制作24話 脚本:市川森一
監督:満田かずほ 特殊技術:高野宏一
市川森一氏のセブン第2作。
前作は、キリヤマ&クラタの大人の友情話でした。今回はウルトラ警備隊隊員という、世にも珍しい職業(何せ、地球上に5人しかいない!)を選んでしまった男と、その家族の物語です。
さあ、ハンカチを用意して、観よう!。
STORY
広大な雪山をバックに走る、雪国のローカル線気動車。
「フルハシ隊員は、母が病気との連絡を受け、彼の故郷、北海道に来た」(浦野光)
帰郷したフルハシ。
「兄さん、お帰りなさい」(マナ)
駅まで迎えに来た妹のマナと母の下へ向かう。
「…具合はどうなんだ?」(フルハシ)
「具合って?…」(マナ)
「決まってるじゃないか、母さんの病気だよ」(フルハシ)
「アハッハッハッハ…病気なんてウソよ!」(マナ)
「ウソ?…それじゃ、母さんが病気だっていうのは、俺を呼び戻すための…」(フルハシ)
「そう、母さんどうしても、兄さんに牧場継いでもらいたいのよ」(マナ)
母の口まねをしながら、
「あたしも年だし、体も弱ったし、あんなウルトラ警備隊なんか…」(マナ)
「あんな?」(フルハシ)
「あんなウルトラ警備隊なんか辞めて、早く帰ってきてくれるといいのにねぇ…」(マナ)
「ちぇっ…母さんまだそんなこといってんのか…」(フルハシ)
「でも兄さん、ウルトラ警備隊辞める気ないんでしょ?」(マナ)
「…いや、あるよ…」(フルハシ)
「えっ…」(マナ)
「あんなウルトラ警備隊なんか、実をいうと飽き飽きしてんだ」(フルハシ)
「へぇ…」(マナ)
いぶかしげなマナ。
GURURURU…、クルマが動かない。
「おかしいな…。マナ、ちょっと前見てくれないか」(フルハシ)
マナが降りると走り出すクルマ。
「あ、兄さん、待ってよ、…兄さん!」(マナ)
「母さんによろしくな」(フルハシ)
「待ってよ兄さん!うそつき!」(マナ)
「おあいこだぁ!…」(フルハシ)
ウソにはウソを…。基地に戻るフルハシ。
「その頃、遥か北極上空をパトロール中だった地球防衛軍のジェット機に、信じられない異変が起こっていた」(浦野光)
「北極圏パトロール機より管制塔へ。航行器に異常あり」(防衛隊員)
北極圏を覆うオーロラのような発光帯に突入するパトロール機。
正面から旅客機が突っ込んでくる。
このままでは、正面衝突だ。
しかし、操縦不能なのである。
「こちら、ジェイエイワン、スリーゼロフォー、エイチ。只今、操縦不能!そちらのコースを変えてくださぁい!」(防衛隊員)
「うわぁぁぁ!」(防衛隊員)
BOOOM!
空中衝突してバラバラになる両機…。
イラつくタケナカ参謀。
「地球防衛軍のパトロール機が、こともあろうに民間の旅客機と事故を起こすなんて、こんなとは初めてだ!キリヤマ隊長、この事故の調査、徹底的にやってくれ!」(タケナカ参謀)
「はっ!」(キリヤマ)
タケナカ参謀の言う通り、民間人を守るべき軍隊の飛行機が、民間人の乗る旅客機と事故を起こすなんて、絶対にあってはならないことです。
しかし、放送から3年後の71年7月30日。あってはならないことは、起こってしまったのです。
同日13時30分ごろに千歳空港を離陸して羽田空港に向かって飛行していた全日空58便ボーイング727型機は、航空自衛隊松島基地に所属する訓練飛行中のF−86F支援戦闘機と、岩手県雫石町上空2万8千フィート(約8500m)で空中衝突し、両機とも墜落しました。全日空機の乗務員7名と乗客155名の計162名は全員死亡しました。しかし自衛隊機パイロットは衝突直前に脱出してパラシュートで降下、無事でした。
この事故は「雫石事件」と呼ばれます。刑事・民事の両面から法廷争議に発展したからです。
作戦室。電話のコール音。
イス取りゲームのノリで早取りする隊員たち…。勝ったのはダン。
「ヘヘ…」(ダン)
得意そうに笑ってから、会話に入る。
←この頃、警備隊では流行っていたのです。昼飯なんかを賭けて…?
