セブンのメイン監督、満田かずほ監督の2回目となる担当。そして、実質的な「満ちゃんセブン」の開幕となった作品です。
「僕の場合、撮った作品の8割がたは、脚本家と話し合ってイチからつくった。ブースカ(66年11月〜67年9月放送)を撮っていたこともあって、『マックス号応答せよ』(第4話)あたりは、すでにできあがっていたけど。だから僕の意向が反映されてきたのは、『アンドロイドゼロ指令』(第9話)のあたりから…」(満田かずほ:談、※1)
まぁ、何はともあれ、満っちゃん。やってくれました!
「ストレートのウイスキーをがぶがぶ飲み、タバコもヘビーだ。こんなに喉を酷使しては翌日のアフレコに影響してしまう。注意してもいうことを聞いてくれない」(満田かずほ、※2あとがき)
と嘆かせた主演女優、アンヌの処遇です。
シリーズ構成を兼任した文芸部長の金城哲夫氏と満田かずほ氏との共同イメージにおける理想の女性「アンヌ」。そんな彼女に、似ても似つかない女優の「アンヌ」。それどころかプロ意識も希薄な、現実の「アンヌ」。ついに、怒り爆発の満田かずほ…。
「冷却期間を置くしかない」(満田かずほ、※2:あとがき)
と考えた監督は、何と、アンヌの出番を極端に減らしてしまったのでした。
もっとも当のアンヌは、
「セリフが少なくて楽だわ…」(ひし美ゆり子、※2)
とほっとしていたそうな…。
ああかわいそうな満っちゃん!…
アンヌ干され編その1。
放映版でのアンヌは、はじめの方の本部作戦室シーンで、白衣のドクター姿でナースらしきエキストラになにやら指示を与えているカットだけの出演です。
ただしセリフは聞こえてはきません。アンヌの著作によると、アフレコはしたようですが、使用されなかったようです。
もっとも、話の流れに関係するセリフがあるとは思えないカットでしたが…。
STORY
オープニング・ナレーション
「地球防衛軍ウルトラ警備隊、宇宙人の侵略から地球を守るため、日夜パトロールを続けているのです」(浦野光)
ホーク2号、1号、ポインターの発進、出動シーン。
←冒頭から、アリモノで50秒も稼ぎました。
会社思いの満っちゃんです。
ポインターで夜間パトロール中のフルハシとソガ。
その行く手に、金髪・金色ワンピースの美少女が現われた。
急停止するポインター。
歩み寄る美少女。
「ウルトラ警備隊の方ですね…」(美少女)
「…そうですが」(フルハシ)
「あのう、モロボシ隊員では?」(美少女)
「俺?…」(フルハシ)
ソガに目配せをしながら、
「そう、モ・ロ・ボ・シ・ダ・ン…」(フルハシ)
「お会いしたかったんです…」(美少女)
←顔も知らないのか!
微笑み、握手を求める美少女。
慌てるフルハシ、…手を差し出す。
握手…ビビビビビビッ…高圧電流?
「うわぁぁぁぁぁ!」(フルハシ)
逃げる美少女。
「おい、どうした!」(ソガ、←タメ口…)
苦悶するフルハシ。
美少女は闇夜に消えていく…。
追跡を諦めたソガがフルハシのもとに戻ってきた。
フルハシの左手にはブローチを握りしめられていた。
逃げ去る瞬間、美少女からむしりとったのだ。
ブローチの中には、謎の文字と妙なマークが記されていた。
作戦室。
右手に包帯を巻いたフルハシ。
「もはやショック死、ってとこだったんだぞ」(キリヤマ)
「面目ありません…。女だと思って、つい油断してしまって…」(フルハシ)
小さくなるフルハシ。
ドクター用の白衣で、画面に後ろ向きのアンヌ。
「ウルトラ警備隊員としては、少しうかつだったな。相手は始めから殺意を持っていたんだからな」(キリヤマ)
「はぁ…」(フルハシ)
ナースが画面左に入ってくる。そっちに近寄るアンヌ。
「僕の身代わりにやられたなもんだな…。スイマセン」(ダン、←タメ口…)
頭を下げるダン。
ダンの横でナースに指示するアンヌ。
「いやあ、今度会ったら絶対、タダじゃおかないから…」(フルハシ)
画面から消えるアンヌ、お疲れ様でした。
「それにしても一体何者なんだろう?…その大胆な手口といい、タダの女じゃなさそうだ。それに問題は、なぜ、モロボシダンを狙ったかだ」(キリヤマ)
←テレビの前の良い子には、その理由はわかっているゾォ。
複雑な表情のダン。
「隊長。ブローチの文字解読ができました」(アマギ)
「そうか。それで?」(キリヤマ)
パンチテープを読むアマギ。
「…ア・ン・ド・ロ・イ・ド・ゼ・ロ・指・令…」(アマギ)
「アンドロイドゼロ指令?……一体なんだろう?」(キリヤマ)
「隊長、僕にその女を追わせてください」(ダン)
「いやぁ、俺も行くよ」(フルハシ)
慌てるフルハシ。
「おい、その体じゃ無理だ」(キリヤマ)
フルハシの肩をポンと叩いたソガ。
「俺が行くよ。あの顔は忘れん…」(ソガ、←またもやタメ口…)
「よし、2人で追っかけろ。ついでに、アンドロイドゼロ指令が、どんな指令なのか探るんだ」(キリヤマ) ←おい、ついでかい…
都内某所の団地。
ポインターでやって来たダンとソガ。
武器のおもちゃで遊ぶ子供たち。
←どうして、いきなり団地に行くんだ?
