サイボーグ〔cyborg〕
生物に、生物本来の器官同様、特に意識しないでも機能が調節・制御される機械装置を移植した結合体。宇宙空間など、生物体にとっての悪環境下での活動のため考えられたが、現在は電子義肢・人工臓器など、医療面での研究が進められている。(大辞林/三省堂)


サイボーグとは、石ノ森(当時は石森)章太郎氏の名作「サイボーグ009」から一般的となりました。この場合のサイボーグは、頭脳は人間のそれですが、身体は機械というイメージです。それだけ「サイボーグ009」のインパクトが強かったのです。この延長線上にあるのが、同氏の名作「仮面ライダー」や改造人間たち、そして「人造人間キカイダー」の人造人間たちだったのです。
ともあれ、今回はサイボーグが登場します。セブン流のサイボーグとは…?





STORY



夜半、赤い火球がアサヒ沼に落ちた。
防衛隊員のノガワは、婚約者のサナエとアサヒ沼へドライブ。
湖畔に車をとめて、楽しそうに談笑中。
「サナエちゃん。ソガさんは、まだ独身だからな」(ノガワ)
「了解、了解。刺激しないように、婚約ご披露の挨拶にとどめておけばいいんでしょ」(サナエ)
「そぉ、明日から基地内でイビられんじゃ、かなわないからなぁ…」(ノガワ)
「でもさぁ、あちらは、栄光あるウルトラ警備隊員…」(サナエ)
「うん、こちらはただの通信隊員だからなぁ。はじめっから、頭は上がらないんだ」(ノガワ)
←ソガ君って、イジワルなのね…。


林道を走るノガワの愛車。
突然、後ろに進みだす…。
「あっどうしたんだ?」(ノガワ)
「ねぇ、どうしたの…?」(サナエ)
沼の中から浮かび上がる謎の宇宙船。
その中に、クルマごと収容されるノガワとサナエ。


♪俺たちゃ町には住めないからに…
唄いながらハイカーたちがやって来た。 ←こういう人たちは、完全に絶滅しましたね。
「おい、誰か倒れているぞ!」(男A)
「ホントだぁ」(女A)


作戦室、鳴る電話。
「はい、こちら作戦室。えっ…女が?」(ダン)
受話器を置いたダン。
「隊長、アサヒ沼付近で女が倒れているって云うんですよ」(ダン)
「アサヒ沼…?」(キリヤマ)
地図を覗き込む隊長とアンヌ。
「ソガ隊員、パトロールに出発しましょう」(ダン)
「よし」(ソガ)
ヘルメットに手を伸ばすダンとソガ。
「おい、ダン。ソガには、もうじきお客が来るんだぞ」(フルハシ)
「それもソガ隊員の友達とその婚約者…」(アンヌ)
「俺が代わってやるよ」(アマギ)
「いいんだ。待たせたって退屈しっこない二人なんだから…。隊長、行ってきます」(ソガ)
「おい!」(フルハシ)



話の流れから、ソガを訪ねてくる客というのは、ノガワとサナエのことです。冒頭の会話からノガワは地球防衛軍極東基地の通信隊員であることは判明しています。ということは、ソガとノガワはいつも職場で顔をあわせているはずなのです。だからこそ、ノガワはソガのイビリを警戒しているわけです。なのに、わざわざアポイントをとって、作戦室に会いに来るというのは…?



アサヒ沼にやって来たポインター。
「女の人は?」(ダン)
「おい、しっかりしろ!」(ソガ)
「…ノガワさん…」(サナエ)
「ノガワ…だって?」(ソガ)
「ソガ隊員…」(ダン)
顔を見合わせるダンとソガ。
「隊員のノガワかもしれない…」(ソガ)
←なぜだ…。ノガワは一人じゃないだろう…。
「…ノガワさん…ノガワさん…」(サナエ)
うわ言を繰り返すサナエ。
「おいどうしたんだ?ノガワはどこに行ったんだ?」(ソガ)
「ソガ隊員、この人は僕が基地に連れて行きます。ノガワ隊員を捜してください」(ダン)
「よし…」(ソガ)
捜索を始めるソガ、間もなく地面の油染みを見つける。
(オイルの漏れた跡だ…まさかこの沼へ…)(ソガ)
不気味な気泡が立つ水面。


