「…脚本のタイトルは『夜毎の円盤』といって、ジェラール・フィリップ主演のフランス映画『夜ごとの美女』(ルネ・クレール監督)からとったものらしいです。監督の実相寺さんが、川崎高の筆名で書いたホンでした」(ひし美ゆり子、※2)


#43「第四惑星の悪夢」とのカップリングです。#43同様、共同脚本名義になっていますが、#43が上原正三脚本がベースだったのに対し、こちらは実相寺昭雄単独脚本だそうです。実相寺監督は、セブンで4作品のメガホンをとりましたが、その4本とも多摩川流域を中心にロケ地を選んでいます。調布市、狛江市、世田谷区、大田区、そして対岸の川崎市です。特に川崎側には、#8「狙われた街」の冒頭シーン、北川町駅前、メトロン星人のアパート、本作品の町工場やラストシーンなど、シリーズ屈指の名場面のロケ地が散在しています。また、実相寺監督の川崎高という筆名も川崎という土地からとられたようです。





STORY



真夜中の星空。
                       



物干し台から熱心に天体望遠鏡を覗く若い男がいる。
アマチュア天文家のフクシン君である。
すると、鉄板を叩く騒音が…。
「……う、うるさい…!…何時だと思ってんだぃ…」(フクシン君)
「大きなお世話だ!まだ、宵の口じゃぁねえかぁ!」(ゲンさん)
「うるさいんだけどね。近所迷惑じゃないか、夜遅くになって」(フクシン君)
「何ぃ!うるせえっていうのはな、こういうのをいうんだい!」(ゲンさん)
手当たり次第に大きな音を立てるゲンさん。
あまりの騒々しさに、思わず乾してあった洗濯物で耳を覆うフクシン君。 ←フクシン君、それ…、ステテコじゃん…。
それでも懲りずに望遠鏡を覗く、フクシン君…。
「そう、彼が心休らかに星の世界へ飛び込めるのは、夜遅くなってからでありますが…」(浦野光)
昼間の町工場、寝不足の末、立ったまま居眠りをするフクシン君。
「…夜を徹して星を見るのあまり…、このありさま…」(浦野光)
コックリ、コックリ…、遂には機械の方に体が傾く…。
「あ、危ない…。しっかりしろ!」(同僚)
町工場の社長からお小言を頂戴するフクシン君。
「星を見るのもいいかげんにしろや…。第一、いい年して少しは自分のことを考えたらどうだ。ここんとこ、成績がよくないぞ…」(社長)
「すいません…」(フクシン君)
へこむフクシン君。


小田急線多摩川鉄橋近くの五本松河原。
寝転がる、フクシン君…。そこに少年が、声をかけてきた。
「なんか悩んでんね、おじさん…」(少年)
多摩川住宅の給水塔をバックに土手を歩くフクシン君と少年。
「近頃じゃネオンとかいろんな明るいものが多いだろ、夜遅くならないと星を見ることが出来ないんだよ…。だから、お兄さん、会社じゃ眠くてヘマばかり…」(フクシン君)
出会ったばかりの少年に、つい愚痴をこぼすフクシン君。
「お兄さんは星を見るの?」(少年)
「うん、毎夜ね」(フクシン君)
「どうして?」(少年)
「宇宙にね、お兄さんの名前の付いた星を持ちたいのさ。フクシン彗星…」(フクシン君)
「ふ〜ん」(少年)
出会ったばかりの少年に、つい夢を語るフクシン君。
「それに、星は汚れてなくてきれいだろ、地球なんか人間もウジャウジャいるし、うるさくて…。君も一度、星を見てごらん、素晴らしいぞ!」(フクシン君)
「まぁ、今夜いいことがあるよ、きっと…」(少年)
多摩川五本松河原に沈む夕日…。
今日もまた、星降る夜がやってくるのだ。


「草木も眠る牛満刻…、それでもフクシン君は止められず…」(浦野光)
望遠鏡に写るのは、大星団…?
あわてて、ピントを調整するフクシン君。


                       


