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「人を()うる歌」

―――妻一人夫一人の切なさよ―――

第5章 旅愁(りょしゅう)の章

 

夕陽浴び「天然(てんねん)の美」父歌う

 

家出して一日限りの旅路かな

 

昭和三十九年秋通学電車の女子高校生に声かけぬ

 

求めしは海の彼方(かなた)のまほろばの国

 

()せた時刻表に愛探す

 

エトランゼ夜行列車に思い出捨てぬ

 

靴裏に(うれ)(かく)せり東京は

 

(はと)バスは(なま)りの多き(はと)に満つ

 

後悔が先だつ手紙投函し

 

トランクの去年(こぞ)の旅路を封印す

 

春の風しがらみ捨てて出立(しゅったつ)

 

菜の花や白装束に数珠(じゅず)光る

 

はぐれたる(あり)一匹が放浪す

 

旅人(たびびと )の見果てぬ夢に蝉時雨(せみしぐれ)

 

秋風が(さら)っていきぬ海の家

 

故郷捨て流民(るみん)となりて訃報(ふほう)聞く

 

鳥渡り旅芸人に(あこが)れぬ

 

秋雨(あきさめ)の瀬戸大橋渡り七回忌(しちかいき)

 

投函(とうかん)す封筒の中秋立ちぬ

 

冬深く越し方想う羊飼い

 

()がためにジンタは(ひび)く冬空に

 

老いてこそ人肌恋し冬の旅

 

海鳴りや大地の別れ泣きあかす

 

波寄せる古代人(いにしえびと)も見し波が

 

修羅(しゅら)抱え海辺の道は白くあり

 

若き日の下宿訪ねて迷い道

 

枕木(まくらぎ)にとんぼ止まりて終着駅

 

酔いどれて天門くぐる胡蝶かな

 

地図広げ指で辿(たど)れば旅路の終り

 

旅装()き心の()い目ほころびぬ

 

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