![]()
懐かし銀幕
自分が過去に観た映画をご紹介します。ただただ自分が観て愉しかった映画・印象に残った映画です。何も客観的基準はありません。ただ、ビデオも発達していますので皆様も十分ご覧になることができます。それぞれ面白い映画であることは間違いありません。
| 題名 | 製作会社(または国名) | 監督 | 主演 | 評価 | ビデオ化 |
| 十三人の刺客 | 東映 | 工藤栄一 | 片岡千恵蔵 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 何度もビデオで見ました。集団剣戟の代表作。将軍の弟のバカ殿がいます。明石十三万石の殿様です。これを諌めようとして江戸家老が老中のお屋敷前で諌死します。老中は旗本にこのバカ殿を明石に帰る途中に殺害することを命じます。この老中がいかなる映画にも顔を出してくる丹波哲郎。バカ殿の警護部隊の指揮者が内田良平。最後はハチの武蔵のように死んでしまいます。私は大昔に日活のご存知小林旭主演の渡り鳥シリーズで初めて映画館の画面で内田良平を見たのですが、一発でファンになってしまいました。若くてバタ臭くてカッコよかったですね。丹波哲郎・岡田英次・山崎努・杉浦直樹・内田良平は若い頃は本当にバタ臭くて精悍な表情をしていましたなあ。話しを本筋に戻すと片岡千恵像率いる御家人・同心の暗殺部隊が参勤交代から領地へ引き揚げる途中の宿場町を迷路のように変えてしまいバカ殿の集団を誘い込みます。まるで迷路のような罠の襲撃を受けた家来の「殿!」「殿!」と叫ぶ声ががんがん観客の耳に響きます。それに内田良平と元鞍馬天狗の嵐寛寿郎の真剣勝負は迫力満点。この頃の東映は内田良平とか丹波哲郎とか嵐寛寿郎とかのもともと他社にいた俳優の吹き溜まりのようになっていたのでしょうか。私は学生時代にこの映画を見てそれから20年近くたって再度見直し、覚えていたのは里見浩太郎の演ずる御家人の冷や飯食いが三味線の弦を切って芸者との別れをするところが印象に残っていただけでしたが、後からビデオを見直してみてどうしてそこだけを覚えていたのか不思議に思いました。NHKで放映されたのをビデオに録画して何度も見直しましたが子どもから「殿、殿って父さんうるさいんだよ」と何度も文句を言われたものです。チャンバラ映画の最高傑作ということは間違いありません。死ぬまでに一度は見る価値はあると思います。 |
| 仁義 | フランス | J・P・メルビル | A・ドロン | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 最高のフイルムノワールです。登場人物が実にかっこいいのです。特に退職が近い老刑事役のプールビル。アル中で退職してしまった元刑事のイブ・モンタン。馬鹿息子を保釈してもらうために警察に情報を売るクラブの経営者のフランソワーズ・ぺリエ。この3人のイブシ銀の味で主役のアランドロンを文句なく完全にくってしまった映画なのです。女性が登場するのは冒頭シーンだけ。ここまでやるかという淡々としたクールさが実にいいのです。特にプールビルの人生に疲れたという感じがにじみ出る演技。ホームレスのようななりをしたイブモンタンが、一変して、バリッとしたタキシード姿で登場する「おおおお!!!」という場面。たったひとつのミスキャストはイタリア俳優のジロ・マリアブロンテの起用です。マリアブロンテは毛深くて暑苦しくていけません。何か画面全体がマカロニウエスタンになってしまいます。わかりやすく言えばビートたけしの映画に山城新伍が出てきたようなものです。しかし、最後の場面、警察の罠と知らずに強奪した宝石を換金にいったアロンドロンがプールビルと交渉しているときに、友情のために「罠だ!」と叫びながら飛びこんでくるマリアブロンテは★★★の得な役。その後に続く短い銃撃戦。ひざを落として銃を構えるイブモンタンが正面から刑事たちに撃たれて倒れます。近づいてきたプールビルが倒れているイブモンタン見下ろしながら「おまえだったのか」とつぶやく。それ対してイブモンタンがニャッとした表情で息絶えていく場面はもう★★★★★。ほんと、ポエムなのです。ラストはアランドロンの死も暗示されています。本当に静かな淡々とした画面の中がぎっしりとポエジーで詰まっています。フィリムノワールの濃縮ジュースです。日本映画もやたら怒鳴りあわずにこれぐらいの映画をつくってみたらどうでしょうか。 |
| ブラザー | 北野武 | ビートたけし | ★★★ | ビデオ有り |
|
ビデオを借りてきて見ました。見終わった後、ムッムッムッ?となるのがいつもの北野映画の特徴です。今回もアメリカまでロケに行きながらどこか監督の思い入れの心情と主人公(ビートたけし)の行動がちぐはぐな感じがしてカタルシスに至らないのです。困ったものです。カタルシスを放棄させるところで高次なカタルシスに至らせる戦略なのでしょうか。見ているほうは戸惑うばかりです。一言で言えば来世の人間を現世の人間が監督して撮った映画のような感じです。それが日本とアメリカの話にニ分割されているのでなおさら観客は苦しい。酸欠状態です。時々、感動しながら、全体的には退屈させられたような奇妙な味わいの映画でした。ただ北野武の映画に突然やくざの親分として渡哲也が出てくるのも困ったものです。見ているほうも思わず日活時代の「人斬り五郎」がこんなに出世したのかと思ってしまいます。 |
| キユア | 黒沢清 | 役所広司 | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
最近の映画ではこれは傑作です。以前に一度この監督の映画を見た記憶があります。題は忘れました。その時にはなかなか面白い監督だなと思いました。後で必ずこの映画の題名は思い出すようにします。大学で大脳学・精神分析学を学んだ人物が出会った人物に催眠術をかけていくというストーリーです。そして催眠術をかけられた相手が無意識のうちに殺人を犯していくのです。この監督は乾いた感じの映画が撮ることが出きると思いました。犯人は悪意に満ちていますが、相手がどこか日常生活に問題を持っている人物に対して見事なほどに食い込んでいくのです。このような映像化しにくい問題を確かに映像のドラマツルギーとして持たせているのがこの監督の実力なのでしょう。役所広司もはまり役。人格の崩壊過程を入念に描いています。ただ犯人役萩原聖人は私はどこか好きになれません。この役者はどこかデビュー仕立ての頃の桃井かおりの雰囲気に似ています。ヘタウマというのかなんといえば言いのか。 |
| 泥の河 | 小栗康平 | 田村高廣 | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
