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第二部 初級編
7 ジョーズ
*一九七五年 *アメリカ *スティーブン・スピルバーグ監督
「ゴジラ」と「キングコング」が登場したからにはこの映画を登場させないわけにはいきません。
ただ「ゴジラ」と「キングコング」にはその表情・仕種に人間に共通する哀愁というものがありましたがこの「ジョーズ」というサメには哀愁もへったくれもありません。ただ凶暴の一言です。
静かな初夏の海水浴場。泳いでいる人間に静かな海中から突然襲い掛かってくる巨大サメ。
これだけで私の子どもたちは生唾を飲み込みます。
子どもにもこのサスペンスの盛り上げ方のうまさがわかるのでしょう。
ところが市長はそういう事件がわかると観光客がこなくなると巨大サメの存在を否定します。
最後は警察署長と海洋学者と漁師の三人が全長八メートル、体重三トンとオンボロ漁船の上から戦います。
子供たちも自分が格闘しているような気分で拳を握ってみているのが父親の私はおかしかったことをよく覚えています。
8 チャップリンの独裁者
*一九四十年 *アメリカ *チャールズ・チャップリン監督
私は「砂漠は生きている」と同じように田舎の小学校の頃に学年全体でこの映画を映画館に見に行きました。
強烈な印象を受けました。
私の子どもにもビデオを借りてきて見せましたが、子ども三人ともに私と同じような強烈な印象を受けました。
別にチャップリンの反戦メッセージに感動したのではないでしょう。
「トメニア国」に住むユダヤ人の床屋(チャップリン)は第一次世界大戦で負傷しすべての記憶を失います。
そのトメニア国にヒンケル(チャップリンの二役)という独裁者が現われます。隣国のオスタリッチ国を侵略しようとしてバクテリア国の独裁者ナパロニと会談します。
このヒンケル(ヒットラーでしょう)とナパロニ(ムッソリーニでしょう)との会談の場面で ヒンケルとナパロニが俺の方が偉いのだということを示すためにお互いに座った椅子が相手より高くグングン伸ばします。
この場面とヒンケルが地球儀の風船をお尻でポンポン放り上げる場面に私の子どもたちは笑いころげました。
子どもは「反戦」などというのは関係ないのです。
面白いか面白くないかこれがまず一番です。
その点においてもこの映画は素晴らしいものを持っています。
最後のヒンケルと間違われた床屋の大演説は子どもには難しいかもしれませんが百分の一でもわかればいいのでしょう。
9 鳥
*一九六三年 *アメリカ *アルフレッド・ヒチコック監督
これは最近流行のホラー映画のはしりではないでしょうか。
子どもたちと一緒に見ていると静かに寂れた寒村を飛んでいた一羽のかもめが突然急降下し主人公の額をつつき始めた瞬間に私も子どもも体がピクンピクンとなりました。
いつのまにか町の上空が真っ暗になるほど鳥が集まりだします。
そして鳥の群れが人間を襲い始めます。
子どもたちが気持悪いなあと言ったのは小学校の運動場の鉄棒、教室の窓に黒いカラスが密集している場面です。
そしてそれまで上空を舞っていた多くの鳥が村の人々に襲い掛かってきます。主人公たちは無事に脱出します。
しかし、どうして不意に鳥が人間に襲い掛かってきたのか一切の説明はありません。
私の子どもたちはこの映画を見終わってただ茫然としていました。何か「未知のものに対する恐怖」というものを味わったのかもしれません。
10 生まれてはみたけれど
*一九三二年 *松竹蒲田 *小津安二郎監督
日本の子どもが出てくる「児童映画」というものの怪しさを突き抜けた傑作。
無声映画であることも画面がモノクロであることも全然気になりません。
東京の郊外、目蒲線の住宅地にサラリーマン家族が引っ越してきます。映画の主人公はこの家族の二人の兄弟です。
この兄弟二人は最初は近所のガキ連中から疎外されながらガキ大将をやっつけて自分たちが偉くなっていきます。
