ある朝・・・

 例えばある朝、キミがいつものように出社して来た時。
 勢いよく開けたドアの向こうに、1羽のペンギンがふんぞり返っていたら、どう思うだろうか?
 勿論、キミの勤め先は、動物園や水族館なんかじゃない。
 毎日の仕事は、当たり前のデスクワークだとか、営業外回りだとか、そんなものだ。
 そんな日常に飛び込んできた、小さな闖入者。
 キミは笑うだろうか。それとも戸惑って立ち尽くす? もしかしたら、ふざけるなと怒り出すかもしれないね。
 でも、それは冗談でもなんでもないんだ。
 室内の1番奥の大きなデスクの前にふんぞり返っていた件のペンギンは、きっとすぐにキミが入って来たコトに気付く。そして右手(右羽根?)を軽くあげて、こう言うんだ。
「や、おはよう」
 そう、そのペンギンは、キミの上司なんだよ。


 何を馬鹿なコト言ってるんだって、そう思うかい?
 そんなコトが起こるワケないじゃないかって?
 でも、本当にそうかな。
 絶対にありえないって、言い切るコトが出来るかな。
 この世界のコトって、目の前で起きているコトを『起きている』とは言えるけれど、そうじゃないコトを、自分の目の前では起きていないからって『起こらない』とは言えないと、ぼくは思うんだ。
 それは『今、起きていない』だけのコトであって、絶対に『起こらない』ワケではないと、そう思うんだ。
 だからね、もしかしたら、ある日突然上司がペンギンになるコトだって、有り得るかもしれないんだ。


 でもね、だからといって、本当にそんな事態が起こった時。狼狽えるな、なんて言わないよ。
 混乱するのは当然だものね。
 やっぱり、自分がそれまで信じて来た、世界の常識というものは厳然としてあるワケで。
 急にそれを覆すのは、とても難しいコトだと思うし。
 だけど、ひとつだけ。
 俄かには信じ難いからといって、それを否定するコトだけはしないで欲しい。
 否定してしまうコトは、全ての終わりだよ。もう、そこからは何処へも行けなくなってしまうから。
『疑う』コトと『否定する』コトをいっしょにしてはいけない。
 何かを疑ってみるコトは、それをじっくりと考えるというコトで、とても大事なコト。それは大いに実践してみるべきだね。
 でも、否定してしまうコトは・・・なにも、新しいモノを生み出しはしないよ。


 つまりね、何が言いたいのかというと。
 世の中まだまだ広いんだし、柔軟な思考を持って、生きていきたいねってコト。
 なんでもかんでも否定しないで、大きな器を持って、いろんなコトをあるがままに受けとめていきたいねってコト。
 これからの社会の中で、きっと凄く大切なコトだと思うよ。
 うん。


 ところで、なんで急にこんなコトを言い出したのかって?
 それは、ある朝ぼくが会社に行ったらね・・・。



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