都会のネオン、遠景。
「水道、ガス、電気、地下鉄など…。大都会の動脈をつくる工事が、いつもどこかで行われています。…昼も夜も…それは私たちが見慣れている風景…。だが、安心してはいけません。侵略者は私たちの心の隙を狙って、何を企むかわからないのです…」(浦野光)


正調金城節のオープニング・ナレーション。
その背景には、大都会の寝静まったビル街で、感情のない作業員たちが、黙々と工事を行っています。
作業員の指揮をとる、怪しい人影…。

金ちゃんの都市環境問題エンターティメントの始まりです。





STORY



深夜、丸の内ビジネス街。
「第6管区パトロール完了。只今より帰投します」(ソガ)
基地と交信するソガ。
急停車するポインター。
「あっ痛ったった…、どうしたんだよぉ」(ソガ)
「しっ……、あの音は?」(ダン)
遠くから道路工事をする音が…。
「…カッターの音じゃないか。工事中なんだよぉ…」(ソガ)
(カッター?…妙だ。あれは普通のカッターではない。アスファルトを切断し、地底深く掘り下げている特殊のマシンの音では…。よし、行ってみよう…)(ダン)
相変わらず、地球以外のものに敏感なダン。


明治生命館横の工事現場に到着したポインター。
「動力車なしでカッターが動いている…なぜだ?」(ダン)
工事作業員に近づくダン。
「ウルトラ警備隊だ。質問したいことがある」(ダン)
無視する作業員…。
DADADADADADADA
動き出したVW製(白×赤)ワゴン車から銃撃が…。
「ダン、急げ!」(ソガ)
丸の内仲通りを北上するワゴン車、追跡するポインター。
「第6管区内で緊急事件発生。ポインターにいきなり発砲する謎の車あり。只今追跡中。車種、中型マイクロバス…」(ソガ)
「了解、追跡続行せよ」(キリヤマ)


ポインターに乱射しながら、ビジネス街を右往左往する中型マイクロバス。
「こっちを撒こうって作戦だな」(ソガ)
「やりますか、いっちょ」(ダン)
「よし、タイヤを狙え」(ソガ)
レーザー砲発射!
タイヤに命中、停車する中型マイクロバス。降車して、近づくダンとソガ。
すると2人の目の前で、突然姿を消す中型マイクロバス。
「あっ…」(ダン・ソガ)
そこに急報を聞いて駆けつけた2人の警察官。
しかし、2人の警察官の目前で忽然と消失するダンとソガ…。
そして、その警察官の1人もパトカーとともに消えうせた…。
三菱電機ビル前での出来事である。
←ここで消える警察官、爆笑問題の太田光だ…。


「モロボシ・ソガの両隊員がポインターごと蒸発したというショッキングな知らせを聞いたウルトラ警備隊は、シークレットハイウェイbRを通って現場に急行した」(浦野光)


現場に到着したキリヤマ隊長たち。
「現場はここですか?」(キリヤマ)
「その辺なんですが、はっきりしたことは、なんともいえません。ただ、車が2台と人間が3人、私の目の前で、蒸発してしまったんです」(警察官)
「何か手がかりがつかめるかも知れん…。調べてくれ」(キリヤマ)
「隊長、多量に放射能が検出され、やはりこの一画が妙ですね…」(アマギ)
妙な一画にガイガーカウンターを向けると、やはり反応が強くなった。
「あっ、危険です!下がって!」(アマギ)
「隊長、問題の車がポインターを誘導するために発砲したのでは?」(フルハシ)
「そんな気がする…」(キリヤマ)
「すると、ダンとソガは計画的に消された…」(アマギ)
「どうやら、一波乱ありそうだな…」(キリヤマ)
←隊長、もう一波乱してるって…。


朝のビジネス街。
千代田ビル(現在建替中)と古河総合ビルの間の仲通り。
「うわぁ、あれ何だぁ!」
「ビルが消えるぞぉ」
慌てふためくサラリーマンとBGたち。
ダンたちの消えた街が、一画まるごと消えたのだった。



