2004年9月18日開設
本の細道
毎週第3土曜日更新(予定)
唐古敬のサイド・ページ
みなさん、こんにちわ。2号室の唐古敬です。
ここは旅の本についてのページです。
2号室と掛け持ちですが、月1回だから何とかなるでしょう。
ここに出てくる本は普通考えられる「旅の本」、
つまり旅行記や旅行エッセイなどから見るとかなり外れた部類のものも入っています。
私は旅そのものを楽しみつつも、その旅する地域に開かれた目を持つ旅人でありたいと願っています。
ですから、ある地域の本でもここに持ってくる気でいます。
「私を旅に連れてく本」もあれば、「私が旅に連れてく本」もあるでしょう。
本で読んだことを確かめに旅に出、旅の途上で本を読みかじり、旅で見てきたことを確かめるために本を読む。
旅と本は私の場合、常に一体のものなのです。
それでは参りましょうか。
ようこそ「本の細道へ」!
第4刷 加藤九ぞう 「初めて世界一周した日本人」
(新潮選書、1993年)
この本は、1793年から1804年にわたって世界を一周した日本人の話を載せたものです。
といっても、いわゆる普通の旅行ではありません。
彼らは遭難した船員たちで、アリューシャン列島に流れ着き、
カムチャッカからシベリアを経て、ペテルブルグでロシア皇帝アレクサンドル一世に謁見し、
それからロシア船に乗って大西洋、太平洋を西へ向かい、日本に帰着しました。
それはほぼ全行程にわたって、ロシアの力によって成し遂げられたものです。
それもそのはず、この旅は日本漂流民の日本への送還とロシア最初の世界周航というロシアの国家的事業によるものだったからです。
それにしても、現在の私たちでさえ、なかなか行けないルートです。
アリューシャン、カムチャッカ、シベリアの原住民たちの世界や、大西洋や太平洋の島々の暮らしも描かれます。
しかも200年も前ですから、まだアメリカもできたばかりで、出てくる世界も今とは全然違った感じです。
かつての地球は人間にとってこんなにも広かったのだ、と改めて思わせられます。
そして、最後に出てくるのが鎖国日本。
この本の最後辺りになると、読んでる私たちの目も主人公たちのものと同じですから、
日本人でありながら、江戸時代の日本が一つの異文化社会として見えてくるわけです。
今に劣らず、あの当時においても、日本がかなりユニークな国であったことがうかがえ、興味深い感があります。
自分の意思によるものではありませんが、今のバックパッカーたちの大先輩として、記憶しておきたい旅の一つです。
2005年2月20日
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