「…星じゃない、大変だ。円盤だ、宇宙人だ!!!」(フクシン君)
あわてて、ゲンさん宅の戸を叩くフクシン君。
「大変だぁ、開けてくれぇ。すぐ、電話を貸してくれよぉ!」(フクシン君)
「…うるせぇな、この野郎!…何なんだ、今時分?」(ゲンさん)
「大変だよ。宇宙人の襲来だ。すぐウルトラ警備隊へ…」(フクシン君)
「この野郎、寝ぼけやがって…、何が宇宙人だいッ!」(ゲンさん)
まったく相手にされないフクシン君。
やむをえず、電話ボックスから通報する。
「あっウルトラ警備隊?えっそう一般市民ですが、緊急連絡です」(フクシン君)


真っ暗な作戦室。
ソガが一人で夜勤の宿直中。
「今ごろ一般市民から。あ〜、とにかくつないだ…」(ソガ)
すげえメンドくさそうなソガ。
「…はい、世田谷区のフクシンさん…はいっ?」(ソガ)
うって変わった明るい声で応対するソガ。
「…えっ、円盤襲来!」(ソガ)
いつもの声に戻るソガ。
「うん、計算した、うん…、データを頼むよ…東経139度40分、北緯は35度?……」(ソガ)
キリヤマ隊長ら隊員たちが集まってくる。
「どうした?」(キリヤマ)
「隊長、アマチュア天文学者から円盤群との報告。観測地点、東経139度40分、北緯35度40分、角度32度。かなり詳しい報告です」(ソガ)
「うちの観測班は?」(キリヤマ)
「よくあるアマチュアの錯覚だよ…、寝ぼけるなよ」(フルハシ)
パジャマ姿のフルハシ。 ←寝ぼけてるのはアンタだ…。
「隊長、うちの観測班も全天に渡り、そのような観測事実はないとのことです」(ダン)
隊員たちは、関係各方面から異常のないことを確認する。
「ハハハ…、そぉれみろ」(フルハシ)
フルハシの悪態をさえぎるかのように、電話が鳴る。
「隊長、第一報の後、同じようなアマチュア天文家からかなりの
の電話がかかってきてるそうです…、交換からです」(フルハシ)
「もしもし、知らせてくれた人には丁重に感謝して下さい。現在調査中ですと…」(キリヤマ)
「よし、おそらく何かの間違いだろう。別の気象状態を、アマチュアの数人が偶然錯覚したものと思う…」(キリヤマ)
という結論で、深夜の円盤騒動に、ひとまず決着…。



このシーンには、アンヌが登場していません。
アンヌの一連の著作に収められた当時の写真の中には、「色っぽいネグリジェ姿でポーズ!」と題された一葉やパジャマ姿のフルハシとのツーショットなどが収録されています。フルハシがパジャマで出てきているのでこのシーンのものと思われます。しかし、やっぱり実相寺監督とは合わなかったようですね。編集で切られてしまったようです…。作戦室での色っぽいネグリジェ姿のアンヌ…、見てみたかった!



満天の星の中。
パトロール中のダンとソガ。
「何か普段よりも星の数が多いみたいだ…」(ソガ)
「やけに、ロマンチックだなぁ…」(ダン)
←デートしてるみたいだぞ。この前は二人っきりで2ヶ月も宇宙旅行してたし…。
「ソガ隊員、さっきのアマチュマの観測データを下さい…」(ダン)
「ああ…」(ソガ)
「おかしいな…」(ダン)
「何も発見されないじゃないか?…何がおかしい…?」(ソガ)
「いやぁ…、星の数が普段より多いみたいだ…」(ダン)



このダンとソガの秘め事…、じゃなくてパトロールのシーン。このBGMは、クラシック愛好家の実相寺監督の指定で作られた曲のうちのひとつです。セブンでは2度目の使用ですが、ほとんどの方は初めて聞く曲だと思います。そうですこれは、幻の12話「遊星より愛をこめて」で使われた楽曲だったのです。



