Birth(RE−Birth)
1996.May.発行
1997.Sep.改版発行

(一部省略)




さながら、
風のようになりたい
そんな時がある
キミを包み込んで
街を流れて
海に出会い
空を駆ける――――

けれど
それは叶わぬ幻想
叶えたくない 小さな願い

――風は キミにさわれない




水仙

水仙の馨りを知っていますか?
とても甘く 優しく
そして強く馨るのです
すらりと伸びた緑の葉を
融け残った雪の間から覗かせて
小さな花を咲かせて
目立たないようで
人の心に強い印象を残す
水仙の花は
実は
とてもずるいのかもしれません




風の中のキミ

やさしいキミに逢いたいよ



さくらなんて まだ見えないのに
風もまだ そんなには暖かくないのに
春、感じて

思い出すんだ
あの日のコト

自転車で走り抜けると
キミは
名前を呼んで嘲笑った
やさしくないキミ
思い出すんだ

胸が痛いよ
こんなに離れてるのに
ずっとずっと逢ってないのに
風の中に キミを見つけそうで
すごく こわくて
息ができない

キミが大きくて
心の中で 大きくなってて、
なっているんだけど

わからないんだ
キミの顔
キミの声

だから

やさしいキミに逢いたいよ……




フルムーン

夜空を見上げたら
きれいな満月
みんなを照らしてる

わたしを
そして あの人を

だから
どうかその光にのせて
私の想いを伝えてよ
どこかであなたを
わたしと同じように見上げてる
あの人に
“わたしはあなたを見つめてる”




姿を消す方法

放課後
教室の窓辺で一人きり
カーテンの陰で本を読もう
立ち続けるのに疲れたら
カーテンの陰に座ろう
そうしたら
わたしはもう
教室の中から消えている

秋の午後の
やわらかな陽射しと
冬の日の
冷たい風と

気がつけば
わたしはもう
季節の中にいる
その証は
舞い込んで来た一枚の枯葉




理解力

なぜ? なぜ?
たまごから孵ったばかりの幼いキミは
それを繰り返すばかりで
何もわかろうとしなくて
なのに 知りたがってばかりで
ただそれだけで

なぜ? なぜ?
ぼくも知りたがってばかり
けれどぼくは
なにかがわかりたくて
わかろうとしていて
少なくとも そのハズで
なのに 何もわからなくて

ぼくは もうヒナじゃないのに
ずっとずっとこのままで
もう 何もわからないんじゃないかって
怖くなった時に

キミがタマゴから孵って
それで

ずっとずっとこのままで
もう 何も

もう、何も――――




全ての行方

人が死んだら
魂は何処へゆくのでしょう
想いは何処へゆくのでしょう

全ては
永久に廻り続けるのでしょうか
全ては
いつか消えてしまうのでしょうか

そんなことを考えるのは
いつも決まって
寒い夜




鼓動

100億の鼓動が
ボクを駆け抜ける

《危険信号》
《……接近中》

なにが?

時が 人が
近づいて
ボクのイノチを縮めてく

――ボクには、自殺願望があるらしい




BLUE SKY BOY

青空の下で生まれたキミたちと
星空の下で生まれたぼくたちと

互いに憧れ続けて
幾千の夜を越えて

やっと出会えた

眩しすぎる太陽に烙かれても
ぼくたちは悔やまない
キミだけを想ってきた
この年月は
とても幸せだったから

永い夜も越えられる


茜色の空には白い月
薄紫の空には白い陽が

互いを望み続けて
幾億の夜を超えて

やっと出会えた

儚すぎるこの身が滅んでも
ぼくたちは悔やまない
キミだけを見つめていた
この一瞬は
とても幸せだったから

冥い闇にも耐えられる


煌々輝く BLUE SKY BOY
キミだけを愛してる
この想い 抑えきれなくて

遙かに遠い BLUE SKY BOY
キミだけを抱いていた
あの夢の中で
流した涙の輝きは
キミを飾ってくれるかな……




リボン

卒業式が終わって
誰もいない あの人の教室に
そっと忍びこんで

あの人の席
椅子の背に貼られたシールの
名前までもが愛しくて

そっと座り 手を置いた机の中
それは赤いリボン
ついさっき
あの人が受け取った
卒業証書についていたもの

切なくて
手の中に握りしめ
そっと 目を閉じた




寒い夕方

秋の夕暮れは大好き
やさしい光に満ちているから
“もう誰も お前を傷つけたりはするまいよ”って
やさしく慰めてくれるから
冷たい風が吹いてても
心の中には 暖かな
淡紫色の灯がともっているから

秋の夕暮れは大嫌い
やさしい光に満ちているのに
“もう誰も お前を傷つけたりはするまいよ”って
やさしく慰めてくれるのに
冷たい風が吹いてても
心の中には 暖かな
淡紫色の灯がともっているのに

わたしと一緒で
とても
ウソつきだから――――





Re−Birth

何も映さない瞳
誰も呼ばない口唇
封じたココロを解きたくて

白い闇から逃れるために
全てを失くして手に入れた
Re−Birth
そして
全てを失くした

ぼくの闇から逃れるために
全てを失くして手に入れた
Re−Birth
そして
全てを手に入れた
ぼくの全てと引き換えに

ぼくの願い
Re−Birth....



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