第82号 THE UNKO

ウンコは、健康のバロメーターです。
快便は”元気の証”です。
私は、日ごろから元気な快便体質で、
うんこ力(うんこりょく)には、かなり自信があります。
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最近、私は夫婦で人間ドッグを受けました。
人間ドッグを受けると、オプションで大腸がん検診が受けられます。
私たちはそれも受けることにしました。
予約すると、まもなく自宅に大腸がん検診セットなるものが送られてきました。
「人間ドッグの前日と当日の朝の2回分のウンコを持参せよ」というのです。
私は人間ドッグの日が近づいてくると、検便のことが気になりだしました。
夜、目をつぶるとウンコを容器に集めている様が思い浮かんでくるのです。
一回目の検便の日、私は「正しい大便のとり方」というマニュアルを熟読しました。
そして、いつ便意をもよおしてもいいように心の準備をしました。
その日、私はつつがなく快便し、マニュアルどおり便をとることに成功しました。
しかし、その後、私は翌朝の検便のことが気になりはじめました。
人間ドッグ前日の夜11時以降は水も飲んではいけません。
朝食も食べてはいけません。
そんな状態で、私は、いつものうんこ力が発揮できるのだろうか。
そう思うと私は不安になりました。
いよいよ私のうんこ力の試される朝がやってきました。
朝ご飯も食べていないのに出るわけない。
しかし、そんな心配は徒労でした。
私のうんこ力は確かなものだったのです。
朝っぱらから快便な私って、いったい・・・
人間ドッグなんて受ける必要あったのかしらん。
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「友達全員から嫌われてもいい!」
娘は、怒り心頭していた。
「何怒ってるの?」
私は娘の話をゆっくり聞いた。
娘は仲良し4人で交換日記を始めていた。
はじめ、4人はノートをどうするか話し合った。
まず、ジャンケンでノートを買う順番を決め、
「ノートは買った人のものになる」という取り決めをした。
そして、一番にノートを買うのは、うちの娘になった。
娘は、自分の小遣いでノートを買った。
かわいいノートもたくさんあったが、
娘が選んだのは最もオーソドックスな大学ノート(むしろ、帳面)だった。
娘は、質素なその帳面の表紙に郵便局でもらった「速達」のハンコを押した。
一人の人が長い間、止めてしまわないための合図のつもりだった。
そして、楽しい交換日記が始まった。
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数日後、誰かがノートの表紙にかわいいウサギの絵を描いた。
そのうち、リスの絵が増えた。
ある日、かわいいウサギの絵を描いた少女が娘に言った。
「これからも、どんどんいたずら描き、増えていくんで、ヨロシク!」
このとき、娘がキレタ。
娘は、この何の変哲もない帳面が気にいっていた。
ウサギの絵が描かれたとき、娘はちょっと「イヤだな」と思った。
しかし、「まあ、いいや」と寛容な心でそのいたずら描きを許した。
リスが増えたときも同じだった。
しかし、「これからも増えていくんでヨロシク!」というセリフに娘は激怒した。
「表紙にいたずら描きしてもいいかと私に尋ねてから描いたんならまだいい。
これは私が買ったノートだ。
それなのに、黙っていたずら描きをして、その上、
『これからも増えていくんでヨロシク!』とは何だ!」
ところが、娘はその怒りを友達にぶつけることができなかった。
娘は怒りをノートにぶつけてしまった。
そう、ノートの表紙に立派なウンコの絵を描いてしまったのだ。
かわいいウサギやリスを描いた女の子は怒った。
他の二人も怒った。
「ウンコはヤメテ!」
「ウンコは汚い!」
みんなに責められ、娘は興奮して学校から帰ってきた。
「友達全員から嫌われてもいい!」の「友達全員」とは、
交換日記をしている3人のことだった。
ウサギやリスが許されてウンコはなぜ許されないのか。
娘には全く腑に落ちなかった。
「みんながウンコを嫌がるように私だって、リスやウサギがイヤだった。
それでも、私は我慢した。私がウンコを描いてどこが悪い」
と、娘は泣いた。
それから、しばらく喧嘩は続いたようだが、
そのうち、話し合って、表紙に白い紙を貼り、
いたずら描き禁止にして、とりあえず丸くおさまったらしい。
そして、そのノートが終わるまで4人はまた仲良く交換日記を続けた。
ある日、娘がプンプン怒っていた。
何かと思ったら、また、ウンコのことだ。
娘の描いたウンコを批判した友達の一人が、あるイラストを見て
「かっわい〜〜〜〜」とチョー感激した。
見ると、それは、かわいいウンコちゃんだった。
便座ちゃんもいた。
「あんな絵、大ッ嫌い!」と娘は息巻いた。
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私は、この話を夫にしながら、こんなコメントをしてみた。
「要するに、かわいいウサギやリスの好きな女の子たちはですね〜〜、
自分のウンコを愛してないんです。
アタシはウンコなんかしないもん!
な〜〜んて、気持ちで生きているから、ウンコなんか嫌いなんです。
でも、かわいいウンコちゃんは別。
かわいいウンコちゃんは、自分の本物のウンコを思い出さなくていいから、
かっわい〜〜って喜ぶことができる。
そこいくと、うちの娘は、自分のウンコを愛してるんですね〜〜〜。」
すると、夫が言った。
「しっかしね〜〜、こないだの検便を思い出してごらん。
ウンコを愛せといわれても、ちょっとね〜〜。
ウンコってくさいよ〜〜ん。
あれは、なかなか愛せないっすよ」
う〜〜ん、確かに水から上がったウンコのニオイはたまらんかった。
しかし、自分のウンコはちょっとかわいかったりするからコワイ。
ま、この場合、問題は「ウンコを愛してるか、愛してないか」というより、
娘が友達の言動に腹を立てて、
その腹いせに下品なウンコの絵で対抗したに過ぎないのだが・・・
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小さい子って、みんなウンコが大好きです。
小学校の教師をしていたとき、私は1年生を担任すると、
入学式の日、必ず話したものです。
「みなさん、毎朝、ウンコをしてきましょう。
ウンコの出ないときは、コップ一杯、水を飲みます。
そしたら、ほ〜〜ら、ウンコがしたくなりますよ」
子どもたちは先生がウンコの話なんかするわけないと思っているから大喜びです。
朝のウンコは大事です。
朝からウンコをするには時間的にゆとりがなければなりません。
生活習慣を身につけるためにはとても大事なことなのです。
ウンコをそんなに嫌わないでください。
小さい子どもだった頃、素直にウンコを愛せたあの頃のことを思い出してみましょう。
