第21話
海底基地を追え
脚本の赤井鬼介氏とは、あまり聞き慣れない名前ですが、実は、円谷プロダクション文芸室第3の男こと、宮崎英明氏のペンネームです。これまでは主に、「快獣ブースカ」を上原正三氏とともに手がけていました。
まさに、満を持してのセブン参加だったのです。





STORY



夜の大海原。流れ星が空を横切っていく…。
「船長、よく星が流れますね…」(船員)
「ふむ…。流れ星にはいろいろ不吉な物語があるよ…。嫌なことが起きなきゃよいが…」(船長)
「船長、船長…。あれは何でしょう?」
月明かりの下、突如水面が湧き上がる…。
ベテラン船長の心配は当ってしまったのだ。


作戦室に入ってきたタケナカ参謀。
「北九州地区からの報告によりますと、第3黒潮丸が行方不明。海洋保安部で捜索中とのことです」(キリヤマ)
「どうもおかしいなぁ。最近の海難事故は…」(タケナカ参謀)
「隊長!またSOSです」(勝部通信隊員)
「なにぃ!」(キリヤマ)
「南鳥島、北北西113キロの地点です」(勝部通信隊員)
「アマギ。すぐに調査に出発!」(キリヤマ)
「はい」(アマギ)
現場に急行するホーク3号。


基地に帰ってきたダンとアンヌ。
「ご苦労。どうだった?」(タケナカ参謀)
「はい、黒潮丸船長のご遺族に会って参りました」(ダン)
「何か事情はわかったかね…」(タケナカ参謀)
「はぁ、沈没直前、海上からの緊急電話によりますと、戦艦大和らしい姿が海上に現われたと言って電話が切れたそうです」(ダン)
「なにぃ…戦艦大和が現われた?」(タケナカ参謀)
顔を見合わせる戦中派の2人。
アマギが帰ってきた。
「調査の結果は?」(タケナカ参謀)
「はい。SOS受信後、少なくても30分以内に発信地点に到着しているんですが…」(アマギ)
「ダメか?」(キリヤマ)
「はい。遭難地点には、油も破片も見当たりません」(アマギ)
「普通の遭難とは思われません」(キリヤマ)
「ふむ…」(タケナカ参謀)
「何者かの攻撃でしょうか?」(ダン)
「まさか…」(タケナカ参謀)
「跡形もないというのは、どうもおかしい。参謀、徹底して調査してみる必要があると思われますが」(キリヤマ)
「参謀、パリ本部から連絡です」(ソガ)
パリ本部からとの交信を終えたタケナカ参謀。
「地中海や大西洋で行方不明の船舶が続出しているが、極東ではどうかと言ってきた」(タケナカ参謀)
「タケナカ参謀。極東海域の厳重な調査が望まれますが…」(キリヤマ)
「…う〜む。早速キリヤマ隊長にご苦労願おうか…」(タケナカ参謀)
「はい!」(キリヤマ)
「唯一の手がかりは、黒潮丸の船長の電話だ。大和を見たという…」(タケナカ参謀)
「では、捜索は、徳之島付近から始めてみましょう!」(キリヤマ)
大和=徳之島とすばやく反応。さすが元海軍のキリヤマ隊長。


フルハシとアマギがハイドランジャー1号と2号で出発。
「ハイドランジャー1号、2号、スタンバイよいか?」(キリヤマ)
満っちゃんアナウンスで出航スタンバイ。
「ハイドランジャー1号スタンバイOK」(フルハシ)
「ハイドランジャー2号スタンバイOK」(アマギ)
←なぜか操縦席で救命胴衣が膨らんでいる…。



