空間X脱出
今回の主役はウルトラマンです…?
いや、ウルトラマンのスーツアクターからウルトラ警備隊員に出世したアマギ隊員のことです。
もっとも、せっかくの主役の割には、あまりカッコいいとは言い難い役まわりでした…。






STORY



「ウルトラ警備隊の隊員たちにも月に一度の特別訓練があった。その日はスカイダイビングの訓練が、キリヤマ隊長の指揮のもとに行われた」(浦野光)


空挺練習機「フライング・ダイバー」機上。
「俺に続け、行くぞ!」(キリヤマ)
←さすが元海軍。
「はいっ!」(全員、ただしアマギを除く)
さえない表情のアマギ…。
キリヤマ隊長、アンヌ、ダン、フルハシ、次々と落下を始める。
「さぁ…」(ソガ)
「うう…!ひえっ…」(アマギ)
落下を怖がるアマギ…。
「スカイダイビングは、ヨワイんだよお…」(アマギ)
「バッキャロー!電子計算機ばかり相手にしてるからだ!…いいか、ぐっと目を閉じる、息を深く吸い込んで、ワン、ツー、スリー!」(ソガ)
「うひぇあぁぁぁぁぁぁ…」(アマギ)
突き落とされるアマギ…。



今回のエピソードから、「アマギは高いところが苦手だった…」と思われがちですが、仮にも栄えあるウルトラ警備隊員が高所恐怖症のはずがありません。第一、普段彼は、涼しい顔をして、ウルトラホークに乗っているではありませんか…。まぁ、事の真相はともあれ、「バッキャロー!電子計算機ばかり相手にしてるからだ!…」というソガのセリフと、#28「700キロを突っ走れ!」のエピソードによって、残念ながら、「アマギは臆病」というイメージが出来上がってしまったことは否めないでしょう。最終回でも人質になってしまうし…。



砧公園に着地したキリヤマ隊長たち。
「アマギとソガはまだか?」(キリヤマ)
「変ですねえ、隊長…」(ダン)
ビデオシーバーを開くキリヤマ隊長。
「キリヤマより練習機。アマギとソガはどうした?」(キリヤマ)
「はっ…?ダイビングしましたが…」(練習機乗員)
「なにぃ、着地目標をあれほど言っておいたのに…」(キリヤマ)
「風に流されたのかなぁ…」(ダン) ←けっこうのんき…
降下してこないアマギとソガ。


気がつくとひとりきりのアマギ。
「隊長、フルハシ隊員、ソガ、皆どこにいるんだあ!」(アマギ)
←ソガだけ呼び捨て?
奇妙な甲虫(吸血ダニ)に襲われるアマギ。
振りはらい、森の中を逃げ回る。
「隊長!…皆、どこにいるんだあ!」(アマギ)
そのうち、ソガのパラシュートを発見する。
パラシュートにはソガからのメッセージが残されていた。
←暗号か、象形文字か、ハングル文字か?
「このもりはふつうのもりではでない そが」、と解読するアマギ。
「ソガ!…ソガ!…。返事をしろ!」(アマギ) ←やっぱりタメ口?
BIRUBIRUBIRUBIRU……。
癇に障る音が鳴る。頭を抱え込むアマギ。
ふと見上げると巨大な宇宙人が立っているではないか…。
「…!」(アマギ)
ウルトラ・ガンで攻撃するアマギ。
命中!と思うや、姿を消す宇宙人。
まったく何という森なのだろう…。



アマギはウルトラマンだった。
ウルトラ・ファンで知らない人はいないでしょう。

「縫いぐるみの中に入る役者は、ケムール人のときは古谷敏なんです。彼がものすごくよかった。そして、ケムール人のときはデザインが先にあって、円谷プロの演技事務の新野悟君が、東宝からこの古谷敏を連れてきたんです。古谷敏の体は八頭身なんです。計らなくても見ればわかる。だから、今度は彼にマスクをかぶせると、マスクをかぶったら、頭が大きくなるから七頭身になる、ということがわかります。…(中略)…。で、七頭身といいうと、人間の体で一番美しいプロポーション。七頭身が最高です。ギリシャ哲学の時代からもう決まってるんです」(成田亨、※5)

