったから、じいさんも気を利かせてくれたんだろうな。
夕食も朝食も、このじいさんが一人で作るのさ。じいさんの作るローティーは最高さ。これに甘いチャイがつけば、もうそれで充分だ。
おねだりに来る愛犬君が可愛かったよ。宿に帰ってくると、門前まで尻尾を振って出迎えてくれるのには参ったね。
彼らに会いに行くだけでも価値があると思えるような、そんな宿さ。
(タキシラ)




3 イスラマバード通勤事情



これはバスじゃない、乗り合いタクシーだ。現地ではスズキと呼んでいる。
車から身を乗り出しているのは車掌さんで、「出るぞ、出るぞ。早く乗れ。」ってわめいてるんだ。
スズキで身を乗り出して乗ってる客は見かけなかったけど、バスならあるよ。
というか、オイラ自身がそうだったから、それは確実な日常風景として知ってるよ。
写真の左手奥に小っちゃく写ってるのがバスだ。朝のイスラマバードへ向かうバスの混雑ぶりは、日本の通勤電車よりすごい。
何せ車体の外まで客が乗ってるんだから。オイラは身の危険を感じたから、一計を案じて屋根に上り、
荷台の上で寝ていったよ。バスの屋根があんなに高いとは思わなかった。それほど見晴らしが良かった。
車内の客も、デッキにぶら下がってる客も、そして荷台で寝てるオイラもみんな同じバス賃なんだから、おかしなもんだね。
こうして、オイラは格安の展望付き通勤を楽しんだと言うわけさ。
ところで、上の写真でスズキのフロントガラスの上にある「OH MY GOD」って何なんだ? 別にどうでもいいけど。




4 スポンサー制度の壁



これはイスラマバードを東西に貫く大通り、ナズィームウッディーン通りだ。この道に面した映画館で、
オイラは日本大使館主催の日本映画祭に出くわしたんだ。確か「男はつらいよ」、「しこ、ふんじゃった」、
「私をスキーに連れてって」、「生きる」の4つだったかな。日本人は数えるばかりで、あとはみんなパキスタン人だった。
みんな熱心に見ていたよ。音声は日本語のままで、字幕が英語なのが妙だったな。
おかげで日本にいる時と同じ感覚で映画を見れたよ。
もっとも、アメリカ映画の方が市中の映画館なんかでやっていて、みんな熱狂的に見てたな。
拍手や歓声まで起きちゃうところがいかにも、って感じで結構楽しかった。確か「True Lies」だったかな。
悪役がミサイルに引っかかって爆死するラストは大受けだった。アメリカの最強の武器はハリウッドだ、とその時思ったもんだよ。



5 天使の到来

残念ながら、会話の音声はオイラの技術ではページに載せることができないよ。
愛想のないこったが、今回は勘弁してけろ。
でも日本に住んでる外国人は日本語がウマイ人が多いから、その人から聞けばいいよ。日本人と話すのと
全然変わらないことに気づくはずさ。言葉さえ通じれば人種や国籍なんて軽く乗り越えられる、
とは言わないけど、その日から日常風景が違って見えてくることだってあるかもしれないよ。
つまり、国内にいても異文化体験はできちゃうわけさ。ありがたい時代だね、まったく。




6 壁越えの細道



これは何だって? モスクだよ。イスラマバードってとこは完全計画都市だからそれでなくても整然としてるが、
モスクも近未来志向で、ここまで徹底されるとかえって爽快でもあるよ。このモスクが、パキスタンっていう
国の理念性や複合性を形にしているように思えてならないんだ。オイラはこのモスク、好きだな。
このモスク、サウジアラビアの資金援助で作られたらしいよ。パキスタンは湾岸諸国とも活発に交流してるから、
オイラに湾岸諸国のビザを斡旋してくれるパキスタン人もいるというわけさ。
壁は高いが、それを越える細い道はちゃんとある。そんな道に不意に行き当たるチャンスをくれるパキスタンは、懐の深い国さ。

(イスラマバード)