第2部第5章1〜4の写真


1 インド世界からの脱出



クエッタの名物料理、サッジーを食べに行きました。
羊のモモ肉を串刺しにして炭火で焼いたもので、これがめっぽう美味なのです。
羊肉はサッパリしていて、私は好きです。日本であまり売っていないのが残念です・・・。

この世に「旅人のための国」は客観的にはないと言っていいでしょう。
でも、その人の好みに合えば、そこがその人にとってのウェルカムな国になるわけで、
そうした国を見つけた旅人にとっては、主観的な意味で「旅人のための国」が存在することになるのでしょう。
旅人としてはそれ以上を望んではならないし、また現実にも望み得ないだろうと思います。



2 峠越え



列車が峠のトンネルを抜けると、車窓の右手には大平原が広がっていました。
地平線のあたりは空との境界が定かではなく、そんなほんのりと濁った空気の中で、
まるで大海の中に浮かぶ島々のように、山々が散在していました。
あの地平線のあたりはもうパキスタン領ではなく、アフガニスタン領です。
ホジャック峠。
そこを過ぎると、広い、広い別世界がありました。
多くの旅人の入国を拒んできた国を遠望できる場所がありました。
そんな場所へと運んでくれた列車の運賃は、60円にも届きませんでした。



3 境界の国



チャマンの町の雰囲気は、すでにアフガニスタンの匂いに包まれていました。
明らかにボラーン峠より南のパキスタンとは、雰囲気も道行く人たちの様子も違うのでした。
でも、ここもやはりパキスタンなのです。
一般的なパキスタンのイメージとしてはパンジャーブ人の世界が一番メジャーだろうとは思いますが、
パキスタンにはスィンド人もいれば、パシュトーン人やバローチー人もいます。
パキスタンは他民族国家なのであり、インド、中央アジア、ペルシアという大文化圏の境界に位置する、
極めてユニークな国なのです。この国を一つの枠にはめようとしても、それは政治的に可能なだけであって、
人々の生活レベルで言えば、それは非常に難しい。そうした多様な顔を持つ国、それがパキスタンです。
文明の周辺に位置する国にはえてして、こうした面白い国が多いようです。
あなたもチャマンに行ってみませんか。
(今はちょっと危ないかもしれないけど・・・)




4 帰り道の風景



チャマンの町でバスを見かけました。
派手です。とにかく、派手なのです。
日本の霊柩車をもたじろがせる、このハイ・テンションなノリの良さ。思わず、めまいがしてしまいます。
そのセンスについては評価が分かれると思いますが、とにかくその心意気たるや、天をも突くものがあります。
日本で言うならハイライト(もう絶滅したか?)クラスの大衆タバコに「K2」という恐れ多い名前を簡単に付けてしまう人たちです。
さすがと言う他はありません。
この国には、こんな妙な刺激に満ちた風景がそこらへんに転がってます。
あなたもパキスタン体験しませんか?