通報があったのか…?
それとも得意の透視か…?
子供たちのおもちゃを見たダン。
(まるで、本物だ。とても、おもちゃとは思えない…)(ダン)
子供たちを見ると、皆、同じワッペンを付けている。
おもちゃにも同じマークが付いている。
ブローチにあったマークと同じデザインである。
「どこで買ったの?」(ダン)
「おもちゃじいさんだよ!」(子供A)
「おもちゃじいさん?そのワッペンも?」(ダン)
「おもちゃを買うとオマケに付けてくれるんだ」(子供A)
「あそこにいるよ、ほら!」(子供B)
子供の指した方向、30メートルほど先。
リヤカーでおもちゃを売るじいさんの姿があった。
「さあ、今度はこのジェット機が空を飛ぶよ…」(じいさん)
ダンとソガの目の前で、デモンストレーションをするおもちゃじいさん。
←気がつけよ!
おもちゃの飛行機がジェットを吹いて飛行する。
じいさんに近づくダンとソガ。
「…今日はおしまいに、しようかな…」(じいさん)
2人に気がついて、立ち去るおもちゃじいさん。
「尾けてみよう」(ダン)
リヤカーを引くおもちゃじいさん。
ポインターで尾行する2人。
←あの目立つ車で、追い抜かず、気づかれずに尾行できるとは…!
おもちゃじいさんのアジトの近くで、近所の人から聞き込み捜査を始めたダンとソガ。
そこに、アマギからの緊急通信が入る。
「例のペンダントを分析した結果、宇宙金属と判明したぞ」(アマギ)
「宇宙金属…」(ダン)
「気をつけろ!敵はなかなか手強そうだ!」(アマギ)
←なぜだ!…宇宙金属だけで、手強いのか!
ダンとソガの様子を見ていた、おもちゃじいさん。
「どうやら嗅ぎ付けたらしいな…」(じいさん)
←って、アンタが見せびらかしたんだろ!
「今夜あたり、…やっちまおうかな…」(じいさん)
←絶対、セリフのトーンが違う…
作戦室では、ヒマつぶしにライターをいじるキリヤマ隊長…。
←どういうつもりの画面なんだ…?
分析の終わったアマギが戻る。
「どうだった?」(キリヤマ)
「間違いありません。これもあのブローチと同じ宇宙金属です」(アマギ)
「やっぱりそうか…」(ダン)
「それだけじゃないぞ。このワッペンにはな、ある種の周波だけを受けつける、特殊な装置がしてあるんだ」(アマギ)
「なに、受信装置?」(キリヤマ)
「ええ、この部分が受信機になっているようです」(アマギ)
断片的な情報に、謎は深まるばかり…。
「早めに見当をつけた方がよさそうだぞ、そのじいさんを徹底的に洗ってくれ…」(キリヤマ)
←隊長、それじゃ、特別機動捜査隊だってば…。
おもちゃじいさんのアジト。
「さあて、そろそろ出掛けるかな」(じいさん)
戸棚を開く。そこにはフルハシを襲った美少女の人形が…。
美少女は、アンドロイドだったのだ。
「アンドロイドゼロ指令、今夜発令する」(じいさん)
「はい」(アンドロイド)
「そのためにモロボシダンの動きを封じなければならん。それがおまえの役目だ。おまえはそのために作られた」(じいさん)
「わかっております」(アンドロイド)
「二度と失敗は許されなんぞ。何としてでも、モロボシダンを…」(じいさん)
「エム地点に誘い込みます」(アンドロイド)
夜間パトロール中のダンとソガ。
現われるアンドロイド。追いかける2人。
「チクショー、なんて逃げ足の速い女だ」(ソガ)
「あれは人間じゃない」(ダン)
←どうして?説明は?
