□■□ 完食しました □■□






  「・・・ご馳走様でした」
  時間は掛かったが、空になった丼を斜めに傾けて土方に見せ、総司はにっこりと微笑んだ。
  「ほう、食ったか」
  「はい。ちゃんと頂きました。武士に二言はありません」
  「いつもそうだと、助かるのだがな」
  土方の言に、総司は頬を膨らませた。
  「私は、土方さんが思っているよりも、何でもちゃんと食べていますよ」
  「そうか。それなら、また連れて来るとしよう」
  藪蛇になってしまった事に、一瞬、息を詰めながらも、総司は、「いつでも」と、強気の笑顔を見せた。
  
  
  その夜、総司の部屋の障子が、カラリと開いた。
  横になる寸前だった総司は、布団の中から、訪れた土方を見上げた。
  「土方さん?」
  土方は、そのままズカズカと部屋に入ると、有無を言わせず抱き寄せる。
  総司は、深く抱き締められながら、おずおずと尋ねた。
  「どうしたのですか?」
  「言ったろう?」
  「え?」
  「長いものには総じて精の付くものが多い」
  総司は、首を傾げた。
  「・・・穴子の事ですか?」
  「そうだ」
  「ですから、ちゃんと頂きました」
  総司の耳元に、からかうような低音が響く。
  「知っているか?」
  「・・・何をですか?」
  「精が溜まるのは身の毒だ。だから、放っておくのは良くない」
  「え・・・?」
  「摂った分は、出さねぇとな」
  「土方さんっ」
  総司は、抱き締めている腕から逃れようとしたが、ビクともしない。
  「でも・・・」
  「でも?」
  「でも、ちゃんと食べたら、何もしないと・・・」
  「俺は、何もしないとは一言も言っていないぞ」
  「そんな・・・」
  「総司。折角忍んで来たのに、つれない事を言うな」
  総司の困惑を良い事に、さっさと帯を解いてゆく。
  「・・・土方さん」
  「うん?」
  「・・・もしかして、全部食べても食べなくても、結果は同じだったのでしょうか?」
  諦めの色を帯びた瞳に、土方は笑い掛けた。
  「少しは違う。これはちゃんと食った褒美だ」
  
  
  ご馳走様でしたv




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