車のエンコは、セブンの時代ではよく起こった事象で、「エンジン障」の略であると思われます。
そんなことより、ウルトラシリーズ両輪の大エース、野長瀬三摩地監督のセブン初登板です。制作1話の「湖のひみつ」と同時に制作されました。もう一輪のエースは、もちろん円谷一監督です。





STORY



宇宙ステーションV3から、イシグロ隊員が休暇のために、6ヶ月ぶりに帰還した。しかし、基地に迎えにくるはずのミツコ夫人は未到着、来る途中に、車がエンコしたのだった。
遅れて到着したミツコ夫人。
「おかえりなさい」(ミツコ)
「ただいま!」(イシグロ)
「ごめんない…早く来るつもりだったんだけど、車が途中でエンコしちゃって…」(ミツコ)
「そうかい、そんなことだろうと思って、ダン君にポインターを用意してもらったよ」(イシグロ)
「まぁ…」(ミツコ)
…ほのぼの。



ポインターでイシグロ夫妻を自宅へ送る、ダンとアンヌ。
イシグロ邸の庭先に、奇妙な金属塊があるのに気づく。
青目で透視するダン。
(おかしいぞ…透視できない…。待てよ、この物質はどこかで見たことがある…。そうだ、チルソナイト808だ…。確かワイアール星から産出される金属だ。地球では存在しないはずのチルソナイト808がなぜこんなところに…?)(ダン)



モロボシダンは宇宙人なので、透視能力があるわけです。今回、ダンが透視能力を使うとき、眼全体が青く光ります。#1では、瞳に十字形に光るパターンでした。テストケースとして双方を使いましたが、見比べた円谷英二氏の「気持ち悪い…」との神様の一声で、十字形に光るパターンが採用されたそうです。



イシグロ邸に送り主不明の小包が届いていた。
開けるイシグロ。中には庭と同じような小さい金属塊が…。
ボワっと光りだす金属塊。
急に苦しみだすイシグロ。
イシグロの体がツタ状の植物のような物体に変化した。
生物X(エックス)、ワイアール星人である。



ワイアール星人は、脚本段階では「生物X(エックス)」の名称でした。ナレーション録音現場の段階で、ワイアール星人と命名されたのです。葉緑素(OUYOKUSO)からの命名だそうです。
全編にわたる不気味なストーリー展開で、忍び寄る侵略者の恐怖をいちだんと醸し出すことに成功し、「地球は狙われている」というセブンの主題を的確にイメージさせた作品だと思います。
多くの名曲を生んだ「セブン劇中楽曲」のなかでも、特に「ミステリー」や「不安」を主題とした「M9系」「M10系」が効果的に使われています。#1、#2は、新シリーズの方向性を印象づけるためか、特に細かい選曲がなされ、この2回でのみ使用された曲も幾つかあるほどです。



イシグロの変化した生物Xは、ツタ状となって通行人を襲った。
ツタは通行人の足元から巻きついていく…。
「ギャアアア!」(大村千吉)
イシグロ邸からの帰り道、悲鳴を聞いたダンとアンヌ。
「はっ!…あっちだ!」(ダン)
駆けつけた2人の前には男が倒れていた。
「こちらダン!本部応答願います」(ダン)
「こちら本部。どうしたんだい?こんな真夜中に…」(アマギ)
のんびりした口調のアマギ。
「大至急、ポインターをお願いします。瀕死の重傷を負った男をメディカルセンターに運びたいんです」(ダン)
ツタ状の植物生物の姿は、なくなっていた。



ワイアール星人に襲われる酔っ払いは、泥酔オヤジを演じたらこの人しかいないという、東宝の誇る「泥酔俳優」大村千吉さま。お約束のスシ折片手に千鳥足です。セブンでは、#41「水中からの挑戦」にも、釣人役で出演しています。残念ながらこちらはシラフですが、それでもけっこうイケてます。