徳之島付近を捜索する2隻。
「ハイドランジャー1号より隊長へ」(フルハシ)
「こちらキリヤマ…」(キリヤマ)
「隊長、大和が見当たりません」(フルハシ)
「なに!大和がない!水深は?ソナーに変化はないか?」(キリヤマ)
「水深430メートル、計器も異常ありません」(フルハシ)
沈んでいるはずの大和がない。船長たちが見たものは大和なのか?
ヒトデ型の物体を発見したフルハシ。
「隊長、奇妙なヒトデ型の物体を発見。金属反応があります」(フルハシ)
「よし、追跡しろ」(キリヤマ)
追尾するが途中でヒトデを見失うフルハシ。
「ハイドランジャー2号」(フルハシ)
「はい、こちらアマギ」(アマギ)
「ヒトデの化け物を見つけた。追跡中だ。気をつけてくれ」(フルハシ)
「了解」(アマギ)
捜索を続けるアマギは、ヒトデに攻撃を受けて失神する。
「フルハシ、2号艇応答なし…。大至急連絡をとってくれ。こちらはホーク1号で海上捜査をする」(キリヤマ)


「何、怪物が海に潜った?で、場所は?下田港だな、了解!」(ダン)
伊豆下田から事件の急報である。しかし、キリヤマ隊長は徳之島沖へ出動中だ。
「参謀!」(ダン)
「よし、ダンはホーク3号で出動スタンバイ!」(タケナカ参謀)
「はい!」(ダン)
「ソガ、アンヌはポインターで住民の救援にあたれ!」(タケナカ参謀)
「はい!」(ソガ、アンヌ)
「キリヤマ隊長を呼べ!」(タケナカ参謀)


キリヤマ隊長とフルハシは、アマギを捜索中。
「キリヤマ隊長、伊豆に怪物が出た。すぐ帰投してくれないか」(タケナカ参謀)
「了解。ハイドランジャー1号?」(キリヤマ)
「はい、こちら1号。…2号艇がまだ、見つかりません」(フルハシ)
「そうか。フルハシ、伊豆で事件だ」(キリヤマ)
「はい…、ですが隊長、アマギが…」(フルハシ)
「…よし、俺は帰投する。…あとは頼むぞ!…いいな」(キリヤマ)
部下に信頼を寄せる隊長。
しかし、フルハシも泡状攻撃によって敵に捕らえられてしまう…。
捕獲された2隻のハイドランジャー。



予算が逼迫した円谷プロダクションの制作部からの、「東宝から譲り受けた、戦艦大和のお古模型で怪獣を考えて」というオーダーに、特殊美術の成田亨氏は大激怒したそうです。そりゃそうでしょう、戦艦大和がどうして怪獣になるっていうの…。なんとかなっても宇宙戦艦くらいのもんですよね…。


成田亨氏の怪獣デザイン3原則。(成田亨、※5より抜粋)
1、 過去にいた、または現存する動物をそのまま作り、映像演出の巨大化のトリックだけを頼りにしない。
2、 過去の人類が考えた人間と動物、動物と動物の同存化合成表現の技術は使うが、奇形化はしない。
3、 体に傷をつけたり、傷跡をつけたり、血を流したりはしない。

「そもそもテレビという家庭の茶の間の夕食時間の子供番組だから、もし、妖怪的性格があったら、母親はすぐスイッチを切る、消すか、チャンネルを替えるでしょう。もし血をだらだら流していたら、母親は、こんなひどい番組見ちゃいけません、こんなテレビを作る大人は何を考えているんだろう、と言ってスイッチを消すでしょう。もし僕だったらそうする。子供を喜ばせながら、母親も了解させるような怪獣でないとだめだと思ったからね。子供向けということは、もちろん、念頭においてやっていました」(成田亨、※5)


今回に限らず、東宝からお古を譲り受けた例は数多く、「ウルトラマン」では、パゴス→ネロンガ→マグラ→ガバラ、ゴジラ→ジラース。「ウルトラセブン」でも、マンタ→ナース、東宝自衛隊→恐竜戦車→リッガー、などなど…。これだけの制約のなか、成田氏の創作意欲が失われていったことは創造に難くありません。もっともそれだけではなく人間関係の部分が大きかったようですが…。



