第16話
闇に光る目
制作14話  脚本:藤川桂介  監督:鈴木俊継  特殊技術:高野宏一
時に西暦1974年、ニッポン・オタク文化の萌芽となった「宇宙戦艦ヤマト」が、日本テレビ系列で放映されました。その「宇宙戦艦ヤマト」TVシリーズと同シリーズの映画版「宇宙戦艦ヤマト」、そしてヤマトの実質的終作「さらば宇宙戦艦ヤマト〜愛の戦士たち」のメインライターとして活躍した脚本家の藤川桂介氏。彼もまた、セブンに携わっていた一人だったのです。





STORY



混乱する作戦室。
「違うんです。さくら9号の回収作業をしているかを聞いているんですよ。…そうです。ええ、それではさらに調査をして、詳細は後で報告します」(勝部通信隊員)
「確かに、さくら9号なのか?」(マナベ参謀)
「この発信音は確かに、さくら9号のサイクルです」(ヨシダ通信隊員)
「3ヶ月間、アンノン星計画は中断されていますが…」(勝部通信隊員)
顔を見合わせるマナベ参謀とキリヤマ隊長。
「計画再開の折には、我々にも連絡が入るはずですから…」(キリヤマ)
「…じゃあ、行方不明の宇宙船が、なぜ今頃、誰の手で帰ってくるんだ?」(マナベ参謀)
「さくら9号の現在地点、落下方向をキャッチしろ!」(キリヤマ)


「アンノン星調査のため打ち上げられ、消息を絶っていた無人宇宙船さくら9号は、突然帰ってきたのである」(浦野光)


地獄山付近に自動着地する「さくら9号」。
その付近には宇宙局の基地がある。
「よし、3人は直ちに、宇宙局の警戒体制を敷き、さくら9号の回収作業にかかれ!」(キリヤマ)
「了解!」(ダン、アマギ、アンヌ)
直ちに、現場に向かうポインター。


現場に到着した3人の目の前で、さくら9号は爆発を起こす。
「ダンより隊長へ…。ダンより隊長へ…」(ダン)
「こちら、キリヤマだ」(キリヤマ)
「宇宙船が爆発しました」(ダン)
「爆発?」(キリヤマ)
「これより詳しく調査します」(ダン)
「了解」(キリヤマ)
「おかしいな…」(アマギ)
「落下したショックで爆発しなかったものがどうして…」(アンヌ)
「我々の姿を見て、自爆したんじゃないのか?」(アマギ)
「誰か乗り込んできた奴がいるのだろうか?」(ダン)
「バカ言え、何もそれらしいものは見当たらないじゃないか…」(アマギ)
何かに気付くダン…。
「なんだ、あの音は?」(ダン)
「…音?」(アマギ)
「煙の噴き出す音でしょ」(アンヌ)
ダンったら何言ってるの!という感じで。
「キーキー、いってる…」(ダン)
耳をそばだてる、アマギとアンヌ。
「…ダン、何にも聞こえないじゃないか」(アマギ)
「何にも聞こえないじゃないの」(アンヌ)
ダンったらどうしちゃったっていうの!という感じで。
「いや…、聞こえる…」(ダン)
音のする方へ向かうダンを見張るように、岩に「目」が現われた。



地獄山に向かうポインターは、首都高速4号新宿線の下り線赤坂トンネル付近を走行しています。首都高速道路は、62年に都心環状線の一部が開通し、64年には東京オリンピックの開催に合わせて、羽田空港と都心を結ぶ1号羽田線が整備されました。その後、年々延伸して、セブン放映時の67年には、都心環状線と山手通りまで達する各放射線が開通していました。1号上野線は入谷ランプ、2号目黒線は荏原ランプ、3号渋谷線は渋谷仮ランプ、4号新宿線は初台ランプ、5号池袋線は護国寺ランプ、までの各区間です。
セブンではポインター走行シーンに、何回か首都高速が使われています。高架とトンネルで過密都市を縫うようにして走る首都高速からは、モノレールと同様に、近未来的かつSF的な都市景観が得られたからでしょう。



小太りのヒロシは、いじめられっ子。
近所の悪ガキどもからは、弱虫ヒロシと呼ばれている。
怪獣殿下と呼ばれていた面影はない。
そんなヒロシが地獄山で綺麗な石を拾った。
「おい、それよこせよぉ〜」(悪ガキ)
ヒロシに群がる悪ガキ連。
珍しく彼らを拒否する、強気のヒロシ。
樹木に「目」が現われ、奇妙な音が悪ガキ連を苦しめる。