この映画はビデオで2回見ましたが、ニ度と見ないつもりです。なぜなら見るたびにどうしても泣いてしまうからです(笑)。ランニングシャツで短パンの子どもが登場するだけでもういけません。涙腺が緩み始めます。川へりの安普請の一杯飯屋が出て来るとなおさらいけません。昔、私の田舎の町にも河に足場を組んで立てたウドン屋さんがありました。その光景だけで眼が真っ赤になってしまいます。その飯屋の親父が誠実そうな田村高廣ときてはもうお手上げです。貧しくありながらも幸せな家族を見るともう涙が滂沱と流れてきます。田村高廣の子どもが河舟で売春をしている加賀まり子の子どもに古い着物をプレゼントしようとすると「私はいらない」と姉の方が拒絶する場面ではもう何を言うべきか語る言葉もないほど涙が流れてきます。もしかしたらプロレタリア精神という実にイデオロギー的な言葉はあの時の姉の気持ちをいうのでしょうか。はたまた演歌で言えば「ボロは着てても心は錦」というのでしょうか。私事にわたって恐縮ですが、昔、私も近所の教会に出かけた折にその日がイースター祭か何かで集まった子どもたちに黄色に塗られた卵が一個ずつプレゼントされました。その時、「俺は乞食じゃないぜ」と心の中で思ったものでした。三つ子の魂百までもでしょうか。私は昔からかわいげのない子どもだったのでしょう。この映画は小学校などで絶対に上映すべきです。アホな道徳教育をするよりよほど子どもには役に立ちます。 |
| アルジェの戦い | イタリア | ジロポンテコルボ | 素人 | ★★★★★ | ? |
|
イタリア人の監督が撮ったアルジェリア革命のセミドキュメンタリー映画。とは言っても素人を使った劇映画なのですが粗い粒子の画像にアルジェのカスバに住むFNL(アルジェリア民族解放戦線)の革命家の短く激しい革命活動を追求した映画。FNLの弾圧に登場するのがフランス本国から派遣されたマチュー中佐率いるパラシュート部隊です。このマチューを演ずる役者がなかなかの迫力。この男が「変わらないのはサルトルだけだ」という場面が秀逸。そしてこのマチューが第2次大戦中はフランスのレジスタンスとしてナチスドイツと戦った経歴の持ち主であり、大戦の英雄であることが、この映画が単なる民族独立のレジスタンス映画から一歩抜け出しているところでしょう。この映画は最後に夜のカスバに不気味な民衆の叫び声のごときものが一斉に起こる場面で終わります。それからアルジェリアはフランスから独立したのです。アルジェリアは昔の言葉で言えば第三世界の民族解放闘争と革命の見本のようなものでした。しかし,その後、FNLは支配階級として腐敗してしまいます。そして今ではイスラム過激集団による大量のテロがアルジェリアで発生しているのです。こんな未来を誰が予測したでしょうか。 |
| 野良犬 | 東宝 | 黒沢明 | 三船敏郎 | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
黒沢明の刑事映画の傑作です。刑事役の三船敏郎が若くて本当にかっこいいのです。これに対して三船敏郎の拳銃をスリから買い取り殺人を犯す木村功が性格がねじくれた若者がまたはまり役。三船が先輩刑事の志村喬と犯人である木村功の家を訪ねると姉とその夫が貧しい生活を送っています。この義理の兄役を演じる三井弘次がいろいろな不満を持ちながらトカトントントンと木製の桶を叩いている場面が心に残ります。最後の三船と木村の格闘までのサスペンスに満ちたシーンは息をつかせません。このサスペンスに比べると「スピード」などという映画は実につまらなく見えます。しかし、昔、この映画を一緒にビデオで見た小学生の長男は見終わって「父さん、野良犬が一度もでてこなかったね」と文句を言いいました。その時は思わず「おまえ、ディズニー映画と間違っているじゃないの」と文句を言いたくなりましたぜ。それから別の機会に拙宅に予備校の卒業生たちが3人ほど遊びに来ました。お互いやることもなく一緒に「野良犬」をビデオで鑑賞しました。見終わった後の一人の感想「先生、暗い映画ですねえ」と真顔で言ったのにはガッカリしました。思わず、「てめえ、黒沢明をなめとるのか」と怒鳴りたくなりましたぜ。 |
| 哀愁 | イギリス | マービン・ルロイ | ビビアンリー | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 私は日頃より恋愛映画は嫌いで余り見ません。所詮、他人が離れたくっついたという話を延々見るのも疲れるからです。それにご都合主義的ハッピーエンドがどうも気に入りません。その点、この映画と「心の旅路」は別格です。ロバート・テーラーとビビアン・リーのメロドラマです。第一次世界大戦に出征したロバート・テーラーが行方不明となり恋人であったビビアン・リーが絶望して生活に追われて夜の女に身を落とすのです。そして死んだと思ったロバート・テーラーが無事帰還してきて再会。結婚を申し込むロバート・テーラーに対し真実を言えず、ビビアン・リーは自殺してしまいます。悲劇的結末です。私はこの映画でキャンドルライトのもと、「蛍の光」をBGMにしてロバート・テーラーとビビアン・リーがダンスをする場面が大好きでNHKが放映した時にビデオにとってそれから何度も何度もその場面を見ました。そういう時、妻や子どもが「父さん、また哀愁なの」などと馬鹿にした顔をして私の背後を通り過ぎていったものでした。映画より私の存在の方が哀愁に満ちていたのです。 |
| 叛乱 | 新東宝 | 阿部豊 | 鶴田浩二 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| ニ・ニ六事件を描いた映画ではこれが白眉でしょう。古い映画ですが私は隣町のビデオ屋で発見し急いでそのビデオ屋の会員となり借りて飛んで帰ってみました。それがもう10年前の話です。その前後に東映「動乱」(高倉健主演)とか五社英雄「二・二六」を見ましたがやはり恋愛映画というか青春激情映画(!)というか、どこか完全に社会性が欠如しています。そこがどうしても物足りません。北一輝や西田税が登場しない二・二六は牛肉のないすき焼きみたいなものです。五社英雄監督の「二・二六」は映像的には面白い場面もあるのですが、残念ながらやはり根本の精神が忘れられていると思います。その点この映画は名作でした。毎年、キネマクラブ(?)などという日本の古い映画のビデオ広告が新聞に掲載されていますが、この「叛乱」は一万円近くしますので買うべきか買わざるべきかハムレットのように悩みながら10年が過ぎてしまいました。 |