BGとは…?
後の言葉でいうところのOLのことです。
BGは、「ビジネス・ガール」の略語で、文字通り会社勤めをする女子という意で、女性の社会進出を是とする風潮が生んだ新語でした。お茶くみや雑用が女の主体的な仕事ではなく、男と同等な仕事が出来るんだという意味をこめての命名だったのです。
しかし、「ビジネス・ガール」は、米国の一部の俗語で、カラダを売り物にご商売をなさる女性を指すものであると云われるや否や、あっという間にOL、即ち、「オフィス・レディー」に変わったのです。
こんな例って、聞いたことありませんか…?
そう、「トルコ風呂」と呼ばれていた売春宿が、トルコ政府からの正式な抗議によって、一斉に、しかもアッという間に「ソープランド」と呼ばれるようになった…。何か、同じような気配を感じます。
アンヌが著作の中でさかんに、BG女優と言っているのは、こういうわけなのです。
でもアンヌの場合、「OL女優」っていわれたら、映画のタイトルだと思うよね…。



作戦室、電話が鳴る。
「なに、ビル街が消えた?…場所は?…第6管区、よしわかった!」(フルハシ)
会話を聞いたキリヤマ隊長。
「アマギ、一緒に来い!」(キリヤマ)
緊急出動する隊長とアマギ。


ビジネス街上空。
ペリコプターから捜索するキリヤマ隊長とアマギ。
ビジネス街の中の一画分、建物は無く、土が見えて空き地になっている…。
「人間や車を消すことなら、ちょっとした魔術団でもやれますが、巨大なビルが、しかも一区画すべて消えてなくなるなんて…。想像もできませんねぇ…」(アマギ)
「恐るべき敵だ…」(キリヤマ)
「ダンとソガを消した奴と同じ犯人だとすれば、2人はきっと連絡を…」(アマギ)
「うむ、生きていればのことだがな…」(キリヤマ)
「生きてます。きっとどこかにいます!」(アマギ)
言い切るアマギ。
「おっ、なんだろう…?」(キリヤマ)
その時、ビル街が消えた空き地の真ん中から泡状の物体が…。
「…動いています」(アマギ)
泡は不気味に動いている。
「よし、撃ってみろ!」(キリヤマ)
←そんなご無体な…。
レーザー砲で泡を撃つ。蒸発する泡…。
「何だったんだ…?」(キリヤマ)
←はじめさんてば、正体もわからずに、爆破したり、撃ったりさせないで…。


スーツ姿でワンピースのアンヌを助手席に乗せたフルハシが、ポインターで街を走りながら…。
「…こう言っちゃなんだがねぇ。街もスモッグや排気ガスでくたびれてんだヨ。でっかいビルをのっけて、やれ地下鉄だ、下水管だって、年から年中掘じくりかえされてんだ。人間なら、とうの昔に、オラァ死んじまっただぁ、ってとこだなぁ。川は干からびてしまう、並木は枯れてしまう、これじゃ街だって、蒸発したろうって気になるね…」(フルハシ) ←マムシ流べらんめぇ都市環境論。


とあるホテルのロビー。
フルハシとアンヌがやって来た理由は、タケナカ参謀との待ち合わせだった。
「参謀、急に呼び出したりして何ですか?」(フルハシ)
「…ユタ花村って女性を知ってるか?」(タケナカ参謀)
「ええ、テレビで…。非常に優れた霊媒ですって」(アンヌ)
「霊媒が何か?」(フルハシ)
「うむ、ウルトラ警備隊に会見を申し込んできたんだ」(タケナカ参謀)
「会見?だったら何も参謀自ら…」(フルハシ)
「まっ、最後まで聞け。会見の内容が、今度のビル蒸発事件だというんだ。だとしたらこっちから出かけていくのが礼儀だろう」(タケナカ参謀)
「しかし、霊媒と蒸発事件と、どういう関係があるんでしょうね」(フルハシ)
「ま、来れば判るさ」(タケナカ参謀)
指定された部屋へ向かう3人。


とある部屋をノックするタケナカ参謀。
ドアが開く。開けたのは老婆…。
「地球防衛軍のタケナカです」(タケナカ参謀)
部屋には、水晶玉をのぞくエキゾチックな女がいた。
霊媒、ユタ花村である。
固唾を飲んで彼女の言葉を待つ3人。
口を開くユタ花村。
「我々は太陽系からそう遠くない星から来た者だ」(ユタ花村)
しかしその声は、常人のものではなかった。
「一時的な宇宙乱流を避けるために、しばらくの間、地球の住人となる」(ユタ花村)
話しているのが男に代わる。
「我々は、今日住むためのビルを頂戴した。そして自分たちの居住区を決めた。私たちが無断でやったのは、相談をしている余裕はないからだ」(男)
男は別の場所から、3人を監視しながらユタ花村を操って言わせているのだ。
「居住区に近づくな。約束を守るなら仲間は返す」(ユタ花村)
「ダンとソガ隊員は無事なのね」(アンヌ)
ダンが無事と聞いて嬉しそうなアンヌ。
「安心せよ。だが、我々の邪魔をすれば二人の命は保証しない」(ユタ花村)
「それじゃ、人質というわけか!」(フルハシ)
「そうだ。下手に手を出したら、為にならない」(ユタ花村)
「君たちが居住区に指定した場所はどこだ?」(タケナカ参謀)
無言のユタ花村…。
「もし本当に一時的な滞在なら、地球防衛軍は邪魔をしない。約束してもいい」(タケナカ参謀)
「君たちの居住区はどこだ?」(フルハシ)
答えをせずにぐったりと脱力するユタ花村…。