長身のアマギは、八頭身だったのです。道理で、アマギと並ぶと、ファッションモデル経験のあるダンもかすんでしまう訳です。そのうえ、フルハシと並んでしまっては……。

「ウルトラマンをデザインするときは、僕のほうから、中に入る人は、さっき話した古谷敏でいきたいと頼みました。だけど古谷敏さんがウルトラマンの終わりころには僕のところへ文句を言いにきて、俳優というものは、顔を出さないと俳優じゃないんだと言い、そして彼は今度どうしても顔を出したいからウルトラセブンじゃ顔を出すと主張しました。そう言うから、顔が出ようが出ないがこのドラマの主役は誰なんだ。あんた以外に主役はいねぇんだぞって言ったけど、やっぱりあの男、顔出すほうが好きだって言う(笑)」(成田亨、※5)

こうして、ウルトラセブンにはならずに、ウルトラ警備隊となったアマギ隊員だったのです。長身の七頭身セブン…、アタマの小さいセブン…、アイ・スラッガーが、デカすぎる丁髷に見えないセブン…、というセブンも一回くらい見てみたかったものです。



降下地点付近の捜索を始めた警備隊。
フルハシがヘリコプターから探す。
しかし、2人の消息はつかめない…。


「助けてくれぇ!」(ソガ)
ソガの声が聞こえる。声の方向に向かうアマギ。
底なし沼にはまっているソガを見つけ、救助するアマギ。
「ソガ!大丈夫か?」(アマギ)
「この森はどこだ?」(ソガ)
「わからん。大きなダニや亡霊のようなものもいるんだ。どうやら僕たち2
人だけが、とんでもないところに迷い込んでしまったらしい…」(アマギ)
「鈴の音を聞かなかったか?」(アマギ)
「鈴の音?」(ソガ)
「その亡霊が出している音なんだ…。早くこの森を出よう!」(アマギ)
「待て、それより本部に連絡をしておこう…」(ソガ)
しかし、通信は通じなかった。



設定では、ソガはアマギよりひとつ年上ですが、アマギはソガに対してタメ口です。それどころか、命令調で物言いをしたり、挙句の果てには「ウスノロ!」(#37)とまで言っています。けっこう口の悪いアマギです。さて、実際のアマギはというと…、

「アマギ隊員こと、古谷敏さんはお酒がまったく飲めませんでした。それはさておき、飲めなかったものの、付き合いはよかったほうです。お酒の席では、コーラなどを飲みながら、ニコニコと人の話を聞くようなタイプでしたネ。おとなしくて、自分から話をするようなことは少なかったような気がします」(ひし美ゆり子、※2)

「アマギ隊員役の古谷敏さんは酒はまったくダメで、ふだんから口数が少なく、どちらかというとおとなしい人だった」(森次晃嗣、※1)

とのことですが、宴会の合間に撮影を進めていたような感のある円谷プロの現場です。案外、酔っ払いに囲まれて閉口していたのかもしれません…。



2人の行方を心配する本部。
「隊長、アマギ、ソガ両隊員のビデオシーバーらしい電波を受信しました」(勝部通信隊員)
「そうか、無事であってくれればいいんだが…」(キリヤマ)
嬉しそうなキリヤマ隊長。
「キリヤマだ。2人とも今までどこうろついていたんだ。2時間も空を散歩
してたんなんて言い訳は許さんぞ!」(キリヤマ)
無事がわかって嬉しいけれど、口調は厳しいキリヤマ隊長。
そんな隊長の人柄に、思わず笑みを浮かべるダン。
「……」(アマギ)
「おい、アマギ、ソガ、聞いているのか」(キリヤマ)
「はい隊長、我々のいるここは、一体どこなんです?」(アマギ)
「寝ぼけたことを言うな!それはこっちのセリフだ。現在地を知らせろ!」(キリヤマ)
あまりにマヌケなアマギの返事に、ちょっとムッとしたキリヤマ隊長。
「とおっしゃられても、我々にもよくわからないです…」(アマギ)
BIRUBIRUBIRUBIRU……
「ううう…」(アマギ)
突然の鈴の音、苦しそうなアマギ、本部でも一人苦しむダン。
「おいしっかりしろ!場所はどこなんだ」(キリヤマ)
「森の中…霧のかかった森の中です…」(アマギ)
「森の中…。霧がかかっているんだな…。そこを動いちゃならんぞ…」(キリヤマ)
通信が途絶えた。
「ダンとアンヌ隊員は、ウルトラホーク3号に乗って、霧のかかった森を捜すこと」(キリヤマ)
←隊長、そんなのたくさんあるでしょう…。不可解な命令…。
「了解」(ダン、アンヌ)
←了解すんなヨ!