応援にやってきたフルハシとアマギがソガと合流。
ボートから潜り、水中の捜索を始める。
「ノガワ隊員の捜索は、何の手がかりも発見できないまま打ち切られたが、その後、アサヒ沼を含めた第33地区をはじめ、その他の地区にも何ら変わった事件は起こらなかった」(浦野光)


宇宙船内では、黒い女と銀色の女がノガワを拘束台にのせていた。
銀色の女がノガワに話しかける。
「お前は今、新しい生命を得た。その生命を我々のために使ってもらう」(銀色女)
目を閉じたままうなずくノガワ。
「お前はボーグ星人によって選ばれた人間なのだ。わかるだろうね。お前
は地球防衛軍の一員である資格をフルに使って、我々のために働いてもらわねばならない」(銀色女)
銀色女はボーグ星人だった。ノガワはサイボーグにされてしまったのだ。
「さあ、行け!」(銀色女)
拘束が解かれ、歩き出すノガワ。
「フッフッフッフッフ…」(銀色女)




ボーグ星人関連のデザインがいいですネ。甲冑をまとったボーグ星人のイメージから宇宙船は、甲冑を着たカブトガニのようなデザインです。船内のセットもボーグ星人の仮の姿、銀装の女に合わせて全面銀色に統一されたうえに、可動部分やサイボーグ化されるカプセル、スモークを出すパイプなど、天井から細かいところまで凝ったつくりになっています。セブンの宇宙人とその宇宙船中、一番のデザインワークではないでしょうか?



基地に戻ったノガワ。
作戦室にやって来る。
「ノガワ!」(ソガ)
シラっとした表情のノガワ。
「貴様、心配かけやがって、どこほっつき歩いてたんだ…」(ソガ)
軍人口調のソガ。
「婚約者を放りぱなしで何をしてるんだ、防衛隊員の風上にも置けない奴だな…」(ソガ)
「まあまあ、待て…。とにかく無事に帰ってきたんだ…」(キリヤマ)
ソガをたしなめるように。
「ノガワ君、今日はゆっくり休みたまえ」(キリヤマ)
退室するノガワ。
(こいつ、まるで死人のようだ…)(ダン)
「チクショー、思いきりとっちめてやろうと思ったのに…」(ソガ)
と言いつつも顔は嬉しそうなソガ。
「一眠りしてから、気の済むまで締め上げてやるんだな…」(キリヤマ)
「もちろんですよ」(ソガ)
「ハッハッハッハ」(全員) ←軍隊や警察などに根強く残る男の世界。
「ちょっと、見てきます」(ダン)
ノガワを追うダン。


基地内を彷徨するノガワ。
あとをつけたダンは、倒れている防衛隊員を数人発見する。
非常ベルを押し、廊下に警備隊を集結させる。
「隊長、ノガワ隊員を探してください。様子がおかしいんです」(ダン)
「そうか…、アンヌはダンと。みんな…」(キリヤマ)
手分けして、ノガワを探す。

