第11話
魔の山へ飛べ
生命カメラとは…。
@生きている肉体から生命エネルギーだけを分離させて抜き出すことができる。
A生命エネルギーはフィルムに定着させて保管することができる。
B狙撃銃のような外観である。





STORY



原因不明の死亡者が26名も出たイワミ山。
「被害者はすでに26名。みんな未来ある若者たちばかりだ。これは、単なる山の遭難とは、どうしても思えない…」(キリヤマ)
「隊長、死因はいったい?」(フルハシ)
「不明だ。警察では、落雷その他いろいろな線から捜査したらしいが、いずれもシロと出た」(キリヤマ)
「計画的な殺人では?」(フルハシ)
「しかし、死体には全く外傷がない上に、毒物も検出されず、人為的な殺人とは思えないというんだ」(キリヤマ)
「ショック死の一種でしょうか?」(アマギ)
「まあ、死因が判明すれば、謎の半分は解けたようなもんだが、とにかく、君たちのような若い命が、犠牲になっているのは事実だ。ひとつ、我々ウルトラ警備隊の力で、是非イワミ山の謎を明らかにしたい」(キリヤマ)
「ダン、ソガ。イワミ山一帯の予備調査を頼む。気候、地質、ならびに火山の活動状況、放射能の量など、綿密に…。何か手がかりがつかめるかも知れん。すぐ飛んでくれ」(キリヤマ)


ホーク3号で現地に向かうダンとソガ。
本部にいるときから、うかない表情のソガ。
「ソガ隊員、何を黙り込んでいるんですか?」(ダン)
「どうもねぇ…、嫌な予感がするんだよ」(ソガ)
「……」(ダン)
「ダン、今日はどういう日だか知っているか?」(ソガ)
「さぁ?」(ダン)
「13日の金曜日…。何か、一大事が起きそうな気がするんだよ」(ソガ)
「一大事って?」(ダン)
「つまり…一大事さ!」(ソガ)
「…ハッハッハッハッハ…」(ダン)
意外と非科学的なソガ。



アンヌ干され編その2。
今回は、出演者クレジットもなし。 ←ソガのいう一大事とはこのこと?
ただし本人はロケにも参加して、馬に乗ったり、写真とったり、宴会で盛り上がったりと、ズイブン楽しそうです。

「第九話でセリフが一行だった私ですが、この作品には出演さえしていません。ちなみに出番はありませんでしたが、ロケにはしっかり参加していました。ロケの後の宴会には、ちゃんと私の出番があったわけですネ」(ひし美ゆり子、※2)

干されている自覚のないアンヌ、満田監督とすれば、「2本撮りでセリフ1行なんだから、気づけよアンヌ!」と言いたかったところだったでしょうね。また、ウルトラ警備隊の6名が、横一線に並んで走っているスチール写真は、この時撮られたものと思われます。



一大事は起きた。
イワミ山を調査中のダンが生命カメラに狙われたのだ。
崩れ落ちるように倒れるダン。
駆け寄るソガ。しかしダンは死んでいた。
「ダン、ダン、ダァァァァァァンッ!」(ソガ)
ダンが27人めの犠牲者となったのだ。


メディカルセンター。
3人の医師たちに囲まれて、ベッドに横たわるダン。
ダンを診断して、首を振る医師。
黒メガネをかけた医師がもう一人の医師に意見を求めるが、同じそぶりである。
ダンの亡骸に白布をかける黒メガネ。ダンの死は確定的となったのだ…。
いったいどうなる「ウルトラセブン」…。



…って、こんな緊迫の場面に、妙に恰幅のいい黒メガネの医師…。
あんた、金城哲夫さんじゃないですか…?
でたがり金ちゃん、何もこんな場面に顔出さなくても…。
あれ…?
よく見ると、最初に首を振る医師は、目元に特徴のある上正こと、
上原正三さん…。
次に意見を求める医師は、赤井鬼介のペンネームを持つ、円谷プロ文芸部第三の男こと、
宮崎英明さん…。
円谷プロ文芸部総出じゃあないですか…!?