団地横の空き地で昼寝中のフクシン君。
そこに、あの少年がやってきた。
「何だ、君か…」(フクシン君)
「何ぼんやりしてるの…、おじさん?」(少年)
返事のしようがなく、黙り込むフクシン君。
「夕べおじさん、何か見つけなかった?」(少年)
「な、なんで」(フクシン君)
慌てるフクシン君。
「やだなぁ、ヘンな顔して…。なにか星でも見つけたんじゃないかと思って、聞いただけさ…」(少年)
「星じゃなくて、円盤見たんだけどね。錯覚だって、ウルトラ警備隊から言ってきた…」(フクシン君)
「ウルトラ警備隊!」(少年)
「ああ、僕が一番に知らせたんだ。昨日は何人ものアマチュアが見間違えたらしい…。気象の状態で、地上の何かの光が蜃気楼となって、円盤に見えたらしいんだな…」(フクシン君)
「おじさん、今日こそ円盤が見られるよ。星が見つかるかなぁ…。東の空だよ、きっと!」(少年)


そば「増田屋」
「ゲンさんよぉ、昨日はちとクスリが効きすぎたなぁ…、可愛そうだよ、子供なんだからさ…」(シゲ)
ウドンをすするゲンさんをたしなめる、そば屋のシゲ。
「何、言ってんだよ…。ズルッ……いい年して、星だの、ズルッ……宇宙人だのって…。ズルッ、俺はね…、あいつのためを思ってズルッ…、言ってんだよ!」(ゲンさん)
そこに、フクシン君がやってきた。
「ラーメン!」(フクシン君)
←ここは、そば屋だ。ウドンだのラーメンだの頼みやがって!
びっくりしながらも悪態をつくゲンさん。
「この野郎…、夕べはよくも!」(ゲンさん)
「まあまあ、ゲンさん」(シゲ)
シゲになだめられるゲンさん。
「今度、邪魔しやがったら、双眼鏡なんてたたき折ってやる」(ゲンさん)
「あれは、望遠鏡です!」(フクシン君)
黙っていればいいもののフクシン君のよけいなひと言。
「……こ、この野郎…!」(ゲンさん)
怒髪天を衝く、ゲンさん。


その夜、アタマにきたゲンさんは、大・騒・音!
無視して望遠鏡を覗くフクシン君。
「…錯覚かなぁ…」(フクシン君)
また現われた円盤群。

                       


「円盤だ、宇宙人だ!円盤だ、宇宙人だ!円盤だ、宇宙人だ!円盤だ、宇宙人だ!…」(フクシン君)
「若けえ身空でとうとう狂ったかぁ〜…。野郎!今日こそは!」(ゲンさん)
「…円盤だ、宇宙人だ!…」(フクシン君)
フクシン君に掴みかかる、ゲンさん。
「やい、テメエ…。近所迷惑だ。もう勘弁できねえぞっ!」(ゲンさん)
「…これを見て下さい。…これを!」(フクシン君)
望遠鏡を覗かせるフクシン君。
「…んっ…おっ…はっ…、ひぇぇぇぇぇ……。おい、すぐ消防署、消防署行こう!」(ゲンさん)
「違うよおじさん!ウルトラ警備隊、ウルトラ警備隊だよ!」(フクシン君)
慌てながらも写真を撮るフクシン君。
「よし、今日こそ証拠があるぞ…」(フクシン君)
夢中でシャッターを押し続けるフクシン君…。


