エックス
第20話
侵略宇宙人対戦がメインテーマのセブンでは珍しく、動物タイプの怪獣が登場します。しかも着ぐるみにスーツアクターが2人入るうえに、着ぐるみの前方の担当者は、肘をついた格好で暴れるという、円谷一監督好みの一風変わったアクションの怪獣デザインです。
いやはや実は、今回の改訂までずぅ〜と、「プルトニウム」だと信じて疑いませんでした…。それが本当は「ウルトニウム」だったとは……。





STORY



国際核研究センター。
初老の男に怒鳴られる若者が2人…。
「バカもの帰れ!帰ってヤマオカ君に言いたまえ!急用なら、そちらから来いと!」(イワムラ)
怒鳴られていた若者は、ダンとソガだった。
「ですから、お迎えに…」(ソガ)
「イワムラ博士!」(ダン)
「わからんやつだなぁ…。今は、手が離せないんだ!」(イワムラ)
「はぁ…しかし、博士…」(ダン)
「わかったら帰れ!」(イワムラ)
「博士、ですから、こうして、お迎えに…」(ソガ)
BATANNN!…目の前のドアを閉められた。
「…驚きましたねぇ」(ダン)
「いやぁ…聞きしに勝る、ガンコ者だ…」(ソガ)
呆気にとられるダンとソガ。
「どうしたんです?」(サカキ)
2人に問いかける白衣の男。
「いやぁ、どうもこうもないですよ」(ソガ)
「アハハ…。イワムラ先生の一喝を喰らいましたね」(サカキ)
「あのう、あなたは…?」(ダン)
「申し遅れました。私、イワムラ先生の助手のサカキです」(サカキ)
「えっ…。あのガンコ親父の助手を…」(ソガ)
「よく務まりますねぇ…」(ソガ)
あまりの驚きに、思わず本音が漏れるソガ。


作戦室に戻ったダンとソガ。
「ハッハッハッ…、やっぱりやられたか」(キリヤマ)
妙に嬉しそうなキリヤマ隊長。
「隊長!ご存知だったんですか?」(ダン)
「有名な男だよ。…だが地球の核の研究者としては、世界でも有数の学者だよ」(キリヤマ) ←国際核研究って、核兵器じゃなかったのね。
「へえぇ……」(ソガ)
「しかし、弱ったな…。至急、博士の意見を聞きたいんだ…」(キリヤマ)
「例の局圧性地震ことですね」(ダン)
「うむ、ほとんど人体には感じない小地震だがどうもおかしいんだ。地震が続いているのは、この点線の部分だ…」(キリヤマ)
久しぶりに、6人全員がそろった作戦室。


ラリー車が山道を行く。
クルマは、ニッサンブルーバード、女子学生のドライバー:リツコとナビゲーター:レイコのペアである。
しかし、レイコが方向音痴のせいで、車はアオサワ山岳地帯に迷い込んでしまった。
←なぜ、方向音痴がナビゲーターをやっているんだ…?
そこで2人は、奇妙な赤い石を発見する。
「うわぁ、綺麗…」(リツコ)
「重いわ…」(レイコ)
その時突然の轟音、地面が揺れる…。


謎の局地性[地震をキャッチした作戦室。
「隊長、観測所からの報告で、震源地はアオサワ山岳地帯です」(ダン)
「同じ場所だ。震度は?」(タケナカ参謀)
「マグネチュード6.5です」(ダン)
「キリヤマ隊長。今度のは大きいな…。これは、うっかりできないぞ。データをもう一度検討しよう」(タケナカ参謀)
すかさず指示をだすキリヤマ隊長。
「ソガ、ダン。イワムラ博士のところへ行ってこい」(キリヤマ)
泣きそうな顔のソガ。
「もういっぺん行くんですか?…だめですよ!…なぁ、ダン?」(ソガ)
「何がだめだ?」(キリヤマ)
「カンニンしてくださいよ。隊長の命令なら、宇宙の果てだろうと、地獄の
果てだろうと、喜んですっ飛びますが、イワムラ博士だけは…」(ソガ)
そこに、フルハシとアンヌが作戦室に戻ってきた。
渡りに船っとばかりに、
「隊長。フルハシ隊員が適任です」(ソガ)
嬉しそうな顔のソガ。
「イワムラ博士?…ト、ト、トンデモない!」(フルハシ)
露骨に厭な顔をして腰砕けのフルハシ。
「そ…、そうだ。アンヌ隊員が最適任です!」(ソガ)
絶対に行きたくない必死のソガ。
「頼むよ。アンヌ隊員…」(ソガ)
「ええっいいわ…。ねっ、ダン!」(アンヌ)
ダンと2人ならどこでもついてく健気なアンヌ。