頭痛のひどい悪ガキ連を病院に収容した3人。
「あの子たち…、ヒロシっていう子と地獄山で拾ってきた石の取り合いをしているときに、やられたそうよ…」(アンヌ)
「なに、石?」(ダン)
「子供たちには、石でも宝石のような価値を与えるものらしいからな…」(アマギ)
←シメになっていないアマギのセリフ。


自宅の部屋で、拾ってきた石を磨き上げるヒロシ。
部屋の明かりが突然消えた…。ドアも開かない…。
「ママー、ママー!」(ヒロシ)
「坊や、そんなことをしても無駄だ」(アンノン星人)
「お前は誰だ!」(ヒロシ) ←弱虫じゃ、ないじゃん!
「フッフッフ……」(アンノン星人)
「ボクに何の用があるんだ!」(ヒロシ)
「私の体を返してもらいに来た」(アンノン星人)
「そんなもの知らないよ!」(ヒロシ)
部屋の壁に「目」が現われる。
「ハッハッハ…。私の体はそこにある。ホラッ!君の机の上だ…」(アンノン星人)
そこには拾ってきた石が…。
「そうだ。それだ!」(アンノン星人)
「ウソだ。これはボクが拾った石だ!」(ヒロシ)
←いうべきことは言う。ちっとも弱虫じゃないぞ、ヒロシ君。
「それは宇宙船を爆破するときに、一緒に飛ばしてしまった私の体だ…」(アンノン星人)
「こんな石がどうして体になるの?」(ヒロシ)
←聞きたいことは聞く。ちっとも弱虫じゃないぞ、ヒロシ君。
「頼む…。それを誰にも気付かれないように、地獄山の煙の中に落としてくれ…。その代わり君の言うことも聞いてあげる…」(アンノン星人)
「ボクの言うこと?」(ヒロシ)
「君はいつも皆にイジメられているだろう…。私の頼みを聞いてくれれば、君を一番強い子供にしてあげる…」(アンノン星人)
「ホント?」(ヒロシ)
「本当だ…」(アンノン星人)
←欲しいものはもらう。ちっとも弱虫じゃないぞ、ヒロシ君…。…って?


夜道を走るポインター。
「ダン、どこ行くの?」(アンヌ)
「ヒロシって子の家だよ。あれだけ子供がやられているのに、ヒロシって子が、何でもないはずはないだろう…」(ダン)
「しかし、子供たちと同じ原因かわからないだろう…」(アマギ)
「ヒロシって子に何かされたのかもしれないわ…」(アンヌ)
急停止するポインター。
目に見えないバリアのようなものに、ぶつかっているような気配だ。
「どうした?」(アマギ)
ポインターの前を調べる3人。…しかし、異常はないようだ。
「何でもないじゃない」(アンヌ)
←さっきから挑戦的な物言いのアンヌ…。干され明けのせいか?


ヒロシの家に行くダン。
しかし、ヒロシは部屋にはいない…。
「ヒロシ、…おかしいわね、どこ行ったのかしら…」(ヒロシの母)
「ヒロシ君に変わったことはなったですね?」(ダン)
「ええっ…。地獄山で石を拾ったといって、得意そうに部屋に持ち込んでましたけど…」(ヒロシの母)
←甘い言葉に誘われて、行くときは行ってしまう。ちっとも主体性がないぞ、ヒロシ君。


JIGOKUYAMA POLICE STATION。
「今、何か抱えた子があっちへ行きましたが…。男の子です」(警官)
「捜索隊を組織してください。彼を探し出さなくてはならないんです」(ダン)
「はい」(警官)
「地獄山へ行ったとしたら、道はふたつしかないんだ!」(ダン)
←口と声がかみ合わない、珍しいシーン。


ヒロシを追うポインター。
「どうして地獄山なんか行くのかしら…」(アンヌ)
「あの宇宙船の爆発と関係があるんじゃないか…」(アマギ)
「少年の拾った石に謎がありそうだな…」(ダン)
「どういうこと?」(アンヌ)
「あれは宇宙船が運んできたものじゃないのか?」(ダン)


ヒロシを探す捜索隊。
彼らの声を聞いて立ち止まるヒロシ。
「どうした?行くんだ!行け!…私にはあの硫黄と熱が必要なのだ」(アンノン星人)
「でも、あの人たちが…」(ヒロシ)
捜索隊の皆様を心配する心やさしきヒロシ少年。
「心配することはない…。坊やを捕まえようとする奴は私が倒す…。さあ、行くんだ!」(アンノン星人)
しかし、捜索隊に見つかる…。
「あっ!…オーイ、いたぞ!」(捜索隊)
暗闇に「目」が開く。倒れる捜索隊。


