第37話
未確認物体が、落下した…。
パトロール中のポインター。
フルハシとアマギが基地のソガと交信中…。
「何をぼやぼやしているんだ!落下地点くらい確認できないのか!」(アマギ)
いきなり、怒りのアマギ。
「レーダーには、何千ていう怪事件がキャッチされているんですよぉ〜」(ソガ)
勘弁してくださいよぉ、といった口調のソガの声。
「だから、コンピュータがあるんだろう…。お前みたいなウスノロが、よくもウルトラ警備隊員になれたもんだ…」(アマギ)
「アマギいいかげんにしろ。我々は、警察から連絡を頼りに探そう」(フルハシ)
見放したように、フルハシが言う。
「そうしていただきたいですね、ウスノロの僕じゃ、その未確認飛行物体とやらは…」(イジケまくりのソガ)
「うるさい!」(アマギ)
通信を切るアマギ。
「奴と話していると、アタマにくる!」(アマギ)
苦笑いのフルハシ、ポインターを発車させる。
夜道を行くポインター。
向かいからダンプカーが走ってくて、ポインターとすれ違った。
「おい、今の…女に見えなかったか」(フルハシ)
「ああ、イカす女の子だった…」(アマギ)
運転手は若い女、というより少女だった。
「チクショー、ダンプなんて運転しやがって…」(フルハシ)
制作37話
脚本:市川森一
監督:鈴木俊継
特殊技術:高野宏一
「セブン怪獣の出ない3部作」の2本目。
そして、市川セブンの集大成。

「あるときね、新しい宇宙人造れないって言うんだ、造る金がない…。その前の回で先輩たちが使っちゃうんでね…。何とか宇宙人なしの回を1回出来ないかって注文が来たんですよ」(市川森一:談、VTR「わが愛しのウルトラセブン」バップ/円谷プロ)

予算不足が生んだ、やむない人間(宇宙人)ドラマが、後年高い評価を得たのでした。今でこそ、この作品の意図とするところやその良さが理解され、傑作のひとつであると認識できますが、子供当時の記憶的には、退屈かつ、よくわからない回でした…。






PHOTO STORY
「チクショー」はないでしょう…、「チクショー」は!!
「チクショー」というのは漢字で書くと、「畜生」…。そう、犬畜生とかの「畜生」なんですよ。こんな言葉を他人様に投げかけるなんて…。英語でいうところの「Mather Facker」と同等の言ってはならない言葉のはずです。この頃って、こんな言い方が、まかり通っていたんですね…。
また、「チクショー」はともかく、「クソッ」もよくいわれていますし、「狂った」とか「キ○○イ」といったトンデモものの侮蔑用語から、「失敬」とか「頻々に」という難解用語などが多く出てくるのも、時代のせいなのでしょう。
ALIENS&MONSETRS
ACTOR&ACTRESS




マゼラン星人:マヤ
氏名:吉田ゆり→香野百合子
身長:159p
体重:44s
出身:東京都
学歴:桐朋学園短期大学演劇科卒
所属:劇団俳優座
TV「永すぎた春」「文子とはつ」「獅子の時代」など
映画「皇帝のいない8月」「Wの悲劇」「復活の朝」など
舞台「どん底」「心…わが愛」など