霊媒「ユタ花村」には、真理アンヌさんが登板です。
真理アンヌさんは、ウルトラマン#32「果てしなき逆襲」に、科学特捜隊インド支部のパティ隊員としてゲスト出演しました。この作品は、鈴木俊継監督のデビュー作品だったためか、撮影現場には円谷プロのスタッフの多くが顔を出していたのです。そこで、パティ隊員を見たひとりの男の背中に電流が走ったのです。その男こそ、シリーズ・プランナー兼脚本担当の金城哲夫氏だったのです、多分…。

「私がいちばん頻繁に会った脚本家は金城さんでした。ホイホイと出演者になってしまう人でしたから現場には顔を出していたんじゃないでしょうか?そもそもアンヌは、金城さんが創造した女性です。イメージは真理アンヌさんで、本当に彼女を起用したい意向があったそうです。アンヌの本名は『友里アンヌ』といいます。もちろん、『真理アンヌ』からの連想です。そう考えると、私のようなタイプはお呼びじゃなかったに違いありません。どちらかというと、バタくさいというか、エキゾチックなイメージが欲しかったのだと思います」(ひし美ゆり子、※2)



作戦室。
宇宙人居住区を捜索することになったウルトラ警備隊。
「空と地上の両面作戦でいく。アマギは私とホークで上空から、フルハシとアンヌはポインターでミツザワ方面を…」(キリヤマ)
「蒸発都市を発見しても、行動は十分に慎んで欲しい。…あの言葉は、単なる脅かしとは思えん。目的は、モロボシ、ソガの両隊員を貰い受けることだ。いいな!」(タケナカ参謀)
「はい!」(一同)
出動するウルトラ警備隊。


捜索中、ドライブインで一休みするフルハシとアンヌ。
ダンが心配で落ち着かないアンヌに、コーラを渡すフルハシ。
「はい」(フルハシ)
「サンキュ…」(アンヌ)
コーラを受け取るが、心ここにあらずといった表情のアンヌ。
もちろん、ダンの安否を気遣っているのである。
←このコーラを持ったままのアンヌが可愛いぞぉ!
「どうする?」(フルハシ)
コーラを飲んだフルハシがアンヌに尋ねる。
「どうする…、って?」(アンヌ)
「霊媒の言葉はデタラメだと思うんだよ…、ビル街なんかどこにも見当たらんじゃないか…」(フルハシ)
コーラを飲んでさらに、
「これ以上探したって無駄だよ。一休みしたら基地へ帰ろう…」(フルハシ)
あっけらかんと言い放つフルハシ。
「ずいぶん、冷たいのね」(アンヌ)
「うん!よく冷えているだろ」(フルハシ)
「コーラじゃないわ!…拉致された二人の気持ちも知らないで、よくこんなものが飲めるわねっ!」(アンヌ)
あまりに楽天的なフルハシの態度にキレるアンヌ…。
その時、何も無かった平原に突然、ビル街が出現した。
「ホーク1号、蒸発都市発見。ミツザワ平野に突然姿を現わしました。直ちに急行願います」(フルハシ)
ビル街に足を踏み入れるフルハシとアンヌ。
「バカにひっそりとしているなぁ…」(フルハシ)
「宇宙人がいるのかしら…」(アンヌ)
「そんな気配もない…」(フルハシ)
静まり返った晴天のビル街は違う世界のようだ。
「あっ、人がいるわ!」(アンヌ)
思わず駆け寄るアンヌ。
「おいアンヌ!参謀の注意を忘れたか!近づくとなにが起こるか…」(フルハシ)
「でも!」(アンヌ)
フルハシの制止も聞かずに駆け寄るアンヌ。
「おいアンヌ!」(フルハシ)
八十二銀行(三菱電機ビル)と千代田ビル前の歩道。
動きが止まったままの人たちがいる。
「おい、君たち!」(フルハシ)
返事はない。
「逃げ遅れた人たちが、ビル街と一緒に運ばれたんだわ…」(アンヌ)
「失神して硬直しているんだ…」(フルハシ)
「ダンとソガ隊員も…」(アンヌ)
「よし、手分けして探そう」(フルハシ)
結局、ダンとソガを探すフルハシとアンヌ。
「ダァ〜ン!…ソガ隊員」(アンヌ)
懸命に、二人を探すアンヌ…。
しかし、返事はない。
ビル街の路地を抜けたアンヌ…。
「あっ…ソガ隊員!」(アンヌ)
硬直したソガを発見したアンヌ。
この様子をモニターしている男がいた。
先ほど、ユタ花村を操ってタケナカ参謀と会談した男である。
男は、再びユタ花村を通して、ウルトラ警備隊に電話を掛ける。
RRRRRRRR…。
作戦室に電話が鳴った。
「もしもし、こちら作戦室…。参謀、お電話です」(勝部通信隊員)
「タケナカですが…」(タケナカ参謀)
「タケナカ参謀、ウルトラ警備隊は我々を裏切った。君の部下が約束を破ったのだ」(ユタ花村)
狼狽するタケナカ参謀。
「我々はウルトラセブンを味方に引きいれた。すべては我々の自由だ。我々はこれから行動を開始する…」(ユタ花村)
話し終わると、意識を失うユタ花村。
「おい、行動を開始するとはどういうことだ?」(タケナカ参謀)
←確かに人間(アンヌ?)が悪い…。



