みんな、整列!
ここは村の小学校。
学校が終わったのか、子どもたちがゾロゾロ出てくる。
カメラを向けると、
誰かが号令をかけたわけでもないのに、きれいに横一列に整列だ。
さっきのおじさんと同じく、みんな足には色とりどりの長靴を履いてる。
たぶん、ここではそれが普通ってことだね。
家に帰ったら、そのまま農作業でも手伝いに行くのかな。
うん、えらい子たちだ。
などと勝手に感心する僕を残して、彼らは手をつないで家路へとつき始めた。
その目に僕への関心を大いにみなぎらせながら。
僕はスターになった気分だったけど、本当は彼らは僕に何を見ていたのだろう?
笑顔を向け合いながら、私たちの間に流れる沈黙はちょっとつらかったね。
よっこらせ、と
おじいさんが薪を割っている。
そう、この人が彼女のおじいさん。
僕はもう彼女の家の中にいるってわけさ。
おじいさんはさっきからずっとこの作業に没頭してる。
一本、一本ていねいに切り分けては、
出来上がった薪を家の壁の内側に沿って高く積み上げていくんだ。
ここでは家のオーブンも暖房も、みな薪を燃やすことでまかなってるからね。
これは大切な仕事なんだ。
それはいいけどおじいさん、ズボンのチャックがずっと開きっ放しなんだけど。
ああ、全然気にしてないなあ。
僕が気にするのも変な話だけど、気になってしょうがない。
日も落ちてきたし、風も出てきたなあ・・・。
う〜、さぶ。
おじいさん、チャック閉めない?
カラン、コロン
と鈴の音が聞こえてきた。
羊たちのお帰りだ。
彼らは朝に各家から集められて、村近辺で放牧され、
夕方にはこうして下校時の生徒たちのように家へと集団で帰ってくるんだ。
羊たちは羊飼いが何も指示しないのに、
自分の家の前に来ると、雲がちぎれるように集団から離れて門をくぐるんだ。
ホント、賢いよ。
毎日、こうしたことを繰り返してるなんて、羊ってけっこう規則正しい生活してるんだね。
僕も羊を見習わなくっちゃ、って正直思っちゃったよ。
はい、チーズ!
これが僕を泊めてくれた家族の人たちだよ。
おじいさんにおばあさん、その娘さんと彼女の二人の幼い子どもたちの五人家族。
彼女もおじいさんの隣にお澄ましして座ってるね。
彼女のお父さんは遠い所に働きに行っていて、今は家にいないんだって。
それでもみんなで楽しくやってる感じだね。
壁にはおじいさんとおばあさんの若かりし頃の写真などがたくさん掛かっていて、とっても暖かい感じがする部屋だったよ。
この後、僕にこの村の民族衣装を着せて、彼らはけっこううれしがってたよ。
8月の村の祭りにはぜひ来るといい、とおじいさんが言ってくれたけど、戻ってこれるかどうか・・・。
これが旅人のつらいところだね。
泊まったのは一晩だけだったけど、本当に会えてよかったと思える、素晴らしい人たちでした。