| アラビアのロレンス | イギリス | D・リーン | P・オトール | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
この映画でロレンス役を演じた異常性格俳優、ピーターオトールはこれ1本で終わりました。後は駄作の山となったのです。逆に言えばそれほどこの役がはまりすぎたとも言えます。デビュー作ですべてが終ってしまったのです(笑)。1960年代に、「新宿のロレンス」という言葉がはやったりしたが、これはロレンスがアラブ民族とともに「トルコ」を攻めたということからできた言葉です。トルコとはもちろん今の「ソープランド」のことです。真面目な話、日本のトルコ大使館から抗議が来てトルコ風呂という言葉は廃語となったのです。この「新宿のロレンス」という言葉の意味をわかる人も少なくなりました。しかし、この映画が傑作中の傑作であることは間違いありません。当時、私の通っていた田舎の高校の英語教師が「あの映画を見てから俺は高校の先生をやるのがむなしくなったぜ」と教室でしゃべていたことが今でも印象に残っています。 |
| 大菩薩峠第一部 | 東映 | 内田吐夢 | 片岡千恵蔵 | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
満州帰りの内田吐夢の映画です。中里介山の「大菩薩峠」は世界最長の不条理小説。これを映画化するのですから大変です。私がとくに印象に残っているのは第一部です。映画は小説と同じく大菩薩峠で巡礼親子に出会った剣客机龍之助が巡礼の父親を何の理由もなく斬り捨てるという不条理から幕を開けます。この机龍之助を演じる片岡知恵蔵がなかなかの不気味さを醸し出しています。そのお陰で映画全体にある品格が生まれました。しかし、この曼荼羅の世界を描ききるのは到底映画では不可能です。私は妖気あふれるチャンバラ映画としてこの映画を見ました。最もかっこよかったのは何と言っても雪の中、新撰組に襲撃を受ける島田虎之助役の大河内伝次郎です。この時の殺陣は実に決まっています。もしかしたら竹光ではなくほんみの刀を用いて撮影したのではないかと思えるほどです。島田虎之助は丹下左膳より強かったのです。ついでながら富士見書房時代小説文庫「大菩薩峠(ニ)龍神の巻」98ページに次のような次のような記述があります。 |
| 裸の島 | 独立プロ | 新藤兼人 | 殿山泰司 | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
高崎市図書館から借りてきて(もちろん無料)、何気なく見ていているうちにどんどん引きこまれていって結局最後まで襟を正して見てしまった映画です。紛れもない傑作です。殿山泰司と音羽信子の夫婦が子どもと3人で瀬戸内海の小島で貧しい生活を営んでいます。本土から水を運ばなくてはなりません。その水を島の頂上近い住居まで運ぶ延々と続く作業を描いています。労働の厳しさと大切さを描いているのです。しかも情緒的・感傷的ナレーション・せりふは一切なしです。林光の物悲しく痛切かつ単調なBGMが観客の心を締め付けてきます。もう理由は忘れましたが子どもが病気で死にます。本土からクラスの友達がやってきて葬儀を行う場面もすばらしいものでした。私はこの映画を見た後、日本の戦前の農本主義者が作った映画のように思えたものでした。日本の右翼や環境保護主義者はどうしてこの映画を絶賛しないのでしょうか。橘孝三郎とか加藤莞治が夢見た世界はこういう世界なのではないでしょうか。この映画がモスクワ映画祭でグランプリを授賞したのも皮肉な気がしてなりません。しかし,先日、テレビで放映されていた「午後の遺言状」という新藤兼人監督の映画をビデオに録画して妻と見ました。映画の途中で何の脈絡もなく河の滝が映りましたので私が「見てろ、絶対に裸の女性が出てくるぞ」と予告していると本当に出てきたので妻と大笑いしました。昔、新宿の映画館で新藤兼人監督の「本能」という映画を見て何度か観客と一緒に爆笑したのを思い出していたのです。しかし、「午後の遺言状」もいい映画でしたし新藤兼人は凄い監督であることは間違いありません。 |
| 飢餓海峡 | 東映 | 内田吐夢 | 三国連太郎 | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
水上勉の暗い暗い長編小説の暗い暗い映画化です。この映画を見れば丹念に作られた映画というものの底知れない力を感じられます。こういう映画がもう作られることもないと思いますが見終わると、戦争の後の時代と人生をしみじみと感じてしまいます。樽見恭一郎役の三国連太郎、娼婦の杉戸八重役の左幸子、鯵坂という老刑事役の伴淳三郎(バンジュン)がそれぞれ、力演・好演・熱演。北海道稚内市の大火災に紛れた質屋襲撃、台風による連絡船の遭難のドサクサに強盗犯である三国連太郎は仲間2人と小さな漁船で下北半島に脱出。途中の荒れ狂う海上で2人の仲間を殺してしまいます。それからその強奪した資金を元手に地方実業家として出世するのですが、ある日、慈善家としての彼を賞賛する記事が新聞に顔写真入りで出ます。それを見た下北で三国連太郎に金をももらって助けられた左幸子の演ずる八重が一言お礼を述べに訪ねていくのです。だが新聞の写真で見た三国連太郎を訪ねて来て訪問の理由を誤解した三国連太郎に殺害されるという物語の骨格が、当時の時代の風俗と共に実にリアルに荒れた粒子の画面に描きこまれています。つまらない人生にうんざりしている方はこの豚骨を煮つめて脂を搾り出したような映画を見ると人生が生きる価値があるように見えてくると思います。ちなみに内田吐夢はこの映画が長すぎるために東映がズタズタにカットしたのに怒って東映と大喧嘩をしたそうです。 |
| 将軍たちの夜 | イギリス | A・リトヴァク | P・オトール | ★★★★ | ビデオ有り |
| 先ほどピーター・オトールの「アラビアのロレンス」以後の出演作は駄作の山と書きましたが、この映画はその中でもましなほうです。異常性格者役がピッタリのオトールが熱演しています。ナチス時代のドイツ国軍の将軍がポーランドのワルシャワを徹底的に破壊しながらその罪は問われず娼婦殺しの罪で国軍将校から戦後も追及を受け最後に自殺するという物語です。この追求する将校が「アラビアのロレンス」でロレンスの盟友として活躍したアラブ人俳優のオマー・シャリフ。なんのこっちゃという組み合わせです。夢よもう一度なのでしょうか。この映画の圧巻はなんといってもピーターオトールが占領したパリのルーブル美術館でゴッホの自画像を見る場面です。オトールの顔が恍惚とした表情に変わっていくところが異常性格俳優の面目躍如としています。 |