作戦室にアンヌが入ってくる。
「隊長、昨日の第一通報者、世田谷区のフクシンさんです。今日は、円盤のフィルムを持って駆けつけたそうです」(アンヌ)
「よし、とにかく写真班に回せ」(キリヤマ)
隊員たちは、またも関係各方面との確認の真っ最中…。
「…はぁ、これで一段落かぁ…」(アマギ)
またも異常はないようだ。
「昨日今日と、アマチュアからの知らせがやけに多い。しかし、天文台その他の観測所では何の異変も認めていない…。どういう現象だろう?」(ソガ)
「バカげてるよぉ!こんなデララメな通報をいちいちウルトラ警備隊が真に受けて、パトロールに出動するなんてのわぁ…」(フルハシ)
「何ともなければ、それでいいじゃないか。我々が無駄な働きをすればするだけ、地球は平和ってことだ…」(キリヤマ) ←まったくもって、隊長のおっしゃるとおりでございます。
「隊長、フクシンさんの持参した写真を焼いたんですが、何の異変もないようです」(アンヌ)
「アハハハ…、そんなことだと思ったよ」(フルハシ)
「これからはこの手の通報連絡は広報班にやってもらうか」(キリヤマ)
「そうですよ隊長、肝心なことがおろそかになるといけません」(アマギ)
しかし、ダンとソガは、写真を見ながら、
「ふ〜ん…」(ダン)
「ふ〜む…」(ソガ)
と、うなった挙句…、
「星が多いな…」(ダン&ソガ)
←この二人、デキているのでは…?


和泉住宅前の多摩川土手。
フクシン君と少年。
「お兄ちゃんなぁ…、あんまり気が強い方でもないし、星を見ることだけが、楽しみだったんだよ」(フクシン君)
「ふ〜ん」(少年)
「どこでもヘマばかりやって、怒られてばかりだろ。…それに人間なんて嫌いなんだ」(フクシン君)
「慰めてくれる恋人はいないのかい?」(少年)
「…ませてるなぁ、ボクは?」(フクシン君)
「あっ、一番星!」(少年)
少年のセリフと同時に、BGM「メトロン星人のテーマ」スタート。
「いいだろ星はきれいで、星の世界に行ってしまいたいよ…」(フクシン君)
「ボクがお兄ちゃんの望みをかなえてあげるよ…、きれいな星の世界に連れてってあげる」(少年)
「…いいだろうなぁ、星の世界で暮らすのは…、のんびりと誰にも煩わされず…」(フクシン君)
夢見るフクシン君。
「…けど夢さ!僕のアタマはどうかしてるんだ。ありもしない円盤のことなんかで、夢中になってウルトラ警備隊に報告したりしたんだ。うちのガラクタ望遠鏡で見えるんなら警備隊や天文台じゃ、もっと早く見えるはずだもんな…」(フクシン君)
イジケのフクシン君…。



フクシン君が少年に夢を語る和泉多摩川の土手。この辺りの風景は、当時と大きく変わりました。宿河原堰は改築され、堤防や河原の形も変わりました。多摩川水害の結果です。1974(昭和49)年9月、台風16号の接近に伴って増水した多摩川の水は、狛江市猪方地先の左岸堤を260メートルにわたって決壊させました。そして住宅地に押し寄せた濁流は、民家19戸を飲み込んでいったのです。これは規模からいえば大水害とは言い難いものでしたが、大都市の近郊で住宅が流失するというショッキングな事実と、繰り返し放映された流失の瞬間映像などから事態は事実以上に喧伝されました。そのうえ、家庭崩壊をテーマとして高視聴率を記録した、TBSテレビ「岸辺のアルバム」のオープニング・タイトル・バックに流失映像が使用され、記憶に残っている人も多いと思います。