逃げ足の速いアンドロイド。
2人は丸の内から銀座まで追いかける。
松屋に逃げ込むアンドロイド。
←エムは、松屋のエムだったのね…。
静まる館内を捜索する2人。
…と、その時、館内放送が、
「お客さまにお知らせします。午前零時の時報とともに、アンドロイドゼロ指令が発令されます。あとしばらくお待ちください」(アンドロイドの声)
←これを聞かせるために誘いこんだの…?
松屋のおもちゃ売場。
おもちゃの戦車部隊・爆撃機隊・ロボット部隊に襲撃されるダンとソガ。
負傷したソガを抱きかかえて。バックヤードに逃げ込むダン。
「キズはどうです?」(ダン)
「俺はいい。それより早く本部へ」(ソガ)
「こちらダン、本部応答願います…」(ダン)
画面が乱れてつながらない。
「こちら、ソガ…本部、こちらソガ、本部…」(ソガ)
やはりつながらない。
「妨害されているんです」(ダン)
「…こちら本部…」(アマギ) ←妨害されてないよ…。
慌てふためくダンの通信に、
「もっと真面目にやれよ…」(アマギ) ←監督にも言ってやれ。
じいさんとアンドロイドに追いつめられるダンとソガ。
もう、逃げ場はない。
セブンに変身したいダン。
…しかし、隣には負傷したソガがいる。
(ここに、ソガ隊員さえ、いなければ…)(ダン)
ソガを殴って気絶させるダン。
「ソガ隊員、スマン…、デュワッ!」(ダン)
←ムチャクチャデゴザリマスルガナ!…
はぁ…はぁ……。
さすが、イチから参加した満田かずほ…。
ツッコミだけでストーリーが再録できてしまいそうな勢い…。
←って再録できてやんの!
松屋のおもちゃ売り場。(少し戻ります)
再び流れる館内放送。
「お客さまにお知らせします。午前零時の時報とともに、アンドロイドゼロ指令が発令されます。あとしばらくお待ちください」(アンドロイドの声)
「貴様は何者だ?アンドロイドゼロ指令とは何だ?」(ソガ)
暗闇に向かって吠えるソガ。
暗闇から姿を現わす、おもちゃじいさんとアンドロイド。
「お答えしよう。アンドロイドゼロ指令、簡単に言うと先ず、催眠周波を子供たちに送って催眠状態に置く。それからあのおもちゃ、実は本物なんだ。機能は止めてあるがね」(じいさん)
「そのためにワッペンを…」(ダン)
「さよう、あのワッペンは子供たちに催眠周波を与え、おもちゃを実戦用
の武器に切り替える役目をするんだ」(じいさん)
「そんなことが出来ると思っているのか」(ソガ)
「出来るね。見ていたまえ…。午前零時の時報とともに、子供たちのおもちゃが一斉に凶器になるんだ。私のばら撒いたおもちゃがな…。催眠状態に置かれた子供たちは、私の思い通りに操ることができる。子供たちが持つ最新鋭の武器は、地球上のいかなる武器よりも強力だ。まして
地球の大人たちは、子供には武器は向けはしないだろう。だから子供たちは、何の苦労もなく、ごく平和的に、東京を、日本を、いや全世界をたちまち占領してしまう、というわけだ。どうです、おわかりかな?ゼロ指令の内容が…」(じいさん)
「ふん!ばかばかしいや。おもちゃが本物になってたまるか!」(ソガ)
「では、納得させてあげよう」(じいさん)
そして、ダンとソガはおもちゃの戦車部隊・爆撃機隊・ロボット部隊に襲撃されて、負傷したソガを気絶させたダンはセブンに変身するのです。
セブンに屋上へ追いつめられ、アンドロイドを破壊されたおもちゃじいさんは、正体を現わし、頭部の異常に発達した宇宙人、チブル星人の姿となります。しかし、特に武器があるわけでもなく、巨大化もしなければ格闘もなく、あっけなくセブンに倒されます。このシーンでは、夜間の松屋屋上で、チブル星人の操演が行われました。日本全国に屋上で「怪獣ショー」をやったデパートは数あれど、操演で宇宙人を操ったデパートはここだけです。銀座松屋の屋上は、今も都会のオアシスです。心地よい風にあたりながら、深夜の銀座、デパートの屋上で、ピアノ線に吊るしたタコもどきを操る青年たちの熱意を思い起こすのも一興でしょう。
