第45号 台形の面積

(上底+下底)×高さ÷2

これは、台形の面積を求める公式です。
この公式が小学校の算数の教科書から消えることになりました。
はじめてこの話を聞いたとき、私は、ある種の不安を覚えました。

爆笑問題の太田さんがある番組で言いました。
「そう言われてみれば、大人になってから、実生活の中で、
台形の面積を求める機会の多かったこと」
私は、この手のジョークがチョー好きで、腹を抱えて笑いころげました。
それから、私は、生まれてこの方、一度も実生活の中で
台形の面積を求めたことなんかなかったことに気がつきました。
一生のうちで一度も使わないような公式が消えることになぜ不安を覚えたのでしょうか。

土日が休みになると、授業数が減ります。
そしたら、今まで通りの内容では教えきれなくなります。
そこで今回、大幅に指導内容が削減されることになりました。
例えば、算数では、円周率が「3.14」から「約3」になったり、
台形の面積の公式が削除されたりすることになったのです。

削減の噂を聞いたお母さんたちの一般的な反応はこうです。
「そんな削減なんて、ただの手抜きじゃないの?」
「学力が低下するんじゃないかしら。」
「これからの日本の子供たちはどうなってしまうの?」
「削減された問題が大学受験に出たらどうするの?」
先生が「計算機を使ってもいい」なんて言ったら大変です。
「せっかく日本は世界一計算の強い国と言われてきたのに・・・」
と、嘆く人も出てきます。

娘(小3)の学級懇談会で、
今回の削減について、先生の見解を伺いました。先生は
「教育内容が変化するときは、いつもみんな心配するんです。」
と言いました。そして、さらに続けました。
「昔の計算機って知ってますか?
蜜柑箱くらいの大きさで、何十万円もした。
その割に足し算と引き算しかできなかった。
でも、今、煙草を1カートン買うとそのオマケについてくるんですよ。
『ライターにしますか。計算機にしますか。』って。」

私は、先生の話を聞いて「なるほど」と思いました。
『ライターにしますか。計算機にしますか。』
という言葉は、あまりにもうまく時代の変化を物語っていました。
時代が変われば教育だって変わります。
そんな当たり前のことなのに「削減」といわれると
つい損したような気がしてしまうのは貧乏性のせいでしょうか。

数学教育が専門の夫に削減の話をすると、
彼は全くだじろぐ様子もなくこう言いました。
「指導要領が完璧だった時代なんて過去に一度だってなかったのよ。
いつでも、みんな自分の時代がよかったような気がするだけよ。
どんなカリキュラムで勉強したって、
優秀なヤツは優秀だし、アホなヤツはアホなのよ。」
私はまた「なるほど」と思うのでした。




新指導要領を期待する記事にはめったに出会いません。
みんな学力の低下や今後の行く末を案じています。
教育産業はこの機会を逃すはずがありません。
「このままじゃ大変なことになる」と、親たちを脅して
塾の勧誘をしたり、法外な値段の教育セットを売りつけにきます。

では、いったいどうしたらいいのでしょうか。
私は、今回の改訂を批判するのはやめたいと思います。
仮に学習指導要領がアホな内容であったとしても、
口先だけで批判したって、なにも始まりません。
削減反対運動を行い、国家を動かそうというのでしたら、
批判する意味もあるでしょうけれど・・・

私に今できることは、次のことです。
・マスコミの情報に流されて一喜一憂しない
・教育産業ならぬ脅迫産業の脅しに惑わされない
・学校で習わなくても親が教えたいことは親が教えればいい

なにも学校で習うことが全てじゃないのです。
学校で習わないことを家で教えるというのはよくあることです。
うちの子たちは、まだ家庭科を習っていませんが、
針と糸で小人人形を縫うことができます。

3年生でわり算の筆算を習わなくなることに
目くじら立ててる人に私は言いたい。
わり算の筆算がそんなに便利なら、自分で教えてしまえばいい。
「お母さんの時代には、こんなやり方したんだよ」って。
まるで昔話でもするように。
そう言えば、今年の夏、”のし”とかいう日本式泳法を
孫に伝授している泳ぎ達者なおじいちゃんがいました。

みなさんは、今回の改訂をどう感じていますか。

注1:削減された内容は受験には出ません。
注2:円周率は「3」になるのではありません。「約3」です。
「3」と「約3」は違います。
今までもそうですが、いずれ、円周率はπになります。
注3:台形とは三角形を二つ合わせた形です。
よって、台形の面積を求める公式を知らなくても、
三角形の面積を求められる人なら
簡単に台形の面積を求めることができます。

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