「はい、こちらウルトラ警備隊作戦室。はいっ!フルハシ隊員」(ダン)
電話はフルハシ宛てだった。
「こちらフルハシ…。母さん!」(フルハシ)
「どうしても、お前に帰って来てもらいたくて。今、着いたんだよ」(母)
送話口を手で押え、母に聞こえないように、
「…出てきちゃったんですよぉ…」(フルハシ)
苦りきった表情のフルハシ。
「とにかく、今忙しいんだよ!後で…」(フルハシ)
電話を切るフルハシ。
「隊長、調査は僕が代わりに行きます」(ダン)
「いや、俺が行ってやるよ…」(アマギ)
「そういうことは、オレ様、オレ様…」(ソガ)
面白がって任務交代を申し出る、友情厚き3人…。
「ちょいと待った!」(フルハシ)
制止するフルハシ。
「皆さん方の友情は、大変うれしいですけどねぇ…。仕事は仕事。俺の分を横取りされては困るんだなぁ…。アンヌ、お袋の方を頼んだよ」(フルハシ)
まんまと逃げるフルハシ・シゲル。
セブンの牢名主、石井伊吉(いよし)。
「とくにマムシさんが怖かった……。当時は石井伊吉の芸名でフルハシ隊員を演じていた毒蝮三太夫さんは、"ウルトラマン"に続く2本目の出演。スタッフとも顔見知りで、自由気ままに振舞っているように見えました。マムシさんはまるで牢名主のような存在で、私の第六感は"この人に嫌われたらタイヘンだ!"と警戒信号を発していました」(ひし美ゆり子、※2)
「フルハシ隊員役の毒蝮三太夫さんは、いつもにぎやかで現場を盛り上げてくれ、ロケなどに行くと一人でざぶとんを持ち、当時出演していたテレビ番組『笑天』のようなことをして笑わせてくれた」(森次晃嗣、※1)
キリヤマ隊長をはじめとする、セブン・レギュラー陣は、ほぼセブン専属で撮っていましたが、牢名主フルハシは「かけもち」だったのです。
ダンの著作にもある通り、立川談志師が司会をしていた「笑点」にレギュラー出演していて、あの座布団運びをやっていたのです。司会者が指示しなくても、自分と落語家とも掛け合いの中で、勝手に座布団を出し入れするという、意志を持つ座布団運びキャラは、マムシによって、つくられていたのでした。
東京に出てきたフルハシの母。
パトロール中のフルハシに代わり、迎えに行くダンとアンヌ。
「フルハシ隊員はパトロール中なんですよ」(アンヌ)
「はぁ…」(母)
「でもすぐに戻ってきますから」(アンヌ)
「はぁ…」(母)
←この娘さんがシゲルの嫁かしらねぇ…、という感じではないですね。
「民間の人は基地に立ち入り禁止なので、麓にホテルがあります。そこにご案内します」(ダン)
懐かしの旧羽田空港を走るポインター。
「はぁ…」(母)
何を言っても「暖簾に腕押し」といった感じのフルハシ母。
「北海道上空通過」(フルハシ)
「ホーク3号、ベーリング海に入ります」(ソガ)
「うむ…。本部よりホーク3号へ。マッハ2.8に調整し、自動操縦に切り替えろ」(キリヤマ)
「了解」(フルハシ)
オートパイロットで北極に接近するホーク3号。
氷に閉ざされた海を臨む岬の灯台。
その上空を通過すると、突然計器に異常が…。
「自動操縦装置に異常あり…」(フルハシ)
「えっ…?他に異常はないか?」(キリヤマ)
「他は正常です。有視界飛行でも十分に可能です」(フルハシ)
「ソガ、調査地点までの距離と時間は?」(キリヤマ)
「5760km。マッハ2.8で120分で着きます」(ソガ)
調査を続行すべきか否か…。
「普通操縦に切り替えて、捜査を続けろ」(キリヤマ)
さらに北極に向かうホーク3号。
スイス民謡(?)の流れる喫茶店。
フルハシの母親と話すダン。
「ご病気だとうかがったんですが、もういいんですか?」(ダン)
「はぁ…」(母)
「そうですか。で、今度は、何か急用でいらしたんですか?」(ダン)
「シゲルを連れ戻しに参りました」(母)
