セブンも放送開始から半年が経過して、いよいよ折り返しを迎えました。
セブンが強すぎる(宇宙人が弱すぎる…?)ためか、ウケの良い戦闘シーンにしても、視聴率はなかなか回復しませんでした。…とはいっても20%台中盤、立派な数字ですなんですが…。
それが直接の原因かどうかはわかりませんが、今回からセブンに弱点が授かることとなるのです。
STORY
オープニング・ナレーション
「不吉な雲の流れが、地球防衛軍の上空をみるみる暗くしていった。それはあの恐ろしい事件の前兆でもあったのだ。絶対零度の死の世界がやがて…」(浦野光)
金城脚本らしいナレーションです。
パトロール中のポインター。
運転席にはダンがいる。
あまりの猛吹雪に、ポインターのホバーも止まった。
(これはただの吹雪ではない。いったい何がこの異常寒波を…?)(ダン) ←出ました!金ちゃん得意の、ただの○○ではない…。
雪に埋もれるダン。
作戦室に戻ってきたアマギ。
防寒服には雪が貼りつき、真っ白だ。
「基地を中心としたこの一帯は、冷凍室のような異常寒波に包まれているんです」(アマギ)
「異常寒波?」(キリヤマ)
「隊長。富士測候所に、問い合わせてみたんですが…」(フルハシ)
言葉を切り、首を横に振る、フルハシ。
「原因不明の異常寒波か…。アマギ、表の気温は?」(キリヤマ)
「零下112度」(アマギ)
「冗談じゃないぜ!わが故郷北海道だって、せいぜい零下40度だってのに…」(フルハシ)
ソガが、コーヒーを入れながら、
「零下112度の寒波ゾーンに包まれたからといって、そうびくびくすることはないでしょう。地下18階の動力室では、原子炉が赤々と燃えているんだ。人類の科学、万万歳だよ」(ソガ)
コーヒーを口するアマギ。
「うまい!」(アマギ)
そこに無線コール音。応対するアンヌ。
「こちら、作戦室…、ダン!」(アンヌ)
憮然とした表情のダン…。
「隊長、ポインターがエンストです。いったい、この寒波は…?」(ダン)
「よし、ポインターを捨てていい。すぐ基地に戻れ」(キリヤマ)
珍しく、露骨に嫌な顔をするダン。
「どうしたんだ?…ダン」(キリヤマ)
←どうしたんだ?と言われても、外気温零下112度なのである。
「ダン、暖かいコーヒーがあるわよ。早く帰ってらっしゃいよ…」(アンヌ)
←そんなものより、外気温零下112度なのである。
「ああ…できる限り、頑張ってみるよ…」(ダン)
←死ぬかもしれないよね…外気温零下112度なのである。
いきなりの大振動…。停電する防衛基地。
「作戦室より動力室へ。いったい、何が起こったんだ?」(キリヤマ)
「原子炉がやられました」(ムカイ動力班長)
「なにぃ!原子炉がやられた…?原因は、何だ?」(キリヤマ)
「何がなんだか、わかりません」(ムカイ)
「何がなんだかわからんじゃ、さっぱりわからんじゃないか!すぐ、調べて連絡してくれ!フルハシ、アマギ。地下に降りて原因の調査を!」(キリヤマ)
パニック状態の作戦室。
外気温零下112度の猛吹雪の中を彷徨い歩くモロボシダン。
こころなしか、その足つきは不安げである…。
「ウルトラセブンにも弱点があった。光の国M78星雲から来た彼は、普通の人間以上に寒さに弱かったのだ」(浦野光)
←外気温零下112度で動ける普通の人間なんているの…?