地獄山まであと少しの所で、急に歩みを止めるヒロシ。
「ねぇ、何をしようとしているの?」(ヒロシ)
「我々の星の平和を二度と荒しに来ないようにするだけだ。君も君をいじめる子はやっつけてやりたいだろう。私も同じことだ」(アンノン星人)
「いやだ、いやだ!ボク帰る!」(ヒロシ)
石を放り出すヒロシ。
「坊や、約束を破ることはできない。それに強い子にもなれないぞ!」(アンノン星人)
再び石を拾い、疑心暗鬼のなか、歩みを始めるヒロシ…。


ついに、山頂に着いたヒロシ…。
硫黄の中に石を放りいれようとした瞬間、ダンが取り押さえる。
「ヒロシ君、その石を捨てるんだ!」
「離せよぉ〜、離せよぉ〜」(ヒロシ)
ヒロシの手から石がこぼれ、硫黄ガスの中に転げ落ちる……。
巨大な岩となって動き出すアンノン星人。


攻撃を始める岩石怪獣アンノン。
ホーク1号の攻撃はアンノンには通じない…。 ←何せ岩なのだ…。
アンノンの光線により被弾、そして毎度の…。 ←不時着カウンターC
キリヤマ隊長たちの地上攻撃も効かない…。 ←何せ岩なのだ…。
「お前は、地球に何しに来たんだ?」(キリヤマ)
なんと、話し合いを始めたキリヤマ隊長…。 ←散々攻撃した後に…?
「我々のアンノン星を攻撃してきた、地球を破滅させにだ!」(アンノン)
「攻撃だって、それは違う。我々が宇宙船を打ち上げたのは平和利用のためだったんだ…」(キリヤマ)
「地球人の言うことは信じられない!」(アンノン)
じりじりと後退するキリヤマ隊長たちの前に、颯爽と登場するセブン。
投げとばす…、ゼンゼン効かない。 ←何せ岩なのだ…。
殴りつける…、ゼンゼン効かない。 ←何せ岩なのだ…。
エメリューム光線…、ゼンゼン効かない。 ←何せ岩なのだ…。
ついにセブンは、今回だけのスペシャル・ウェポン「腕からリング状光線」でアンノンの動きを止めて説得を始めた。 ←散々攻撃した後に…?
「アンノン、キリヤマが言ったことは嘘ではない。地球人は、決して君の星を侵略したのではないのだ…」(セブン)
「本当なのだな?」(アンノン星人)
「私も同じ宇宙人だ。…嘘は言わない!」(セブン)
「よし、セブンの言うことは信用しよう。アンノン星はいかなる星からの侵略目標にもさせない…」(アンノン星人)
そう言うと、岩から目のような光だけが離れて、夜空へ飛んでいった…。
アンノン星へ帰るアンノン星人の姿なのだ。頭脳生命体アンノン星人が抜け出た岩は、ただの岩石に戻った。


「あの宇宙の彼方にはわれわれの想像を絶する何かが存在している。宇宙開発も十分気を使ってやる必要がありそうだ」(浦野光)
←とってつけたような、エンディング・ナレーションですネ…。





ALIENS&MONSTERS



岩石宇宙人:アンノン
身長:3p〜30m
体重:3g〜15万t
特徴:頭脳か精神だけで構成される知的生命体
特技:木や岩などに目として寄生する
    岩石にくっつくと、結構無敵の岩石怪獣になる
弱点:宇宙人の説得

アンノンは、未確認を意味する「Unkhown」からの命名だそうです。因みにUFOとは、「Unkhown Flying Object」、つまり「未確認飛行物体」の頭文字です。





ACTOR&ACTRESS



ヒロシ少年は、「ウルトラマン」#26、27「怪獣殿下」にも出演した、稲吉千春クン。
また、アンノンの声は、クール星人やアイロス星人の声も演じた矢田耕司さん。「宇宙戦艦ヤマト」のタラン将軍も有名です。脚本家と声優がそろって「宇宙戦艦ヤマト」に関わるなんて…、ファンタスティック!!





LOCATION



日光(山の中)
TBS?(悪ガキ連を収容した病院)










                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第16話「闇に光る目」
              12/JUL/2001 初版発行  25/DEC/2001 第二版発行
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