大腿骨頚部の拡大率測定の補足と考察
放射線科 巨勢 秋男
整形医より、人工骨頭置換術施行の為の股関節骨頭の“等倍写真”が必要との事。
そこで、通常使用しているのがFCRシステムにもかかわらず従来からの F/S systemでの撮影を求められた。(クリアー版に写し出された人工骨頭テンプレートと照らし合せる為である)技師サイドからしてみればデーター保存の面や現像にかかる手間からしてもどうにかFCRで満足してはいただけないだろうかと思ったのが今回の実験測定のきっかけとなった。
そこで、“等倍”という言葉に注目してみた。本来、X線写真はもともと拡大や歪みを持っているがその拡大を補正して実等倍写真を出したらどうかと考え、当院 桑原技師に実験測定を依頼した。
彼は、股関節の模型を太針金で作成しそれをブッキー台撮影時とグリッド撮影時との想定で股関節の位置する高さ毎に撮影し模型の実測値を対比、その差より補正値を割り出した。
その実験測定結果より当院で用いている股関節骨頭の実等倍を得るためのFCR拡大補正早見表を掲載します。
等倍補正早見表
(注意事項)
@FFD 100cm固定
Aブッキー台の天板からIPまでの距離は装置毎に違うので各装置により多少の補正が必要(当院では、6cm)
B股関節骨頭は、撮影中心に位置させる
C精密を求めれば、撮影中心に位置した骨頭以外は拡大している
***巨勢データーより***************************
股関節の位置する高さ;CTの計測機能を用いてN=50において、
背面から股関節の骨頭中心までの高さを調査した
結果は AVG=9cmとなった。
CT装置(SCT-7000 SHIMADZU)の計測機能の精度を知る
CR position(Aria=250mm)
横径(I-S) | 縦径(R-L) | 横径拡大率 | 縦径拡大率 | 横径の実測値との差 | 縦径の実測値との差 |
70.45mm | 31.64mm | -2.76% | -1.76% | -1.95mm | -0.56mm |
ファントム;横径実測値=72.4mm 縦径実測値=32.2mm
CT position(aria=150mm)
横径(A-P) | 縦径(R-L) | 縦径拡大率 | 横径拡大率 | 横径の実測値との差 | 縦径の実測値との差 |
70.0mm | 30.90mm | -4.20% | -3.42% | -2.40mm | -1.30mm |
ファントム;横径実測値=72.4mm 縦径実測値=32.2mm
SCT-7000 SHIMADZUの計測機能の精度は高く実務に用いても支障がない。
しかし、同測定をSCT-5000で計測したがこちらは、CR position
でのR-L方向の誤差が大きく使えなかった。I-S(上下)方向はOK。
***************************************
(考察)
FCRの場合、(半切・大角サイズの150%拡大,1画像モード)又は、(四切・六切サイズの100%拡大,1画像モード)で F/S systemと同等の大きさの画像が得られるがもちろんこれは、拡大を含んだ画像である。上記の補正を行い実等倍画像を得る事は、手術等においての有用な支援画像となると思う。しかしながら、従来までは拡大を含んだ画像に人工骨頭テンプレートを照らし合せ対応した人工骨頭サイズを決定して手術してきた歴史と実績がある。股関節の高さを計測し、補正処理をする手間をかけた画像が本当に有用になるかどうかは、今後の手術結果次第である。以下は、手術予定患者さんの骨頭等倍画像処理後の画像で向って左側にあるのは、その患者さんの骨頭の高さに位置させた10mmに開いたノギスである。
写し出されたノギスを同じノギスで測定した結果は、小数点以下の誤差を予測していたが10mm丁度であった。
この患者さんの人工骨頭置換術はまもなく施行される予定です。補正値確認をする上で実際取り出された骨頭自体を計測するのがよいのですが取り出された骨頭は、砕いて補強として使用するのでそれはできない。今回は、従来の画像と補正した画像での2サイズの人工骨頭を準備して手術することになる。その結果がまた何かを教えてくれるであろう。1998.1
このサイトへのご意見、ご質問は、メールにて。
All Rights Reserved Copyright Akio Kose 1997.5.5〜