少年の家にやってきたフクシン君。
家に入ると同時に、BGMに「野球中継」が被る…。
「坊やの家は、望遠鏡屋さんか!」(フクシン君)
「ガラクタさ!」(少年)
「いやぁ、ずいぶん立派なものだヨ。…お店の人もお母さんたちもいないのかい?」(フクシン君)
「うん、もうすぐ来るよ…」(少年)
「いいなぁ…、こういうのが欲しいなぁ…」(フクシン君)
数並ぶ天体望遠鏡のひとつを覗いてみるフクシン君。
「あっ…!」(フクシン君)
円盤が見える!
「…坊や!」(フクシン君)
あわてて、少年を呼ぶフクシン君…。
「坊や、ちょっとこの望遠鏡覗いてみてごらん。円盤が見えるかどうか確かめてくれよ!」(フクシン君)
「確かめなくたって見えるよ、お兄さん」(少年)
「えっ…」(フクシン君)
「もっとよく、大きな画面で見せてあげるよ」(少年)
襖を開ける少年。そこには大画面テレビが…。
「…それは…」(フクシン君)
テレビに写る円盤群。
「これは、ペガッサ星雲第68番ペロリンガ星で、地球を征服するために送り込んだ円盤群さ…」(少年→ペロリンガ星人)
「やっぱり…」(フクシン君)
バックで流れていた野球中継、打球音と大歓声。
絶句するフクシン君。
光の中に消えていく少年…。


少年に変わって光の中から現われたサイケな色調のインコ顔、ペロリンガ星人は、いきなり早口で話し始めた。
「君ガ見タモノハ、正シカッタノサ。うるとら警備隊ヤ天文台ガ信用シナカッタノハ無理モナイ。私タチハ、円盤ヲ星ニかもふらーじゅシタンダカラネ。君ノ素晴ラシイ直感デ円盤ニ見エタモノモ専門家ニハ星トシカ見エナイ。コレデ専門家ヲ油断サセルノガ、私タチノ狙イサ。ツマリ、うるとら警備隊ヤうるとらせぶんヲネ…。私タチハナルタケ穏ヤカニ、コトヲ運ビタイノサ…。『おおかみガ来タァー!』…、幾度モ言ッテイルウチニ誰モ振リ向キモシナクナル。本当ノおおかみハ、ソノ隙ニヤッテクル!。…コンナ地球ノ童話ヲ私タチモ知ッテイルヨ…」(ぺろりん…ペロリンガ星人)
長セリフを一気に喋ったペロリンガ星人は、懐かしの「黒電話器」をフクシン君の前に持ってくる…。
「普通ノ地球ノ電話機サ…。試シテゴラン。私ハ今、宇宙人ノぺろりんが星人ト話シヲシテイルト言ッテ…」(ペロリンガ星人)
言われるままに電話をかけるフクシン君。
「ソウソウ…」(ペロリンガ星人)
ペロリンガ星人に頭をなでられるフクシン君。
キコーキコーと音がする。 ←「黒電話器」は回転ダイヤル式だったのさ…、文句あっか…。


地球防衛軍広報班。
「えっ〜、宇宙人の習慣についてのお尋ねですかぁ…」(防衛隊員)
またかよぉ…、と言う感じの防衛隊員。
「…宇宙人だよぉ!…宇宙人だよぉ!…宇宙人だよぉ!…宇宙人だよぉ!」(フクシン君)
「ではまた、どうもどうも」(防衛隊員)
ガチャ…。



「…ウルトラシリーズは輸出を考えているから、和室を出しちゃいけなかった。それなのに、メトロン星人を卓袱台を囲んですわらせたり、ペロリンガ星人をそのへんの商店に登場させたりして怒られました…」(実相寺昭雄:談、※9)



一方的に電話を切られて呆然とする、フクシン君…。
「ホウラ、モウ本当ノコトヲ信ジチャクレナイシ、本部ノ誰ニモ取リ次イデモクレナイダロウ。人間ナンテソンナ動物サ…。専門家ハ常ニあまちゅあヨリ正シイト思ッテイルノサ。ソコヲ突ケバ、油断シテイル隙ニ、苦モナク地球ヘ大円盤群ヲ着陸サセラレル。サァ、約束ヲ果タシテアゲヨウ…。私ハ地球ニ飽キ飽キシタ君ヲ、星ヘ連レテイッテアゲルヨ…。モウ随分大勢ノ地球人ヲ、私ハ星ヘ連レテイッテアゲタンダ。ホラ、アル日突然蒸発シテ、イナクナッタ人タチガ、君ノ身ノ回リニモイルダロウ…」(ペロリンガ星人)
誘惑に負けそうなフクシン君…。