一歩、一歩、暖かいコーヒーに向って歩を進めるモロボシダン。
修羅場と化した動力室。
「こっち来て!足元、気をつけろよ…。ライト右回せ!」(ムカイ)
フルハシとアマギがやって来た。
「それ持って来い!」(ムカイ)
「ムカイ班長!これはいったい…?」(フルハシ)
「見てください!この基地の心臓部をグサリとを一突きだ!人間なら即死です」(ムカイ)
「やっぱり、爆破されたんですか?」(アマギ)
「爆破じゃありませんよ。ドリルのようなもので、突き破られたんです」(ムカイ)
キリヤマ隊長からコール。
「アマギです。…はぁ、被害は想像以上に大きいです。…はぁ、この調子じゃ当分回復の見込みは…」(アマギ)
「何ぃ、見込みが立たぬ?地下ケーブルはこの基地の生命だぞ。全力で復旧作業に取りかかれ!」(キリヤマ)
復旧作業が始まった時、突き破られた穴の奥で、何かが動いた…。
口から冷凍ガスを吐き出す怪獣だ。たちまち凍てつく動力室。
一瞬ひるんだフルハシとアマギだが、火炎銃を手に怪獣に立ち向かう。
しかし、怪獣の吐く冷気には太刀打ちできない…。
「ダメだ…。火炎銃もダメだぁ!」(アマギ)
まるで、「焼け石に水」の反対である。
メディカルセンター。
非常電源の中、医療班アラキとアンヌによる負傷者の手当てが続く。
「基地が氷詰だようぉ…。アンヌ、防寒服出してくれ」(ソガ)
凍りつきそうな顔でソガが飛び込んできた。
「オッケー」(アンヌ) ←前回と今回は、三の線でお茶目なソガくん。
冷気の漂う基地内。
作戦室まで報告に戻ったフルハシとアマギ。
「怪物がいるというのは本当か?」(ヤマオカ長官)
「はっ、目のようなものを見ました。原子炉を破壊したのも異常寒波の犯人も、どうやらその怪物らしいんです」(フルハシ)
「この下にいるのか?」(キリヤマ)
「はっ、冷凍光線を吐き続けて、とても近寄れません」(アマギ)
「マグマライザーは?」(ヤマオカ長官)
「はっ、シャッターが開かないんです。原子炉と地下ケーブルが復旧しない限り、ホークそのほかの超兵器も使用不能です」(キリヤマ)
「う〜む、すると素手で戦うより、方法はないというのか」(ヤマオカ長官)
←さすが姿三四郎。言うことが違う。
「隊長、時限爆弾でその怪物を吹っ飛ばして…」(フルハシ)
「無茶なことを言うな!基地ごと吹っ飛んだら、元も子もないじゃないか…」(キリヤマ)
うなだれるフルハシ。
「超兵器も出動不能。レーダーも動かない…。スチームをストップ。一発心臓部を破壊されると、さすがの科学基地もモロいもんです…」(ソガ)
ボヤキながら防寒服を配る、三の線のソガくん。
そこにやって来た、医療班アラキの進言。
「長官。300名の全隊員を基地から退避させてください」(アラキ)
「退避?」(ヤマオカ長官)
「そうです。基地内部の気温は零下90度。このままでは全員凍死してしまいます」(アラキ)
「隊員の命が危険だというのか」(ヤマオカ長官)
「はっ…、医者としてとても責任がもてません…。お願いします、すぐ退避命令を…」(アラキ)
「基地を見捨てることは、地球を見捨てることと同じだ。我々は地球を守る義務がある。退却はできん!」(ヤマオカ長官)
これぞ司令官、貫禄の一言。
吹雪の中を懸命に歩くダン。
(基地はもう少しだ…。基地に着けば、暖かいコーヒーとスチームが、俺を待ってるぞ…)(ダン)
だが、気持ちに反して、歩みはさらに遅くなり…。
ついに、雪の中に倒れ込む、ダン。
同じ時、基地の廊下でひとりの隊員が、糸の切れたように倒れた。
駆け寄るアンヌ。
「立って…さぁ!…眠ったらオシマイよ!…身体を動かすの!」(アンヌ)
目は、またすぐに閉じられた…。 ←金城哲夫隊員殉職
「起きてぇ!…」(アンヌ)
アンヌの絶叫。
「起きなさいぃぃ…!」(アンヌ)
アンヌの声は、雪の中のダンにも届いた。
埋もれた身体を起き上げるダン。
しかし、意識は朦朧としているようだ。
再び、歩みを始めるダン。
そこに、太陽が現われる…が、これはダンの幻覚である。
しかし、太陽が炎に変わると、そこには宇宙人が浮かんでいた。
「光の国が恋しいだろうね、ウルトラセブン!でも、自業自得というものだ。M78星雲には冬はない。寒い思いをするがいい、ウルトラセブン!」(ポール星人)
「誰だ、お前は?」(ダン)
