第5部第3章5〜8の写真とコメント


ここで寝ました



これは教会に巡礼に来る人たちのための宿泊施設だよ。
泊まるのにお金はいらないそうなんだ。
僕は巡礼者じゃないけど、特別にタダで泊めさせてもらえたよ。
イースター(復活祭)の直前だったから、食事はジャガイモとパン、それに飲み物だけだった。
でも、それで充分だったよ。
それ以上のものを求めずとも、しっかりと心が満たされるような、そんな感じがしたんだ。
(ちなみにここはルーマニア正教の教会なので、イースターは1年で最大の行事なのだそうだよ。)


お手伝いに来てます



教会には聖職者だけじゃなくて、ふもとの村からも村人たちが来てるんだ。
食事や洗濯などを手伝いに来てるようなんだ。
たぶん、無報酬なんだろうね。
この人たちの姿には、ある種シンプルだけど、でも確固とした存在感があるね。
信じるものを一つでも持っている人には、そうでないものを無限大に持っていたとしても、絶対にかなわないよ。
ホント、かなわないよ。


連れてってやるよ



教会から山を下って、ふもとの村からバスに乗ろうと思ったんだけど・・・、
バスが来ない。
途方に暮れてると、この黄色い車が来たんだ。
「シク村か? なら、乗ってけよ!」
てなわけで、車上の人になったのさ。
これ、実は郵便車なんだ。
どうやら郵便物と一緒に、僕も村まで届けてくれるようだね。
道は舗装されてないから、車は大揺れ。
そこを二人乗りの所に三人も乗って行くんだから、車内はおしくらまんじゅう状態だよ。
でも、それを逆に楽しんじゃってる僕らは幸せ者だね。
こうして僕は無事、シク村へ届けられたってわけさ。
そう、章扉でネコにエサやってたあの女の子のいる、あの村だよ。
彼女の家はもうすぐそこだけど、この時はまだ彼女に会えるとは決まってなかったんだ。
教会も、この車も、彼女も、すべての出会いは偶然なのさ。
だからこそ、旅ってやめられないんだよね。


何か、用か?



そう言いつつ、おじさんは何気にポーズをとっている。
頭にかぶったベル型の帽子はこの村の男である証拠。
腹はちょっと出てるが、なかなかにイカシテルぜ、オヤジ!
といっても、言葉が通じない彼には伝えようもない。
フン、と鼻をならして、おじさんはあっちへ行ってしまった。
僕が女だったら、あのおじさんもちょっとは違った態度とるのかな、
などと失礼なことを考えつつ、
僕は村の中へと足を進めるのであった。
(つづく)