第10話
怪しい隣人
#07「宇宙囚人303」(制作8話)とのカップリング作品です。制作ナンバーはこちらの方が先なので、鈴木俊継監督のセブン初作ということになります。第1クールは制作順序と放映順序がかなり入れ替わっていて、#13「V3から来た男」までの放映作を制作話数で記すと、5、2、1、4、6、3、8、10、11、7、12、9、13となります。以上のような理由から、前回(#09「アンドロイドゼロ指令」)干されたはずのアンヌの出番が今回は大変多いのです。もっとも違う意味で事件を起こしたようですが…。





STORY




アキラ少年のモノローグ。
(あの男、何をしているんだろう?…あそこに座ってまま、もう24時間になる。いつ食事をするんだろう?…僕が眠っている間に眠り、食事をしたんだろうか…いや、僕は何度も目が覚めた。あの男はずっと座ったきりだ…何をしているんだろう?…何か作っているぞ、何を作っているんだ?)
少年探偵団シリーズのようなミステリータッチのオープニング。
自動車事故で足を怪我して、別荘で療養中のアキラ少年は、退屈しのぎに双眼鏡で覗き見た隣家に怪しい男を発見した。以来、アキラは怪しい隣人の監視をし続けているのだ。
その時、アンヌが見舞いに訪れた。
「こんにちわ」(アンヌ)
アンヌは、アキラの姉リツコと最近知り合ったのだった。
「でも、アンヌさん。防衛基地にお勤めだなんてびっくりだわ…」(リツコ)
しかしアンヌは、リツコとの会話に夢中。再び、隣家の覗きを続けるアキラ。
すると、男の頭部がピカッピカッと、光を放つではないか!?
「姉さん、やっぱりおかしいよ」(アキラ)
怪しい光に映し出される男の横顔。


メディカルセンターでダンとアンヌ。
「その子きっと、ノイローゼだよ。ひょっとしたら、車にはねられたときのショックが、原因かもしれない」(ダン)
「そうねぇ…。ねえ、ダン、一緒に行かない?…あの子、ダンの顔を見れば、きっと元気を出すと思うわ」(アンヌ)
「うん行こう。隣の人というのは、どんな人なんだい?」(ダン)
「男の人よ。2ヶ月ほど前に、隣の別荘を買って越してきたんですって、リツコさんも詳しいことは知らないのよ」(アンヌ)
「2ヶ月ほど前…」(ダン)
何か異変の予感を感じるダン。


作戦室。レーダーが何かをキャッチした。
「近いな…」(マナベ参謀)
「ええ、基地の東北、約3キロの地点です」(フルハシ)
「別荘地の辺りだ。…参謀、2ヶ月ほど前にもこの地点で、同じような反応がありました」(キリヤマ)
突如、反応は消えた。


別荘地。
奇妙な音がする…、何かが起きようとしている…。
「はっ……と、鳥が…」(リツコ)
空中に鳥が静止している・
「死んでいるよ。鳥が!」(アキラ)
「防衛基地に電話してくるわ…」(リツコ)
玄関横の電話から受話器を取る、そのとき扉が開く。
「ひっ…」(リツコ)
二本指で敬礼するアンヌ、後ろにはダンの姿。
「こんにちは」
…ホッとするリツコ。



アンヌ流二本指敬礼の作法。
@人差し指と中指を伸ばし、親指、薬指、小指はたたみます。
A二本の指をまっすぐ上方に向けます。
B右手を、右耳よりもやや高い位置に上げます。
Cこの状態で一瞬停止します。
D戻すときは一気に、気をつけの姿勢まで腕を下ろします。
さあ、上手に出来ましたか?
なお、#45「恐怖の超猿人」にもアンヌ流二本指敬礼は登場します。



2階、アキラの部屋。
「死んだ鳥が空間でじっとしているんだって?」(ダン)
空中で、鳥が止まっている。
透視能力で異変を察知するダン。
「たいへんだ!ここを離れたほうがいい」(ダン)
←何が大変なんだ…?
そして、本部と交信。
「キリヤマ隊長、キリヤマ隊長」(ダン)
「どうしたんだ、ダン?」(キリヤマ)
「ここで、何かたいへんなことが起こっています!はっきりしたことはわかりませんが…」(ダン)
「よし、調べてみろ!」(キリヤマ)
←何がなんだかわからない会話。
「はい…」(ダン)
2階の窓から、
「タァー」(ダン)
いきなり、地面へダイブするダン…。
←な、な、何で?
「ダン!」(アンヌ)
慌てるアンヌ。
ダンの身体は、何かに吸い込まれるように消えていく…。
「ダン!ダン!」(アンヌ)
取り乱すアンヌ。
「キリヤマ隊長、キリヤマ隊長、ダンが大変です!」(アンヌ)
←消えたから大変なのか。
 消えなかったら、地面激突でもっと大変だろう…?