マヤ役の吉田ゆりさんは、当時17歳の高校生でした。
その後、進学した桐朋学園短期大学演劇科を卒業してから本格的な女優活動を始めます。芸名も香野百合子としました。そして、セブンから10年後の78年、人気絶頂だった「太陽にほえろ!」にゲスト出演します。殿下こと島刑事(小野寺昭)の恋人役です。72年に始まった「太陽にほえろ!」は、マカロニ刑事、ジーパン刑事の殉職を経て、76年に最高視聴率を記録した「テキサスは死なず」を頂点に、ややマンネリ化しつつある頃でした。そこで、各刑事の私生活に焦点をあてたミニ・シリーズを挿入して、作品世界の幅を広げようと試みたのです。そのひとつに、殿下というニックネームが示す通りの甘いマスクながら、番組初頭から失恋続きの島刑事に本当の恋人を授けようという企画がありました。その恋人役に白羽の矢が立ったのが、大人になったマゼラン星人マヤの香野百合子さんだったのです。香野さん演じる三好恵子は、「太陽にほえろ!」の299話「ある出逢い」から登場し、306話「ある決意」、311話「ある運命」、316話「ある人生」、335話「ある結末」と、準レギュラーとして出演しました。この過程で、彼女は銃弾を受け、下半身付随になってしまい、その回復手術を受けに渡米することになるのです。しかし、二人は結ばれることのないまま、1年半後の414話「島刑事よ、永遠に」で、殿下は殉職してしまいます。しかも、事件解決後、手術が成功して帰国する彼女を成田空港に迎えに行く途中の出来事でした…。殿下の彼女が、しかも結構不幸な役回りの彼女が、とっても不幸なマゼラン星人マヤだったとは…。なにか役の上での輪廻のようなものを感じぜずにはいられません。
また、335話「ある結末」では、ユシマ博士の山本耕一さんがゲスト出演されていますし、53話の「ジーパン刑事登場!」に、アンヌがゲスト(チョイ役)出演しているように、円谷プロと同じ東宝系の国際放映(旧新東宝)の製作だったせいか、両方の超怪物番組に重複して出演されている方は結構多いです。梅津栄氏などはその代表といえるでしょう。





LOCATION



TBS会館(プラネタリウム?)
新宿東口通り(夜の街)
世田谷体育館前噴水広場(ラストシーン)










                        





           「ウルトラセブン」ストーリー再録  第37話「盗まれたウルトラ・アイ」
              06/SEP/2001 初版発行  27/JAN/2002 第二版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved





止まるポインター。
山中の夜道に倒れている男を発見したのだ。
「おい、どうしたんだ?」(フルハシ)
「しっかりしろ!」(アマギ)
「…光…の中…に…、女が…」(男)
重傷を負っている男は、それだけ言うのがやっとだった。
周囲を見渡すフルハシとアマギ。
「あっ?」(フルハシ)
フルハシの指さした先には、水蒸気が上がっていた。
「猛烈な噴出の跡だ」(フルハシ)
「これは只事じゃない。さっきの発光体と何か…」(アマギ)
「すると、あの女が…、行こう!」(フルハシ)
ポインターに戻った2人。
「ポインター1号よりポインター2号へ」(アマギ)
「はい、こちらポインター2号」(ダン)
「若い女が運転するダンプが山を下った。検問を頼む」(アマギ)
「若い女ですね。了解!」(ダン)
ダンプカーが迫ってくる。
身体を張って、止めようとするダン。
しかし、ダンプカーは速度も緩めず、通過する。
間一髪、よけるダン…。
←それじゃ、検問になってないだろう…。
ポインター2号で追跡するダン。
その時、謎の発光体が現われ、ダンに閃光を浴びせる。
ダンは、あまりの眩しさにハンドルを切り損ねて、崖下に落下した…。
車から放り出され、土の上に横たわるダン。
意識も絶え絶えのダンに近づく人影がいる…。
ダンプカーを運転していた少女である。
少女は、ダンの胸ポケットから、何かを抜き取っていく。
飛び去る、謎の発光体…。
渋谷の五島プラネタリウム。
渋谷駅東口、東急文化会館屋上の天文博物館「五島プラネタリウム」といえば、とにもかくにも、女の子をひきずりこみたいスポットでしたよね…。そんでもって、暗闇に紛れて…、あーしたり、こーしたり、…なんて妄想するわけですよ、思春期の健康な男子は…!。いやぁ、暗闇っていいっすね…。こーゆー時だけ、夜は闇だらけが、うらやましいっス!
そんなんで、渋谷文化圏の住人(東急線やら井の頭線の沿線住民、但しオス)だったら、いろんな意味であこがれのスポットだったわけですよ、ここは!…。
しかし、寄る年波には勝てなかったのか、2001年3月、惜しまれながらも閉館しました。施設の老朽化と採算性の問題だそうです。もっとも施設の老朽化というのなら、東急文化会館すべてにいえることでしょう。パンテオンもイタズラにデカイだけですし、レストラン街もボロボロです。そろそろ建て替える時期ではないでしょうか…。
とにもかくにも、ウルトラ・アイを奪った謎の少女は、ここから通信を発信したのでした。
ステーションV2。
怪電波を傍受したV2の通信室。
「奇妙な電波です」(隊員)
「マゼラン星へ、マゼラン星へ…」(女の声)
女の声が流れる。
「第一任務完了しました。迎えの円盤を送ってください」(女の声)
「マゼラン星雲…?」(上司)
「任務を完了したとか言っていましたが、いったい何のことでしょう?」(隊員)
「ひとまず地上基地に報告だ」(上司)

