瀬尾明男の世界


 冬がやって来ると、うずうずして旅に出かけて行きました。1980年〜1993年にかけて、冬の北海道を巡るいくつもの旅を繰り返しました。どこか遠くの見知らぬ町へ、雪の降る、海の見える北の町へのひとり旅に憧れていた頃でした。そんな旅先の町々で行き逢った人々や物や光景を見つめることで、幸運にもひとかたまりの写真を授かることができました。それから随分と歳月が流れてしまいました。今になってあらためてあの頃の写真を見ると、思いがけなく一枚一枚の写真が、言葉にならない言葉で語りかけてきているような気がします。写真の向こう側にひそやかに見えかくれする、そんなスピリチュアルなイメージを、静かに受けとめて頂ければ幸いです。

 1957年生まれ、広島県出身。1981年青山学院大学中退。音楽情報誌、教育雑誌の編集者を経て、1987年写真家に。装丁家菊地信義氏のもとで、文芸作品、学術書などを中心に数多くの出版物の装丁写真を手がける。主にエディトリアルの分野で活動。1992年写真集「遠い海」(マガジンハウス刊)を出版。