「…隊長、申し訳ありません…、自分がついていながら…」(ソガ)
泣きじゃくるソガ…。涙をこらえるキリヤマ隊長。
「モロボシダンは、地球防衛軍の誇る猛者。今、彼の死が隊員たちに知れたら、みんなの士気に影響する。このことは今度の事件が解決するまで、内密にしておく…」(キリヤマ)
フルハシ、アマギも泣いている…。
「君たちの気持ちはよくわかる。しかし、悲しんでいる場合ではない!…ダンがやられるほどの相手だ。敵は次にどんな手段を使うかもしれない…。これ以上犠牲者を出しては、ダンの死を無駄にしたことになる。我々ウルトラ警備隊の手で、必ず敵を倒すんだ!」(キリヤマ)
「はい!」(フルハシ)
「いいか、これはダンの弔い合戦だ!」(キリヤマ)



隊長、見事な演説です。
まさに、「指導者は、アジテーターでなければならない」(押井守)のとおりです。
このシーンのBGMは、最初から葬送曲として作られた曲ですが、今回よりも、#39・40「セブン暗殺計画」のセブン十字磔シーンでの使用の方が印象的です。



イワミ山。
ダン殺害犯人が残していった馬具を手がかりに、聞き込みを始める警備隊。
「このハクシャに見覚えはありませんか?」(キリヤマ)
「う〜ん?」(牧童A)
「知らねーな!」(牧童B)
「まてよ、ユキムラのじゃないのかなぁ…」(牧童C)
「ユキムラ?」(キリヤマ)
「ウチの牧童ですがね、あの野郎1週間ばかり前に、トンズラしちまったんですよ」(牧童C)
「ハッハッハ…、仕事がキツかったんでしょうな。プイっと出たまま、戻って来ないんですよ。まぁよくあることですから、探しもしませんがねぇ…」(牧場主)
ビデオ・シーバーのコール音。
「隊長、群馬県警から連絡が入りました。イワミ山三合目の洞窟に、大至急行ってください」(アマギ)
洞窟に向かうキリヤマ隊長、フルハシ、ソガたち。


洞窟からは、うめき声のような異様な音がする。
「噴火で出来た風穴ですから、風の通りぬける音かと思ったんですが…。今までこんなこと、なかったものですから…」(警察官)
「よし、入ってみよう」(キリヤマ)
中を捜索する、3人の警備隊員と2人の警察官。
岩陰から銃口が一行を狙う。先ず警察官が犠牲になった。
周りを警戒するが岩陰からの狙撃とは気が付かない一行。
今度はキリヤマ隊長がターゲットスコープに捕らえられた。
「あ、危ない!」(ソガ)
間一髪身をかわしたキリヤマ隊長。
しかし外れた狙いはもうひとりの警察官へ向かってしまった。
銃口の方向に、一斉射撃する3人。


キリヤマ隊長、フルハシ、ソガの3人は、ここで会ったが3年目。ダンの仇!と大乱射します。
フルハシはバーチカル・ショットガン、ソガはエレクトロ・H・ガン。警備隊の特殊銃揃いぶみです。
おや、隊長…変わった銃ですね…?
って、これ!ペガッサ銃ではありませんか!
なぜ、隊長がペガッサ銃を…。ペガッサ君の忘れ物だったのでしょうか。
おや、誰かいる…。牧童ユキムラの遺体だ…。
って、あんた!セブンではありませんか!
上西弘次、鍛え上げた体を誇示するように半裸姿です。
しかし、スーツアクターの上西さん、何しに、ロケまでついてきたの?
…えっ、出番のない女も来てるじゃねぇか…って?……そりゃそうだ!…。

実は、今回、スーツアクターの皆様、大集合なのです。
牧場主役の春日章良(→春日俊二)さんは、劇団民芸出身の俳優ですが、牧童役にスークアクターのみなさんが出演しています。タイトル・クレジットには、荒垣輝雄、鈴木邦夫、松島暎一の3人が記されてきますが、セブンの上西弘次さんが遺体役で出ているくらいなので、牧童全員がスーツ組とみても間違いないでしょう。
荒垣輝雄さんは、メトロン星人、アイロス星人、ギラドラス、ブラコ星人などを演じ、鈴木邦夫さんは、ギエロン星獣、恐竜戦車、プラチク星人、ゴーロン星人、パンドンなどを操り、松島暎一さんは、クレージーゴン、ギラドラスの中に入りました。汗だくになって奮闘しているスーツ組へのささやかな慰労も兼ねた浅間山麓ロケだったのでしょう。



