「ウルトラセブン」は、昭和のTV版(30分)が49本、平成になってのTV特番(90分)が2本とVTR版(60分)が9本が制作されました。本作品は30年を超えるセブンシリーズの中でも、最もエンターティメントというか、サービスというか、とにかく「お笑い」に徹した回であるといえるでしょう。
人呼んで「ここまでやるかの700キロ!」…。 ←誰も呼んでいないって…。
STORY
ダンとアンヌはデート中?
顔よりデカイ煎餅をかぶりつきながら映画を観ている二人…。
「サハラ砂漠の熱砂を巻き上げて、レーサーたちの血が踊る素晴らしい競演をご覧ください。平均時速120キロという過酷なレースは、脱落者が続出し、翌日に持ち越されたレースでは、残った車は僅か11台。晴れた空に、エンジンの音も高き、キリンの群れを蹴散らし…」(浦野光)
その映画とはどうやら、サハラ砂漠を舞台としたアフリカ・ラリーの実写映画というつもりらしい…。
夢中のダンが、バリバリと煎餅をかじる音を注意する前の席のおっさん…。
←意味のない細かな演出が、満っちゃんの持ち味です。
映画の次は遊園地。
顔よりデカイ綿アメをなめながらコーピーカップに乗っている。
「走りたいなあ〜」(ダン)
「えっ…」(アンヌ)
「アフリカ大陸横断!」(ダン)
「ラリー?」(アンヌ)
「うん、地平線の果てまで突っ走るんだ!」(ダン)
おもむろに、コーヒーカップのハンドルを力の限りぶん回しながら…。
「いいぞぉ!…ブーン、ブーン、ブーン!」(ダン)
異常に、子供っぽいダン。
←そのときの都合でキャラを変える演出が、満っちゃんの持ち味です。
晴れた空にエンジンの音も高き、枯草の草原を無数のクルマが走るサハラ砂漠の過酷なラリー…。
てっ…、走っているのは、品川ナンバーの車たち。
それに、どう見ても、冬の草原…。
←どうしてもアフリカ大陸にみせたい無理な演出が、
満っちゃんの持ち味です。
空を行く防衛軍の大型輸送機。
「高性能火薬、スパイナー。その威力はニトログリセリンの数百倍。だが地球防衛軍の実験場に運ぶ途中、何者かによって襲撃されてしまった。そこでウルトラ警備隊に、スパイナー運搬の特別命令が下った」(浦野光)
ミサイルが飛んできて命中、爆発する輸送機。
作戦室。
高性能火薬スパイナーの移送作戦が論じられる。
「空は避けた方がいいと思います。ホークとはいえども安全とはいえません」(ダン)
ウルトラホーク1号のフリップを持つダン。
「私も同感だ。敵に狙われていて、しかも運ぶものが爆発物である以上、より安全度の高い方法を選ぶべきだ」(マナベ参謀)
「海底なら安全だなぁ」(フルハシ)
ハイドランジャーのフリップを持つフルハシ。
←プラモ化された兵器を露骨に紹介する演出が、満っちゃんの持ち味です。
「しかし、海路でここまではいいとしても、ここから実験場までの距離をどうする?」(キリヤマ)
基地から実験場までの陸路をどうするか…。
「いい手はないのかね?」(マナベ参謀)
「あります!」(ダン)
思わず机上を叩くダン。
「グッドアイデアです!」(ダン)
ダンの言うグッドアイデアとは…?