メディカルセンター。
突如、苦しみだし男は、瞬く間に植物状の人間生物Xに変化した。起き上がった怪物は、アンヌたちに襲いかかる素振りだ。
ソガが素早く、ウルトラ・ガンを抜いた。
「ソガ隊員、撃っちゃダメ!」(アンヌ)
目の前で人間から変化したのだ。殺すわけにはいかない。
「ダン、パラライザーを」(アンヌ)
撃つアンヌ、倒れる人間生物X。
「なぜ撃ったんだ!」(アマギ、ソガ、ダン)
←パラライザーって、言ってんじゃん。
「大丈夫、神経を麻痺させて動きを止めたの」(アンヌ)
←髪をアップにしているアンヌ。



参謀室にて対策会議。
「警察からの報告では、この3日間で十数人の被害者が出ておる。しかも恐るべきことには、それらがみんな怪物化し人間に襲いかかるのだ。襲われた者がさらに怪物化して人間を襲う」(タケナカ参謀)
「ネズミ算式で、増えていくわけですね」(キリヤマ)
「そのとおりだ。このままいけば数か月後には、地球上の全人類は怪物化してしまう。これはアマギ隊員の撮った怪物の写真だ。学者の説では、宇宙の生物らしい。これは明らかに人類への挑戦か侵略である」(タケナカ参謀)
「みんな…、これ以上被害者は出せん。市民の夜間外出を禁止しよう」(キリヤマ)
扉が開き、ダンが声をかける。
「隊長。例のものをお持ちしました」(ダン)
作戦室に移動する一同。
イシグロ邸の金属塊、チルソナイト808が運び込まれている。
「なんだこれは」(タケナカ参謀)
「未知の宇宙金属です」(ダン)
「キリヤマ君!科学班にまわして分析だ」(タケナカ参謀)
ひとつずつ、解明される謎。


外出禁止令によって無人の夜道。
「また夜が来た…。人々は恐怖にじっと息をひそめていた…。獲物を失った怪物、ワイアール星人が無人の街から血に飢えて戻ってきた…。彼が次に狙うものは……」(浦野光)
イシグロ夫人を狙おうとするワイアール星人。
「きゃあああ…、あなたぁ、助けてぇぇ!」(イシグロ夫人)
「奥様!奥様!うあぁぁぁぁ!」(シズ)
騒がれたためか、いったん退却。
「…旦那様!奥様が大変です!」(シズ)
イシグロの姿になって現われるワイアール星人。
「ミツコ…。東京は物騒だ。明日の朝、二人で箱根の別荘へ行こう…」(イシグロ)
獲物がいない東京を離れようとするワイアール星人。



作戦室。
金属塊を電動ノコギリで切断しようとするが、
「ダメだ!傷もつかない」(←誰の声?)
電話のコール音。
ダンへの電話だ。ダンに受話器を渡すアンヌ。
イシグロ邸、シズからの急報だった。



イシグロ邸に駆けつけた、ダンとアンヌ。
シズの案内で2階のイシグロの書斎へ向かう。
「机の引き出しの中から、変な音が聞こえてくるんです」(シズ)
ダンが引き出しをこじ開けると、小さな金属塊が入っていた。
「地球の物質ではない。庭にあったものと何か関係があるかもしれない。叩くものを貸してください」(ダン)
「割れるの?」(アンヌ)
「割れるかもしれない」(ダン) ←何か、トーンが変だぞ…。
「そんなことをして大丈夫なの?」(アンヌ) ←アンヌが正しい。
かまわず叩き割るダン。
ダンが小さな金属塊にキズをつけると、基地内の大きな金属塊も同じ所に亀裂が入った。二度、三度、ダンは打ちおろす。破壊
された小さな金属塊からは精密機械が、大きな金属塊からは、イシグロ隊員が、それぞれ現われた。
「発信機つきの電子頭脳だ」(ダン)
ビデオシーバーのコール音。
「ダン、例の物体からイシグロ隊員が出てきたぞ」(アマギ)
「ウソですよ!旦那様は奥様と箱根行きの電車です」(シズ)