国際核研究センター。
「ここね、さっ…」(アンヌ)
「んん…頼むよ」(ダン)
来てはみたものの、逃げ腰のダン。
「弱虫!」(アンヌ)
アンヌに一喝されるダン。
しかし、イワムラ博士はすでにアオサワ山岳地帯に出発した後だった。


フルハシ、ダン、アンヌもアオサワ山岳地帯に向かう。
地震源の調査とイワムラ博士の警護のためである。
現地に到着した3人は、乗り捨てられたラリー車を発見する。
また、その近くの草陰に隠れる2人の女子学生も保護。
「ものすごい大きな唸り声がして怖くて…」(レイコ)
「唸り声…」(ダン)
「とにかく来たまえ…」(フルハシ)


山中に一軒の家があった。恐る恐る近づく一行。
「ごめんください」(フルハシ)
家の中から明かりは漏れている…。
「誰もいないんです?」(フルハシ)
「誰だ!」(初老の男)
聞き覚えのある怒鳴り声。
「家をぶっ潰す気か!!」(初老の男)
威勢良く玄関の扉を開けた顔は、イワムラ博士だった…。
博士は調査のために家を借り上げていたのである。
家の中に入る一行。
「そこに湯が沸いている。コーヒーをいれろ!」(イワムラ)
「…いえ、我々は結構です」(フルハシ)
「ワシが飲むんじゃ!」(イワムラ)
仕方なくコーヒーを入れるアンヌ…。その時、サカキが姿を現わした。
「やあ、早かったですねぇ」(サカキ)
「ん…。お前たちはサカキを知ってるのか…。この男はワシの右腕だ。若いが優秀な科学者だ」(イワムラ)
「そうでしょう。博士の助手が務まるくらいなら、もう何だって務まりますよう…」(フルハシ)
←おだてながら皮肉を込めるマムシ一流の口芸。
「フン!…」(イワムラ)
少しムッとした博士だが、すぐにレイコが持っている赤い石に気づいた。
「なんだこれは…?どうしたんだ?」(イワムラ)
「拾ったんです…」(レイコ)
博士のあまりの剣幕に驚くレイコ…。
「拾った……。サカキ、これを見ろ!」(イワムラ)
「…!先生ッ…」(サカキ)
「そうだ…。ウルトニウムだ」(イワムラ)
「ええ、これは大変なことになりますよ」(サカキ)
ウルトニウムは地球の中心を形作っている、地球の「核」なのだ。
そうそう地上に転がっているものではない。
地下深くから、誰かが運び出したのである。



この後地底調査のために、ホーク3号でマグマライザーを空輸します。
しかし、マグマライザーを格納したコンテナ積み下ろしのギミックが、初出の#17「地底GO!GO!GO!」とは大きく異なっているのです。前回はチェーン吊りの格納コンテナでしたが、今回はガード付きエレベーターに替わっています。確かに、エレベーターの方が安定感とリアリティに富んでいてGOODです。
きっと、前回の出動と今回との間に、兵器運用と装備の見直しが行われたのです。そう考えれば、よけいなツッコミはいらなくなるのです。これが愛なのです。それにしてもこのようなシークエンス自体、サンダーバードの影響なんでしょうが、サンダーバード2号の設定に比べると貧弱さは隠しきれません。ホーク3号の滝中からの出撃シーンのように、もっと思い切った設定をやるべきだったと思います。



フルハシ、ダン、アマギが、マグマライザーで地底に向かう。
しかし、かなり硬い岩盤に行く手を阻まれてしまう。
その時、アマギの耳には、唸り声のような音が…。
「ダン、何か聞こえる」(アマギ)
「岩が砕ける音だろ」(ダン)
「違うぞ…」(アマギ)
「ボリューム上げろ!」(フルハシ)
地の底からの唸り声…。
「あれだ!ラリーの学生が聞いたのは…」(ダン)
地磁気の影響か、本部と交信不能に陥る。
暑い…。汗をぬぐうフルハシ。
「温度があがっているぞ!」(フルハシ)
35度、36度、37度…。


地上のアンヌは、呼び出しを続けている。
「ダン!ダン!」(アンヌ)
「ええい貸せ!ワシが呼ぶ!」(イワムラ)
アンヌからビデオシーバーをむしり取る。
「ダン!ダン!呼ばれたら返事をせんか!」(イワムラ)
「先生、事故がおきたんですよ。事故が…。ひょっとするとマグマの中に
突っ込んで、ドロドロに溶けたのかもしれません…」(サカキ)
事態を心配するイワムラ博士とアンヌ。
「アンヌさん…」(サカキ)
物思いにふけるイワムラ博士の影を指さすサカキ。
「…!」(アンヌ)
そこには異形の影が蠢いているではないか…!
「そうっと出ましょう…」(サカキ)
アンヌを外へ連れ出すサカキ。
その時、ラリー車の様子を見て帰ってきた2人の女子学生。すれ違い際に妙な金属片を落とすサカキ。
2人は不審に思って、金属片をイワムラ博士のもとへ持っていった。
「ふむ…、サカキがどうしてこれを…?」(イワムラ)