| 影なき狙撃者 | アメリカ | J・F・フランケンハイマー | F・シナトラ | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 朝鮮戦争を舞台にした異色の洗脳映画です。洗脳と言う言葉がもっとも用いられたのは1950年代でしょうか。洗脳とは共産主義思想に精神的に従わせる工作を指します。朝鮮戦争で中国共産党に捕虜となったシナトラとロレンス・ハーヴェーがアメリカに帰還して来ます。その時に2人は洗脳されて捕虜になったことさえ忘れています。ロレンス・ハーヴェーはトランプのカードでダイヤのクイーンを見ると潜在意識の中に指令が現れて次々に敵を殺害していきます。これを阻止するのがシナトラという役回りです。しかし、ロレンス・ハーヴェーの母である右翼的な女性が実はアメリカを売る東側スパイなどという筋立てはなかなか凝っています。死んだ映画評論家の小川徹が泣いて喜びそうな筋立てです。この映画のロレンス・ハーヴェーはピーター・オトールの従兄弟のように見えてくるから不思議です。 |
| 蟹工船 | 独立プロ |
山村聡 |
★★★ | ビデオ有り |
|
小林多喜二のプロレタリア文学の映画化です。私が映画というものを見たのはこれが最初だったのではないかと思っています。そうすると昭和20年代の終わり(7歳)の頃にでも見たのでしょうか。記憶の中では太った男が箱のようなものをもって船室をうろうろしている場面と軍艦が船に接近してくる場面だけが残っていました。10年ほど前図書館から借りてきて見て、太った男が船長で箱が無線機であることがわかったのです。また、船長は無線で叛乱を鎮圧する為に帝国海軍に連絡をとろうとしていたのです。蟹工船で働く海の男の叛乱という映画ですが、原作と根本的に違っていたのは、最後に鎮圧に来た帝国海軍兵士が労働者たちを銃殺してしまう場面です。これひとつでリアリズムが消し飛んでしまいました。しかし、今となっては山村聡がこういう映画を作り劇場で上映されていたことが不思議になってしまいます。 |
| 市民ケーン | アメリカ | O・ウエルズ | O・ウエルズ | ★★★★★ | ビデオ有り |
| ご存知名画中の名画。私はかれこれ35年前近い学生の頃に新宿の「アートシアターギルト」で初めて見ました。アメリカの新聞王と言われたランドルフ・ハ―ストの生涯を描いた映画です。ハーストは共産主義者かファシストかデマゴーグか,毀誉褒貶のある人物でした。。オーソン・ウェルズという不遇(?)な映画の天才がランドルフ・ハ―ストというアメリカが生んだ怪物を描くのですから面白くないわけがありません。冒頭のニュースシーンがやはりいつ見ても要領よく主人公の姿をまとめていて観客に一気に興味を持たせる趣向がたまりません。最近ビデオ屋から「ケーン」(?)という題だったかの映画を借りてきて見ました。内容はオーソン・ウエルズとハーストの映画製作を巡る暗闘を描いていて「市民ケーン」制作楽屋落ち話しになっていてなかなか面白いものでした。しかし、ケーンの人を人とも思わぬ傍若無人ぶりは幼い頃に母と別れたトラウマが原因などというのはアメリカ人好みのセンチメンタリズムです。もちろんこの言葉を私はいい意味で使っていますが。「Rose bud」(薔薇の蕾」。これが映画のキーワードとなっています。泣かせる言葉です。この映画と傾向が似た映画と言えば、私に言わせれば、やっぱり「瞼の母」(加藤泰監督・中村錦之助主演)になるのでしょうか。 |
| 誇り高き挑戦 | 東映 | 深作欣ニ | 鶴田浩二 | ★★★★★ | ? |
| 大昔にどこかの大学の学園祭で見ました。新聞記者(トップ屋?)が事件を追ううちにアメリカ軍の影を背後に感じて最後は殺されることが暗示される場面で終ります。このような反米ナショナリズム的映画と言えば山本薩夫や熊井啓などの独壇場でしょう。しかし,この映画は映像がシャープで当時としては実にバタ臭い映画の作り方だったように記憶しています。深作欣ニは「仁義なき戦い」以前に大学生たちにかなりの人気があったのです。もちろん「バトルロワイヤル」以前です。国会議事堂の前で鶴田浩二がサングラスを取る場面など思わず「灰とダイヤモンド」のチブルフスキーを思い出しましたぜ。反米ナショナリズムアクション映画の嚆矢とでも言えばいいのか(笑)。丹波哲郎の占領軍仕込みの英語もなかなかのものでした。もちろん霊界に目覚める以前の若々しい丹波哲郎です(笑)。ああ、歳月は過ぎ去り人は変わっていく。 |
| 明治天皇と日露大戦争 | 新東宝 | 渡辺邦雄 | 嵐寛寿郎 | ★★★ | ? |
| 小学生の頃に見た記憶があります。新東宝を再建し(?崩壊させた(?)悪名高い大蔵貢の企画。日本中が見たという感動のナショナリズム映画(?)。まるで戦前が復活したような映画でしたがどうしてあれだけヒットしたのか今でも謎です。当時の新東宝のオールスターが出演していたと思います。明治天皇に鞍馬天狗の嵐寛寿郎、皇后に高倉みゆき。高倉みゆきは当時の新東宝社長の大蔵貢のお妾さん。記者会見で「女優を妾にしたのではない。妾を女優にしたのだ」という言葉が名セリフとして残っています。しかし、自分の妾を皇后役にするなど、大蔵貢という人は本当にアナ―キーな人でした(笑)。しかし,私も本当によく映画を見ていますよ。自画自賛するわけではありませんが、この後に続々と大蔵貢が制作した「天皇皇后と日清戦争」「明治大帝と乃木将軍」「楠公誠忠録」「大虐殺」「陸海軍流血史」「戦乱の女王}「大東亜戦争と国際裁判」などの映画をすべて見ています。何でこんな映画を見ていたのだろうと今でも不思議になります。しかし、鞍馬天狗から明治天皇、東条英機と演じた嵐寛寿郎は偉い役者だったのです。 |
| ジャッカルの日 | イギリス・フランス | F・ジンネマン | E.フォックス | ★★★★★ | ビデオ有り |
| ご存知F.フォーサイスの原作。世界的ベストセラーの映画化。小説も面白いが映画も更に面白いという稀有な例です。主人公役のエドワード・.フォックスがギラギラしていないところがよかったのでしょう。もし、要人暗殺専門のスナイパーが現実に存在するならこういう人物かなと思わせるところが凄いのです。注文した特殊な銃で試し撃ちをして木に吊るされたスイカが砕け散るショットが冴えています。あの場面だけでこの映画は生きています。ドゴール暗殺は現実に何度も計画されたとのことだが、これは本当にあったかなと思わせるものがあります。ジャッカルを追うフランス警視庁のロべル警視役のミシェル・ロンスダールが何やら生活感があふれた松本清張の小説に出てきそうな刑事に似ていて映画に味を与えています。テレビで放映されるのを何度も見ましたがいつ見てもわくわくします。 |