メディカルセンター。
アンヌ、ダン、ソガの3人が、フクシン君の撮った写真を見ている。
「いいこと、星が一瞬の露光で写るわけがないとしたら、これはなんだと思う?」(アンヌ)
あわてて写真を見直す、ダンとソガ。
「これは星じゃないのよ…」(アンヌ)
写真を食い入る見るダン。
「星に見せかけた円盤群なのよ、やっぱり!」(アンヌ)
顔を見合わせるダンとソガ。
「異常発光物体だから、アマチュアのカメラにも写ったってわけ…」(アンヌ)
名探偵アンヌ。


作戦室。
「隊長、ここの所なんです」(ダン)
さっきのフクシン君の電話の録音テープを聞く。
「あのね警備隊や天文台の観測機は強力な磁気と、…何だっけ?…"フ・ト・ー・シ・バ・リ・ヤ・ー"…不透視バリヤーだってさ、そいつで見えるものも見えなくされちまっているんだよぉ…。わかんないのかい…、宇宙人が襲来……」(フクシン君)
明らかに別人の声が混ざっている。
間が抜けてるぞ、ペロリンガ星人。
「よし、わかった。ダン、ソガは直ちに、パトロールに出発!」(キリヤマ)
ウルトラ警備隊出動!


                       


宙空に向かったホーク1号。
幾つもの光の固まりが攻めてくる…。

シナリオからの抜粋。
  戦闘シーン。
  「ホークと円盤群とが、星と光と影と、サイケな視覚の中で、サイケな感じの闘いを見せる」
  ←なんのこっちゃ…?

                       

しかし、画面では、行き交うシャボン玉と線香花火…。
円盤の残像とホークの影…。
飛んで行く行く、線香花火…。
そのうち、ペロリンガ星人も飛んできた…。
負けじとセブンも飛んできた。
右になったり左になったり、あっちに飛んだりこっちに飛んだり…。
(BGM)セブン、セブン、セブン……。
そのうち、決着はついた…、らしい…。

                       


←したがって、サイケである。





ポインターで送られるフクシン君。
「お、帰ってきたぞ…」(ヤジウマ)
ポインターに群がる横丁長屋の人々。
「いずれ、ウルトラ勲章は君のモノさ」(ダン)
「サブロウさん、これからもがんばってね」(アンヌ)
ヒーローの凱旋に沸く、横丁長屋。
「いい青年だよ。俺は昔から目をつけていたんだ!」(ゲンさん)
「ほぉう…」(シゲ)
「どうだい、俺のところへタダで養子に来ないか」(ヤジウマ)
「サブ!よくやった」(ヤジウマ)
喧騒の横丁長屋…。
居場所がないような表情のフクシン君は、夜空を見上げる…。









      工場地帯。
      ゴミ捨て場。
      廃材、廃管、赤錆びの鉄屑。
      古タイヤ、洗濯機、オート三輪。
      始業のサイレンが鳴る。
      自転車で、工場へ向うフクシン君。
      今日もまた、遅刻だ。
      社長からまた小言を言われるのか…。
      また、つまらない一日が始まるのだ。
      こんなゴミだらけの地球は捨て去って、
      キレイな星に行ってしまいたかった…。
      そう思いつつもフクシン君は今日を生きるのです


                       







ALIENS&MONSTERS



サイケ宇宙人:ペロリンガ星人
身長:1m80p
体重:80s
出身:ペガッサ星雲第68番ペロリンガ星
特技:人の弱みに付け込む
特徴:したがってサイケである
弱点:線香花火…?





