No05.決断

結局、自分の経済力で一戸建てが買えるかどうかは解らなかった。
平日に、週末の申込みか、タマックで一戸建てか悩んだ。
タマックにはまだ出会ったばかりだが、非常に引かれる物があった。
タマックと言う会社よりも、そこにいる人たちにである。
自分なりに、一戸建ての見積もりや、諸費用を調べようと試みた。
実はこのとき、珍より先に、一戸建てを目指して検討している人物がいた。
その人物はW氏である。
W氏には、[タマックと言う、すばらしい工務店がある。]と伝えた。
W氏には是非ともタマックを検討して欲しかった。
しかし、珍は、結局調査が十分に出来ず、あえなく、時間切れとなった。

残念だけど、出会うのが遅かったな・・・。
熱心に説明してくれた、タマックの斧さんには、断りに行かねばなるまい。
電話連絡なんて考えられない。
直接会って話そう。
もしかしたら、気が変わるかも知れない。
駅近マンション申込金10万円を手に、タマックへ向かった。


タマックへ到着した。
事前に約束した時間より早く着いてしまった。
事務所前に駐車すると、しばらく、気持ちの整理もあり、
車の中でテレビを見ながら考えた。
と言うか、なぜ、一回会っただけの営業に、断り入れるのに、
これはほど、緊張し、悩むのだろうか。
白黒はっきりしないうちに、マンションに逃げるような気がしていた。
予感がしていた。
タマックなら、珍の条件でも、一戸建てが建つかも知れない。
もう一度、最初から断るのではなく、話してみるか・・・。
斧さんの携帯に連絡をした。
珍:[斧さん、珍です。近くまで来ているんですけど。]
斧:[どこですか?]
珍:[事務所前です。]
緊張しているヤツの会話ではない。(^^;;

狭いタマックの事務所。
6人がけのテーブルが一つあるだけだった。
土地から探して欲しいと言う、珍の要望があったため、
斧さんは、タマックと提携している、
家康不動産宛の、アンケートを提示した。
[お土地を探す上でお聞きしたい条件]
と言うタイトルだった。
この中に、[やはり解っていないな。]と思う項目があった。
・土地予算 ____万円ぐらい
・建物を含む総予算____万円ぐらい
・希望ローン支払額____万円
希望の場所、自己資金と、年収を明確にしているのだから、
逆に聞きたい項目である。
土地、建物の相場も解らないのに、予算の比率など決められるわけがない。

斧さんに書いてください。
と渡されたアンケートだったが、珍ははっきり[書けない。]と言った。
斧さんは不思議そうだった。
とりあえず、雑談モードに突入した。
雑談をしていると、斧さんは新人だという。
なるほど、珍と同じ初心者状態な訳だ。

そろそろ、潮時と思った。
斧さんに、今日来た理由を告げた。
[え?]
斧さんは、熱心に引き留めてくれた。
[社長がもう少しで帰ってきます。それまで待ってください。]
斧さんも自分の説得力では、珍を引き留められないと思ったのだろう。
今時の若いヤツにしては、かなり見所があるな〜。(偉そう・・
等と思い、社長が帰ってくるまで、雑談をして過ごすことにした。



珍としては、このタマックと言う組織を束ねる、社長と直接話してみたかった。
やがて、社長が帰社した。
名刺を渡された。
まさに、ホームページの人物だ。
実は、このとき、珍は社長と何を話したか良く覚えていない。
だが、タマックと、斧さんに
全て任せられると、確信するに至った事だけは間違いない。
[何とかなる!]
と言うのが、そのときの正しい気持ちだ。

珍は、分野こそ違えど、物作り(電気製品設計)のエキスパートである。
斧さんはまだ経験が足りなさそうだが、(当時)
珍が気がついた、不明、疑問点を細かいところまで確実に伝え、
それを調べてもらうことで、お互いに成長していけると思った。

その場で、[駅近マンションの申込みはやめる。]と、斧さんに宣言した。
それでも、斧さんが非常に不安そうな表情なので、
車のところまで送りに来てくれた、斧さんに、
車に乗り込んでから、窓を開けて、もう一度、
[マンションは申込みはやめた!本当だからね。]
と言った。

珍は家に戻り次第、駅近マンションの営業宛に申込みキャンセルの連絡を入れた。
さあ、これからが、大変だ。
また一から勉強し直しである。


今回わかったこと ★

・タマック
 何とかなるという気持ちになりましたよ。>斧さん
 今では、頼りになる営業です。
 住んでみて、技術力も施工力(細部にわたる作り込み)もokでした。

・社長
 
やはり、ミスタータマックです。脱帽です。
 ホームページに書かれていることも全て嘘偽り無し。

・マンション
 家が建ってしばらくして、購入しようとしていたマンションギャラリーに行ってみました。
 当たり前ですが、跡形もありませんでした。
 ただ、マンションは完成していました。
 できあがったマンションの建物を見ながら、不思議な気分になりました。
 もしかしたら、あそこの部屋に住んで、日常を送っていたかもしれない・・・。
 勢いで買おうとしていたそのマンションは、購入意欲があふれていた頃のイメージとは違い、
 灰色っぽい、暖かみのない、コンクリートジャングルに見えました。