「地球を凍らせるためにやって来たポール星人だ。我々はこれまでにも、2度ばかり地球を氷詰めにしてやった。今度は3度目の氷河時代というわけだ」(ポール星人)
「氷河時代?」(ダン)
「地球上の生きとし生けるものが、すべて氷の中に閉じ込められれしまうのだ。ウルトラセブン!もちろん、お前さんも一緒だ!ついでにいっておくが、地球防衛軍とやらを、まず手始めに凍らせてやった!」(ポール星人)
「なに!」(ダン)
「あいつらがおると、何かと邪魔だからな…ハッハッハッハ」(ポール星人)
我にかえるダン。相変わらずの猛吹雪…。
「幻覚か…?幻覚を利用して姿を現わすとは…ポール星人め!…そうだ、基地が危ない…」(ダン)
左胸のポケットをまさぐるダン。
しかし、ウルトラ・アイは入っては、いなかった…。
どこか雪の中に、落としてしまったのだ。
ポール星人の出てくるシーンが秀逸ですね。
猛吹雪のシーンが一転して光に包まれたかと思うと炎の画となり、炎の中で、マリオネットギミックの影絵のようなポール星人が、ダンに語りかけます。ダンの顔は、ソラリゼーション処理したうえに、波のように揺れながら、炎をバックに、ポール星人と向かい合います。劇中楽曲の中でも出色の女性ハミングBGMとあいまって、凍死寸前のダンが見ている幻惑のようなシーンに仕上がっています。
動力室。
「怪物が姿を消したぞお!」(アマギ)
「なにぃ?…班長、鬼のいぬ間だ!」(フルハシ)
「よし、作業にかかれぇ!」(ムカイ)
中断していた復旧作業が再開される。
「…零下140度!?」(アマギ)
石油ストーブを運び入れる隊員…。
←そのストーブはないでしょう…。
ウルトラ・アイを必死に探すダン。
またもや、幻覚か…。ポール星人が再びダンの前に登場した。
「ウルトラセブン!お前の太陽エネルギーは、あと5分もすれば空っぽになる。地球がお前の墓場になるのだ。さぞかし、本望だろう!…ハッハッハッハ」(ポール星人)
←けっこう物知りのポール星人。
それにしても、大事な変身道具をやたらと盗まれたり落としたりするダン。
#3「湖の秘密」
ピット星人の円盤を捜索中、睡眠ガスで眠らされて盗まれる。「命より大事な…ウルトラ・アイ」などと言ってるくせに…。
#4「マックス号応答せよ」
女に化けたゴドラ星人に隙をみせ、殴られて負傷を負ったうえに盗まれる。
#17「地底GO!GO!GO!」
マグマライザーの事故で気絶、敵基地に手足を拘束のうえ監禁される。
#25「零下140度の対決」
大苦手な猛寒波による吹雪のなか、徒歩で帰還中に雪道で落とす。
#37「盗まれたウルトラアイ」
タイトル通り
ダンの前に怪獣が現われた。
原子炉を破壊し、基地を凍らせた怪獣である。
HYOHHYO‐ROROOOO…、鳩のような鳴き声だ。
「ミクラス、行け!」(ダン)
雪中でガンダー相手に一歩も退かずに善戦するミクラス。
電気にゃ弱いが寒さにゃ強い、ミクラス…?
懸命に続く復旧作業。
しかし、次々に倒れる隊員たち。
「アラキ隊員、頼む!」(アマギ)
「こっちへ…」(アンヌ)
「動力室もあと、4人しか残っていない…」(アマギ)
「……」(アラキ)
たまりかねたアラキは、再び長官の下へ向かう。
もちろん再度の意見具申のためである。
冷凍庫のような作戦室。
通信機器、電話、テーブルすら凍りついてしまった。
無言でたたずむ、ヤマオカ長官とキリヤマ隊長…。
駆け込んで来る、アラキ。
「長官!」(アラキ)
ゆっくりと振りかえるヤマオカ長官。
「もうガマンができません。長官、隊長。隊員が、どうなってもいいとおっしゃるんですか!全員ここで、討死にしろとおっしゃるんですか!」(アラキ)
「アラキ隊員!君には、長官の気持ちがわからないのか?」(キリヤマ)
「わかりません!…わかりたくありません!使命よりも人命です。人間一人の命は地球よりも重いって、隊長はいつも私たち隊員に…」(アラキ)
「い、いや…」(キリヤマ)
気まずい沈黙…。
「キリヤマ隊長…」(ヤマオカ長官)
2度3度と首を縦に振り、自らを納得させて決断したヤマオカ長官。
「アラキ隊員のいうとおりだ。地球防衛軍の隊員も一個の人間。人間の命は何より大切だ。…退却しよう」(ヤマオカ長官)
これぞ司令官、果敢な決断。
動力室。
わずか4人になった復旧作業チーム。
飛び散るフルハシの溶接機の火花。
その横は、電気ドリルで何を直しているんだ、イカルス星人?