絵画館前広場。(東京都新宿区霞岳町)
「モロボシダンのいうグッドアイデア…。
それはラリーに紛れ込んでスパイナーを運ぶ秘密作戦だった。トランクには厳重にショック止めされたスパイナーのカプセルが仕込まれている。まさに走るダイナマイトである。点検も慎重だ。」(浦野光)
←どうしてもラリーにしたかった無理も、満っちゃんの持ち味です。
スパイナー移送特別作戦用擬装ラリー車に乗り込む、ダンとアマギ。
出場ナンバーはもちろん「7」である。
「準備OK」(アマギ)
ナンバー「3」のラリー車が動き出す。
「職業パイロット。昨日急遽参加申し込み。事件当時のアリバイ不明。特にマークする必要あり」(ダン)
次に、ナンバー「1」のラリー車。
「住所不明、職業不明。ラリー初参加」(ダン)
ナンバー「7」のラリー車、ダンたちのスタート。
「いよいよ700キロレースが開始された。ダン、アマギ両隊員にとっては、まさに恐怖のレースなのだ」(浦野光)
念願のラリーにムリヤリ参加したダンは快調にとばす。
それを見張る双眼鏡…。
「来たぞ…」(フルハシ)
隊長以下、私服姿の隊員たちはジープでサポートに当る。
「ULTRA SEVEN」のBGMにのって、初春の山岳地帯を快調に走る。
←自分の好きな曲をバリバリ使うのも、満っちゃんの持ち味です。
すると、正面からオートバイに乗った男が突っ込んでくる。
「ぶつかるぞ…!」(アマギ)
すれ違いざまに発砲するダン。
命中したオートバイは大爆発を起こす。
「人間爆弾ですよ」(ダン)
西部劇のガンマンよろしく、銃をクルクルと回転させてからホルスターにしまい、こともなげに言い放つダン。
←場違いとか、何故?とか、ツッコめる隙が、満っちゃんの持ち味です。
要マークの3号車が後方から迫る。
先に行かせるダンとアマギ。
「待ち伏せするつもりかなぁ…」(アマギ)
すると、前方から突然の爆発音…。
「行ってみましょう」(ダン)
先行した3号車が燃えている。
「敵の狙いは僕たちだったんですよ。そこで僕たちを追い抜いたばっかりに…」(ダン)
「身代わりになったのか…」(アマギ)
DADADADADADA…
今度は機関銃で襲われる。岩陰に逃げ込む2人。
怯えるアマギ。
「恐いんだ…、恐いんだよぉ。小学校のころな、近くの花火工場が爆発して、家も人間もバラバラだったんだ。それ以降ダメさ、足がすくむんだ。隊長はそれを知っている。それなのにわざと俺を選んだんだ」(アマギ)
「そんなことはありません。爆発物を運ぶんです。僕だって恐い…。しかし、これは任務なんです。ウルトラ警備隊の任務なんですよ、アマギ隊員」(ダン)
アマギのトラウマ…、弱いのはスカイダイビングだけではなかったのだ。
気を取り直して進むダンとアマギ。
いつしか日は暮れて、夜道を走る。
森の前を通りかかると、もう1台の要マーク車の1号車が止まっている。
辺りを見回すと1号車の男が逃げていくではないか。
「待て、出て来い!」(アマギ)
周りを捜索するダンとアマギ。
すると、森の奥深くから弦楽器の音色が聞こえてくる…。
これは、怪しい…。
音の方にゆっくりと近づくダンとアマギ。
すると、マンドリンを弾きながら焚き火をする一行がいるではないか。
ゆっくりと近づく2人。
すると、2人の気配に気づいたか、マンドリンの音が止む。。
「…隊長?」(ダン)
怪しい一行は、ウルトラ警備隊だった。
「いったい、何があったんだ?」(キリヤマ)
←それはこっちのセリフである…。
「はぁ、1号車を追い詰めたんです」(ダン)
「1号車…?」(キリヤマ)
「この辺に逃げ込んだんです」(アマギ)
「バカ!なぜ車を離れた!」(キリヤマ)
←アンタたちが怪しいからだろ…。
ラリー車に戻った隊員たち。
車は無事だ…。しかし、そこに謎の影が…。
「…ソガ隊員…」(ダン)
目配せするダン。
ダダダダダダダダッ…
突如、火を吹く、ソガのマンドリン。
ソガの持っていたのは、マンドリンに偽装した特殊マシンガンだったのだ。
←カンベンしてくれ…、満っちゃん…。
マンドリン弾にあたり、1号車の男は倒される。
正体のわからない敵との神経をすり減らす持久戦に限界を感じたアマギ。
「隊長!交代させてください。これ以上の走行は耐えられません!」(アマギ)
静まる一同…。