ところが父はサラリーマン。近所に住む専務の家に父親と兄弟は呼ばれてホーム・ムービーを見ます。
そのホーム・ムービーの中に父親が専務にペコペコしながらゴマをすっている場面があります。
兄弟二人はこれを見て激怒。帰宅してから父親にどうしてあんなにペコペコするんだと文句を言います。
父親が俺はサラリーマンなんだからと言い訳しますが子どもは叩かれても納得しません。
翌日からハンガーストライキに突入(笑)。
父親、母親と口を聞かなくなります。
そこからこの映画の本当の主題が見えてくるわけですが、難しい言葉も議論も一切なく子どもにも実に面白く分かりやすく世の中の仕組みや家族のあり方を示している点ではこの監督の素晴らしさが溢れています。
私の子どもたちはこの映画に登場してくる子どもたちに大いに共感し、映画を見ながらクスクス笑いの連続となりました。
映画を見終わってからはテレビの前でしばし「シー―ン」。
11 猿の惑星
*一九六八年 *アメリカ *フランク・J・シャフナー監督
SF映画の傑作です。発想の勝利と言えると思います。
地球から打ち上げられた人類の宇宙船がオリオン星座の惑星に着陸します。宇宙船は湖に着水しますが宇宙船は破損して沈没してしまいます。
宇宙飛行士三人は数日間その見知らぬ惑星の砂漠地帯をさまよいます。そして彼らはこの惑星を支配している猿の軍隊につかまります。
この惑星では猿が高等な知能を持った動物だったのです。人間は猿の奴隷にしかすぎない下等動物でした。
そんなお話よりも長男は「メイキャップが凄くうまいな」、長女は「おっかないわ」次男は「そっくりだ」「そっくりだ」と叫んでいました。
次男は人間が猿にそっくりだと言っていたのか猿が人間にそっくりだと言っていたのか私にはわかりかねましたが(笑)。
最後に主人公が海岸沿いを歩いていると岸辺に・・・・・・。
結末は礼儀として明かさないことにします。
ただこの映画の結末が私の子どもたちには理解できずその夜私は
「父さん、あれはどういう意味なの」
と子どもたちに説明するのに四苦八苦いたしました。
12 十戒
*一九五六年 * アメリカ* セシル・B・デミル監督
ハリウッド映画が金にあかして作った「旧約聖書」の物語。
エジプト人に迫害されたヘブライ人の子どもだったモーゼはエジプトの王女に助けられます。
しかし結局成長してヘブライ人だということが発覚してしまい砂漠に追放されます。そこでモーゼは結婚して平和な生活を送ります。
ある日、モーゼはシナイ山で神の声を聞き預言者となります。エジプトを疫病が襲い預言者となったモーゼは迫害されたヘブライ人を率いてエジプトを脱出しようとします。
追いかけてくるエジプトの軍隊。またモーゼの信じる神は偽りだと叫んで偶像を崇拝するヘブライ人の一派。
それらと戦いながらモーゼたちは紅海に追いつめられます。
そしてそこでモーゼが神に祈りを捧げると紅海が真っ二つにわれます。
この場面で私の子どもたちは一斉に
「オー、オー、すげえ」
と叫びました。
海水の引いた海底をモーゼの一行は歩いて渡ります。後を追いかけてきたエジプトの軍勢は海水が再び襲ってきて海に沈んでいきます。
この映画は別に芸術性が高いわけでは全然ありませんが、聖書的な世界があるのだということを子どもにわからせるにはもっともいい映画と言えると思います。
13 アラビアのロレンス
*一九六二年 *イギリス *デビッド・リーン監督
ストーリーは第一次世界大戦の頃の中東を舞台にイギリス人情報将校であるロレンス少尉がアラブ人独立のために戦う砂漠の英雄として活躍しながら最後はイギリス帝国主義に利用されただけだと自分でわかりさみしくアラブを去っていくという映画です。
この映画も確か私がビデオ屋さんから借りてきて子どもたちと見ると次の日に子どもたちだけでもう一回見ていた映画でした。
本当に子どもの感動する能力は素晴らしいものがあります。
子どもにイギリス帝国主義の中近東における植民地政策とかアラブ民族の独立などわかるわけがありませんがそれでも二回見ようとするのですからこれが映画の力というものでしょうか。
