赤い睛をした黒うさぎ
2000.Feb.発行


お散歩日和

コンナ 晴レタ 空ダカラ
イツモヨリ遠クヘ 行コウ
キット ナニカ 素晴ラシイ
宝物ガ 見ツカルヨ

黒うさぎがそういうので
お気に入りのリュックを持って
おさんぽにでかけた
……それが 一月前のコト
ねぇ、黒うさぎ
ここはどこ?




コドモノクニ

痛いコトも 哀しいコトも
淋しいコトも ここにはない
いつだってぼくらは幸せでいっぱい

やらなきゃならないコトだとか
つまらないコトだって ここにはない
誰だって幸せになれるよ
ここはコドモノクニ

永遠に失われることのない時間
いつまでも変わることなく
ぼくたちはコドモのまま
時を止めたままで……

ねぇ いつまでも楽しく暮らそう
オトナになんかならないよ
永遠にぼくらは幸せなまま
ここはコドモノクニ




ハナビラヒメ

ハナビラヒメは夢を見た
知らぬ誰かの夢を見た
知らぬ誰かは誰かしら
ハナビラヒメは夢に見る

ハナビラヒメは恋をした
知らぬ誰かに恋をした
あの人いつか来るかしら
ハナビラヒメは恋い慕う

ハナビラヒメは花を摘む
占いしようと花を摘む
今日こそあの人来るかしら
ハナビラヒメに花は散る

ハナビラヒメは空を見る
ハナビラ舞い散る空を見る
あの人は何処にいるのでしょう
ハナビラヒメは空に泣く

ハナビラヒメは夢を見た
恋する人の夢を見た
恋する人は あなたです
ハナビラヒメは目を覚ます

小さな乙女は夢を見た
ハナビラヒメの夢を見た
あたし、ハナビラヒメだった
小さな乙女は呟いた




甘くて苦いモノ

なぁに、って訊いたら
小さな包みをくれたよ
銀紙にくるまれた薄い板
  イマハ マダ
  コレガ キミノ コタエ
優しい声と 微笑みと
あの人がくれたチョコレート




手紙の返事

あの人に手紙を出した
ひと月前の晴れた日に
手紙の返事はまだ来ない
ぼくの手紙は届いたろうか

もう一度手紙を出した
ふた月前の雨の日に
手紙の返事はまだ来ない
あの人 そこにいるのだろうか

たくさんの手紙を出した
ずぅっと前からこの日まで
手紙の返事はまだ来ない
ぼくの手紙は届いたろうか




墜落傾向

二階から目薬
三階からエスカレーター
世の中 上手くはいかないね
騒めきに見守られた静寂の中
吹き抜けを dive
華を咲かせてみたくなる




fake summer

ガラス越しの太陽は
じわじわと 優しいだけで
ぼくを焼き尽くしてはくれないのに
気がつけば
耐えきれない程の熱に支配されている

《ニセモノの夏の中ならば
    涙まで凍る冷気の中へ》

リアルとは無縁のぼくの部屋。




ハリガネテンシ

青い空から舞い降りてくる
いくつものハリガネテンシ
銀色の身体に真っ白な翼
ああ その手に光る銀の鎌

白く囲われた塀の中には
吊るされた大きな檻が
数え切れない白い翼を蓄え
手を触れると ぬるりと滑り
もう翼は白くない

高らかに謳うハリガネテンシ
欲しいモノは手に入れた
もう逃げられないよと
何もない顔で笑う
銀の刃は血に染まる
また 白い塀に飛沫が上がる

刈り取られた翼の根を
流れ出る血に紅く染め
地に堕ちるハリガネテンシ
いや、それはもうテンシではなく
ただのハリガネニンギョウで
ハリガネテンシは舞い降りて
優しく腕に抱くでしょう






それは淡いぴんくの砂糖菓子
ふわふわと甘くて
少し躊躇う

それはクリアブルーの曹達水
ちょとキツいけど
一気に流し込んでみせる

それは透明なガラス玉
キラキラと輝いて
とても壊れやすい

たぶん、そんなもの




Lover Soul

今夜も月が昇ったら
そっと街路を見てごらん
きっとあのコが出てくるよ
青い光に誘われて

切ないうたが聞こえるかい?
あのコの心がうたってる
月に捧げるこの想い
アナタの心に届くなら

「真夜中 キミに逢いに行く」
叶わぬ誓いと知りながら
囁くコトバを抱きしめて
今夜もあのコは街へ出る
Lover Soulは眠れない




ハチミツ

蕩けそうに響いてくる
心地よいアナタの声
眠りかけた頭の上で

誰に囁いてるの?
何を囁いてるの?

黄金色に溶けてゆく時間と
アナタにとかされてゆくぼくと
そして無関心なアナタ

ぼくも無関心を装って
甘い甘いハチミツを
指に絡めて舐めた




HEART

いつか全てが無に還る時にも
ぼくの想いは
この胸に宿る炎は
あなただけを求め続けて
きっと烈しく燃えているだろう
            ――――heart.
(コノホノオガスベテヲヤキツクシタアトモ)




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