「え、あのぅ…連れ戻すって、北海道へ?」(ダン)
「はぁ…」(母)
「…フルハシ隊員が、ウルトラ警備隊を辞めるんですかぁ…?」(ダン)
「は、そうしたいと思いまして…」(母)
「そ…そんなぁ…」(ダン)
オロオロするダン、気まずい空気が流れる…。
そこに、アンヌが戻ってきた。
「ダン…ちょっと」(アンヌ)
慌ててアンヌの側に駆け寄るダン。
「どこ行ってたんだよ」(ダン)
…もう大変だったんだから、という表情。
「…ちょっと来て」(アンヌ)
アンヌのすぐヨコへ、
「すぐ基地へ帰って…。フルハシ隊員が大変なの」(アンヌ)
小声のアンヌ。
「でも、お母さんが…」(ダン)
「アタシに任せて…」(アンヌ)
「頼む!でも、こっちも大変だぞ…。フルハシ隊員を連れ戻しに来たんだって…」(ダン)
一難去ってまた一難…。
北極圏に到達したホーク3号。
コクピットに警報音。突然、操縦不能に陥る…。
「操縦桿が動きません」(キリヤマ)
「フルハシ、状況を説明しろ!」(キリヤマ)
「原因は不明です。ただ…」(フルハシ)
「ただ…、どうした?」(キリヤマ)
「何かに誘導されているようなんです」(フルハシ)
「これはただの事故じゃありませんね」(アマギ)
その時、ダンが戻ってきた。
「どうしたんですか?フルハシ隊員は?」(ダン)
「ホーク3号が操縦不能になっている。すぐ追ってくれ。フルハシを脱出させる」(キリヤマ)
「わかりました」(ダン)
フルハシ救援のため、ホーク1号で北極へ向かうダン。
「ソガ、北極地方は絶対飛ばないように、各航空会社に連絡してくれ!」(キリヤマ)
パトロール機と旅客機との空中衝突の二の舞は避けたい。
「はい!」(ソガ)
フルハシの母を出迎えたポインターは、羽田空港を走っています。この頃、航空機は一般化した乗り物として認知され始めていたようです。しかしそれとともに旅客航空機事故も数多く起こりました。特に「ウルトラQ」「ウルトラマン」の放映があった66年は、民間航空史上最悪とも呼べる年で、国内だけでも5件の大事故が発生しています。
2月4日 全日空羽田沖墜落事故。
千歳発羽田行全日空60便ボーイング727型機は、羽田空港へ着陸進入中、東南東沖15qの東京湾に墜落。乗員7名、乗客126名、計133名は全員死亡。
3月4日 カナダ太平洋航空機墜落事故。
香港発羽田経由バンクーバー行カナダ太平洋航空402便DC8型機は、羽田空港に最終進入中、低高度のため進入灯に接触し、護岸に衝突・炎上。乗員10名、乗客54名、計64名が死亡、乗客8名救助。
3月5日 BOAC機空中分解事故。
ロンドン発サンフランシスコ、ホノルル、東京、香港経由ロンドン行英国海外航空(BOAC)911便ボーイング707型機(ターボプロップ機)は、羽田空港を離陸後、富士山上空1万5千フィート(約4500m)で空中分解。晴天のため富士山がよく見えるようにと接近し過ぎたのがアダとなった。乗員11名、乗客113名、計124名は全員死亡。
8月26日 日本航空羽田空港墜落事故。
日本航空コンベア880型機は、羽田空港で訓練中に離陸に失敗して墜落炎上。乗員5名全員死亡。
11月13日 全日空松山沖墜落事故。
伊丹発松山行全日空533便YS−11型機は、松山空港で着陸復行中、上昇左旋回中に墜落。乗員5名、乗客45名、計50名は全員死亡。
機体、設備、人間…。
空の安全は、まだまだ発展途上の時代だったのです。
こんな時代では、アンヌでなくとも飛行機嫌いになりますネ…。
凍てつく氷の海に面した岬の灯台。
その灯台から空に向かって、怪光線が放たれた。
すると北極圏の空に、オーロラのような発光帯が現われた。この間の事故のときと同じように…。
作戦室、慌てるソガ。
「隊長!北極地方に旅客機が飛んでいます」(ソガ)