疾走する小田急ロマンスカー。
車中、イシグロの姿を保ちきれずに正体を現わすワイアール星人。
大小の金属塊が破壊された影響である。
「きゃあぁぁぁぁぁ!」(イシグロ夫人)
パニックになる車内。



ワイアール星人の着ぐるみは、この車中シーンがあったため、セブンで最初に作られました。ウルトラシリーズの収録は、本編・特撮の2班体制での2本撮りが基本で、特撮に先行して本編収録、という進行スタイルでしたが、等身大の宇宙人やセブンとのからみは本編扱いされていました。このため車中のイシグロ変身シーンは本編スタッフが担当しています。特撮スタッフではないので、光学合成を省いて通常の二重露光で処理したせいか、イシグロからワイアール星人に変わるシーンでは、イシグロの着ていた服が、変身後のワイアール星人の上に乗っかっているという珍妙な光景になっていました。
※VTR版にはありましたが、DVD版では再編集されてカットしたようです。



現場に駆けつけるダンとアンヌ。
トンネル内で急停止した電車から逃げ惑う人々。
車内のイシグロ夫人は、ワイアール星人に襲われる寸前である。
間一髪、ダンは救出に成功する。
夫人を抱きかかえて車外に下ろす時、どさくさ紛れにオッパイを触るダン。
←こうもボインに囲まれたら、宇宙人といえども…男の子だもんネ!
 しかしながら巨乳揃いの回ですね…。アンヌ…。イシグロミツコ…。お手伝いのシズ…。



巨大化するワイアール星人。
セブンに変身するダン。
「ウルトラセブンがんばって!」(アンヌ)
セブン、君にはアンヌがついてるぞ!
決まり手:アイ・スラッガー、タテ1/2カット。
      そのうえ、エメリューム光線にて焼却。



誰が名づけたウルトラセブン?
ヒーローの名称が「ウルトラセブン」と決まるまで、幾多の変遷がありました。
先ず、企画段階では「レッドマン」。「レッドマン」はウルトラマン世界とは切り離された、新たな怪獣ヒーローものとして企画されましたが、ヒーローが怪獣では?という設定が通らず、NGとなりました。「レッドマン」は、「ウルトラマン」の企画時にも候補となり、没になった由緒正しき名称だったのです。
次に、「ウルトラマン・ジュニア」。TBS側からは、ウルトラシリーズという路線を続けたいとの要望がありました。そこで「ウルトラ」名称の続投と、世界観の継承が決まったのです。ジュニアはハヤタとアキコの子供と考えられていたようです。
そして「ウルトラ・アイ」。新ヒーローの特徴的な部位を目と設定した名称です。全宇宙的な恒星間侵略戦争に巻き込まれた地球というハードなSF設定など、セブンの骨格はこの段階で固まりました。そして、決定名称が「ウルトラセブン」。当時ヒットしたフランス映画「第三の男」にあやかり、ウルトラ警備隊「第七の隊員」としたのが、命名の由来といわれていますが、米映画「原始家族」のような、7人の原始人を主人公にした、コメディタッチの特撮ものとして企画されていた作品タイトルからの流用でした。この紆余曲折が、「アイ・スラッガー」や「ウルトラ・アイ」の呼び名に残っているのです。



読者様からの情報です。

ウルトラセブンの名称決定の経緯は本編映像にはありませんが、「姿なき挑戦者」の検討用、決定稿、決定稿2の三種類の脚本すべてにそのシーンが存在しますので紹介します。

   (ヤマオカ長官が新隊員のダンを紹介したあと)
   キリヤマ「六名の隊員が誕生したわけか、いやひょっとしたら七人目の
         隊員も誕生したかもしれん」
   アマギ 「ピンチを救ってくれた幻のヒーローですね」
   キリヤマ「うん。七人目のヒーローだからな、ウルトラセブンとでも呼ぶか」
   フルハシ「いい、最高にいい名前ですよ」