山道を歩く、サカキとアンヌ。
「長い間一緒にいた私でさえ、やっと気がついたのだから…」(サカキ)
「イワムラ博士が宇宙人だったなんて…」(アンヌ)
「隊員たちはワナに落ちたんだ」(サカキ)
岩場にやって来たサカキとアンヌに、イワムラ博士が追いついた。
「サカキ!」(イワムラ)
「近寄らないで!」(アンヌ)
ウルトラ・ガンを博士に向けるアンヌ。
「撃つわよ!」(アンヌ)
しかし、アンヌの言葉はまったく耳に入らない様子のイワムラ博士。
「サカキ、これはなんだ?」(イワムラ)
「はっ…!」(サカキ)
「サカキ、君は一体何者だ?これは地球の金属ではないぞ」(イワムラ)
「知らない…。これは私のものではない」(サカキ)
「じゃあ、捨てていいんだな!」(イワムラ)
博士の手から金属を奪うサカキ。
「フッハッハッハ…。とうとう見つけたか!…フン!」(サカキ)
金属を胸にあてて、爆発とともに変身。
「暗黒星雲の惑星、シャプレー星人だ!」(サカキ)
「やはり、そうだったか…」(イワムラ)
「でも、さっきイワムラ博士の影が…」(アンヌ)
「ハッハッハ…あれは簡単な催眠術だ。アンヌ、キミの影を見てごらん!」(サカキ) ←宇宙人からも呼び捨てのアンヌ。
するとアンヌの影も異形な影になっていた…。
「わかったかね…。ウッ!」(サカキ)
岩場にとびのり攻撃を仕掛けるシャプレー星人。
そこに、ソガが援護に登場した。
「アンヌ、目を狙え!」(ソガ)
←どこが目だ?…そこが弱点なのか?…ソガ、なんで知ってんだ?
目を狙われたシャプレー星人、あっけなく焼死。



悪玉が善玉の中に潜んでいて、それが暴露されると開き直って正体をあらわす、というヒーローものの王道パターンです。それにしても、正体を見せるサカキのポーズがなんともいえずにいいですね。仮面ライダーの変身ポーズの元になったのではないですかねぇ…。

シャプレー星人に操られる「宇宙怪獣ギラドラス」。
セブンの怪獣は、宇宙人の侵略兵器のひとつとして操られる、という設定が多いのですが、今回のギラドラスのように、宇宙人が操るというよりも、宇宙人の死後、勝手に暴れるまくるというパターンも、いくつかありました。類型別にまとめてみましょう。

@宇宙人が生存している時に登場し、指示を受けた怪獣(物語上の示唆も含む)
エレキング(ピット星人)、キングジョー(ペダン星人)、ガブラ(シャドー星人)、ウインダム(カナン星人)、ガンダー(ポール星人)、アロン(ガッツ星人)、ガイロス(ノンマルト)、ゴリー(ゴーロン星人)、にせセブン(サロメ星人)、パンドン(ゴース星人)

A宇宙人が生存している時に登場したが、指示を受けた様子のない怪獣
グモンガ(ベル星人)、テペト(テペト星人)

B宇宙人の死後登場し、勝手に暴れた怪獣
ナース(ワイルド星人)、ギラドラス(シャプレー星人)、ペテロ(ザンパ星人)、クレージーゴン(バンダ星人)

C宇宙人はいるらしいが姿を現さなかった怪獣
アイアンロックス(ミミー星人)、恐竜戦車(キル星人)、リッガー(?)
※ダンカンは泡状の生物。怪獣形態があの姿。



シャプレー星人の断末魔の叫びによって、行動を開始した怪獣ギラドラス。
地上に出るギラドラスの動きによって、より深い地底に落ち込んだマグマライザー。
すぐ側をドロドロのマグマが流れている。
「空洞だ…。空洞に落ち込んだんだ」(フルハシ)
「ウルトニウムを掘り出した跡です」(ダン)
「ダン!温度が…」(アマギ)
40度を超え50度に近づく…。
倒れ行く、アマギ、フルハシ。
頑張れダン!君が倒れたら全滅だ。