「何だと?各地区に飛行中止を要請したはずじゃないか?」(キリヤマ)
「はぁ、そのはずだったんですがぁ…」(ソガ)
「とにかく、すぐに連絡をとって、引き返させるんだ!」(キリヤマ)
「はい!」(ソガ)
旅客機コクピット。
「空路から外れているぞ…」(機長)
「一体どういう訳なのか、訳がわかりません。突然、操縦不能になったのです」(副操縦士)
「前方から防衛軍のジェット機が来ているんだぞ」(機長)
機内では乗客たちがパニックを起こし始めている。
「このままいけば、フルハシのホーク3号と旅客機は正面衝突だな…」(キリヤマ)
「旅客機には、300人の観光団が、乗っているそうです…」(ソガ)
「300人…」(キリヤマ)
愕然とするキリヤマ隊長。
「隊長、コンピュータの計算では、20分後に接触します!」(アマギ)
「わかった!ホーク3号を自爆しよう!フルハシを脱出させた後に、時限装置で爆破だ!」(キリヤマ)
決断するキリヤマ隊長。
「フルハシ!旅客機が接近しているため、ホーク3号を自爆する。時限装置を360秒前にセットして、すぐに脱出するんだ!」(キリヤマ)
ホーク3号のフルハシ。
「自爆360秒前にセットして、脱出します」(フルハシ)
自爆装置作動。
「自爆装置セット完了。これより脱出します…」(フルハシ)
しかし、脱出装置は作動しない。
「隊長、脱出装置が故障です!」(フルハシ)
「なに…!脱出できない?…」(キリヤマ)
「そうなんです!脱出できません!」(フルハシ)
「いいか、フルハシ…。慌てるんじゃないぞ…いいな!」(キリヤマ)
「隊長!自爆を中止しなければ、フルハシ隊員の命が…」(ソガ)
「わかっている!自爆を中止したところで、いずれホーク3号と旅客機は正面衝突するんだ!だがな、せめてフルハシの…ホーク3号が自爆すれば、旅客機は助かる。自分の命を犠牲にして、300人の命を助ける。それが、ウルトラ警備隊の使命なんだ!」(キリヤマ)
つらく、厳しい選択の決断。
そして、もうひとつの決断。
「アンヌ隊員」(キリヤマ)
「こちらアンヌ…」(アンヌ)
「フルハシのお母さんを作戦室へ…。言われた通りにしてくれ。大至急だ」(キリヤマ)
「はい…」(アンヌ)
自爆装置作動までの残り時間は120秒余り。
必死の脱出装置の起動を試みるフルハシ。
しかし、装置は動かない。
東京で放ってきた母もことを思いだす…。
「母さん…」(フルハシ)
もう母とは会えなくなってしまった…。
怪光線を放ち続ける灯台の中には宇宙人がいた。
スクリーンにはホーク3号が映し出されている。
「また一機、地球防衛軍のパトロール機が近づいている」(カナン星人A)
「北極はいまや、我らカナン星人のものだということを思い知らせてやる」(カナン星人B)
怪光線で、航空機をリモートコントロールしているのだ。
灯台に近づいたホーク1号のダンは、怪電波によって通信が不能になる。
「この電波、怪しい…」(ダン)
怪電波の発信源を調べようと、灯台の近くに着陸したホーク1号。
作戦室に、フルハシの母を招き入れるキリヤマ隊長。
「ホーク3号どうぞ…」(キリヤマ)
「こちら、ホーク3号」(フルハシ)
「シゲル!」(母)
「…こちら、シゲル…?」(フルハシ)
「シゲルかい?」(母)
「あ、母さん」(フルハシ)
もう会って話すことできないフルハシ母子に、別れの無線会話をさせるキリヤマ隊長。
「何してるんだい…お前?」(母)
強がった口調で…、
「……パトロールさ…」(フルハシ)
「遠いのかい…?」(母)
「うん、遠いよ。北海道より遠いんだ。何しろ、北極まで来てるんだからね」(フルハシ)
「まあ、北極…。じゃあ、あたしの声も北極まで飛んでってんだねぇ」(母)
「ああそうだよ。北極まで来て、寒い寒いって、ふるえてらぁ…ハッハッハ…」(フルハシ)