基地、廊下。
メディカルセンターから治療を終えたダンが出てきた。ダンに続くソガ…。
「ダン、すまん。俺がモタモタしていたために怪我をさせてしまって。アマギがあんまりポンポン言うもんだから、すっかりアタマに来てしまったんだ」(ソガ)
「いやぁ、ウッカリしていた僕が悪いんです。皆に心配かけて…」(ダン)
「じゃあ、気をつけてな…」(ソガ)
ソガを見送りながら、胸ポケットに手をやるダン。
(…きっと見つけ出してやる…。あの顔、忘れるものか…)(ダン)
不覚にもウルトラ・アイを盗まれたダン。 ←またかよ…。。

作戦室では、怪電波の発信元を分析中。
「発信源は、K地区のプラネタリウムセンター。おそらく、もういないだろう。見たとおり娯楽場が多い。隠れ場にはもってこいの地域だ」(キリヤマ)
「ええ…、ボウリング場にジャズ喫茶、地下に潜ればアングラ・バー」(アンヌ)
「こいつは若い子ですね。ダンプに乗っていた娘も17・8でした」(フルハシ)
「完了しました。これでK地区から発信される電波という電波は、もらさずキャッチできるはずです」(アマギ)
「よし、あとは網にいつかかるか。その時を逃さないことだ…」(キリヤマ)
K地区包囲網の完成である。

4日めの午前2時、包囲網に怪電波がひっかかった。
「アマギ、解読器の用意を」(キリヤマ)
「隊長、発信源は、スナックノアです!」(ソガ)
早速、発信源のスナックノアへ向かう、フルハシとダン。
「確かに、マゼラン星に向けられてます」(アマギ)
「通信の内容は?」(キリヤマ)
「迎えはまだか…、迎えはまだか…」(アマギ)
「それだけか?…。う〜む、迎えはまだか…?」(キリヤマ)
セブンの放映が始まった1967年の主な出来事。

4月
初の革新都知事(美濃部亮吉)誕生。
6月
新潟水俣病の患者と遺族が、民事訴訟。
7月
首都高速都心環状線の全線開通。
リカちゃん人形発売。
8月
唐十郎の状況劇場(紅テント)が新宿・花園神社で初上演。
9月
四日市喘息患者が集団訴訟。
10月
第一次羽田事件で京大生死亡。
成田・三里塚で強行杭打ち。
ミニ・スカートの女王・ツイッギー来日。
11月
ポンドショック。株価は戦後最大の暴落を記録。

書籍

「まぼろしの邪馬台国」(宮崎康平)
「マクルーハンの世界」(竹村健一)

音楽

「帰ってきたヨッパライ」(ザ・フォーク・クルセイダーズ)
「ブルーシャトー」(ジャッキー吉川とブルーコメッツ)
「世界は二人のために」(佐良直美)

