良い映画には必ずと言っていい程、存在感のある、味のある役者に出くわす。 黒澤作品では、宮口精二に、土屋嘉男。大島作品なら、戸浦六宏。そして今村作品には、私の大好きな泰ちゃんこと、殿山泰司。などといったところか。決して派手なタイプではないが、彼等がスクリーンに映る不思議と絵がしまる。 内田裕之。ピアニスト兼、「うちだピアノ」の代表。 早稲田のジャズ研出身。当時の写真を見ると、若かりし頃の役者 、津川雅彦によく似た色男である。現在、携わるバンドは四つ。昭和歌謡からジャズまでをこなす、その幅の広さには驚かせられる。出過ぎることはしないが、常にバランスよく距離感を保ち、唄い手を最大限に引き立てるその才能に、名バイプレーヤーとして、引っ張りだこの理由が解る。また、逆に皆を引っ張ってゆくことの出来るコンダクターとしての才能もうかがえる。「昔は、やんちゃでしたねぇ」の言葉の裏には、彼自信きっと、いつもまわりに気を遣い過ぎる己に対しての苛立ちがあったのではないだろうか・・。こういう男は手ごわい。いつの間にか気がつけば、完全に主役をかっさらって持っていく手段もちゃんと心得ているからだ。毎度毎度、主人に従順な犬型のタイプでないことは確かである。ともあれ、目が離せない男である。 2006・04(改訂) |