しかし、この時もっと大変だったのは、アンヌだったのです。
ロケで借りた別荘は、シャンデリアのある豪邸でした。旬の味覚に目のないアンヌ、はしりのミカンを陣中見舞いよろしくロケ現場に持ち込みます。気前良くスタッフに配るアンヌ。

「…『アンヌ、こっちにも!』、照明さんが叫びました。『ハーイ!』、私は、照明さんに向かってミカンを放りました。その直後に不幸な『事件』は起こりました。手元がくるって、わたしの放ったミカンがシャンデリアを直撃!シャンデリアを見事に打ち砕いてしまったのです。もちろん、制作サイドからは大目玉。『弁償しろ!』と怒られて、当時のお金で3〜4万円を支払うハメになりました」(ひし美ゆり子、※2)

このころ、アンヌのギャラは、1本で1万8千円。東宝からの月給3万円とあわせると、上場企業の課長さんより多い収入だったそうです。それにしても、ミカンひとつで2本分タダ働きになったうえに、クレジットなしで干された回にもギャラは支払われていないと考えられます。あ〜可愛そうなアンヌ…!



四次元空間の美術が、独創的です。なんでえ風船じゃねえか…、とかいう問題ではないのです。独創性の問題なのです。宇宙空間の音もそうでしたが、ホントにあの音するの?ということよりも、こんな音がしたら宇宙ぽいよね、ということの方が大事なのです。これがクリエイティブなのです。四次元空間も然り、誰も知らないのです。果てがないようで壁があり、限りがないようで密室であり、奥行き感を混乱させる鎖状につながれた黄色い風船…、これらセットのひとつひとつが、不可思議なモチーフとして、見たことも聞いたこともない、理解不能な空間を描きだすのです。



不可思議な空間にやってきたダン。
そこに不思議な機械とともに、怪しい男が現れる。
「来たな、バカな奴だ」(男)
「誰だ!何をしているんだ。それは何だ?」(ダン)
「……」(男)
「おまえは誰だ!返事をしろ!」(ダン)
「第17惑星から来た、イカルス星人だ」(男)
「何を企んでいるんだ?」(ダン)
「我々は、美しい星地球を我々の物にする…、絶対に…」(男)
「そんなことができるもんか!」(ダン)
「できる。我々は、この世界から地球を攻撃する。地球人はこの世界を攻撃はおろか、見ることすらできない」(男)
「どうしてできないんだ」(ダン)
「ここは四次元の世界だ。お前たちのいた三次元の世界を飛び越えた、未知の世界だ」(男)
「……」(ダン)
「我々の科学は、四次元の世界と三次元の世界とを連結する、コントロールマシンをつくったんだ…」(男)
「なにぃ」(ダン)
「住むには苦しい世界だ。戦うにはこれほど安全な基地はあるまい。お前はどうやら特別の能力を持った男らしいな…。だが、この四次元からは二度と脱出は出来ない」(男)
ウルトラ・アイを手にするダン。
「デュッワ!」(ダン)
変身しない…。 ←目の辺りが横山やすしに似ている…。
(ダメだ。ここではダメなんだ。そうだ、カプセル怪獣だ…)(ダン)
赤いカプセルを放る。 ←赤カプセル初登場。
しかし、怪獣は出ない…。 ←名前を呼ばないせいか…?
「無駄だ…。ここでは何も起こらない。次元の違う世界だと言っただろう…」(男)
冷たく言い放つ、怪しい隣人。



まさに、侵略者モノの王道パターンです。
後先考えずに窮地に飛び込むヒーロー。
ヒーローとヒールの対峙、ヒーローはピンチ。
ヒールは、謎解きを兼ねた自慢たっぷりのおしゃべり…うかつにも要点と弱点を教える。
ヒーローは窮地から脱出、見事ヒールを退治する。
めでたし、めでたし…。
これぞ、正義の王道パターン!
このような王道に、ツッコミは無用です。 ←してんじゃん!



