翼のコドモたち
2000.Dec.発行


覚えてる?
ぼくらは翼を持っていた
どこまでも自由に飛べた
今だって
ほら、よく見てごらん
失くしてなんかいないから
どうか忘れてしまわないで
そうすれば
いつだって飛べるから




January

よく晴れた空は
レンズのように凍てついて
ぼくらの吐息が
大気を白く緩ませる
あの欠片が欲しいなら
手を伸ばしてみればいい




February

はりはりと降る雪
白い闇に籠められて
弾け飛ぶ世界
収束してゆくぼく
どうかどうか つかまえて
壊れてしまう前に




March

小鳥たちは帰れない
この小さな古巣は
あなたたちにはもう狭い
飛び立ってゆきなさい
拓かれた空へ
振り向かないように




April

夢から覚めた後も
あなたはそこにいて
ぼくの傍にいて
微笑んでくれたなら
やわらかなひかりに
包まれたようだね




May

キミの睛は
高く澄んだこの天空の
遥かな蒼に染められて
雲が横切るときには
吹き飛ばしてあげる
風を巻き起こして




June

しづく
緩やかにとかしてゆく
あなたの翼に触れると
その温もりの優しさに
哀しくなるほど
こころがほどけてゆく



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