その時、時を刻む音が…。
トランクを開け、スパイナーカプセルを調べるダン。
「しまった、時限爆弾を仕掛けられた」(ダン)
「触るな、爆発するぞ!」(キリヤマ)
「時限装置を外します。避難してください」(ダン)
「アマギ…。お前がやれ」(キリヤマ)
「隊長…」(アマギ)
「アマギ隊員は疲れています」(ダン)
「命令だ!」(キリヤマ)
弱々しく爆弾に向うアマギ。
しかし、プレッシャーに負ける。
「で、できません!」(アマギ)
キリヤマ隊長の平手打ち、一閃。
「時間がない、早くやれ」(キリヤマ)
平然と言い放ち、この場を立ち去るキリヤマ隊長。
残されたアマギは、時限装置をはずす作業に取り掛かる。
むしろ、自分と戦いながら…。
「だ、だめだぁ…」(アマギ)
ダンに助けを求めるアマギ。
黙って、首を横に振るダン。
観念したように爆弾と相対するアマギ。
息詰まる緊張の中、アマギはある部品を外す…。
時を刻む音は止まった。
「成功、成功したんですよ!アマギ隊員!」(ダン)
「…う、うん…」(アマギ)
外した部品を愛しそうに見ながら、うなづくアマギ。
翌朝。
「実験場まであと100キロよ」(アンヌ)
「うん、もう大丈夫だ」(フルハシ)
「油断するな。奴らはしつこい」(キリヤマ)
「なぜ邪魔をするんでしょうね。スパイナーの運搬を…」(ソガ)
「わからん。ただ、奴らが実験を恐れていることは確かだ」(キリヤマ)
「出発します!」(ダン)
労を癒すように、アマギの肩をたたきながら…
「疲れたろう、フルハシと代われ」(キリヤマ)
「よし、選手交代だ」(フルハシ)
「隊長!」(アマギ)
不満そうな顔で睨みつけるように、
「任務を遂行させてください!」(アマギ)
「…うむ!」(キリヤマ)
満面の笑みでうなずくキリヤマ隊長。
「…さあ、出発しようぜ!」(アマギ)
はりきるアマギ。
←いいシーンです。やれば出来るのが、満っちゃんの持ち味です。
走行中のラリー車。
その上空に2機のヘリコプターが近づいてくる…。
車体を左右に振りつつ走行するが、ヘリのスピードの前では無力だ。
ヘリから落下した物体が車の屋根に取り付けられる。
物体は気球のようにふくらみ、ラリー車を空に誘う。
「野郎…」(アマギ)
レバーを倒すアマギ、レーザー砲が発射される。
「ざまあみろ」(アマギ)
一機撃墜。しかし、もう一機いる。
地上の隊長たち。
「ソガ。気球を撃て!」(キリヤマ)
「しかし…」(ソガ)
躊躇するソガ…。
「命令だ!」(キリヤマ)
「は、はい」(ソガ)
DAM!
破裂する気球。落下するラリー車。
「ジュワッ」(ダン)
ヘンな掛け声とともにレバーを倒すダン。
ホバー機能が作動して軟着陸。
直ちに走り出す特殊擬装ラリー車。
「任務、無事完了しました」(キリヤマ)
「ご苦労」(マナベ参謀)
実験場係員が走りよる。
トランクを開けるダンとアマギ。
しかし、係員は、隊長たちのジープへ向かっていく。
するとジープからスパイナーのカプセルが降ろされる。
顔を見合わせる、ダンとアマギ…。
「敵を欺く前に、まず…」(キリヤマ)
「それじゃあ隊長、僕の臆病を…」(アマギ)
キリヤマ隊長の真意を知るアマギ。
「ありがとうございました」(アマギ)
アマギのトラウマを克服させるためだったのだ。
「早速、スパイナーの実験が行われることになった」(浦野光)
スパイナー実験場。
トーチカのような実験場司令室。
←これって、どこかで見たような…。松代の起動実験場だよね…?
「準備はいいか?」(実験場主任)
「準備完了」(係員)
「これより秒読みに入ります」(実験場主任)
その時、実験場の地中から、戦車に乗った怪獣出現。
「何だ?」(キリヤマ)
「…恐竜です!」(ダン)
←そんな、戦車の車台に乗ってるのが、恐竜だなんて…。
「よし、やっつけてやる」(ソガ)
司令室から出てゆこうとするソガ。
「待て!恐竜はスパイナーを咥えているぞ」(キリヤマ)
前進を始める戦車の車台。
「恐竜タンクです」(ソガ)
←ネーミングbyソガ君。
「どうやら、やつらの動く要塞らしい…」(キリヤマ)
←ど・う・し・て・わ・か・る・の…?満っちゃん?
「スパイナーの実験を恐れるわけだぁ…」(フルハシ)
←ど・う・し・て・お・そ・れ・る・の…?満っちゃん?