猛攻撃に面食らって現われた、総身毛だらけの怪人。
銃のような武器を置いて逃げ出す。
そう、29名の命を奪った銃である。
その時洞窟の奥から半裸の遺体が発見された。
牧場に戻った一行は、牧童たちに遺体の身元確認をさせる。
「ユキムラ!」(牧童)
「やっぱりそうか。隊長、敵は宇宙人ですよ。彼を殺して、人間に化けていたんだ」(フルハシ)
「ソガはこのまま洞窟を見張れ。俺とフルハシはいったん本部に戻る」(キリヤマ)
そして、宇宙人が置いていった銃のような武器を手にとった。
「これの謎を調べる」(キリヤマ)
謎を解く鍵は、この銃にある。


作戦室に入ってくるアマギ。
「みんな、ちょっと席をはずしてくれ…」(アマギ)
ただならぬ雰囲気。
「隊長、わかりましたよ。これは、カメラです」(アマギ)
「カメラ?」(キリヤマ)
「そうです。しかも、命を吸い取るカメラです」(アマギ)
「ん……?」(キリヤマ)
「百聞は一見にしかず…。見てください」(アマギ)
マウスで実験するアマギ。死ぬマウス。
「このマシンの部分から、人間の目には見えない赤外線のような光線が発射され、何の傷を与えず、中のフィルムに生命が吸い取られる仕組みになっているのです」(アマギ)
「死んだんじゃないのか?」(キリヤマ)
「肉体は確かに死んでます。しかし、生命体はフィルムに定着されて、生きているんです!」(アマギ)
「なにぃ!」(キリヤマ)
「これを見てください」(アマギ)
スクリーンに投影される生命カメラのフィルム。
ダンらしき人々がうごめいている…。
「ダンじゃないか…。ダン!」(キリヤマ)
「おい、ダン!」(フルハシ)
「どういうことなんだ?これは…」(キリヤマ)
「はぁ、ダンを始め、被害者たちの生命が肉体を離れて、みんなフィルムの中、つまり異次元空間で生きているのです」(アマギ)
「すると、死んではいないということか?」(キリヤマ)
「そうです。しかし…、このフィルムの生命体を元に戻すかです…」(アマギ)
「………」(キリヤマ)
「これは非常に困難なことです…」(アマギ)
「アマギ隊員、ダンを助けてくれ!…助けてくれ!頼む!」(フルハシ)
「うん!」(アマギ)
決意するアマギ。


洞窟を捜索するソガの前に、総身毛だらけの怪人が現われた。
攻撃を仕掛けようとするソガ。
「撃たないでくれ!…我々ワイルド星人は地球を侵略しない。ただ少しばかり人類の若い生命が欲しいだけだ。我々の民族はみな老衰し滅び去ろうとしている。どうしても若い命が欲しいのだ」(ワイルド星人)
「そんな勝手な!」(ソガ)
「わかっている!だが、地球人に頼んでも我々の気持ちはわかってもらえないだろう…」(ワイルド星人)
「だから、人間の命を奪ったというのか!?」(ソガ)
「わかってくれ!我々には若い新鮮な生命が必要なのだ…。あのフィルムを返してくれ!」(ワイルド星人)
「フィルム?…勝手に人間の命を売り渡すようなことは出来ん!」(ソガ)
「返してくれ!私の星で皆が待っているのだ…。返してくれ!」(ワイルド星人)
「お断りだね!」(ソガ)
「どうしても?」(ワイルド星人)
「どうしてもだ!」(ソガ)
仕方なくソガへ怪光線を浴びせるワイルド星人。
苦しみながら倒れるソガ…。


作戦室に入電。
「隊長、例のフィルムをイワミ山の洞窟まで持ってきてください…」(ソガ)
明らかに尋常ではないソガ。
宇宙人に操られているようだ。


イワミ山の洞窟へフィルムを持ってやって来たキリヤマ隊長とフルハhシ。
「止まれ!仲間の命が欲しかったらフィルムをよこすのだ!…私は戦いを好まない。さあ、よこすのだ!」」(ワイルド星人)
「これを渡したら、ソガ隊員を返してくれるか?」(キリヤマ)
「約束する」(ワイルド星人)
フィルム缶を渡そうとするキリヤマ隊長。
「隊長!」(フルハシ)
「ソガの命にはかえられん…」(キリヤマ)
フィルムを渡す隊長。ソガを担ぎ出すフルハシ。
しかし、フィルムの缶は空だった。
策士、キリヤマ。
「クウウウウ!……ナース!ナース!」
怒り狂うワイルド星人。
山が爆発し、宇宙竜ナースが登場する。


ダンの亡骸に生命カメラを向けるアマギ。
シャッターを切ると今度は肉体が消えてゆく。カメラに取り込まれたのだ。
「宇宙人は生命と肉体を分離した。今度はそれを一緒にするわけだ。すぐ、現像してくれ!」(アマギ)
生命のない肉体は、カメラに取り込まれて、再び生命と出会う。理論的には、現像すれば復活するのである。。
「合成開始!」(アマギ) ←これがあのオプチカル・プリンター?
生命と肉体のピントを合わせるアマギ。…合った…!
「やっぁー」(ダン)
映写された画面から飛び出してくる。
生き返ったモロボシダン。
←円谷プロ映写室?