子どもたちの印象に残った場面はイギリス軍情報将校のロレンスが初めてアラブの衣装を身につけて砂漠で一人嬉しくて踊るシーン。
ワンカットの俯瞰で撮影したアカバのトルコ軍をロレンス率いるアラブ軍が攻め込むシーン。
砂漠で列車を襲いアラブ人が略奪した大きな柱時計が持つ意味がわからず投げ捨てるシーン。
ロレンスを英雄だと思いついてきた少年の一人が砂漠のアリ地獄に落ちて死にもう一人が鉄路に自らしかけた爆弾で爆死してしまうシーンでした。
特に最後の二つの少年が死亡するシーンは子どもたちに印象深かったそうです。
14 荒野の決闘
*一九四六年 *アメリカ *ジョン・フォード監督
アメリカ西部開拓史の中でも伝説的な連邦保安官ワイアート・アープの物語です。映画の最後はワイアート・アープ三兄弟とドグ・ホリディー対牛泥棒のクラントン一家のOK牧場での決闘シーン。手に汗握る銃の早撃ちが見ることができます。
私が小学生の頃にはアメリカ映画は西部劇全盛時代でした。
しかし今は本国のアメリカでさえ西部劇は日本の時代劇のように廃ってしまいました。
その西部劇の中でも名作中の名作と言えばやはりこの映画になります。この映画のテーマ音楽「いとしのクレメンタイン」は誰もが知っています。
日本の時代劇と同じように西部劇にもある種の様式美があります。
私の子どもたちは町の人々のお祭りで髭づらのワイアート・アープがクレメンタインと子どものように照れながらダンスを踊るシーンではクスクス笑っていました。
照れている男の気持が子どもにもわかるのでしょうか。
この映画の素晴らしさは決闘シーンもさることながらやはりアメリカの西部が持つ「詩情」そしてこの映画が持つ「抒情」というものが映画を見る者に深く何かを語りかけてくれます。
ほんの少しでも子どもがそのことに気がつけばそれは素晴らしいことだと思います。
最後のワイアート・アープがクレメンタインと別れて馬車で去っていくシーンを見た後、子どもたちは「あの二人はお互い好きなのに一緒にならないの」と私に尋ねたものでした。
15 シコふんじゃった一九九一年 *大映=キャビン *周防正行監督
私の子どもたちはこの映画を見てゲラゲラ大笑い。
日本映画には珍しく楽しく笑える映画です。立教大学相撲部がモデルと言われていますが、相撲部というどこか今の若い人々には人気のないサークルを舞台に繰り広げられる青春ドラマです。
部員が八年生が一人。これでは対外試合に出場できないので部員がむりやり勧誘されて入ってきます。
八年生の部員は試合になると緊張してしまい便意を催します。これが子どもたちにはおかしくてゲラゲラゲラゲラ状態になりました。
また日本文化に興味のあるイギリス人留学生が入部してきますが、まわし一つになるのが恥かしく最初はタイツを履いてその上にまわしをしめます。
これにもゲラゲラ。
日本の喜劇映画にはあまり秀作はありませんがこれは傑作中の傑作と言ってもいいでしょう。
なぜなら我が家の子どもはこの映画の大ファンになってしまったのですから。
16 天地創造
* 一九六六年 *アメリカ *ジョン・ヒューストン監督
「十戒」と同じ「旧約聖書」の話を土台にしたハリウッドスペクタクル映画。キリスト教の勉強にも役に立ちます。
人類の始祖であるアダムとイヴのお話が最初に出てきます。
二人がエデンの園で暮らすうちにイヴは蛇に誘惑され二人は禁断のリンゴを食べてしまいます。
二人はエデンの園を追われます。
後は二人の子どものカインとアベルが登場。
有名なカインがアベルを殺すという兄弟殺しの話があり、ノアの箱舟の話があります。
ノアは神を信仰するこことあつく神の啓示により洪水で人類社会を滅ぶことをしります。それから箱舟を作り始めます。
私の子どもたちが喜んだのは何と言ってもこの話。
世界中の動物、植物を箱舟に乗せてしまう場面が延々と続きますが、これがまた動物園にいるような雰囲気です。
そして大洪水がやってきます。一年過ぎて大洪水は去ります。