再び海上に姿を現わした戦艦の怪物は、下田港に艦砲射撃を行う。
飛来するホーク3号迎撃のため、砲身の仰角をあげる戦艦の怪物。
ダンと戦艦の怪物との壮烈な砲撃戦。
現場に着くポインター。
「あれだ。アンヌ、ウルトラ・ミッサー(?)の発射用意だ!」(ソガ)
←ソガのセリフが聞き取れない…。
「はい。…準備OK」(アンヌ)
←ポインターの初ミサイル攻撃!
ホーク3号とポインター、怒涛のミサイル攻撃。
しかし、ホーク3号は被弾して火を噴く…。
「ダン!」(アンヌ)
アンヌの悲鳴の中、海に墜落するホーク3号。
今度はホーク1号がやって来た。
正確な射撃、宙返り、背面飛行…。
キリヤマ隊長の執拗な攻撃…。
ついに怪物の中心にミサイルが炸裂する。
吹っ飛ぶ部品…。活動を停止する怪物。
「アンヌとソガは現場に残って、しばらく様子を見ていてくれ」(キリヤマ)



キリヤマ隊長の名パイロットぶりが遺憾なく発揮される見事な操演です。
ウルトラホーク1号の撮影用モデルは、分離可能な木製180pクラスのものと、分離できない金属製90pクラスの2種類がありました。分離可能な木製モデルは、主にアルファ・ベータ・ガンマの3機分離飛行シーンで使
われ、それ以外のほとんどのシーンでは、金属製90pクラスが使用されました。ですので、今回も金属製90pクラスであると思われます。
アイアンロックスとホーク1号の空戦シーンで、アイアンロックスの艦橋付近をホーク1号が飛びぬけます。ホーク1号はかなり小さく見えます。しかしあれで全長90pはあるのです。アイアンロックスの原型となった、東宝大和はかなりの大型モデルだったということです。
円谷英二監督の撮る戦争映画特撮に使用される艦艇は、全長10mを超える大型の模型です。模型といっても、自動車用エンジンを搭載し、漁船並みの馬力を持ち、2人乗りで操縦されるという本物顔負けの船でした。なぜこのように巨大な模型が必要だったのでしょうか?そのひとつの理由は、波のリアリティを出すためだったのです。船は進むときに波を発生させますが、小さい船ではそれなりの波しか立たず、軍艦の迫力とは程遠かったのです。もうひとつの理由が、航空機模型のスケール比との兼ね合いでした。船が小さければその分、空母に搭載される航空機も小さくなり、迫力とリアリティに欠ける画面になってしまいます。円谷英二監督の特撮への執念が、大スケール模型船を作らせたのでした。
円谷英二監督は、長年の特撮経験から、模型縮尺を1/12と割り出していました。実物の戦艦大和は、全長260m余、この縮尺だと22m近い巨大船となる計算です。セブン制作時に、もっとも近い東宝連合艦隊の大和は、昭和38年に公開された「太平洋の翼」の大和です。実は、この作品が東宝における「戦艦大和」の銀幕デビューでした。それまで東宝映画に大和が登場したことはなかったのでした。「太平洋の翼」は、戦争末期の松山343航空隊を舞台にした戦闘機パイロットの物語ですが、クライマックスに菊水1号作戦が登場します。大和による無謀な沖縄特攻作戦です。沖縄に向かう大和は、全長17.5mの巨大モデルで再現されました。あまりの大きさに砧撮影所の大プールでは撮りきれずに、山中湖で撮影したそうです。
ホーク1号のスケール(90p)と合わせて考えると、倉庫に眠っていたこの大和が再登板したと推察するのが妥当のようです。



作戦室にパリ本部からの無線コール音が鳴る。
「参謀、パリ本部からです」(勝部通信隊員)
「怪物は、アイアンロックスと呼ばれ、沈没した戦艦などの、海底の無限の鉄屑を利用した、強烈な爆弾ロボットとわかった。欧州各国の基地が狙われ、静止して15分後に爆発することが知られたが、敵の本拠地はわからなかった…」(浦野光)