| 博士の異常な愛情 | アメリカ | S・キューブリック | P・セラーズ | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 最初の邦題は「ドクターストレンジラブ博士の異常な愛情」だったのでしょうか。ただただ一人二役のピーターセラーズの怪演が笑わせます。ストレンジラブ博士がドイツから来た物理学者の役で登場。何を言っても、ペンタゴンで核戦争をするのかしないのかという差し迫った話し合いの場ですぐに「ハイル・ヒットラー」という敬礼をするところで思わず笑ってしまいます。最後は原爆をロシアに投下するのですが、爆弾にアメリカ兵士がへばりついて降下していくと美しいきのこ雲が湧きあがるというある意味で人を食ったラストが感動的です。こんな映画をアメリカで作ったこと自体がアメリカらしい気がします。スターリング・ヘイドンが冷戦の申し子のような基地司令官を演じるのも見所。原爆を搭載した爆撃機が北極海を通りシベリア上空を通過していく特撮場面(?)が何やら荒涼とした死を暗示していて不気味です。 |
| 天国と地獄 | 東宝 | 黒澤明 | 三船敏郎 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 誘拐犯人である貧しい医学生を演じた山崎努が若くてかっこよすぎました。乾いたニヒルさと鋭角的な表情がたまりませんなあ。三船敏郎の靴会社の社長役は堂々としすぎていて何かハリウッド映画を見ているような雰囲気にさせてしまいます。犯人が間違って三船敏郎演じる社長の息子ではなくお抱え運転手の息子を誘拐してしまうことから事件が始まります。犯人の身代金の受け渡し場所が「特急こだま」(新幹線ではない)の車両の窓の隙間からカバンを投げ捨てさせるところなどスリルに溢れています。我が家で子どもたちと一緒にこのビデオを見返していますと、犯人の電話をしてきたテープから電車の「チンチンチン」という微かに流れて来て、これが調査の結果江ノ電だと分かるのですが、それ以降、わが家では「チンチンチン」という音が流行し江ノ島電鉄は我が家で最も有名な私鉄会社となったのです。 |
| 人間の条件全5部作 | 松竹 | 小林正樹 | 仲代達矢 | ★★★★ | ビデオ有り |
| 先日,ビデオ屋から借りてきて30年ぶりくらいに見ましたが、映画の暗さに正直驚きました。結局最後まで見ることが出来ませんでした。私はこの全5部作のこの映画を池袋の人生座か文芸座でオールナイトで2度ほど見た記憶があります。その時の映画館はオールナイトにもかかわらず満員だったような記憶がしています。このような映画を熱心に見る観客が昭和41年ごろにはまだ存在していたのです。原作は第2次大戦の終わりにソ満国境で侵攻してきたソ連戦車舞台と戦った五味川純平のベストセラーの映画化。この三一書房から出版された本は昭和30年代のベストセラーになった筈です。主人公の梶役に仲代達矢、奥さん役に新珠美千代。イデオロギー的ではありますが正面から戦争を見据えた映画です。今になって考えればソ連が美化されすぎている!という感じもします。梶は満鉄に入社した有能な研究員ですが、捕虜収容所に左遷されそれから召集されソ満国境でソ連軍と戦い最後に雪の中で倒れて死にます。そういえば先日、この小説「人間の条件」のモデルと噂されていた社会主義者の石堂清倫の訃報を新聞で読みました。時代がどんどん遠ざかっていきます。 |
| 山の子ら | 小川プロ | 小川伸介 | ★★★ | ? |
| 小学生の長男と次男を連れて無料の映画界が近くであるというので出かけて見た映画。同時上映は「圧殺の森」「通信教育生(?)」子ども2人はこの映画3本を必死で眠るまいとしてみたのです。「山の子ら」は遠い小学校の分教場に通う子どもたちを描いたドキュメンタリー映画。普通、テレビでは見られないタッチの内容に次男はいたく感激した模様。家で一時私が「山の子らは何里も歩いて通ってあんなに苦労していたんだぞ」と脅すと次男は神妙な顔をしていたものでした。長男は高崎経済大学の学園闘争を描いた「圧殺の森」でバリケードに中に篭城していた一人の学生が突然「軽井沢」に遊びに行くのだと言い出して仲間と揉めるシーンが印象に残ったとのこと。子どもは面白いものでけっこうポイントはついた映画の見方をしているものです。しかし、その子供たちも大学生となり小川伸介はあの世にいってしまった。 |
| ゼロの焦点 | 松竹 | 野村芳太郎 | 久我美子 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 松本清張のベストセラーの映画化。監督は松本清張の座付き監督のような野村芳太郎。新婚の夫が広告会社の金沢支社から栄転して東京に戻ってくる予定なのですが金沢に仕事の引継ぎに行ったまま失踪してしまいます。その失踪した夫を捜し求めるのが主役の久我美子。この小説で夫が偽装心中させられた能登半島の能登金剛が一躍観光名所となったのです。珍しく原作も映画も遜色つけられない良さをもっていました。私はこの映画をビデオに録画して暇な時に何度か見ていますが、沢村貞子とか西村晃などの助演人がしっかりしているのでいつ見ても飽きません。人が自分の出自を隠して生きることの辛さを描いている点がきっと魅力的なのかもしれません。松本清張原作の映画化ではこれと同じ野村芳太郎の「張り込み」(松竹映画)がベストでしょうか。 |
| 第三の男 | イギリス | C・リード | O・ウエルズ | ★★★★★ | ビデオ有り |
|
小学生低学年の頃、職人だった父が誰かに「大阪で第三の男を見た」といっている言葉を小耳に挟みました。当時、私にとって映画は遠い遠い夢だったのです。上京して名画座で「第三の男」をみました。オーソン・ウエルズもアリダ・ヴァリも若く痩せていましたね。それから何年か過ぎて新宿のアートシアターギルトで「かくも長き不在」という映画で久しぶりにアリダ・ヴァリに画面で再会したらなぜかすごく太っていたのです。この時は本当に悲しく思いました。それにしてもモノクロームの戦後のウイーンの世界はすばらしいですね。コンパクトな映画の代表的存在に思えます。そしてイギリス人のアメリカ人三流作家ジョセフ・コットンに対するシニカルな眼も生きているような気がします。アントン・カラスのチターもすばらしい。オーソンウエルズが遊園地の観覧車の中で言う台詞「ボルジア家の独裁はルネサンスを生んだがスイス300年の独裁ははとっぽっぽの鳩時計を生んだだけだ」は映画史上最も有名な台詞です。 |