イカルス星人じゃなかった、ムカイ班長がゆっくり目を閉じる…。
「あっ、班長!しっかりしてください」(フルハシ)
ムカイを抱きかかえるフルハシ。
「班長、ムカイ班長。あなたが倒れたらすべてオシマイだ!班長、しっかりしてください!班長!」(フルハシ)
「何だ?あの地響きは…」(アマギ)
ミクラスとガンダーの死闘は続く…、一歩も譲らない両者。
やっと、ウルトラ・アイにたどり着いたダンは、すかさず変身する。
しかし、
「寒さと戦うため、著しくエネルギーを消耗したウルトラセブンには、戦闘能力がなかった。セブンは、残り少ないエネルギーで太陽の近くまで飛び、エネルギーを補充しなければならなかったのだ」(浦野光)
という理由で宇宙へ飛び立つ。
冷凍光線が直撃して、動きに精彩を欠くミクラス。
守勢にまわるが、状況は芳しくない…。
太陽に向かうセブン。急げ、急ぐんだ、セブン。
冷凍庫のような作戦室。
ついに、ヤマオカ長官も…。
「あっ!長官!長官!」(キリヤマ)
崩れ落ちるヤマオカ長官。
決意するキリヤマ隊長。
基地全館に一斉放送。 ←なぜ電気が生きている?
「我々は、全力を尽くして頑張った。だが、外部との通信も、応援も、全く断れてしまった。これ以上、犠牲者を出すことは、長官の本意ではない。涙を呑んで、我々は、一時、基地を退避する」(キリヤマ)
ヤマオカ長官に代わり、無念の総員退避命令。
神妙な面持ちのアラキとアンヌ。
「チキショー!」(アマギ)
全身で悔しさを表わすアマギ。
崩れ落ちるムカイ。
「ムカイ班長!基地から2キロ出れば、冷凍倉庫から脱出できる。さぁ班長!」(アマギ)
「班長、しっかりしてください…」(ソガ)
ムカイを抱きかかえて撤退を始めるアマギとソガ。
「よぉぉし!」(フルハシ)
退避命令を無視して残るフルハシ。
電気ドリルとスパナを手に修理を続ける。
そして、突然、
「基地は再び復活した…。さぁガンダーとの決戦だ」(浦野光)
←直ったの…?、ど・う・し・て・?
速攻で出撃するホーク1号、3号。
1号には、キリヤマ隊長、アマギ、アンヌ。
3号には、フルハシ、ソガ。
ミクラスを倒して喜んでいるガンダーに挑む。
「ホーク1号を3つに分けて戦おう…」(キリヤマ)
「はい!」(アマギ、アンヌ)
ベーター号とガンマ号へアマギとアンヌが向かう。
「カルテット作戦、開始!」(キリヤマ)
分離するホーク1号。
「アンヌ!遅れるな」(キリヤマ)
「はい!」(アンヌ)
1号3機編隊+3号の4機、即ちカルテットで攻撃開始。
4機同時操演という離れ業のため、さすがに火薬は使えません。そのため、光学合成のレーザー砲での攻撃になっています。ビシッと決まったカルテット攻撃の後に、太陽エネルギーを充填したセブンが、元気満々で帰ってきます。セブンは、よほど寒さに懲りたのか、寒さを感じる間もない速攻で勝負をかけます。
決まり手:アイ・スラッガー。両手、首落とし。
「ウルトラセブン!どうやら、我々ポール星人の負けらしい。第3氷河時代は諦めることにする。しかし、我々が敗北したのはセブン、君に対してではない…。地球人の忍耐だ!人間の持つ使命感だ!その事をよぉ〜く知っておくがいい、ハッハッ、われわれは、君のエネルギーが、元のように多くなく、そして活動すればたちまち苦しくなる弱点を作っただけでも満足だ!ハッハッハッハッ」(ポール星人)
点滅するビームランプ。そして、晴れる空…。
吹雪の去った、晴天の雪原。
「ミクラス、戻れ!」(ダン) ←良かった、忘れられなくて…。
「地球防衛軍とウルトラセブンにとって魔の時は去り、地上には再び平和が戻った。科学力を誇る地下秘密基地にも弱点があったように、我らがウルトラセブンにも思わざるアキレス腱があったのです。しかし、セブンの地球防衛の決意は、少しもひるむことはありません」(浦野光)
ALIENS&MONSTERS
ミニ宇宙人:ポール星人。
身長:33p
体重:1s
出身:ポール星
特徴:小さい割に態度はデカイ
特技:氷河期
弱点:使命感と忍耐
凍結怪獣:ガンダー。
身長:45m
体重:2万t
出身:不明
武器:凍結光線(といっても息である)
特技:空が飛べる、何が何でも凍らせる
特徴:目玉がカタツムリ
ACTOR&ACTRESS
医療班のアラキ隊員役は、幸田宗丸さん。#4「マックス号応答せよ」では、マックス号艦長で出演していました。凛とした態度で、節のある役がハマリ役です。また、アラキ隊員の言から、キリヤマ隊長は防衛隊員の前で講和をしていることがうかがえます。