美術担当の成田亨氏は、戦車に乗っているモンスターを考えてという円谷プロからのオーダーに、激怒を超越して、あきらめの境地へ…。
成田亨氏は、「ウルトラQ」の第2クールから円谷プロに参加し、ペギラからはじまる怪獣路線へ変更後のウルQ怪獣のデザインを行いました。また、着ぐるみ造形に高山良策氏を引っ張ってきたのも成田亨氏でした。
ウルトラマン、ウルトラセブンといったヒーローはもとより、出演怪獣・宇宙人をデザインし、また、科学特捜隊、ウルトラ警備隊の兵器、装備、隊員服、本部作戦室等のセットなどの基本設定に携わりました。クレジット名義こそ「美術」ですが、各回の本編セットと特撮セットのデザインなど、成田亨氏が実質上の美術総監督として働いたのでした。
不可解なオーダーの原因は、予算逼迫による東宝からのお古再生を前提に置いた制作サイドからの強い要望でした。この辺の事情は、#21のアイアンロックスと同様です。東宝から譲り受けられることになったのは、ゴジラ映画の防衛軍の車両などでしたので、戦車と怪獣との組み合わせが考えられたのでした。もっとも、この戦果は、#30「栄光は誰れのために」の防衛軍陸上部隊演習に現れています。今回では、ペリコプターがその一部でしょう。
あきらめの境地に至ってしまった、ウルトラシリーズの美術総監督にして、ウルトラマン、ウルトラセブンのビジュアル面での生みの親、成田亨氏は、#30のプラチク星人を最後に、円谷プロを退職し、セブンから降板してしまいました。
スパイナー実験場。
外に取り残された、ホンダ、ササキの両名を救うために外に出るダン。
恐竜戦車の攻撃に翻弄されながらもどうにかセブンに変身する。
後退しつつ尻尾で一撃をくらわす恐竜戦車。
戦車車台の割に、動きがスムースである。
長い尻尾の攻撃に手を焼くセブン。
尻尾攻撃のダメージから、動きの止まったセブン。
その虚を突いて、セブンに突進する恐竜戦車。
なんと、左腕を恐竜戦車に轢かれてしまう。
痛みに苦しむセブン…。
今度は、車台前方の砲塔から砲撃が始まる。
多彩な攻撃に、さすがのセブンも防戦一方…。
それでも勝機をつかむために突進するセブン。
激闘のため、スパイナーカプセルが恐竜戦車の口から地面に落ちた。知らずに通りかかる恐竜戦車が、スパイナーカプセルに接近した瞬間、セブンのハンドショットがカプセルに向かって放たれた…。
決まり手:ハンドショットでスパイナー誘爆。木っ端微塵。
激闘後。
土砂に埋もれたところを救助されるダン。
「ダン!」(アマギ)
固い握手を交わす、ダンとアマギ。
「ウルトラ警備隊の任務は厳しい、大きな勇気とたゆまぬ努力が必要だ。アマギ隊員も立派に任務を遂行した。これからも恐ろしい敵は次々と現れるだろう。だが、われわれがウルトラ警備隊魂を持ちつづける限り、地球の平和は守られるに違いない」(ダン)
NEW WEPONS
移送作戦用擬装ラリー車。
「いすずベレット1600GT」を種車に、レーザー砲やホバー機能を装備した特殊車両。この擬装にはポインターの技術が活かされている。
「いすずベレット1600GT」
このベレットは63年11月に発売されたシリーズです。その後、小規模の変更を加えながら、73年まで実質的に同一モデルが生産し続けられました。4年に1回のフルモデルチェンジが普遍化し始めていた時代では、モデル末期、車ももはや旧車の風格を漂わせていました。インパネには、燃料計、電流計、水温計、油圧計、タコメーター、スピードメーターなどが横一列に並び、まるで戦闘機のような色気のなさでした。
ALIENS&MOSTERS
侵略宇宙人:キル星人
身長:不明
体重:不明
出身:キル星
武器:恐竜戦車、人間爆弾
特技:人前に現われない
弱点:名を呼ばれていないので無名
※地球人に化けたキル星人が1号車の2人。
戦車怪獣:恐竜戦車
身長:60m
体重:7万t
出身:キル星(製造or改造?)
武器:目から怪光線、長い尻尾、砲撃
特技:セブンを轢く
特徴:恐竜が戦車に乗っている(そのまんま…)
※劇中では「恐竜タンク」、後の怪獣図鑑などからは「恐竜センシャ」とルビが振られた。
人間爆弾
身長:1m70p
体重:60s
出身:キル星(製造or改造?)
特技:単車の運転
特徴:見た目は人間と変わらない
弱点:すぐに引火する
LOCATION
アフリカ大陸(冒頭の映画)
多摩川園or向ヶ丘遊園?(冒頭の遊園地)
絵画館前広場(ラリー出発地点)
EXTRA
「ダンとアンヌの関係も大きく変わってきます。あまりロマンチックなやり取りはありませんでしたが、ハッキリと恋人同士という演出がされるようになります」(ひし美ゆり子、※2)
…という演出が、満っちゃんの持ち味だろう、と思いますです…、ハイ…。
「ウルトラセブン」ストーリー再録 第28話「700キロを突っ走れ!」
06/SEP/2001 初版発行 20/JAN/2002 第二版発行
Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights
Reserved
特殊技術:高野宏一
制作28話
脚本:上原正三
監督:満田かずほ