間一髪、変身したセブンがマグマライザーとともに地上に戻ってきた。決戦を挑むセブン。しかし、ギラドラスの角が発光すると天気が急変する。晴れた空から、たちまち暗雲が立ち込めるのだ。どうやらギラドラスには、天候を自由に操る能力があるようだ。猛嵐や猛吹雪に苦しむセブン。
「ウルトラセブン、立つのよ!」(アンヌ)
アンヌの声で奮起した決まり手:アイ・スラッガー、サイドジャンプ投げ。


マグマライザー車内。
「アマギ隊員、フルハシ隊員」(ダン)
目を覚ますフルハシ、アマギ。
「地上だ…。こりゃ一体どうなってるんだ?」(フルハシ)
「僕も今、目が覚めたんです」(ダン)
マグマライザーの無事を確認したアンヌが基地に通信。
「隊長、ウルトラセブンの働きで怪獣を倒し、宇宙人の侵略は終わりました」(アンヌ)
「よかった…。マグマライザーはどうした?…無線が通じないんだ」(キリヤマ)
「はい、こちらフルハシ…、マグマライザーも無事、ウルトラセブンによって、助け…られたらしいです」(フルハシ)
「何だ!…らしいです、とは!」(キリヤマ)
「残念ながら、気を失ってましたので、面目ありません…」(フルハシ)
「いやいや、みんな無事で何よりだ、すぐ、帰還せよ」(キリヤマ)
「はい、了解!」(フルハシ)
隊長、いたずっらぽい微笑みを浮かべながら…
「ただし、フルハシは…、イワムラ博士のボディガード兼助手として残れ」(キリヤマ)
「えー?!」(フルハシ)



「大団円」というフレーズが良く似合うラストです。
野長瀬組の同時進行作品、#19「プロジェクト・ブルー」のラストでは、カメラはミヤベ邸で笑いあうダンたちから引いていき、窓から外に出ます。その時、そよ風に吹かれたように、レースのカーテンが緞帳よろしく、下手から上手へ閉まります。
本作品では、キリヤマ隊長とフルハシの会話のやり取りでホンワカムード
を醸し出し、お互いの無事を確認し喜び合う隊員たちの画で終わります。どちらも、事件解決後の平和なひとときといった趣を感じさせる穏やかな終幕です。この辺りに永年、黒澤明監督の助監督として培ってきた、野長瀬監督の演出力を垣間見るような気がしますし、また、同時にこんなレベルの高い演出人が多くの作品を監督した「ウルトラシリーズ」のレベルの高さを感じ入る次第です。





ALIENS&MONSTERS



暗黒星人:シャプレー星人
身長:1m70p
体重:60s
出身:シャプレー星(暗黒星)
特技:地球人に化ける。。簡単な催眠術。派手な変身ポーズ
特徴:やることがキザ、絶対にアンヌを口説いていたはず…
弱点:目 ←だからどこなの?



核怪獣:ギラドラス
身長:85m
体重:9万t
出身:シャプレー星?
特技:天候を自在に操る ←どうやって…?
特徴:体内は、ウルトニウム貯蔵庫になっている
弱点:二人入っているので動きがたいへん





ACTOR&ACTRESS



イワムラ博士に吉田義夫さん。
吉田さんは「悪魔くん」のメフィスト兄役で有名です。あの罵倒する声の感じは、まさにメフィスト兄そのまんまですね。
また、博士を嫌がるソガの必要以上にゆがんだ表情が印象的です。

シャプレー星人が化けたサカキ助手には、二枚目俳優の北原隆さん。
日活ニューフェイス1期生で、何かと話題の豊頬元に戻した宍戸錠さんが同期です。「特別機動捜査隊」にもレギュラー出演し、キリヤマ隊長と共演しています。

ラリー参加中の二人の女子学生のうち、方向音痴ナビゲーター:レイコが若山真樹嬢です。この頃はまだ売れない若手女優の卵でしたが、後にも特に売れませんでした。セブンでは、#5「消された時間」でSSTのキャビンアテンダント、#24「北へ還れ」でのカナン星人、#31「悪魔の住む花」の松坂慶子嬢の友人、#34「蒸発都市」のヤジ馬などなど、まさに最多のチョイ役出演者ですね。
また、ドライバー:リツコには松平有加嬢。彼女も#24「北へ還れ」で、カナン星人に扮しています。

「若山真樹さん・懐かしいです。彼女は私と同い歳で当時ヤッコと云っていました。確か本名が「やすこさん」だからだったと思います。セブンにはよく出演してましたよネ。」(ひし美ゆり子記、「ゆり子の部屋 BBS:4014」より)





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奥多摩?










                        





             「ウルトラセブン」ストーリー再録  第20話「地震源Xを倒せ」
       12/JUL/2001初版発行  31/DEC/2001第二版発行 23/AUG/2002第三版発行
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制作20話   脚本:若槻文三  監督:野長瀬三摩地  特殊技術:的場 徹
地震源Xを倒せ