したがって、脚本上ではウルトラセブンの名付け親はキリヤマ隊長になります。

                                   (2001年11月2日、PACIRUGO様より頂戴しました)



現場に急行中のホーク1号は、空飛ぶセブンとすれ違う。
「あっウルトラセブンだ!」(アマギ)
着陸するホーク1号。
本物のイシグロ隊員は、やっとミツコ夫人と対面できた。
「しかし、敵はどうやって、イシグロ隊員に化けたんでしょうね」(ソガ)
「あの鉛色のマシンですよ。あれにイシグロ隊員を閉じ込めておいて、電送に似た方法でイシグロ隊員の姿を借りたんですね。そして、この電子頭脳で行動をコントロールしていたんです」(ダン)
「うむ、恐ろしい奴らだ…」(キリヤマ)
本部から隊長に通信が入る。
「はい、こちらキリヤマ」(キリヤマ)
「警視庁からの連絡が入りました。事件は無事解決し、被害者のすべては人間に復活し、収容した。ウルトラ警備隊の活躍に感謝する。以上です」(通信隊員)
「了解!…この台詞はウルトラセブンに言ってもらいたいなぁ…」(キリヤマ)
と言いつつダンの肩をたたく隊長…。隊長は、何か気づいているのか?
そして、ダンに、イシグロ隊員夫妻を送るように指示すると…。
「私も一緒に行くわ!」(アンヌ)  ←勝手についてくなって…。



「事件は終わった。だが、宇宙からの侵略が終わったわけではない。あの鉛色の物体が、いつあなたの庭に落ちてくるかもしれないのです。明朝、目が覚めたら、まず庭をご覧ください…」(浦野光)
エンディング・ナレーションは、正統派ファンタジー路線の正調金城節。





ALIENS&MONSTERS



生物X(エックス):ワイアール星人
身長:1m80p〜最高150m
体重:最大1万3千t
出身:ワイアール星
武器:妙な光線を放つ(効果は定かでない)
特技:触手で触れることで仲間を増やせる
弱点:植物だけに水と光がないと枯れるでしょう


人間生物X(エックス):大村千吉
主食:酒
特技:千鳥足





ACTOR&ACTRESS



イシグロ隊員の松本朝男さんは、米軍PX事務員から新東宝スターレット1期生として俳優に転向しました。故天知茂さんや、イエ〜イ高島忠雄でぇす、が同期です。
イシグロ夫人の中真千子さんは、宝塚歌劇団出身の女優さんです。若大将シリーズにも、加山雄三の妹役として出演しました。当時、東宝所属だったアンヌの先輩にあたります。
そして、1997(平成9)年には「ウルトラマンディガ」にゲスト出演しました。これを機に「ティガ」へ、往年のウルトラゲスト女優出演嘆願運動が一部で起こった、そうです…。





LOCATION



東芝高輪倶楽部(イシグロ邸)
小田急ロマンスカー(車内シーン:秦野市千村のトンネル付近走行シーン)
小田急経堂車庫(トンネル内のシーン)
国鉄御殿場線、山北町のトンネル(トンネル外のシーン)






EXTRA



これは、イシグロ邸の庭先で、警察官が、チルソナイト808を動かそうとしている画面です。本編中では、夫人がシズに、警察へ通報するように指示している場面がありますが、この画面は存在していません。何かの都合でカットされたようです。しかし、これは予告編に使われたのです。
VTRシリーズの映像特典には、#2の予告編が収められていますので、VTRをご覧になる方は、要チェックです.。










                      





                  「ウルトラセブン」ストーリー再録  第2話「緑の恐怖」
                 04/JUL/2001 初版発行  03/NOV/2001 第二版発行
                 Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved


第2話
緑の恐怖
制作2話      監督:野長瀬三摩地
脚本:金城哲夫  特殊技術:高野宏一