| 影の軍隊 | フランス | J・P・メルヴィル | リノ・バンチェラ | ★★★★ | ビデオあり |
| 重苦しい映画です。陰鬱で血の匂いと恐怖が漂う映画です。これがナチと闘ったフランス・レジスタンスの真の姿なのだということをこのフィルムノワールの巨匠は訴えたかったのでしょうか。この映画に比べると「パリは燃えているか」は明るくて愉しいレジスタンス映画になってしまいます。巻頭にレジスタンスに志願する男がスパイを素手で殺害する場面が出てきます。結局タオルで絞殺するわけですが。重苦しくて見ているのが辛い場面です。監督はこういう場面が普通だと言わんばかりに淡々と描いていきます。レジンスタンスの幹部がロンドンに赴き自由フランス政府を代表するドゴール将軍より受勲を受けるわけですが、ドゴール自身の顔は現れずただ長身の姿が映されるだけです。ここにもドゴールを神話化するのではなくどこか暗く描いているようにも見受けられます。仲間のシモール・シニョレが娘の写真を携帯していたためゲシュタポに逮捕され子どもをだしに脅されて仲間を裏切ります。この女性をレジスタンスは自動車の中から狙撃して殺害します。どこまでも暗い映画です。結局このレジスタンスのグループは全滅してしまいます。あまりの暗さのために星四つにしました。 |
| 灰とダイヤモンド | ポーランド | A・ワイダ | Z・チブルスキー | ★★★★★ | ビデオ有り |
| ポーランドのレジスタンス映画。傑作。主人公マチェックは反ナチのレジスタンス活動家ですが、第二次大戦終了後はソ連によってポーランドに共産党政権が樹立されます。ロンドンに亡命政権はありましたがこれはスターリンによって認知されず国内のロンドン亡命政権派のレジスタンスたちは共産党政権の追及を受けます。今度はナチではなく、自国の政権に対して抵抗せざるを得ません。こういう状況の中でマチェックは指示により共産党の地区指導者を殺害します。そして「殺し屋」のような自分の生活に嫌気がさして新しい人生を選択しようとします。しかし、最後にはソ連兵士にゴミ捨て場で虫けらのよう殺されます。レジスタンスの闘士か単なるテロリストかは常に権力を握った支配者によって決定される典型的な例である。ソ連も崩壊しましたが今でもアフガニスタンにはタリバン側にも北部同盟側にも多くのマチェックがいることでしょう。そして悲劇は繰り返されるのです。 |
| 殺意の香り | アメリカ | R・ベントン | R・シァイダー | ★★★ | ビデオ有り |
| 家に転がっているビデオで見ました。BS放送を録画したものでした。主役はロイ・シァイダーとメリル・ストリープ。ロイ・シァイダーが精神分析医。患者であった美術オークションの専門会社の管理職が殺されます。この男の愛人のメリル・ストリープに殺人の疑いがかかります。後は見てのお楽しみと言うところですが、B級映画としてはまあまあの出来です。しかしロイ・シャイダーは本当にどこでも見かけます。それに顔が最初に見た「フレンチ・コネクション」の時と変わっていない感じがしてしまいます。これだけあらゆる映画に登場するというのはハリウッドの丹波哲郎のような存在なのでしょうか。メリル・ストリープの思わせぶりの演技も何か笑わせます。メリル・ストリープが腰にバスタオルを蓋っただけでうつぶせになって中国人にマッサージをしてもらっている姿は何かアメリカ男性の憧れの姿でもあるのでしょうか(笑)。映画史上に絶対残らない映画ですが、それなりにそれなりなのです。 |
| 暗殺 | 松竹 | 篠田正浩 | 丹波哲郎 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 司馬遼太郎の短編小説の映画化。幕末の策略家である清河八郎の生涯を描きます。幕府側につき浪人集団を組織して江戸から京都に乗り込んでいきます。しかしいざ京都に到着すると今度は大胆にも朝廷側の勅許を得て勤皇側につきます。そこで後の新撰組の芹沢鴨、近藤勇などが離脱します。これでは幕府側が頭にくるjのも当然です。それに清河八郎は江戸で目明しを斬って指名手配にあっているのです。清河暗殺を指示する老中に岡田英次。清河を暗殺する見廻組隊士佐々木唯三郎に木村功。坂本竜馬に佐田啓二。監督は清河八郎の対局に坂本竜馬を描きたかったのでしょう。大したチャンバラシーンはないのですが、殺陣は面白いところがあります。特に最後の清河暗殺のシーンはカメラが佐々木唯三郎の眼となって動きます。なかなか面白いアイデアなのですが成功しているとはいいがたい。しかし、いつ見ても丹波哲郎は豪快だし、岡田英次はインテリっぽいし、木村功は暗いですなあ。 |
| シン・レッド・ライン | アメリカ | テレンス・マリック | ショーン・ペン | ★★★★ | ビデオ有り |
| 高崎私立図書館から借りてきたビデオで見ました。最初90分程度で終る映画だと思って見ていましたがなんと171分という長さ。深夜、早く寝ないと思いつつ画面に見入ってしまいました。第2次大戦におけるガタルカナルでの米軍と日本軍の死闘を描いた映画です。相変わらず日本軍兵士は二世のようなアジア系のようなよくわからぬ俳優ばかりが出演していましたが大島渚の「戦場のメリークリスマス」に登場してくる兵士達よりは日本軍らしかったかもしれません。自然描写もなかなかよく戦闘シーンも迫力があるのですがあらゆるエピソードがぶち込まれているのでどうしても冗長の感を免れません。それに自分の歳のせいなのでしょうが、出演俳優が多すぎて俳優の顔の区別がつかなくて困ってしまいました。ただ、監督の描きたかった勇気とか臆病とかは戦場では関係ないんだよというメッセージのごときものは伝わってきたような感じがします。出演者の中で一番印象が強烈なのは中佐役を演じたニック・ノルティでしょう。ベルリン国際映画祭グランプリ(金熊賞)受賞。 |
| 現金に体を張れ | アメリカ | S・キューブリック | スターリング・ヘイドン | ★★★★★ | ビデオ有り |
| スタンリー・キューブリックのハリウッドデビュー作。競馬場の経理室から現金200万ドルを強奪する人間たちの物語。首謀者はスターリング・ヘイドン。しかし、この俳優はいつ見てもどこかドロリというかデロリというかかったるそうな表情をしていますなあ。悪の迫力というものがありません。まるでロバート・ミッチャムや古くはジョン・ペインの従兄弟のような顔をしています。これでは計画は失敗してしまうなあと思うのですがやっぱり失敗してしまいます(笑)。しかし、失敗の原因は仲間の一人である競馬場の警備員の妻が計画を愛人に打ち明けてしまうことが発端となるのです。それにしてもこのマリー・ウインザーという女優は憎々して浮気っぽくて強欲な女性を見事に演じています。この悪妻を切ないほど愛している小男の夫との結婚生活は地獄のような気がします。この映画は予算の掛け方から考えてB級映画になるのでしょうが面白さではなかなかのものです。さすがスタンリー・キューブリックと言える映画です。 |