妖しい霊媒、ユタ花村。
ユタとは沖縄の言葉で霊媒を意味するそうです。そのまんまですね。ユタ花村は口寄せの媒介なので、自分の言葉で話すことはしません。彼女は、謎の宇宙人の言葉を伝えているに過ぎないのです。真理アンヌさんは、「ウルトラマン」でのゲスト出演時において、インドから来日した科特隊員役を演じ、祖国インドでは見たこともない怪獣事件に巻き込まれます(では、なんのために科特隊の支部があるんだ?)。そして、事件解決後に、「日本の名物は、地震、怪獣、ウルトラマン」との名セリフを残すのです。今回の霊媒役は、それと比べると寂しい感は否めませんね。


当のアンヌは「本家アンヌ」について、こう述べています。
「彼女は、アンヌのイメージとしてスタッフが思い描いていた理想の女性でした。この回はスタッフたちもいつになく張り切っていたように見えました。いえいえ、べつにひがんでいるわけじゃないですヨ。真理さんが本当にアンヌ隊員だったら、『ウルトラセブン』はどんな展開になっていたんでしょう?当事者の私がいうべきことではないですが、非常に興味をそそられる仮定です」(ひし美ゆり子、※2)

しかし、やっぱりアンヌ役は、アンヌが良かったのです。
エキゾチックより、ディスカバー・ジャパン…。
彫りの深い鼻筋より、おデコのニキビ…。
スイ−ティな甘え声より、二日酔いのハスキーボイス…。
…アンヌ万歳!
←どっちのアンヌじゃ…!?



蒸発都市に到着したホーク1号。
「アマギ、近くに着陸だ!」(キリヤマ)
緊急着陸するホーク1号。
「ダァ〜ン!どこにいるの?」(アンヌ)
ダンを探すアンヌ…、見つからない。
アンヌたちの行動をモニターしている男。
モニターを切り替える。
その画面にはダンが倒れている…。
「ウルトラセブン、立て!」(男)
モニターに呼びかける男…。
「うっ…」(ダン)
「さっ、変身するんだ」(男)
男の言うがままに、ウルトラ・アイを装着するダン。