動力班のムカイ班長は、#10「怪しい隣人」の怪しい隣人こと、山本廉さん。イカルス星人の化けた怪しい男を演じた前回とは違い、今回は猛寒波の中、死に物狂いで自らの任務に頑張る熱血隊員役です。
また、うらやましいのが、アンヌの腕の中で凍死する隊員役の、金城"デタガリ"哲夫氏。この回のスナップは、いろいろな出版物に掲載されています。
STAFF ROOM
さて、デタガリ脚本家の金城哲夫氏は、玉川大学在学中から円谷英二氏の知己を得て、関沢新一氏に師事してシナリオを学びました。27歳という若さで、円谷プロ企画室長の名のもとに、「ウルトラQ」の企画を進め、以後、「ウルトラマン」、「快獣ブースカ」、「ウルトラセブン」、「マイティジャック」、「怪奇大作戦」と、一連の円谷作品の実質的なプロダクション・プロデューサーを務めました。また、番組のラスト数分に特撮アクションを用意して、そこに物語を絞り込むという時代劇的ファーマットをヒーローものに定着させたのは、彼が初めてでした。セブン終了の翌69年、故郷沖縄に帰郷し、後には海洋博覧会の演出等を手がけましたが、76年、自宅2階から墜落し、亡くなりました。37歳の若さでした。
「金城さんは円谷プロの企画室長という立場だった。僕らはよく文芸部と呼んでいましたが、そこでまだ新人の市川森一ほか多士済々のライターたちにホンを発注し、金城さんがとりまとめて栫井さん(注:TBSプロデューサー)に"こういうのはどうだろう"と提案して、栫井さんが採用するかどうか判断するという形でした。金城さんは市川森一をはじめ、佐々木守、山浦弘靖、山田正弘、若槻文三、そして最近は小説家になってしまった藤川桂介…と、たいへんなメンバーを育てたのです。上原正三は、故郷の沖縄の後輩で金城さんを頼って上京したんですね。金ちゃんについていろいろ勉強して、上原も後々すごい活躍をした」(※8、飯島敏宏:談)
金城哲夫氏の描くエンターテイメントは、一言でいうと、ファンタジーやメルヘンの彩りを添えられた現実への挑戦がテーマです。金城氏は、子供向けの夢物語なんだから、そんな悲壮な現実への思いを描いても仕様がないじゃないか…とは、考えなかったのです。むしろ、これから難題にぶつかりつつ、その一つひとつをクリアしながら大人に向かって成長してゆく子供向けの番組だからこそ、逃げや誤魔化しはしないで、真正面からどうにもならない現実を描いて見せたとは考えられないでしょうか。しかし、悲しいかな…、実質25分という尺では、十分に伝わりきれない部分も多々あったようです。
その部分を補う技法が、効果的な(時には唐突な)ナレーションの挿入だったのです。
直球勝負の金城脚本もTBSの制作担当プロデューサーが代わると、人間模様への踏み込みが甘いのではないかと指摘されはじめます。すなわち、ウルトラ警備隊員の行動ひとつをとっても、侵略宇宙人や怪獣に対して闇雲に対抗するのではなく、正義感や使命感といったモチベーションが描かれなくてはならないのでは…?というところです。直球勝負の金城脚本では、この部分は、そういうものであるというお約束にされていたのです。ですから、隊長が「突撃!」と言えば、隊員は何の感情も出さずに「はいっ!」と答えていたのです。ここから、シリーズプランナー兼脚本家、金城哲夫の産みの苦しみが始まるのです。そして、そのひとつの回答が、#42「ノンマルトの使者」だったと思います。
LOCATION
清里(ラストの雪原シーン:#24の冒頭と一緒に撮った)
当初、ダンの彷徨する雪原のシーンはロケ撮影のつもりで、あちこちとロケ地を探したそうです。しかし、この年は記録的な少雪で、東京から日帰り圏にある近場では、どこにも雪はなかったそうです。それで、仕方なくセットで雪原を再現したのですが、発砲スチロールと塩でつくられた雪原は、ロケに行くよりも費用がかかったそうです。そのせいか、ラストシーンのロケは、ダンひとりだったそうです…。
「ウルトラセブン」ストーリー再録 第25話「零下140度の対決」
12/JUL/2001 初版発行 08/JAN/2002 第二版発行
Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights
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制作23話 脚本:金城哲夫
監督:満田かずほ 特殊技術:高野宏一