| 黒い罠 | アメリカ | オ−ソン・ウェルズ | C・ヘストン | ★★★ | ビデオ有り |
| 監督・脚本がオーソン・ウェルズ、主演がチャールトン・ヘストン、オーソン・ウェルズ、舞台がアメリカとメキシコの国境の町とくればこれはもう巨体映画と言えばいいのか巨体対肥満体が相打つ肉弾映画と言えばいいのか。きっと暑苦しい映画だと思いましたがやっぱり暑苦しい映画でした。メキシコの麻薬捜査官であるチャールトン・ヘストンが妻のジャネト・リーと訪れた国境の町で乗用車の爆破に遭遇しこれを地元の警察と協力し解決しようとする。そこに登場するのが自分の肥満を持て余しいつもゼイゼイ言っているような警部のオーソン・ウェルズという段取りです。実はこの警部がトンデモない悪徳警官という寸法。この警部を愛している(?)酒場のマダムにマレーネ・ディートリッヒが登場という何と言えばいいのかわけのわからぬ映画風のところがあります。オーソン・ウェルズはやはり「市民ケーン」が凄すぎたのでしょうか。これが早熟の天才の辛いところかもしれません。 |
| 東京裁判 | 独立プロ | 小林正樹 | ★★★★ | ビデオあり |
| 珍しくドキュメンタリー映画をとりあげました。小林正樹は「切腹」「人間の条件」などの監督で有名です。占領軍の極東軍事国際裁判を写した膨大なニュース映画を再編集して制作した映画です。私は4時間近いこの映画をビデオで観ました。感想としては一言で言えば難しい映画だということです。まず残念ながら感動しましたとは言い憎いことを言っておかなくてはなりません。なぜなら残念ながらここに編集されている画面は今まで記録映画・ニュース映画・テレビなどで一度観たものが多かったからです。それにこのような一種の法廷劇は単調なもので以外とドラマがありません。東京裁判のドラマと言えば被告席の大川周明が前の席に座っている東条英機の頭をコツンと殴って退廷を命ぜられたとか、被告の中でただ一人の文官であった広田弘毅が死刑宣告を受け傍聴席の家族を見つめる場面とか実に細かいディテールになってしまいます。そこがこの種の映画の素晴らしいところでありまた辛いところです。この映画の上映された後、保守的評論家や右翼から映画の一部が中国の劇映画から利用されていたということで批判を受けましたがこういう批判は的外れでありことの本質をはっきりついていません。また後に東映が鳴り物入りで映画化した「プライド」という同じ東京裁判で東条英樹を扱った劇映画はこの「東京裁判」以上に感動を与えない代物であったことも否定できません。 |
| 七人の侍 | 東宝 | 黒澤明 | 三船敏郎 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 傑作中の傑作です。しかし子どもの記憶というものははかないものです。私はこの映画を小学校の低学年の頃に田舎の満員の映画館で見た記憶があるます。不思議なことにその時覚えていたのは三船敏郎扮する菊千代が野武士を待ち伏せて木の上に隠れているシーンだけでした。もしかしたら隠れて待ち伏せするということがわからずに不思議に思ったのでしょうか。学生になって何度か観ましたがやはり傑作の感を新たにしたものでした。特に6つの丸に一つの三角がデザインされた旗が藁葺きの農家の屋根に翻るシーンではいつ見ても涙が滲んできます。早坂文雄の音楽も心に残ります。登場人物は志村喬・加東大介・宮口精二・稲葉義男・木村功・千秋実・そして三船敏郎と七人の侍がそれぞれ持ち味を出していました。私の子供たちとこの映画を観ましたところ、やはり子供たちが興味を持った人物は1位三船敏郎2位宮口精二ということでした。子どもは映画というものを本当によくわかるものです。 |
| 戒厳令 | ATG | 吉田喜重 | 三国連太郎 | ★★★★ | ビデオ有り |
| 学生時代の封切り時に新宿アートシアターギルドで観ました。それからつい最近もビデオで観ました。脚本が別役実だったと記憶しております。ATGは当時で1000万円の低予算で映画を作っていました。この映画はニ.ニ六に取材しながら珍しく北一輝を中心に描いています。ただ最初に見た印象で北一輝役の三国連太郎があまりに堂々とした体躯であり小柄で貴公子然としていた北一輝とはイメージが違う感じがしました。冒頭、、安田財閥の安田善次郎が右翼テロリスト朝日平吾に刺殺される場面が出てきますがウンキが充満しています。朝日平吾が着ていた血染めの衣服が妹により北一輝に届けられるのですがこれを北一輝は三井財閥に持ち込み恐喝をして金品をえるのです。別に北一輝を単なる右翼に描こうとしたわけではこの映画はありません。ただ何か日本の思想家の暗さを表現しようとしたのでしょう。しかし狂言回しとして登場する兵士がどうもいけません。私にはこの兵士の登場した意味がよくわかりかねます。映画の点景としてニ・二六事件の将校も登場しますが予算の関係かどこか寂しいものがあります(笑)。それよりも北の廻りを徘徊する憲兵隊の岩佐なんて人物が妙に生々しくて迫力があります。北は法華経を当時摂政であった昭和天皇に献呈するのですが宮内省から訪れた侍従は白紙の礼状を持ってきます。この当たりの描写が何を暗示しようとしているのか。もしかしたらお互いがお互いに挑戦しようとしたということなのでしょうか。もしかしたら北は自分が天皇になれると考えていたのていたのでしょうか。いつ観ても考えさせられる映画です。 |
| 夫婦善哉 | 東宝 | 豊田四郎 | 森繁久弥 | ★★★ | ビデオ有り |
| 織田作之助の小説の映画化。小学校の時に母親に連れられて観ました。リアルタイムで観たわけです。何を覚えているかと言いますと不思議なことにただただ主人公の森繁がメソメソ泣いている姿です。私はどうしてそんなにメソメソするんだと怒っていたのでしょう。私は退屈で退屈で仕方がなかったのです。しかし、母親はどうして子どもの私をこのような映画に連れていったのでしょう。今でも不思議です。私の推理では恐らく父親はこういう映画は嫌いで行かなかったと思いますが、母親は女一人で田舎の映画館に入るのに凄い抵抗があったのではないでしょうか。それで私はそのだしにされたわけです。つい最近BSで放映していましたが、森繁も淡島千景もほんとに若いのに驚きました。これはきっと大阪物の映画の中では「王将」に匹敵する名作なのでしょうが最初に見た年齢がまずかったのです。 |