かくてノアの子孫は各地に散っていきます。バベルの塔のお話があり、ソドムとゴモラのお話がありと話が続いていきます。
私の子どもたちはただそのお金をかけた映画作りにビックリしたのかもしれません。
こういう映画は小さい時に見せておかないと見る機会を自分からは絶対に作らないでしょう。
17 ターミネーター2
*一九九一年 *アメリカ *ジェームス・キャメロン監督
この映画を家族全員で見終わって全員茫然、あの場面はどういう風に撮影したのだろうとSFX技術に愕然としたものでした。
三人の子どもは筋がどうというよりもう主人公のターミネーターが壁の中に体が吸い込まれていきまた出てくる場面に「オー、オー、オー」と言いながら感動の嵐(笑)。
三年後に核戦争が起こり人類が絶滅する危機に少年とその母親と善人のターミネーターがそれを阻止するために奮闘するなんて筋はほとんど関係ありません。
やっつけてもやっつけても立ち上がってくる悪人のターミネーターが不死身であることに憤慨しているくらいです。私は「あの悪人のターミネーターはもしかしたら俳優が双子なんじゃないの」とか私は言っていましたが、子どもたちには充分説得力がありました。
それにしても内容ではなく特撮技術に我が子どもたちは感動した珍しい映画でした。
18 燃えよドラゴン
*一九七三年 *香港アメリカ *ロバート・クローズ監督
この映画は私と長男と次男の男三人で見ました。この映画は世界中に「カンフーブーム」を巻き起こしました。そして日本映画よりも香港映画や中国映画が世界市場を獲得していて先駆となった映画です。長男と次男は最初、このブル―ス・リーが発する怪鳥のような掛け声にドキモを抜かれていました。これも「ターミネーター2」と同じで映画の筋は関係ありません。子どもたちが眼を見張ったのは「ターミネーター2」が「特撮技術」とするならこの「燃えよドラゴン」は人間の「体技」の素晴らしさでした。見終わってから男三人で「カンフー」と「空手」と「少林寺憲法」「キックボクシング」と「プロレス」とではどれが一番強いんだと真面目に議論したものでした。
19 大脱走
*一九六三年 *アメリカ *ジョン・スタージェス監督
第二次世界大戦中のドイツの連合軍捕虜収容所から脱獄するアメリカ人やイギリス人の将校・兵士を描いた物語です。
娯楽活劇風に制作しているので家族で明るく楽しく見ることができます。
捕虜となっている登場人物の一人々々の性格と行動が細かく描かれている一種の群像劇になっています。
収容所からトンネルを掘るまでの物語とトンネルを抜けた後、どう脱出に成功するのかが見物です。
私の子どもたちは長男は脱走の計画者であるビッグXと呼ばれるイギリス人空軍将校が気に入り、長女はトンネルを掘りながら閉所恐怖症のため恐怖を感じている兵士が気に入り、次男はバイクでスイス国境に逃れようとする主人公が気にいっていました。
それぞれがうまく描き分けられているので人間の性格とかを理解するのにもなかなか役にたつ映画です。
20 サウンド・オブ・ミュージック
*一九六五年 *アメリカ *ロバート・ワイズ監督
子どもが見るミュウージカル映画としてはこれが一番です。
修道院に入ろうとしている女性マリアがやもめの退役陸軍大佐の七人の子どもたちの家庭教師になります。家の主人である退役陸軍大佐はトラップとマリアは教育方針が違います。
マリアは子どもたちと一緒に歌うことによって子どもたちに音楽の素晴らしさを教えます。マリア役のジュリー・アンドリュースと七人の子どもたちがオーストリアのアルプスを背景に歌う場面がこの映画のすべてです。
私の子どもたちも映画を見ながら画面の子供たちと一緒にメロディーをハミングしていました。
結局、マリアとトラップ大佐は愛し合い結婚しますがそこにナチスからの召集令状がきます。ナチスが嫌いなトラップ大佐はアルプスを家族と歩いて越えて亡命します。
という筋よりもはやはり映画の中で子どもたちが歌う天使のような歌声がこの映画の命です。