工業地帯を攻撃する円盤。
怪光線で次々に火を噴く石油タンク、あっという間に一面は火の海に…。
ホーク1号、緊急発進。
「その後の状況は?」(マナベ参謀)
「現在、8か所で火災が発生中です」(キリヤマ)
「飛行物体の正体は突き止めたのか?」(マナベ参謀)
「はあ、怪光線で市街地を攻撃した飛行物体は消滅しました」(キリヤマ)
「緊急情報、緊急情報。東京湾南方280キロの海域で、大型タンカー、ホウシン丸12万トンが爆発」(勝部隊員の声)
「チクショー、今度は東京湾の南方に現われたか…」(キリヤマ)
神出鬼没な四次元攻撃。


四次元空間のダン。
次元は違うが、別荘とは同じ場所らしい。
何か、気配を感じたアンヌ。
「誰…?、誰なの?…」(アンヌ)
「アンヌ、僕だ!」(ダン)
三次元空間にいるアンヌとは、声のみが通じる。
「ダン、どこにいるの」(アンヌ)
「アンヌ!、アンヌ!」(ダン)
「ダン?…どこにいるの?」(アンヌ)
「アンヌ!、アンヌ!、アンヌゥゥゥゥ!」(ダン)
「ダァァァン!、ダァァァァァン!!」(アンヌ)
必死にお互いの存在を確認するダンとアンヌ…



鈴木監督の演出方法は、「王道」の一言に尽きます。余計な修飾はできるだけ排除して、子供向けを主体に、わかりやすいエンターテイメントを追求しています。反面、脚本の出来不出来がそのまま作品に投影される、ということもありますが…。
よく、演出家というと、「俺が俺が」型や「凡人にはわかんねぇよ」型などが、ステレオタイプ的に思い起こされますが、鈴木監督の場合、作品から察するに、非常に実直な方だと思われます。ちなみに、上の2類型は、満田サンや実相寺サンのことではないですよ、誤解のないよう…。
また、今回のアフレコ時、 アンヌは前夜の飲みすぎで、二日酔いのため、よりハスキーなボイスとなっております。一味違うアンヌをご堪能ください…。 ←干された原因。


「山本廉さん、廉ちゃんがね、『ダ〜ン!』と呼ぶ台詞のところで、感情をもっと込めて! とか演技指導してくれたのよ!」(ひし美ゆり子談:於CRAZYオフ会)


四次元空間を彷徨うダン。
「ダン、大丈夫?」(アンヌ)
「…ダメだよ。だんだん体の自由が利かなくなってきたよ」(ダン)
「ダン、しっかりして!」(アンヌ)
「そうだ!ひょっとすると、侵略してきたイカルス星人の息の根を止める方法があるかもしれない」(ダン)
「何なの?」(アンヌ)
「この四次元の世界をコントロールする機械があるんだ。使い方はわからない。しかし、あのコントロールマシンが、地球と四次元の世界を結び付けていることは確かだ。…そうだ、あれを破壊すればきっと!…」(ダン)
「ダメよダン!…そんなことをすれば、その世界から二度と、脱出できなくなるかもしれないのよ」(アンヌ)
「しかし、しかし…」(ダン)
「ダメよ!ダン」(アンヌ)
「やるよ…。やるよ、ぼく」(ダン)
←たまに出る、子供口調のダン。
「ダン、ダァァァン!」(アンヌ)
意を決したダンはコントロールマシンを破壊する。
マシンはウルトラ・ガンの攻撃で火花を散らして白煙をあげた。
ダンの姿も白煙の中に消えていった。
そして煙が晴れると、そこは元の世界に戻っていた。
ダンの前には人間の姿をしたイカルス星人が立っている。
「私はお前をみくびっていたようだ…。お前は誰だ?」
←セブンとダンを知らない侵略者もいるのです。


男は突如正体を現わしてイカルス星人の姿となる。
ダンもセブンに変身して迎え撃つ。
セブンVSイカルス星人。
イカルス星人は、三次元と四次元を行ったり来たりしながら動いているせいか、外国人が相撲レスラーの真似をしているような、珍妙なアクションでセブンに接近する。じりっじりっと間合いを取るセブン。全身からアロー光線を発射するイカルス星人。しかしセブンはイカルス星人の動きに惑わされることなく、慎重にアロー光線をかわす。アロー光線が命中した地面は焼けただれていた。光線にはかなりの威力がありそうだ。
そこでセブンはアイスラッガーを放つが、これを跳ね返すイカルス星人…。激突のスパークが眩しい。しかし、ダメージは十分に与えたようである。
決まり手:アイ・スラッガー下腹部直撃ダメージのうえ、念動力で谷底へ落下。
      下腹部衝撃による内臓破裂?or墜落による全身打撲?