流行

ミニスカート旋風
レナウン「イエイエ娘」
フーテン族、アングラ族
ラジオの深夜放送ブーム
退廃的な、スナックノア。
「思い出の渚」崩れの曲で、ひとりステップを踏む少女。
マゼラン星人のマヤである。
その姿をじっと見ている男がいた、M78星雲人のモロボシダンである。
やがて、ダンがテレパシーで話しかける…。
「聞こえるか、僕がわかるか?」(ダン)
「だれ?…。地球人ならテレパシーは使えないはずよ。わかったわ…、あなたは、セブンね…」(マヤ)
「ウルトラ・アイをなぜ盗った?…」(ダン)
「それが私の任務だから…」(マヤ)
「なに!」(ダン)
ハッとする、M78星雲人のダン。
平然と踊り続けるマヤ。
「地球を侵略するつもりなのか?」(ダン)
「こんな狂った星を…?見てご覧なさいこんな星、侵略する価値があると思って?」(マヤ)
侵略する価値のない地球人たちよりも激しく身体を揺さぶりながら…、自虐的な口調のマヤ。
「迎えはまだか…、迎えはまだか…」(ダン)
身体の止まる、マヤ。
その時、ダンは演奏曲に合わない一定リズムを感じた。
タタタンタッタ、タタタンタッタ…。
発信機は、リズムボックスに仕掛けてあったのだ。
逃げだす、マヤ…。
そこに、応援に駆けつけたウルトラ警備隊。
「リズムボックスです…」(ダン)
発信機を仲間に託して、マヤを追うダン。
1月
米原子力空母「エンタープライズ」佐世保に入港。寄港反対デモ。
東大医学部自治会、無期限スト開始。
2月
金嬉老事件。
4月
チェコで共産党が複数政党制を決議(プラハの春)。
初の超高層ビル、霞ヶ関ビルが完成。36階。
6月
警視庁四谷署・淀橋署は、フーテン族一掃を決定。
7月
参院選全国区で、タレント候補が上位当選(石原慎太郎、青島幸夫、横山ノックら)。
8月
札幌医大で日本初の心臓移植手術。
10月
新宿駅で学生デモが投石・放火(新宿騒乱事件)。
12月
三億円事件発生。

書籍

「竜馬がゆく」(司馬遼太郎)
「どくとるマンボウ青春記」(北杜夫)
「ゲバラ日記」(チェ・ゲバラ)

音楽

「恋の季節」(ピンキーとキラーズ)
「花の首飾り」(ザ・タイガース)
「受験生ブルース」(高石友也)

流行

ピーコック革命で男も派手に。
ミニは超ミニへ(膝上35p)。
パンタロンが大ブーム。
厚底サンダルの登場。
映画「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」
少年マガジン「あしたのジョー」
テレビ漫画「巨人の星」
初のレトルト食品、「ボンカレー」の発売。


いやはや、面白すぎる時代です…。
作戦室。
押収したリズムボックスを分析するアマギ。
「このリズム…」(アマギ)
「これを繰り返し、マゼラン星に送るんだ」(キリヤマ)
タタタンタッタ、タタタンタッタ…。
やがて、マゼラン星からの返信が入る。
「返信が入りました!」(ソガ)
「アマギ!」(キリヤマ)
「恒星間弾道弾、既に発射せり。迎えに及ぶ時間なく」(アマギ)
「恒星間弾道弾というと…。隊長、マゼラン星が地球にミサイルを…?」(ソガ)
「それじゃあの娘が?」(フルハシ)
「恐らく何か、特殊な任務を帯びてやってきたのだろう…」(キリヤマ)
「迎えには来ないって、どういう意味なの?」(アンヌ)
「裏切られたんだよ…、自分の星に…」(ダン)
残念そうにつぶやくダン。
「隊長、計算の結果ミサイルの地球到達は、午前0時丁度」(アマギ)
「なにぃ…」(キリヤマ)
時計は午後5時。
「あと7時間か…」(キリヤマ)
その時、非常通信ブザーが鳴った。
「こちらステーションV2.巨大なミサイルが宇宙より接近中!」(V2隊員)

宇宙空間。
ステーションV2に向かって飛行する、恒星間弾道大型ミサイル。
レーザー砲で迎撃するV2.
しかし、命中するも効果はない…。
大型ミサイルはV2と衝突コースに入った…。
BOOOOOOM!
ステーションV2に衝突した大型ミサイル。爆音とともに爆煙が周囲に漂う…。
爆煙の中から無傷で姿を現し、地球に向かう大型ミサイル。

