運用編 5.事故などで列車運行を見合わせる時 該当線区全区間を止めるのはどうして? 05.05新・1311
保安装置故障や人身事故で列車が止まることがありますがなぜ該当線区全区間を止めるの?
例:先日JR新宿駅で事故がありJR総武緩行線全線(中野−千葉)が止まってしまいました 直接関係のない千葉県県内の市川・船橋・幕
張・稲毛・千葉まで止まり利用者に迷惑がかかりました 少なくとも御茶ノ水−千葉間は止める理由はないと思いますが・・・
現状の対応
1、事故が発生すると運転指令では状況を確認し全列車を止めるか部分的に止めるかを判断します
現在はとりあえず全列車を止める「全線抑止」が多いようです
2、全線を運行している列車を止める指令をだし 駅にある表示機にも「抑止」の表示をさせ運転士・車掌・駅員に認識させる
3、駅間に止まった列車は前方駅ホームが開いていれば前方駅まで運転します
4、運転指令は事故内容の把握・復旧時間の算出・運転再開後の列車ダイヤの作成を行います 長時間にわたる場合は他社への振替輸
送の手配をします
全線を止める訳
全線抑止の状態から運転を再開しても全線を一つのループにしておけば個々の列車は抑止時間の遅れが生じるだけで運転再開でき
通常の間隔で列車の運行ができます 遅れた分は運休・行き先変更・乗務員変更等を行い通常ダイヤに戻していきます
走れるところまで運行した場合は 初めに止まった列車を先頭に列車が数珠繋ぎになり列車がつまってしまいます 運転再開後は列車が
偏在しているので列車の間隔が長くなるため利用者に不便がかかります また ループを区切って部分的に動かし続ける場合は車両運用・
乗務員運用との対応や行き先変更などの後始末が複雑になってしまい 素早い対応ができないと混雑が増してしまう場合も生じます
鉄道会社ではコンピュータを利用した運転管理システムに依存し昔からの職人芸であった運転整理のベテラン「すじ屋」の継承が困難に
なっています また それに見合う装置や機械化が進んでいないのが現状です
JRと私鉄では運転再開までの方法が違うようです また 線区によりいろいろな条件があり対応も変わってきます
このようなことから運転指令という仕事は大変苦労のいる仕事と言えます
各線区の止める範囲(JR首都圏の場合 決まっているわけではありません)
・中央快速線・・・東京−高尾 ・中央総武線・・・中野−千葉 ・総武快速線・・・東京−千葉 ・埼京線・・・大宮−大崎 ・京浜東北線・・・大宮−
大船 ・武蔵野線・・・西船橋−府中本町 ・常磐線・・・上野−取手 ・宇都宮線・・・上野−宇都宮 ・高崎線・・・上野−高崎 ・南武線・・・川崎
−立川間など・・・が多い
鉄道各線対応事例
・中央総武線抑止・・・東京メトロ東西線の直通運転中止(東京メトロ東西線は中野−西船橋間のみの運転になり快速運転中止が多い)
・東西線抑止・・・中央総武線・東葉高速鉄道直通運転中止
・総武快速横須賀線抑止・・・東京駅で2線分離 折返し運用
・埼京線抑止・・・川越線直通中止・東京臨海高速鉄道りんかい線直通運転中止
・武蔵野線抑止・・・京葉線直通運転中止(西船橋−東京)
JRや私鉄では故障や事故などの時 列車の止める範囲を減らす工夫をしています
全線を一つのループにしないで部分的なループを意図的に増やす
・中央快速線・・・国分寺駅で折り返すために駅の配線と信号設備を変更した 東京−高尾を2つのループにわける
・中央総武線・・・水道橋−御茶ノ水間に折返し用の交差渡り分岐器シーサスクロッシング 水道橋駅東京方に信号設備を設けた
中野−千葉を2つのループわける
非常用分岐器 赤現示が出発信号機
・東急田園都市線・・・あざみ野駅長津田方に片渡り線を設け運転扱いができる停車場にする
コンピュータソフトの開発(運行管理システム)
・利用者の不満を最小にする列車運転整理案作成システム
局所的な変更の積み上げでではなく全体を見通した運転整理案の作成
運休・車両運用変更・着発線変更も自動的に提案
・異常時の乗務員運用作成システム
各種の制約を守った乗務員運用の変更案の作成
乗務員間の勤務の不公平さを減らす・所定行路を尊重するなどを考慮した変更案の作成
列車運転整理案作成システム 乗務員運用作成システム
上記のソフトはテストを繰返し改良が加えられ実用に向け開発中だそうです(04.9開催の鉄道総研技術フォーラム担当説明員の話)
故障や事故で列車が止った場合 その状況・内容により運転再開・正常ダイヤに戻る時間が不定です
事実関係は確認をとって掲載しましたが言葉遣いのおかしいところや間違っているところがありましたらお手数ですがご指摘ください お願いします
ページ作成にあたり財団法人鉄道総合研究所2004鉄道総研技術フォーラムパンフレット 鉄道ピクトリアル2004.11を参考・一部引用させていただきました