雨が止んだら虹が出るね。 虹は、小さな小さな水の粒に、お日様の光が反射して出来るんだって。 不思議だね。 お日様の光は真っ白なのに、7つも色が出来るなんて。 虹はどうして曲がっているの? 空に架かった橋みたい。 誰が渡るんだろう? 「それはね、」 窓の外を眺めて呟くぼくに、後ろから声を掛けるひとがいた。 右の肩に、ぽん、と置かれた大きな手。 お父さんの手に似てる。 「虹が曲がっているのは、きっと地球が丸いからだよ。見てご覧、遠くとおく、地平線も円いだろう?」 ぼくの肩に置かれた手から、声の響きがそのまま伝わってくるみたい。 心臓の鼓動の間を擦り抜けて、ぼくの身体中に広がってゆく。 その波はとても心地よくて、ぼくは目を細めてとおくを見つめた。 本当だ、広い広い草原の彼方、空と地面の境目は、緩やかに円を描いている。 ああ、地球は丸いんだ。 ぼくは嬉しくなって、ぼくの肩に手を置く人を振り返った。 するとそこは、やけに薄暗くて。 しんと鎮まりかえった空気の底に、密やかな騒めきが沈んだ空間。 そうだ、ぼくは展覧会を見ていたんだ。 視線を戻せば、壁には草原に架かる虹の絵。 見覚えのあるようなないような、その風景、製作者の名前。 ぼくはなんだか少し、淋しいような気持ちがしながら、でもなぜか幸せな感触を抱きしめて、絵の前を離れた。 この会場を出たならば、きっと空には虹が架かっているであろうコトを確信して。 |