恒星間弾道大型ミサイル迎撃を試みるウルトラ警備隊。
「フルハシ・アマギ・ソガは、ホーク1号。ダンは俺とホーク2号だ」(キリヤマ)
一瞬、表情の曇るダン…。
なにせ、ウルトラ・アイは盗られたままなのだ。
「出動!」(キリヤマ)
発進場へ走る隊員たち。
「ダン、頼むぞ」(キリヤマ)
ダンに一声かけて、2号発進場へ向かうキリヤマ隊長。
(隊長、スンマセン…)といった表情で、違う方向へ向かうダン…。
←これは明らかなサポタージュであります。
先行して発進する、ホーク1号。
「隊長機はどうしたんだ?」(アマギ)
「まだ、発進していない…」(フルハシ)
そのころ2号では、キリヤマ隊長がダンを待っていた。
「何をしているんだ…、あいつ…」(キリヤマ)
困りきった隊長は交信マイクをとる。
「作戦室、ダンはいないか?」(キリヤマ)
「えっ?」(アンヌ)
交信に出たアンヌはビックリする。
「探すんだ、急いで!」(キリヤマ)
「は、はい」(アンヌ)
ダンなしで出撃しようとするキリヤマ隊長。そこにアンヌが…。
「ダンは?」(キリヤマ)
「どこにも見当たりません。アタクシが代わりに…」(アンヌ)
「そうか…、よし!」(キリヤマ)
ダンの代わりを務める健気なアンヌ。
「その頃、ダン隊員はウルトラ・アイを奪った謎の少女を探すために、山を下っていった」(浦野光)
マヤが現れるのを唯一の頼みに、もう一度、スナックノアを訪れるダン。
相変わらず、踊り狂う若者たち…。
確かに、マヤの言う通りかもしれない…。
退廃的な流行に価値を求めて、生産性を排除した浪費によって、いたずらに時間を消費する人間たち…。
本当に、侵略する価値があるのかどうか…。
命をかけてまで、守る価値があるのだろうか…、この星を。
その時、音が止んだ。
踊っていた者たちは、一斉にダンの方へふりかえる。
なんと全員、ウルトラ・アイをかけているではないか…!。
「はっ…」(ダン)
ダンは、一人ずつ、ウルトラ・アイを剥いで、マヤを探す。
しかし、そこには、あの少女の顔はなかった…。
ウルトラ・アイ、どこで売ってたんだ…?
今なら、スナック「ジョリー・シャポー」(藤沢市鵠沼、ダンの店)で、セブンクラブ(森次晃嗣事務所主宰)製の「ウルトラ・アイ」が、好評発売中です。ひとつ2千円。通常バージョンと最終回バージョンがあるそうです。それはそうと、ウルトラ・アイって、セブンを知らない世代の子供が見ると、結構サイケなデザインでイケているかも…。
午後11時の鐘の音が響き渡るスナックノア。
気を失っていたダンは、鳴り止まぬ音で目を覚ます…。
フロアには、ダンひとり…。
そこに、マヤがやって来た。
「ダン…」(マヤ)
対峙するマゼラン星人とM78星雲人。
ウルトラ・ガンを構えるダン。
しかし、マヤは機関銃でそれを撃ち落す…。
暗いフロアで、向き合う二人の宇宙人。
「この星の命、午前零時で終わりです…」(マヤ)
「君も死ぬのか…」(ダン)
「私は、仲間が迎えに来てくれるわ…」(マヤ)
マゼラン星からの返信テープを取り出すダン。
「誰も来ない。君ははじめから見捨てられていたんだ…」(ダン)
テープをマヤに渡すダン。
テープの通信内容を読んで、事情の全てを悟ったマヤ。
故郷の裏切りを知って、落胆する…。
「この星で生きよう。この星で一緒に…」(ダン)
同じ境遇のマヤを励ます、ダン。
「…」(マヤ)
見つめ合う二人…。
返事の代わりに、ウルトラ・アイを差し出すマヤ。
セブンシリーズのメイン監督、満田かずほ氏は、ダンの著作の中で、#24「北へ還れ!」のアイデアについて、次のように述べています。