「ホッホッホ…」(母)
「ハッハッハッハ…」(フルハシ)
「ホッホッホッホ…」(母)
笑い会う、フルハシと母。
そのうちにフルハシの頬をつたう一筋の涙…。
母さん、さようなら…。
フルハシ救出のため、あわただしい作戦室。
その様子を見ながら、
(シゲル…、ウルトラ警備隊って大変な仕事なんだねぇ)(母)
フルハシの任務の重大さを知る母。
一方、残り時間90秒を切った息子。
じっと手を組み、その時を待つ…。
灯台に接近したダンは、赤いカプセルを投じる。
爆発とともに出現するカプセル怪獣ウインダム。
一歩、一歩、独特の歩みで、灯台に近寄る…。
その時、灯台から怪光線が発せられた。
額のビームランプを直撃した怪光線…。
ウインダムの動きが変わり、ダンの方へ向かい始める。
「ウインダム、どうしたんだ?」(ダン)
ダンの呼びかけには構わず、ビーム弾を発射する。
「しまった…。電子頭脳を狂わせたな…」(ダン)
←やはりロボットだったのか…ウインダム。
セブンVSウインダム。ギャグ戦闘シーン。
決まり手:正気づけ光線?で元に戻り、セブンにワビを入れた…?
セブンによってカナン星人の灯台ロケットは破壊された。
同時に、操縦を取り戻したホーク3号。
間一髪、衝突を回避する。
自爆タイマーを止める。
残り時間2.7秒。
間に合った!…母さんのところに帰れるんだ!
帰投したフルハシを笑顔で迎える隊員たち。
作戦室を見渡すが、母がいない。
「お母さんは北海道に帰ったよ」(キリヤマ)
「そうですか。やれやれ、助かった…」(フルハシ)
とは言いつつも、寂しそうな口元。
「フルハシ、早速でスマンが、パトロールに行ってくれ」(キリヤマ)
ちょっと、いたずらっぽい笑みを浮かべながら…。
「えー。お、おい、誰か…」(フルハシ)
勘弁してくれ、代わってくれよという素振り…。
「仕事は仕事…」(ソガ)
「横取りしちゃあ…」(アマギ)
「申し訳ありませんからね」(ダン)
「…皆、冷てぇなぁ…。いいよ、いいよ!」(フルハシ)
イジけるフルハシ。
「フルハシ、北海道上空をひとまわり。…頼むぞ!」(キリヤマ)
隊長たちの真意が伝わったようだ。
「はい!…」(フルハシ)
破顔一笑のフルハシ。
北海道出身の設定のはずなのに、東京の下町コトバ丸出しのフルハシ・シゲル。
それもそのはず、昭和14年、東京市荏原区で誕生した玉のような赤ん坊が、後にとんでもない伝説を創出することとなるのです。
セブン終了後、牢名主:石井伊吉は、親友、立川談志の強い勧めというか、半ば強引に「毒蝮三太夫」と改名させられます。そして、翌年の69年にスタートした、あるラジオ番組が、「毒蝮」というトンデモナイ名前を知らない人はいないほど有名にしたのです。その番組こそが、TBSラジオ「ミュージックプレゼント」です。タイトルとは裏腹に、まともに音楽のかからない音楽番組ですが、その理由は「ババァのアイドル」として、知らない人はいないほどの人気者となったマムシと、世の中に縦横するババァとのトークに時間が割かれることと、現場もリスナーの誰も音楽は望んではいないからなのです。
TBSラジオ「ミュージックプレゼント」は、新世紀になった現在も、月曜日から金曜日までの毎日、朝10時半から生放送を続けています。
始まりから33年間、一日も休むことなく…。
夕暮れの北海道上空。
「母さん、なぜ、黙って帰っちゃたんだ…」(フルハシ)
故郷の上空で物思いにふけるフルハシ。
夕焼け空に母の顔が浮かぶ…。
「シゲル、もういいんだよ。牧場のことは、シゲルには心配かけない。母さんはね、男が自分で選んだ仕事、それが一番いいって事が、分かったん
ですよ…。シゲルは、やっぱりウルトラ警備隊の隊員…」(母)
「うん!」(フルハシ)