ACTOR&ACTRESS



フクシン君役には実相寺作品では常連の冷泉公裕さん。
冷泉さんは、文学座演劇研究所出身の演劇畑の俳優さんですが、実相寺昭雄監督の作品では常連となりました。また、テレビでも、「北の国から95」や「ニュースなあいつ」といった人気ドラマに出演され、声の出演として、「もののけ姫」にも参加されています。実相寺監督好みの才人といった感じです。


金子自動車の頑固オヤジ:ゲンさんには、初代「食いしん坊バンザイ!」の渡辺文雄さん。
現在の紳士ぶりからは想像もできないトンデモ親父を楽しそうに演じれられています。もっとも渡辺さんは、旧神田区東松下町の出身のチャキチャキの江戸っ子。「おう、神田の生まれよ…」を地でいく生まれです。東京大学を卒業して、電通入社を経て、俳優の道に入られました。「ウルトラQ」#15「カネゴンの繭」で、カネゴンと敵対するヒゲオヤジをゲンさんと同様のキャラで、怪演されています。

                    

町内のそば屋「増田屋」の若旦那シゲには、ミッキー安川さん。
ミッキーさんは、ヨコハマ生まれのアメリカ育ち。シンシナチ大学卒業後、サンディエゴ大学院へ進みます。その後、帰日してバンドマネージャーみたいなことから芸能界入りしました。
あのゲンさんとのからみは、当節随一のクセ者という感じがします。
そういえば、一時ヒットした「ミッキーラーメン」って、どうなったの…?


フクシン君につきまとう少年には、超人バロムワンの白鳥健太郎(高野浩幸さん)が起用されました。高野さんは、後期ウルトラシリーズにも出演されています。「帰ってきたウルトラマン」では、#15「怪獣少年の復讐」などの3本、坂田次郎クンのクラスメイトとして、また、「ウルトラマンティガ」#3では、主人公:V6の長野博のライバルとして…。記憶に残る、ゲストですね。


だらしないフクシン君を叱る、町工場の社長は、金井大さん。
#3「湖にひみつ」では、エレキングの幼魚を釣り上げたおじさんです。セブン2回目の登板です。たったひと言だけのセリフですが、妙に存在感があります。小学校の教員から俳優に転じた金井さんは、幅広い貴重なバイプレーヤーとして活躍されました。
平成13年6月17日逝去。享年74歳。


そして、ゲストではありませんが、ペロリンガ星人です。
…いや、ペロリンガ星人の声です。あの声は、ナレーターの浦野光氏があてているのです。音響効果によって、声質は変換されてはいますが、あの浦野節の鷹揚はそのままです。





LOCATION



狛江市元泉:五本松河原
狛江市中和泉:多摩川住宅
狛江市緒方:和泉住宅前河原



EXTRA

実相寺異聞。

「ハヤタ・スプーン事件」に関する証言@。
「ウルトラマンのように長いシリーズを続けるうえでは主人公のパロディをやってはいけないという空気があったんですが、まあ実相寺は黙って聞く男じゃないですから(笑)。円谷一さんともども後輩の実相寺にはのびのび仕事をさせてあげたいという気持ちでしたから、彼もそれに応えて、やりたいことをやってましたね。結局、シリーズのヘテロドクスの部分を実相寺がやって、オーソドックスな部分を僕がやった。だから、ウマが合ったのかも知れません。」(飯島敏宏:談、※9)

「ハヤタ・スプーン事件」に関する証言A。
「…ウルトラマンの企画は高見の見物で係わっていないんです。だから僕は横から変わったものを作ったんですが、『しようがねえな』って許されれていたのがおもしろかったな。たまには毛色の違うものを、というあんばいの仕方がカコイさんや金城さんのなかにあって、しかも飯島さんや一さんが「あいつに撮らせてやってくれ」って言ってくれたので撮れたわけですね。」(実相寺昭雄:談、※9)

…だ、そうです。










                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第45話「円盤が来た」
              30/SEP/2001 初版発行  29/JAN/2002 第二版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved





第45話
円盤が来た
脚本:川崎高・上原正三  監督:実相寺昭雄  特殊技術:高野宏一  制作44話