「僕は仙台出身なんですけど、当時はテレビの仕事がまだ一般に認められていなくて、よく『そんな仕事してないで、早く家に帰ってこい』っていわれたんですよ。そういうことをヒントにして作った作品ですね」(満田かずほ談、※1)

今回も同じテイストが感じられます。
故郷(異星)から、東京(地球)に出て来て、自分は精一杯頑張っているつもりでも、遠く離れた故郷では、そんな苦労も露知らず、顔を会わせる度、声を聞く度に、「何やってんだ?」「そんなことして何になる…」みたいな小言のオンパレード…。
そんな故郷でもあるからこそ、嬉しく楽しい、マイ・フェバリット・メモリー・ワールド!
しかし、マヤは、その故郷に裏切られてしまったのです…。
境遇を同じくするダンの気持ち。
それはまた、同じ境遇の者同士が発信する、ひとつの時代のメッセージだったかもしれません。



変身したセブンは、宇宙に向かう。
恒星間弾道大型ミサイルへ、である。
体当たりで、ミサイル内部に潜入するセブン。
破壊が無理なら、衝突を避けるために、逆方向へ推進させるのだ。
逆進は、成功した。
ミサイルは、マゼラン星雲の方向へ、飛び去っていった。
1968年は、「昭和元禄」という呼び名とは裏腹に、日米安保条約の改正が真近となった「70年安保」問題と、悪化するベトナム戦争への反戦・反米ムードが中共支持的な幻想を生んだ、一連の騒乱年になってしまったのでした。いわゆる「学生運動」のピークです。大学自治問題や成田空港の三里塚闘争なども含めて、いたるところで、「右手に朝日ジャーナル」、左手に「少年マガジン」を抱えた、ヘルメットに白マスク姿の大学生が、うろついていたのでした。
この年、1968(昭和43)年は、「昭和元禄」といわれた年でした。
「退廃的」「サイケデリック」「ハレンチ」「ゴーゴー」「ノンポリ」などが主な流行語で、経済的には高度成長がピークを迎え、戦後生まれの大カテゴリー「団塊の世代」が成人を迎えた頃でもありました。アンヌのセリフにもある、ボウリング場、ジャズ喫茶、アングラ・バーなどは、時代を代表する若者的プレイスポットで、当時の新宿ガイド特集によると、ゴーゴーホールの「ACB」は、男500円、女300円。生バンドが入っていた「アップル」は、男400円、女200円。「ドル」という店は、その名の通り360円均一(1$=¥360の固定レート時代です)。ボウリングは、1ゲーム250円。封切り映画は600円、名画座は2本で100円。立ち食いそばは60円。国電初乗り20円…。という時代だったのです。
スナックノア。
ひとりのマヤ…。
思いつめた表情のマヤ…。
やがて、ジュークボックスから、一枚のレコードを選ぶ…。
レコード盤に、静かに針が下りる。
ジュークボックスから湧き出す白煙…。
マヤの身体を包み込み、覆い隠すほどの量だ。
白煙が晴れたときには、マヤの姿も消えていた…。
そして、午前零時の鐘が鳴った。

スナックノアに戻った、ダン。
マヤのブローチだけが、残されていた…。
それを拾いマヤの行動を悟った、ダン。
「何故、他の星ででも生きようとしなかったんだ…。僕だって、同じ宇宙人じゃないか…」(ダン)
無念そうに、つぶやくダン。
スナックノアを後にしたダンは、夜の街を彷徨い歩く…。

「数年後には我々も、月旅行が可能になるかもしれません。しかし、月にも土星にも、生物が全くいないという確証はないのです。我々が月に、その他の惑星に行けるとしたら、あるいは不思議な少女と同じ運命が、待ち受けているのかもしれません」(浦野光)

なおも歩き続けるダン…。
END。