| ゴジラ | 東宝 | 本多猪四郎 | 志村喬 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 世界的に有名な「ゴジラ」です。この映画もリアルタイムで観ました。このシリーズはやはり一作目のこの映画が最高でしょう。子どもなりに原子爆弾とか放射能の恐怖を真面目に受け取っていましたから。、「ストロンチウム90が雨の中に混じって降ってくるので雨が降ったら傘をさすように」と小学校の先生からの注意を真剣に受け止めていたものです。ゴジラの出現にも時代的な必然性があったわけです。10数年前、まだ小さかった子供たちと一緒にビデオで何度か観ましたが子供たちに人気があったのはアイ・パッチをした平田昭彦の演じる芹沢博士でした。私も子どもの頃に芹沢博士に憧れました。その後、子どもたちに人気があったのは「ゴジラの息子」という映画でした。この映画を観て私もゴジラが「ゾルゲル島」に住んでいることを初めて知ったのです。それからアメリカ版に編集しなおした「ゴジラ」もビデオで見ましたがこれにはテレビで見かけた「ペリーメースン」役のレイモンド・バーが主演していたので驚きました。 |
| ゆきゆきて、神軍 | 疾走プロ | 原一男 | 奥崎謙三 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| レンタルビデオ屋からビデオを借りてきてまだ高校生だった長男と一緒に観ました。観終わって二人とも絶句しました。これは凄い映画です。やれるところまでやったというか、限界一杯の挑戦と言えばいいのか。人のどきもをぬく映画です。主演は正月の参賀において皇居で昭和店天皇に向けてパチンコ玉を撃った奥崎謙三。奥崎謙三は戦争中にニューギニアのジャングルの中で飢餓に喘ぎながら米軍の捕虜になって生還しました。その体験をもとにして「ヤマザキ,天皇を撃て」(三一書房)を上梓します。その奥崎謙三がニューギニアのジャングルの中で「人肉食い」が行われかつ終戦の後に兵士が上官によって処刑されたという事実を生き残っている人々を通して追求しようという話しです。監督の原一男はその奥崎に寄り添うようにカメラを廻すのです。このような追求を組織としてやるのではなく何のバックもない生活者である奥崎謙三一人で追求するところが日本時離れしています。奥崎が同僚を徹底的に追及する場面など迫力満点です。とは言っても奥崎自身のサービス精神なのか警察の公安との話しとか笑わせる場面もあります。なかなかのユーモアもあるのです。私は後になって原一男の「ゆきゆきて神軍」に緘する著書も読みましたが、原一男が奥崎謙三の過激さを持て余しているのがよくわかりました。この映画の後、奥崎謙三は同僚を処刑をした上官の自宅を訪ねその息子に発砲して重傷を負わせ服役しました。こういう映画というのは監督も出演者も生涯に一本しか撮れない映画のような気がしてきます。 |
| 赤西蛎太 | 知恵蔵プロ | 伊丹万作 | 片岡千恵蔵 | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 1936年制作の映画です。原作は志賀直哉。次男と一緒にビデオを観ました。二人でモゾモゾ笑いました。モダンなのです。伊達騒動の一エピソードなのですが、片岡千恵蔵が醜男の侍役と原田甲斐の二役を演じます。醜男の名前が赤西蛎太なのですが、これが実は国元から派遣された密偵なのですが文字通り昼行灯のような男です。この男に恋をする女性が出てきます。最後のシーンで2人が対面しながら片岡千恵像がボソボソ愛を告白する場面は絶品です。全然関係ないのかもしれませんが、この映画を観た後、黒澤明の「椿三十郎」を思い出しました。あの映画もお家騒動を描いていましたが、あの中に出てくる家老の伊藤雄之助の役柄が昼行灯のようでいてなかなかの切れ者というこの映画の赤西蛎太そっくりでした。もしかしたら黒澤明はこの映画を観てあの家老を造形したのでしょうか。 |
| 心の旅路 | アメリカ | M・ルロイ | R・コールマン | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 家族全員でNHKで放映されたのをビデオで録画して観ました。1942年制作の映画ですからセックス描写というものがほとんどありません。家族で安心して見られます。原作がそうなのだから仕方がないのでしょうが多少ご都合主義的ところがありますが傑作です。最後の場面には思わずホロリとしてしまいました。大富豪の御曹司が第一次世界大戦に従軍し負傷、記憶喪失となります。病院から脱出した彼は劇場の踊り子に救われ一緒に生活し始めます。そして生計を立てるために新聞社に寄稿しますがこれが採用となり新聞社を訪れる途中で自動車事故にあいその衝撃で昔の記憶が蘇りますが、女性との記憶は失ってしまいます。そのため2人は別れ別れになり再び再会し、愛し合うようになるのですが男には今の女性が昔の恋人だという記憶が戻りません。それからは観てのお楽しみということにしておきましょう。ヒロインのグリア・ガースンがロナルド・コールマンを呼ぶ「スミッシー」「スミッシー」という呼び方が我が家では一時大流行しました。 |
| 戦艦ポチョムキン | ソ連 | S・エイゼンシュタイン | A・アントノーホフ | ★★★★★ | ビデオ有り |
| 20世紀最大の傑作映画と言われています。私は1967年ごろにどこかの大学祭で最初に見たか、または新宿のアート・シアターギルドで観たかもう記憶が定かでありません。しかし、この映画のイデオロギーよりもやはり斬新な映像は素晴らしいものがあります。観客の興奮への持って生き方が実にうまい。それだけの映像テクニックをもっているのです。黒海国会のオデッサで起こった水兵の叛乱を題材にとったものです。有名なオデッサの階段での鎮圧兵が民衆に無差別発砲する場面は今観ても新鮮です。ソ連は滅びましたがこの映画の感動性は永遠のものがあります。20年ほど前、私としては珍しくこの映画のビデオを購入。子供たちと一緒に観ました。そのお陰で後年、ブライアン・デ・パルマの「アンタッチャブル」を観ているとシカゴ駅の構内の階段で銃撃シーンがありますが、その中に乳母車の赤ん坊が階段を落ちていく場面を観た瞬間子供たちが「父さん、これポチョムキンのパクリだよ」と言った時には笑ってしまいました。なお、映画と関係ないエピソードで思い出しましたが、何の本かは忘れましたが、蜂起が失敗した後、首謀者の一人が当時の社会革命党のザヴィンコフからテロリストにならないかと誘われた時、「自分はそういう道はとらない」と断ったことを読みました。そのやりとりが何故か今でも不思議に印象に残っています。 |