湯島 資料 婚姻に関する儀式慣習古賀寛治          時の回廊

一,媒人
 媒人は普通に結婚を慫慂したる人なれども亦婚家の親戚及び知人等に依頼して行はするものもあり総て媒人は両家の中間にありて一切の相談用務を弁す可きものにして極めて困難なるとのなり,昔より(ナカダチハサカダチ)と称して媒人の困難なる事をよく言い表せり。

 二,済樽
 婚約も滞りなく盛立すれば媒人は直に酒を送り確実に婚約を結ぶ是を済樽と云う。

 三,結婚式
 結婚の式は媒人が両家へ往復して吉祥日を選びて挙行す。今其の貫例の大要を区分して記せば次の如し。
1 前日,結婚の日定まれば両家共近親の者を頼みて翌日の酒宴に要する準備をなす。
2 當日午后五時頃より嫁迎として親戚媒人知己男女混じて嫁の家に至りて一通りの挨拶をなし饗応を受けて嫁を連れて聟の家に帰る。嫁は嫁脇《ツキニンと称して親戚の年頃の娘をなす》と共に房屋に入る。嫁の家には祝宴はじまる。
 それより聟の家よりは嫁の家に再三使ひを飛ばして案内をなす嫁宅よりは親戚知己男女混じて聟宅に行き一応の挨拶終わりて冷の盃と称して冷酒を上座より順次に一回まわす此の時銚子には紙にて作れる雄蝶雌蝶の折り紙を結びつけてあり何れも盃の前後に謡曲を奉す親戚知己及近隣よりの来客に一通りの饗応を受けて帰り眥も両家共に親戚知己より加勢をなす。
3 翌日
 新夫の宅には後援会と称して親戚知己近隣《主に女》の人々を案内して酒宴を開く。


          資料  湯島郷土誌