「ホーク3号に乗った、ダンとアンヌは、目指す森を必死に探した。だが、霧のかかった森を発見することはできなかった」(浦野光)
←そ、そりゃ、そうでしょ!


パラシュートを利用した仮設テントで休憩するアマギとソガ。
横たわるソガ、消耗が激しそうである。
「さぁ、これを食べて元気を出すんだ!」(アマギ)
ヘルメットから非常食を取り出すアマギ。
「アマギ……、救援を待っては、いられないよ…。…早く、この森を脱出しよう!」(ソガ)
「こういうときは、動かん方がいい」(アマギ)
「まるでクモの巣にかかった虫じゃないか。このまま食われるのをじっと待てというのか…」(ソガ)
「そうじゃない…。いざというときに備えて、エネルギーを蓄えておくんだ」(アマギ)
そう言いながら空を見上げたアマギは、ある異変に気がついた…。
アマギの様子を察したソガも空を見上げた。
「あれは…月?」(ソガ)
半ばあきれたようなような口調のソガ…。
「月じゃない…、地球だ……」(アマギ)
2人の頭上には青々とした地球が浮かんでいる…。
いったいこの森は、何処なのだ…?



疑似空間に紛れ込んだアマギとソガは、ヘルメット内には収納されている「非常食」を口にします。頭頂部のスキマに収納されているようです。また、底なし沼から脱出したソガが、ビデオシーバーを使おうとしたことから、ビデオシーンーバーは精密機器でありながら完全防水であることが判明しました。



作戦室。
「隊長、アマギ隊員です」(勝部通信隊員)
「はい、本部」(キリヤマ)
「隊長、我々のいるところは地球ではありません」(アマギ)
「なにぃ!」(キリヤマ)
「どうも、ある空間に引っかかっているんです。脱出不可能です。救援願います!」(アマギ)
「おい、アマギ!どうしたんだ?」(キリヤマ)
後ろで聞いていたマナベ参謀が何かを思い出した。
「疑似空間だ、キリヤマ!」(マナベ参謀)
「疑似空間?」(キリヤマ)
「2年前、私がワシントン基地に勤務してる時、一度現われたことがある。大気圏内に不可思議な空間をつくり、エモノを狙うんだ!」(マナベ参謀)
BIRUBIRUBIRUBIRU……
「なんだ、あの音は…」(キリヤマ)
「ベル星人に間違いない。あの鈴の音は、脳波を狂わせる恐ろしい力を持っているんだ!」(マナベ参謀)
鈴の音を聞いただけで、直ちに謎を解くマナベ参謀。
「2人を早く助けなければ!」(アンヌ)
「それは非常に難しい。2年前、擬似空間に捕まった旅客機を救出するために、200名の隊員が出動したが、発見することさえできなかった」(マナベ参謀)
「擬似空間を突き止めることは、不可能だとおっしゃるんですか?」(アンヌ)
「残念だが、その通りだ。アンヌ隊員…」(マナベ参謀)


森の中を徘徊するアマギとソガ。
そこに突如、巨大蜘蛛グモンガが現われた。
緑色のガスを吐きながら、アマギに襲いかかるグモンガ。
「アマギ、伏せろ!」(ソガ)
ソガがスパイダーを放つ。
スパイダーの強力火炎でグモンガ撃退。



巨大蜘蛛グモンガは、ロケ現場(生田緑地)での操演です。
頭部と手足はマリオネット操作、ガス発射はリモコン操作でした。画面では深い森のように見えますが、カメラフレームの外は見物人鈴なり状態という当時の現場写真も残されています。
また、ハンディ火炎砲「スパイダー」が登場しました。「スパイダー」といえば、「ウルトラマン」での、科特隊アラシ隊員の専属兵器のイメージなのですが、セブンにも名称だけがスピンオフしたようです。



ホーク1号で出動するキリヤマ隊長、ダン、アンヌ。
「ホーク1号よりアマギへ、聞こえたらビデオシーバーの発信を続けろ。ビーコンで逆探知して、場所を突き止める」(キリヤマ)
「おい、隊長の声だ」(アマギ)
「うまく我々を探知してくれよ…」(ソガ)
祈るような口調のソガ。


