なぜ、性教育が必要なのか


  

1.ヨシオ君のママ

ある日、学校から帰ったヨシオ君は、嬉しそうに言いました。
「お母さん、ペニスってなんだか知ってる?」
お母さんが赤くなったり青くなったりしていると、ヨシオ君は言いました。
「ペニスってね、チンチンのことなんだよ。今日、学校で先生が教えてくれた。」
その日一日、ヨシオ君は覚えたての”ペニス”という言葉をうれしそうに何度も連発しました。

「私、学校の性教育には大変迷惑しておりますッ!」
と、唾をとばさんばかりにムキになっておっしゃる方がいました。
ヨシオ君のママです。
「どうして迷惑なのですか。」
と、私は尋ねてみました。
彼女はヨシオ君がペニスという言葉を習ってきた日の話をしてくれました。
そして、その時、母としてどういう顔をしたらよいのかわからず困ったというのです。
「そんな言葉、小2の子どもにどうして必要なの?
性教育なんてしなくたって、みんな大人になれば自然に覚えていくものなのに、
学校はどうしてあんな余計なことをしてくれるのかしら。
私、ホントに迷惑してるんです!!」


なぜ?
ペニスペニスと我が子が連発したら、なぜ、そんなに困るの?
なぜ、学校の性教育がそんなに迷惑なの?
ヨシオ君のママは嫌いなのです。
自分のバギナも男のペニスも、それからSEXも、そういう言葉の全てが。
いやらしくって、汚くって、不潔な部分、イケナイ部分だから笑えないのです。


「ペニス」と聞いて苦笑くらいしてほしいです。
目くじら立てて怒るのは止めてほしいです。

  


2.卒業式の妊婦

ミカは、卒業式をさぼった。
だって、こんなおなかじゃ、恥ずかしくって、卒業証書をもらいに壇上に立てない。
ジロウ君と寝たのはたった一回。
愛してるからいいと思った。
こんなことになるなんて。
気づいたときには、もう6ヶ月を過ぎていた。
クラスには、もう一人、妊婦がいた。
その子は卒業式に出た。
まだ、おなかは小さい。誰も気づいていない。
本人さえも。

これは、ある中学校の話だ。
先生によると、在校中に妊娠する生徒は毎年2〜3人はいるそうだ。
性教育を「小学校からでは早すぎる」と言う人に聞きたい。
いつからならちょうどいいのか。
性教育で「寝た子を覚ますな」という人に言いたい。
子どもたちは寝ていない。もうとっくに目覚めている。
だから、好きな子と寝るんだ。寝た子は起きているんだ。
逆に、きちんと性教育を受けた子は安易なSEXに走らないそうだ。
なぜだと思います?

  

3.悲しき中絶

「みーちゃん、子ども堕しちゃったんだって。
しょうがないやね、3人もいたんじゃ・・・」
私は母の言葉に耳を疑った。
いとこのみーちゃんが中絶した。
みーちゃんには、夫がいる。子どももいる。
みーちゃんは浮気なんかしていない。
夫の子どもだ。けど、堕した。
もう育てられないからって。
「だったら妊娠すんなよ!」って、私は言いたい。


10代の子たちの中絶が多いというのは、わかる。
イイと言ってるのではない。
「育てられないのに妊娠したんだね。もっと知識を持ちたまえ。」
みんなそう言ってくれるだろう。
悲しき中絶は、既婚女性の中絶だ。
実際、10代の子たちの中絶件数より既婚女性の中絶件数の方がはるかに多い。
それも30〜40代の大人だ。
「避妊の仕方がわかりませんでした。」
とは言えないはずだ。
夫が避妊してくれなかったから?夫のせい・・・なの?そう?

望まない妊娠をする”大人”が多いというこの現状を知ったら、
どうしたって、性教育が必要だと私は思うのです。

そう、性教育が必要なのは、子どもたちだけじゃない。
私たち大人自身に、なのです。

  

4.知識と実践

サチコは泣きながら、雅子に電話をかけてきた。
「妊娠したの。産めないの。だって、夫の子じゃないんだもの。」
「どうして避妊しなかったの!?」
「言えなかったのよ。雰囲気こわしちゃいけないと思って、言えなかったのよ。」
「妊娠のこと、彼に言ったの?」
「うん、・・・堕せって。当然よね。でも、でも、・・・」
その日、サチコは危ないと思った。でも、「コンドームつけて。」と言えなかった。
危険日にコンドームなしでSEXすれば妊娠するかもしれないことくらい知っていた。
だって、サチコは医者だ。知識がなかったとは言わせない。
SEXの雰囲気を大事にして、自分の体を大事にしなかった。



ハルヨは、すっごい不良でいつ男と寝ても不思議はない中学生だった。
養護教諭はたいした先生で、ハルヨを呼んで、
「SEXするなら、絶対コンドームを使え」
と、教えた。妊娠の可能性についてもかみ砕いて教えた。
ある日、ハルヨが先生のところに泣きながら来た。
妊娠していた。
「あんなにコンドームをつけなさいって言ったのに。」
ハルヨは泣きながら言った。
同年代の男友達はみんなつけてくれた。
でも、30代のオヤジがダメだって言った。
1回くらいダイジョブだから、生でやらせろって、しつこく言われた。
それで、やっちまった。



知識があっても実行できなきゃなんにもならない。
コンドームつけてって言ってるのに、
協力できないふざけた男に対抗する術だって身につけておかなきゃいけない。
避妊の方法を知ってるだけじゃなんにもならない。

  

5.まとめ

自分の体は、誰のものなのか。
それをもっと真剣に考えるべきだ。

私はここで”大人の性”を語りたい。
大人が自分の性を自覚したとき、
はじめて子どもに性教育ができるようになる。