また、チブル星人の唇に見覚えがありませんか…?…そう、ガラモンやミクラスと共通する唇の形です。成田亨氏は魚のコチの口をモチーフにしたそうです。どうりで、生物感にあふれた愛嬌ある唇になっているわけです。
セブンは巨大化せずに等身大で戦います。ただしセブンの一方的な攻撃だけなので、戦いといえるかどうか…。
先ずは、セブンVSアンドロイドゼロワン。
決まり手:エメリューム光線。額に命中、人形化して爆発。
そして、セブンVSチブル星人。
決まり手:エメリューム光線。痙攣して、溶けてゆく。
ALIEN&MONSTER
頭脳星人:チブル星人
身長:2m
体重:500s
武器:催眠電波
特技:機械製作(アンドロイド、おもちゃ等)
特徴:アタマ(チブル)がデカい
弱点:体力には自信がない
アンドロイド少女:ゼロワン
身長:1m56p
体重:いや、こりゃ失礼
武器:手のひらからビリビリ高圧電流
指先からのバリバリ電流弾丸
特技:走るのが速い
弱点:あきらめが早い
ACTOR&ACTRESS
アンドロイド役は、いまなおカルト人気を誇る小林夕岐子さま。
金髪のウイッグと目元の濃いメイクが、リバイバルしている今っぽくて、逆に時代を感じさせません。それどころか、かえってミステリアスに見えてきます。東宝ニュ―フェイス第6期生で、ゴジラシリーズの決定版「怪獣総進撃」にも出演しています。
「アンドロイド役で出演した小林夕岐子さんは、年齢はひとつ上ですが、東宝で私の同期生でした。このときは金髪のかつら姿でしたが、まるでお人形さんのような、きれいな顔立ちの人でした」(ひし美ゆり子、※2)
「東宝撮影所で女優の小林夕岐子に会った。お面をかぶったような無表情な顔をした美女だ。ロボット的冷たさも感じた。さっそく上原正三にアンドロイドを主人公にした"アンドロイドゼロ指令"の脚本作りにかかってもらった」(満田かずほ:寄稿、※10)
おもちゃじいさんには、植村謙二郎さん。
黒澤明監督「静かなる決闘」にも準主役クラスで出演されている大ベテランです。ウルトラシリーズでは「帰ってきたウルトラマン」の名作といわれる第33話「怪獣使いと少年」(脚本:上原正三)に、メイツ星人の地球人姿として出演されました。
おもちゃじいさん、というストレートなネーミングがいいですね。ネーミングといえば、今回の宇宙人は、頭でっかちでタコみたいなチブル星人。「チブル」は沖縄の言葉で「頭」だそうです。ウエショーこと上原正三氏のセブン初脚本ということで、同郷のキンちゃんこと金城哲夫氏も遊んだみたいですね。ついでに、やたらと肋骨のデカい「ソーキ星人」とか、惑星スパムからやって来た苦い体液をとばす「ゴヤドラス」とかが出てきてもよかったのかも…。
SPECIAL THANKS
銀座松屋。
シャッターが懐かしい…、おそらく、松屋通りの方の入口でしょう。シャッターには、木曜日定休と書かれていますが、確か10年くらい前までは、木曜日定休でした。そのあと、火曜になったりしました。「イタリアンファッション秋のモード」売場は、銀座4丁目側のエスカレーター隣にある吹き抜けで、今も当時と同様にイベント会場として使われています。2001年の大改装で、1階の増床とエントランス周りの化粧直しをした銀座松屋づすが、エントランスに懐かしの「松屋マーク」が復活しました。シャッターに書かれていたあのマークです。銀座通りの4丁目側出入り口横にモニュメント的に配置されています。
LOCATION
首都高速環状線内回り三宅坂ジャンクション付近(冒頭のポインター走行シーン)
都内の団地(おもちゃじいさんのいた公園)
稲城操車場?(最終回の資材置き場と同じ辺り?)
丸の内(古河総合ビルと三菱商事が入る八重洲ビルの辺り)
銀座(松屋)
「ウルトラセブン」ストーリー再録 第9話「アンドロイドゼロ指令」
04/JUL/2001 初版発行 08/DEC/2001 第二版発行
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制作11話 脚本:上原正三
監督:満田かずほ 特殊技術:的場 徹