「フルハシより本部へ、北海道上空異常なし。夕焼けが、とってもきれいだ…。もうひとまわりして帰る」(フルハシ)
笑顔で交信するフルハシシゲル。
ホーク3号は、夕陽の中を飛び去ってゆく。
こだわりの脚本家、市川森一氏のセブン2作めは、ハンカチなくては観られないフルハシ母子の情愛にスポットを当てたエピソードです。
息子に、家業の牧場を継がせたい母親の気持ちから、物語は始まります。息子は母の申し出を拒否して、自ら選んだ男の仕事へ帰ります。連れ戻しに上京する老母。しかし、事件は始まっていたのです。ここから、息子の選んだ仕事の重み、ウルトラ警備隊という特殊な任務の重要性が訴えられます。特に、自分の命と引きかえにしても守らなければならないものがあるという男の仕事の重みを、手に汗にぎる緊迫感とともに語るのです。
フルハシの働く環境を垣間見た老母は、次第に息子の選んだ仕事を理解して、それこそ男の仕事と認めて、故郷へ帰っていくのです。
また、フルハシの殉死が決定的となり、訣別の無線会話として、すれ違った親子の情愛が描かれます。セブンの世界観からは、多少逸脱したテーマかもしれませんが、ドラマ的には感動的な佳作のひとつです。
セブンにおける市川作品は、単独5本と共同2本との計7本ありますが、商業タイアップである共同脚本の2本を別にすると、#13「V3から来た男」(キリヤマ&クラタ)、#24「北へ還れ」(フルハシ)、#29「ひとりぼっちの地球人」(ソガ)、#35「月世界の戦慄」(キリヤマ&クラタ)、#37「盗まれたウルトラアイ」(ダン)と、ウルトラ警備隊の各キャラクターにスポットを当てた作品となっています。これは、シリーズプランナーでもあった金城哲夫氏の指示だったそうです。
共同作品は、#44「恐怖の超猿人」と、#46「ダン対セブンの決闘」で、ともに上原正三氏との共作です。
ALIENS&MONSTERS
オーロラ怪人:カナン星人
身長:1m80p
体重:62s
出身:氷の星、カナン星
武器:オーロラ状の怪電波でなんでも操る
特徴:女系宇宙人
嫌いなもの:グリーンピース
カナン星人は3体登場しますが、いずれも女言葉を使っています。ピット星人もそうでしたが女系宇宙人なのでしょうか。そういえば、昆虫型の頭のデザインも似た系統です。
カプセル怪獣:ウインダムA
身長:1p〜40m
体重:1g〜2万t
出身:メタル星
特徴:身体が鋼鉄よりも硬い
武器:額部からのビーム光線(あまり役に立たない)
弱点:電子頭脳を狂わされること
ACTOR&ACTRESS
温和で上品、とてもマムシの母には見えないフルハシの母親役は、ベテラン女優の市川春代さんが演じました。マムシさん本人も「なんて、品のいい人なんだろう!こりゃあ、ミスキャストじゃないか?」と申していたそうな…。
お茶目で口が悪い、こりゃあ間違いなくマムシの妹だという妹役は、山口奈々さんが演じています。山口さんは声優として活躍され、屈指の声優プロダクション「青二プロ」を立ち上げ、代表作には「タイガーマスク」「魔法使いサリー」「キャプテンハ-ロック」などがあります。
カナン星人には、矢野陽子(旅客機キャビンアテンダントも)、松平有加(#20のラリー女子学生)、若山真樹(#20のラリー女子学生)の3人が扮しています。
LOCATION
清里(冒頭、八ヶ岳をバックに走る小海線。北海道ではない)
羽田空港(フルハシの母を迎えるダンとアンヌ)
EXTRA
#14・15「ウルトラ警備隊西へ」以来、久しぶりの満田監督の作品です。
満っちゃん、またまた、やってくれました。
@ホーク3号発進シーン。
あれ、いつもとアナウンスが違います。
満っちゃんのフォースゲート・オープンではなく、ランニング・フォー・テイクアウト?とか言ってますけど…。
どうしたの…?