ラテン系オヤジのようなデザインのイカルス星人。当初、ケムール人みたいなキュラソ星人がイカルスで、イカルス星人がキュラソになる予定だったそうです。理由は不明ですが、入れ替ったのです。イカルス星人は、になっていて、笑えます。そのうえに、セブンの放ったアイ・スラッガーを跳ね返すという荒業を見せるのですが、という あたりどころが悪く(下腹部直撃!)、のたうちまわるのです。
こんなコミカルなラテン系オヤジは、妙な動きの怪しい隣人よりも、脱走してガソリン飲んで人質とって自爆するようなキャラのキュラソ星人の方がハマったのではないでしょうか?
イカルスオヤジに襲われて気絶するアンヌ…、見てみたかったゾォ…!

また、鈴木組担当回から大映出身のベテラン特撮マンの的場徹氏が久しぶりにウルトラシリーズに復帰です。前作は「ウルトラマン」の制作1〜3話(飯島組)でした。的場氏は大映でスペクタクル系の特撮を得意としていた技術者で、円谷英二氏の招聘を受けて参画していたのです。#07「宇宙囚人303」の手に汗握るウルトラホーク1号合体シーンや今回のアロー光線を受けたあとの焼け焦げた地面など、リアリティのある緻密な画面づくりにその技術の高さが垣間見えます。



ラストシーン(城ヶ島)。
「イカルス星人は、あの円盤で地球に来たってわけね。そして、四次元空間に前衛基地を作ろうとしたのねェ」(アンヌ)
「そうだよ…。その基地へどんどんイカルス星人を送り込み、地球を攻撃するつもりだったんだ」(ダン)
「アキラ君…、相変わらず2階の窓から、空家になった隣の家の監視を、続けているんですって…」(アンヌ)
←やめさせなさい!
「ハッハッハ…、好奇心の強い子だなァ…」(ダン)
←さっきノイローゼとか言ってなかったっけ…。
「でも、もしアキラ君が怪しい隣人に気が付かなかったら、どうなっていたと思う?…アキラ君の功績大だわ!」(アンヌ)
「だからこうやって、たくさんのプレゼントを持っていくんじゃないか…」(ダン) ←貧相な包み紙…。
「さあ、行こう」(ダン)
「ええ」(アンヌ)
←ダン、免許取れたの?右側車線走っちゃダメだよ。
 暴走としか思えないダンの運転。

エンディング・ナレーション
「皆さん、あなたの隣の家には怪しい人はいませんか?地球は狙われています。もし怪しい人に気が付いたら地球防衛軍基地までお電話を下さい。ひょっとするとあなたの隣人は惑星から来た宇宙人かも知れないのです。」(浦野光)
←電話はしないけど、いまどきの隣人は、みんな宇宙人だよね…。





ALIENS&MONSTERS



異次元宇宙人:イカルス星人
身長:2m50p〜40m
体重:300s〜1万8千t
出身:第17惑星から来た、イカルス星人だ
武器:アロー光線
    異次元空間移動装置
特技:大きな耳を扇いで涼をとることができる
変装:ふだんはダンボールの運び屋をしている
弱点:ヒゲの中にシラミがわき、たいへん痒い





ACTOR&ACTRESS



イカルス星人の人間バージョン、隣家の怪しい男にふんするのは山本廉さん。わかやすい鈴木演出にしても、怪しすぎます…文字通りの怪演であります。
山本さんは、#25「零下140度の対決」にも、地球防衛軍極東基地動力班:ムカイ班長役で出演しています。ムカイ班長は怪しくありませんのでご安心ください。





LOCATION



シャンデリアのある別荘( ?)
城ケ島(暴走ポインター、城ケ島大橋を渡る)










                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第10話「怪しい隣人」
      04/JUL/2001 初版発行  15/DEC/2001 第二版発行  28/JUL/2003 第三版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved






制作7話 脚本:若槻文三 監督:鈴木俊継 特殊技術:的場 徹