放射線検査におけるインフォームドコンセントの確立
〜意識アンケート調査の検討〜
天心堂へつぎ病院 放射線科
Title
The establishment of informed concent in the radiological examination
〜The study of consciousness questionnaire〜
Reporter
Department of radiology、Tenshindo hetugi hospital
 
はじめに 現在、我が国では医療の高度化とともに医療被曝線量も増加して先進国ではトップの数字となっている。日本は世界で唯一の核による被ばく国でもあり 国民の被ばくに対する関心度も大きく、そのため放射線検査時の被ばくに対す 不安度も大きいと考えられる。 そこで放射線検査時の患者の不安度をアンケート調査して、不安を少なくす るための基礎的なデータとする。
1.目的 放射線検査時における患者の意識調査を行ない、そのデータをもとにインフォームドコンセントの充実を計る。
2.方法 1.下記の項目でアンケートを実施。対象は当院における外来・入院患者および患者付添人で200名。期間は2週間とする。
被ばくに関するアンケート用紙
3.結果
Table1.平均年齢と性別および外来・入院の内訳
平均年齢41歳
外来172人
入院28人
年齢未記入8件
性別未記入7件
男性71人
女性122人

 
Table2.年齢と性別との関係
 10代20代30代40代50代60代70代80代
男性年齢141212
女性年齢3329191113

 
Table3.放射線科に対する質問・要望
・一度のX線検査でどのくらい放射線が出ているか?
・どのくらい体に影響しているか知りたい。

・一ヶ月に五回以上はとりたくない。

・少量の放射能は体に良いというのはほんとうですか?

・もし、その時妊娠していなくても何日かたって妊娠してしまっていた時の対策。

・耳鼻科・内科でレントゲン撮影をしますが年間の許容範囲をしりたい。

・検査後の人体の影響が心配。

・外から見える様に特に子供の撮影をする時。

子供を産んでいないので出産前にたくさん被ばくをすると母体や子供に影響があるのだ

ろうか?

・少量の放射能は体に良いというのはほんとうですか?

・患者をまたせないようにしてほしい。

・撮影した場所の内容状態を詳しく説明してほしい。

被ばくに対してどう思うか?(全体)
被ばくに対してどう思うか?(外来)
被ばくに対してどう思うか?(入院)
X線検査について説明は必要か?(全体)
X線検査について説明は必要か?(外来)
X線検査について説明は必要か?(入院)
どのような内容の説明が必要か?(全体)
どのような内容の説明が必要か?(外来)
どのような内容の説明が必要か?(入院)
説明は誰にしてほしいですか?(全体)
説明は誰にしてほしいですか?(外来)
説明は誰にしてほしいですか?(入院)
日常生活で被ばくをしている事を知っていますか?(全体)
日常生活で被ばくをしている事を知っていますか?(外来)
日常生活で被ばくをしている事を知っていますか?(入院)


4.検討および考察
@被ばくに対する意識調査
Fig1より全体の30%が被ばくに対して不安があることがわかる。
また、放射線科に対する質問・要望のところでも放射線量に対するものが多い。
外来と病棟を比較するとやや外来患者の方が、被ばくに対して不安が多い。
これは入院患者の方が検査慣れしているので被ばくというよりも検査全体に対する不安が少ないといううことと、回答者数の違いが考えられる。
 
A検査説明に対する意識調査
Fig4〜12より説明の必要性については全体の50%以上、外来でも50%以上が「検査内容の説明必要である」との回答が得られた。被ばくに関する説明の必要性は全体・外来ともども約20%であった。しかし、病棟においては全く異なった結果となり、約60%が「説明は要らない」との回答であった。これは「説明が不要」といううよりも病棟看護婦による説明・回診時の主治医による説明など、外来よりも説明する時間・機会が多いので「十分説明してもらっている」と解釈すればよいのではないだろうか。
検査内容の説明であるが全体・外来のでは60%以上、病棟でも50%以上が「検査の目的」の説明の必要性を訴えている。設問4の「説明は誰に〜」に対する回答結果では外来・病棟とも主治医が約50%、放射線技師が約45%であった。
B日常生活における被ばくの意識調査
この結果については外来・病棟に差は無く約30%が知っているという結果であった。
また、質問の中に「低線量の放射線は体に良いのですか」という放射線技師会で論議されている放射線ホルミシスが挙っていた。マス・メディアの発達、情報の速さには感心させられた。
結語
患者に対する説明に関してはこのアンケート結果をもとに十分に検討していきたい。
被ばくに関する説明については、時間が長くかかるので撮影室前にポスター等を掲示して患者の理解を計りたい。今後、院内研究会等で発表しDr・Nsはじめ他のスタッフと協力して、インフォームドコンセントの充実を計っていきたい。
 
謝辞
アンケート調査に回答して頂いた病棟・外来の皆様、協力して頂いた職員の皆様に厚く御礼申し上げます。

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