Aホーク3号の操縦棹。
何でしょう…?あれって…?
ホーク3号に限らず、ホーク1号もマグマライザーもハイドランジャーも、ウルトラ警備隊の乗り込み兵器のコクピットは現実離れし過ぎています。ホーク1号にも操縦管らしきものは見当たらないし、スイッチをたてつづけにパチパチやると急旋回したりしています。もうすこし、リアリティを追って欲しかったものです。
それにしても、ホーク3号の操縦管は……、絶句ものですね。さすが、作戦室の赤と青に点滅するスピーカーを「換気扇」だと思っていただけのことはあります。
B不可解な自爆タイマー。
ホーク3号と旅客機との衝突まであと20分。衝突回避のためには、その前に自爆しなければなりません。
キリヤマ隊長は即座に、ホーク3号へ自爆装置を360秒後にセットするように指示します。
そしてホーク3号は、旅客機と衝突する直前に操縦の自由を取り戻し、衝突を回避してから自爆装置を止めています。2.7秒を残して…。
C20分とは、1200秒です。
基地との交信と自爆装置のセットに2分かかったとして120秒。衝突まで、まだ1080秒もの残しています。しかし、357.3秒後には、衝突寸前でした。…旅客機が突如スピードアップしてきたのでしょうか…。
満っちゃん…。
まるで、ゴドラ星人のような、ツメの甘さです。
ONE MORE EXTRA
ギャグ戦闘シーン。
今回は、特撮パートもやってくれました。
怪しい電波を出す灯台を発見したダンは、ウインダムを出現させますが、この時点でダンに変身できない理由はありません。強いていうなら偵察のつもりで行かせたのでしょうか?だって、まだセブンは寒さには弱くないはずだからです。
そして、灯台に向かったウインダムは、怪光線を受けて、ダンへの攻撃を始めます。灯台はカナン星人のロケットだったのです。
ダンは、「しまった…。電子頭脳を狂わせたな…」とつぶやき、やっとセブンに変身し、ウインダムを正気に戻すように相手をします。どうしようもないシーンです。
正気に戻ったウインダムは再び灯台に向かいますが、またしても光線で
やられてしまいます。まったく何しに来たんだか…、といった感じです。
カナン星人は、灯台型宇宙船で逃げますが、セブンのワイドショットであっけなくやられます。
したがって、カナン星人の巨大化や格闘シーンはなく、セブンとウインダムもジャレあいというか、ギャグというか…トホホな内容の特撮パートとなってしまいました。
新しい怪獣を作る予算がなかっために既存のウインダムを使いまわしたようですが、脚本が素晴らしかったぶん、設定の甘さや特撮のお遊びのおかげで、ちぐはぐな内容の残念な作品となってしまいました。
「ウルトラセブン」ストーリー再録 第24話「北へ還れ!」
12/JUL/2001 初版発行 08/JAN/2002 第二版発行
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