円盤状になったナースに危機一髪の隊長たちの目の前に、セブンが現われた。そう、復活したばかりのダンである。もっとも、隊長たちはそのことをまだ知らない。セブンとナースとの戦いは、まさに操演の醍醐味である。セブンの体に巻きついて締めるナース。一時はビームランプが点灯するまでに追い詰められた病み上がり?のセブンは力を振り絞る…。
決まり手:巻きついたナースを引きちぎる力技。



戦いは終わった。
呆然とたたずむ、キリヤマ隊長、フルハシ、ソガの3人。
ソガが、絞りだすように、つぶやく。
「敵を倒してもダンの奴は戻ってこない…」(ソガ)
悔しさを無言でこらえる、キリヤマ隊長、フルハシ…。
そこに、遠くから、大地をける蹄の音が聞こえてくる…
(BGM:CI、西部劇風にアレンジされた「URTRA SEVEN」)
…だんだんと、近づく…。
馬に乗っているのは、モロボシダン?
「…ダンじゃないか…。助かったのか…こんの野郎!よくもオレに心配かけやがって…、ダァァン!」(ソガ)
駆け寄る3人。
「隊長、ご心配かけて…」(ダン)
「いやあ…無事で良かった…」(キリヤマ)
キリヤマ隊長のビデオシーバーにコール音。
「隊長、被害者は全員、無事フィルムの中から救出しました」(アマギ)
「そうか、よくがんばってくれた、…ご苦労」(キリヤマ)
「こちら、ダン!…おかげで命をとりとめることができました。アマギ隊員!まさに命の恩人です。ありがとう!」(ダン)
アマギ会心の笑顔。
「隊長、一度死んだら、ますます命が惜しくなりましたよ」(ダン)
「それでいいんだ。命は自分だけの一度きりのもんだ。そうたやすく宇宙人なんかにやってたまるか…なぁ…。ハッハッハ……」(キリヤマ)





冒頭、荒野をジープでドライブしている5人の若者たち。
その背景には、サボテンらしき植物の影が…。
ひときわ大きなサボテンの前で記念撮影をする若者たち。
風が吹きつける荒野に、バッファローの頭骸骨が…。
馬に乗って逃げるワイルド星人…。
聞き込みに答える牧童たちは、テンガロンハットにポンチョ姿…。
トドメは西部劇風アレンジのBGM…。
…何故、サボテン?…何故、バッファロー?…何故、西部劇?
「ウエスタン調にアレンジしてみた。荒野は浅間山麓。だが浅間山がバッチリ写ってしまっては台無しになってしまう」(満田かずほ:寄稿、※10)
←あっ…この回の監督は、満っちゃんでしたネ!
 ウエスタンの時点で、台無しだと思いますが…。

終景は、夕日に向かって飛び去るホーク1号。
「ウルトラマンに続いてのカラー作品でなれてきていたから、あまりあざとい色を使うのはやめようということで。そうすると夕日のオレンジくらいしかきれいな色がなかった…」(満田かずほ:談、※1)
←実相寺監督のパクリじゃないらしい…。





ALIENS&MONSTAR



宇宙野人:ワイルド星人
身長:2m20p
体重:150s
出身:ワイルド星
武器:生命カメラ
特徴:総身毛だらけ
弱点:年寄りなので戦闘は嫌い



宇宙竜:ナース
身長:120m
体重:15万t
出身:不明
特徴:金属性の怪生物
特技:身体をトグロに巻き円盤状になる
弱点:あまり暴れるとピアノ線がからむ





LOCATION



ニューメキシコ州の荒野(浅間山麓)










                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第11話「魔の山へ飛べ」
              04/JUL/2001 初版発行  16/DEC/2001 第二版発行
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制作12話  監督:満田かずほ
脚本:金城哲夫  特殊技術:的場徹