録音(ラジオ)スタジオのようなところで、プレート弾を仕掛けるノガワ。
「あっ、あそこだ…」(キリヤマ)
ノガワを発見し、副調整室のようなところから行動を見守る隊長たち。
「様子がおかしいな…」(キリヤマ)
「何か、仕掛けているようです」(フルハシ)
「隊長、僕が見てきます」(ダン)
ノガワの前に立ちはだかるダン。
「ノガワ隊員…」(ダン)
「ヌフッフッ…騒ぐのは止めたまえ。午前6時、この基地が、勤務交代の隊員でいっぱいになるときが、地球防衛基地の最期なのだ。地球はあと数時間で、我々ボーグ星人のものになるのだ!」(ノガワ)
ノガワの言葉を聞き、顔色を変える隊長たち。
「なに!」(ダン)
思わず、殴りかかるダン。
しかし、逆にノガワに、タコ殴りにされる。
気絶するダン。 ←よ、弱い…。
「…仕方がない。ソガ、ショック・ガンでノガワを!」(キリヤマ)
ダンにトドメをさそうとするノガワ。
しかし、ソガのショック・ガンが一足早く、ノガワを気絶させる。
駆け寄る隊員たち。
「ダン…!」(アンヌ)
ノガワの持っていたプレート弾を見つける隊長。
「これを見ろ。小さいが強力な爆弾だ…」(キリヤマ)
「フルハシ、ソガを中心に、基地内にセットされたプレート弾の探索が行われた」(浦野光)
次々と回収されるプレート弾。


メディカルセンター。ダンの様子を見守るアンヌとアマギ。
「大丈夫、すぐに意識は回復するわ…」(アンヌ)
傍らで、全身レントゲン写真を見ているキリヤマ隊長とキタムラ博士。
「ノガワ隊員は完全ではありませんが、サイボーグになっています」(キタムラ博士)
「サイボーグ?」(キリヤマ)
「それから彼を操っていたのは、脳の中に仕掛けられた催眠プレートですねぇ…」(キタムラ博士)
「ノガワ隊員は、もう元の人間には帰れないのでしょうか…」(アンヌ)
「いやぁ、なんとかなるでしょう…。アンヌ隊員、手術の用意を…」(キタムラ博士)
「はい!」(アンヌ)
うなされるノガワ。
「…ウウウ、…ア、アサヒ…アサヒ…」(ノガワ)
ひらめくキリヤマ隊長。
「アサヒ…、アサヒ沼か…!」(キリヤマ)
「隊長!」(アンヌ)
「彼をお願いします。アンヌ!」(キリヤマ)
ホーク1号で出撃する隊長とアンヌ。


アサヒ沼上空。
「アンヌ、熱ミサイル発射準備」(キリヤマ)
「はい。…準備完了」(アンヌ)
「発射!」(キリヤマ)
胴体懸架の大型ミサイルが切り離される。 ←またも落下ミサイル?
アサヒ沼は一瞬にして干上がり、宇宙船の姿が露呈した。
「マグネチック・セブン投下」(キリヤマ) ←次から次へ、新兵器の嵐…。
爆弾倉が開き、パラシュート付きの物体が投下される。
降下して磁力で密着するマグネチック・セブン。
←セブンというが、5個しかない…。
「爆破!」(キリヤマ)
吹き飛ぶボーグ星人の宇宙船。


メディカルセンター。
「ちくしょう…。あと10分しかない」(ソガ)
「あと一個はどこにいったんだ…」(フルハシ)
プレート弾は一つだけ発見されていない。焦る、フルハシとソガ。
そこに突然、姿を現わす銀色女。 ←どうやって入ってきたんだ?
閃光を放ち、フルハシたちを気絶させて、ノガワの脇に。
「残された一個の爆弾でも基地は爆破できる。しかし、お前は裏切った」(銀色女)
ノガワを殺そうとする銀色女。間一髪、ダンが助ける。
ボーグ星人の姿になって逃げる銀色女。ダンも変身して追いかける。



ボーグ星人を追って、外に出るセブン。ここの等身大セブンは、屋外ロケで撮られています。今回以降、戦闘シーンで、ステージ撮影の補完としての屋外ロケが目立ってきます。おそらくは予算の都合だったのでしょう。特に、ガッツ星人との対峙で印象的な崖上のシーンは、屋外ロケならではの演出効果が発揮されています。但し、セブンでは有効的だった屋外ロケも、ステージ撮影を省いたり、安直な構図で捉えたりすると、「ウルトラファイト」のチープさに成り下がるのです。 ←もっとも、これはこれでいいのですが…。
屋外ロケ部分とステージ撮影部分が、どのように無理なく繋がれているかを観るのは一興です。