フルハシとアマギは、ハイドランジャーとともに敵に捕獲されている。
ダンは、撃墜されたホーク3号内で気絶している。
ソガとアンヌは、現場で待機中である。
ひとりぼっちのキリヤマ隊長。
そんな隊長の気持ちと等しく、真っ暗な作戦室…。
「キリヤマ隊長…。隊員たちの行方は…?」(タケナカ参謀)
「はぁ…」(キリヤマ)
「アイアンロックスを危険のない海に持っていくことはできないかね?」(タケナカ参謀)
「あの重量と…、それに時間が…」(キリヤマ)
「…爆発まであと何分だ?」(タケナカ参謀)
「20時35分の予定ですから、あと13分です」(キリヤマ)


アイアンロックスを監視するソガとアンヌ。
突然、ランプが点滅して動き出す。
「隊長、アイアンが再び動き出しました!」(ソガ)
再び艦砲射撃を始めるアイアンロックス。
「君たちは安全なところに引き上げてくれ」(キリヤマ)
夜の海を炎が焦がす。


海底のホーク3号。
コクピットで意識を取り戻したダンはセブンに変身してアイアンロックスに立ち向かう。
「フハハッハハッハッハ…来たかセブン。君は、我々の力を知らなすぎる…」(ミミー星人)
セブンに語りかけるミミー星人。
「なに?」(セブン)
「我々は、海底に眠るこの豊富な資源。…それも地球人が、利用していないものをいただくだけだ」(ミミー星人)
「なんだ?」(セブン)
「総攻撃で、ミミー星人の威力を見せてやる!」(ミミー星人)
←だから、何だ?わけのわからんことを言うミミー星人。
 そのうえ、田舎の漁村を艦砲射撃したりして…、何しに来たんだ、ミミー星人?


手枷と足枷のついたチェーンを発射したアイアンロックス。
セブンを拘束し、爆発に巻き込もうという作戦らしい。
迫る爆発時間。
手足の自由を奪われ、もがくセブン。
刻一刻と時を刻む時計の音。
爆発まで、もう時間がない。
残り、20秒、15秒、10秒……。
飛び上がり、猛回転によってチェーンを断ち切るセブン。
引きちぎられたチェーンが海に沈んでいく。
セブンの反撃で、燃えあがるアイアンロックス…。
決まり手:エメリューム光線。
      ←誘爆しないアイアンロックスの爆弾…?





ALIENS&MONSTERS



宇宙海底人:ミミー星人
身長:80p
体重:不明
出身:ミミー星?
武器:アイアンロックス、円盤の泡攻撃
趣味:リサイクル
弱点:言ってることとやってることがよくわからない



軍艦ロボット:アイアンロックス
全長:80m(大和は260m)
重量:15万t(大和は7万t)
主砲:迫撃砲程度の威力
    (大和は46p三連装砲三基九門)
特徴:浮き上がって止まると15分後に爆発する
弱点:航空機攻撃(戦艦の弱点はこれ)





ACTOR&ACTRESS



冒頭、沈没する第3黒潮丸の船長に、柳谷寛さんが扮しています。
柳谷さんは、東宝所属の俳優さんで、円谷英二監督の出世作「ハワイ・マレー沖海戦」から円谷作品に関わり、「ウルトラQ」「ウルトラマン」「ウルトラセブン」「帰ってきたウルトラマン」とシリーズ出演されました。柳谷さんは、明治44年生まれ。そのうえ、最近作の「ウルトラマンダイナ」にも出演され、いまもって健在でいらっしゃいます。





LOCATION



伊豆下田港?(こんな漁港ではないはすだが…)
伊豆下田(協力クレジット:浜のホテル、映像では出ず)
伊豆スカイライン(ポインター走行シーン)










                        





             「ウルトラセブン」ストーリー再録  第21話「海底基地を追え」
              12/JUL/2001 初版発行  03/JAN/2002 第二版発行
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制作21話  脚本:赤井鬼介  監督:鈴木俊継  特殊技術:大木 淳