「右15度、発信音あります…」(アンヌ)
「よし、右15度」(キリヤマ)
「了解」(ダン)
右に旋回、その先には奇妙な雲が…、
「あれは…。あの雲は!」(ダン)
「離れろ!吸い込まれるぞ!」(キリヤマ)
急旋回で雲を回避するホーク1号。
「隊長、擬似空間はあの雲の中では…?」(ダン)
「なにぃ」(キリヤマ)
「隊長、電波はあの雲の中からです」(アンヌ)
「よし、突撃しよう」(キリヤマ)
←って隊長、吸い込まれるんじゃないんスか…。


擬似空間に降り立ったキリヤマ隊長たち。
アマギとソガが再びグモンガに襲われているところを間一髪救出する。
グモンガを倒したダンの前にベル星人が姿を現わす。
BIRUBIRUBIRUBIRU……
鈴の音に苦しむダン…。
「デュワッ!」(ダン)
仰向けの状態からウルトラ・アイの装着もせずに、テレポレーション変身するダン。
←出ました、は・じ・め・さ・んのインチキ変身…。



セブンは、鈴の音攻撃に手を焼きながらも、飛び蹴り、ストンピング、逆エビなど、プロレス技を駆使してベル星人を追い込みます。また、ベル星人のアクションも悪役仮面レスラーといった感じです。このころから、低迷する(といっても20%台後半!)視聴率の対策が講じられ始め、特撮パートで子供に受けのいい演出が求められるようになってきていたのです。
決まり手:両手リング光線〜投げ技。



アマギとソガを連れて、ホーク1号に戻ったキリヤマ隊長とアンヌ。
「あ、森が消えていくわ!」(アンヌ)
「脱出だ!」(キリヤマ)
「隊長、ダンがまだです!探してきます!」(アンヌ)
「あぶない!もう間に合わん!」(アマギ)
「でもダンを見捨てるわけには…」(アンヌ)
「あれを見ろ!」(アマギ)
どんどん消滅する疑似空間。
「位置につけ!」(キリヤマ)
不服なアンヌ、アマギに促されて座席へ。
「いくぞ!」(キリヤマ)
飛び立つホーク1号。
セブンのままホーク1号に帰ってきて、変身をとくダン。
「疑似空間を作り出すなんて恐るべき宇宙人だ…。こんな言葉を知っているか?、神なき知恵は、知恵ある悪魔をつくることなり…。どんな優れた科学力を持っていても、奴は悪魔でしかないんだ!」(キリヤマ)
「隊長、知恵ある悪魔から地球を守る我々の任務は、非常に重大という訳ですね…」(ダン)
「ダン、どこにいるの?」(アンヌ)
「ベータ号です」(ダン)
コックピット内の隊員たちは、顔を見合わせる。
「…みんな無事だったんだ、良かった、良かった…」(キリヤマ)
満願の笑みのキリヤマ隊長。
ほっとした表情のアンヌ。


エンディング・ナレーション。
「こうしてアマギとソガにとって恐怖の数時間が終わりを告げた。しかし、広大な空の上にいつまた擬似空間が張り巡らせるかもしれません。なにしろベル星人は、知恵ある悪魔なのですから…」(浦野光)





ALIENS&MONSTERS



音波怪人:ベル星人
身長:60m
体重:1万8千t
出身:ベル星?
武器:脳波を狂わす鈴の音
特技:擬似空間(というより擬似陸地)をつくりだす
特徴:背中にゴキブリをしょっている



宇宙蜘蛛:グモンガ
身長:3m
体重:20s
出身:不明
武器:鼻から毒ガス、ハサミから毒液
特徴:意外と眼が可愛い…。
弱点:火炎



宇宙植物…データなし(もしかして、スフラン…?)

吸血ダニ…データなし





ACTORS&ACTRESS



佐原健二さん演じるタケナカ参謀とともに、ウルトラ警備隊の司令官を兼任しているマナベ参謀。今回、マナベ参謀はかつて、ワシントン基地に勤務していたことが明らかになりました。マナベ参謀を演じるのはベテラン俳優の宮川洋一さんです。どっしりとした安定感で司令官らしい存在感を表現されたいます。宮川洋一さんは、後に声優として活躍をされ、現在でも現役で活動されています。
宮川洋一asマナベ参謀
(#1、#6、#7、#10、#13、#14、#16、#18、#23、#28、#30、#32、#33、#34、#42、#49)





LOCATION



砧公園(隊長たちの着地地点)
生田緑地(ソガがつかまる底なし沼)










                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第18話「空間X脱出」
              12/JUL/2001 初版発行  30/DEC/2001 第二版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved





制作15話   脚本:金城哲夫   監督:円谷 一   特殊技術:大木 淳