セブンVSボーク星人。
「セブン、何をしている?」(ボーグ星人)
「プレート弾の残りは、どこにあるのだ?」(セブン)
鈍重な甲冑姿の割には身が軽く、セブンのタックルも不敵な笑いとともに、楽々とかわすボーグ星人。
「フッフッフ…、残りの一つは、お前に付けてあったのだ…」(ボーグ星人)
爆弾のありかを自慢げに喋るボーグ星人。 ←どうして教える…?
セブンは当然、爆弾をはずして放り投げる。
肉弾戦が始まった。しかし、セブンはここでもタコ殴りにされる…。
ぐったりしたセブンを横目に、ヒーローの真似をして飛び去るボーグ星人。
着地してからトドメの光線技を繰り出す。
よけるセブン、悔しがるボーグ星人、形勢逆転。
決まり手:アイ・スラッガー、首落とし。切口から泡。


瀬田教会(東京都世田谷区)。
教会の鐘の音が鳴りわたる。

「事件が解決して数週間後のことであった。全快したノガワ隊員とサナエにとって、大きな喜びが待っていた」(浦野光)

ノガワとサナエの結婚式が行われたのだ。
二人の門出を祝福する、参列者たち。
その中には、キリヤマ隊長、フルハシ、ソガ、ダンたちウルトラ警備隊の姿もあった。
空き缶を後につけた車に乗り込む新郎新婦。
走り去る車…。
あれ…?アンヌとアマギの姿がないぞ…。

「撮影時期は、確か2月頃でした。実をいうと、出番の少なかった私と古谷さんは、北海道の小樽に営業に行っていたのです。営業ですヨ、営業!よりによって、他のメンバーが本編を撮っているときに。とにかく特命(!?)を受けたアマギとアンヌは、隊員服に身を包んで雪祭りのパレードに参加したのでした」(ひし美ゆり子、※2)

という理由から、瀬田教会でのラストシーンに、アマギとアンヌ、2人の姿はなかったのでした。





ALIENS&MONSTERS



甲冑星人:ボーグ星人
身長:2m〜40m
体重:180s〜2万6千t
出身:甲冑星?ボーグ星?
武器:鉄兜光線、タコ殴り
特徴:無骨な甲冑スタイルなのに女系宇宙人らしい
弱点:けっこうマヌケで自滅パターン(ゴドラ君ほどではないが…)





NEW WEPONS



熱ミサイル
たった一発で沼を干上がらせる強力な代物。米軍の枯葉剤どころではない。

マグネチック・セブン
5個しかないけど…セブン。落下して磁力で密着するのだから、敵宇宙船が動いてから爆破させた方が、視覚的にはより効果的だったのではないでしょうか…。





ACTOR&ACTRESS



ノガワ隊員の婚約者サナエは、東宝養成所第6期生の宮内恵子さん。
アンヌやアンドロイドと同期生です。後に、牧れいと改名して、アンヌの「プレイガール」と似たような番組「ミラクルガール」に出演したそうです。
また、円谷作品では、「緊急指令10−4・10−10(テン・フォー・テン・テン)」にレギュラー出演しました。





LOCATION



相模湖(アサヒ沼の実写シーン)
TBSラジオスタジオorキヌタ・ラボラトリ? (ノガワがプレート弾を仕掛ける)
東宝美術センター(戦闘屋外シーン)
瀬田教会(ラストシーン)





EXTRA



この同時進行回から、ホーク1号の操縦席最前列が2列になりました。
前中後のそれぞれの列が、2−2−2に替わったのです。
今までは、1−2−2でしたので、主操縦席に1人が座り、その後ろに2人いたでした。










                        





             「ウルトラセブン」ストーリー再録  第27話「サイボーグ作戦」
              06/SEP/2001 初版発行  20/JAN/2002 第二版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved





脚本:藤川桂介  監督:鈴木俊継  特殊技術:的場 徹  制作27話 
第27話
サイボーグ作戦