ビル街にセブンが現れた…。
アンヌの方に近づくセブン…。
「セブン!気でも狂ったの?」(セブン)
KIEEE KIEEE
怪獣のような声を発するセブン。
そこに、キリヤマ隊長とアマギが合流した。
「セブンの様子がおかしいんです」(アンヌ)
「なに?」(キリヤマ)
KIEEE KIEEE
駐車している車にエメリューム光線を発して、次々と炎上させるうえに、狂ったようにビルを破壊するセブン…。
明らかに尋常のセブンではない。
「セブン、止めてくれ!」(アマギ)
KIEEE KIEEE
アイ・スラッガーで攻撃しようとするクレージーセブン。
「危ない、伏せろ!」(キリヤマ)
隊長たちを襲ったアイ・スラッガーは、間一髪外れる。
「早くしろ!」(キリヤマ)
硬直したソガや警察官を連れて避難する一行。
その時、フルハシは何かを探していた。
「ウルトラセブン、遠慮はいらん。人間たちをひねりつぶすんだ…」(男)
奇妙な部屋を発見したフルハシは中に入る。
コントロール・ルームのような一室…。
そこには、あの男がいた…。
ウルトラ・ガンで攻撃するフルハシ。
「うわぁぁぁぁ」(男)
男は泡状になって、消えた。
周りの機器を破壊するフルハシ。
同時に、街には大量の泡が湧き出していた…。
その泡はやがてひとつにまとまり、巨大な塊となる。
GUWAAAAAAN
発泡怪獣ダンカンの登場である。


正気に戻ったセブンとダンカンとの戦い。
セブンの先制攻撃。
ダッシュからフライング・ボディ・アタック。
ビルに倒れ掛かるダンカン、崩れるオフィスビル。
ビル街を舞台とした破壊中心のアクション。
←久方ぶりに「カネ使ってます」といった感じです。
決まり手:エメリューム光線でダンカン泡状化。そして、風とともに去っていった…。


戦いの終わったビル街。
「ソガ、しっかりしろ!」(キリヤマ)
「隊長…」(ソガ)
「気がついたか」(キリヤマ)
何が起こったかわかっていない表情のソガ。
「隊長!…セブンを操っていた奴を倒しましたから、もう大丈夫です!」
(フルハシ)
戻ってきたフルハシが得意げに報告する。
「あのフワフワした白い物体は、何にでも変身できる宇宙生命だったんですよ」(アマギ)
「ビル街をここに運んだのも奴らだったんだな…」(キリヤマ)
硬直していた市民たちも動きを取り戻した。
ビル街は、普段の姿を取り戻したのだった。
「蒸発都市事件はこうして終わりを告げ、市民を恐怖のどん底から救いました。でも、こうして平和の中に立ったビル街を見ると、美しい田園都市に見えます。ビルに心があれば、あのゴミゴミした過密都市に帰るより、この方がいいと思うかもしれません」(浦野光)
←あれ?ダンが「お〜い」とか言いながら走ってこない…。





ALIENS&MONSTERS



発泡怪獣:ダンカン
身長:40m
体重:1万5千t
出身:我々は太陽系からそう遠くない星から来た者だ
特徴:泡状の生命体が集合しているので人間形態にもなれる
特技:体を丸めた棘玉攻撃
弱点:泡だけに熱や風に弱い





ACTOR&ACTRESS



霊媒ユタ花村には、真理アンヌさま。
本名、シェス・ワサンティデビィ。現在は、福村デビィ。インド人の父と日本人の母とのハーフ。このとき19歳。
オリエンタリズム豊かな風貌から、ビュジュアル・クイーンの先駆けとなり、71年「11PM」の司会に抜擢され、以来5年間にわたって、藤本義一氏とともに深夜の顔となりました。
以後も、映画、ドラマ、バラエティなどにマルチな才能を発揮し、芸能界で活躍したうえに、亡父の故国インドの医療に関心を寄せた「おなかが凹むインド式ダイエット」や育児記録をまとめた「幼児教育この指とまれ」などを出版しました。
現在は芸能活動の傍ら、ヒーリンググッズ販売会社を主宰し、心の健康をテーマに講演活動も行っています。


泡状生命体ダンカンの地球人形態の男は、吉原正晧さん。
#14「ウルトラ警備隊西へ(前編)」では、原子力潜水艦アーサー号もろとも海の藻屑と消える、南極基地科学班チーフとして出演しています。艦内でチェスをしている人物です。
主に、映画で活躍され、「二百三高地」「遠雷」「マルサの女2」などに出演されました。





LOCATION



千代田区丸の内(ビル街)
パレスホテル箱根(ユタ花村会見場)
箱根マイセン庭園美術館(ドライブイン)





SPECIAL THANKS

読者様より投稿をいただきました!


「コーラの謎」

1.謎の発端
 ウルトラセブン第34話「蒸発都市」には謎がある。劇中に登場するペプシコーラのことである。私が子供の頃、つまり1967年〜68年の本放送当時、このようなボトルデザインのペプシコーラを飲んだ記憶がない。コーラと言えばコカ・コーラであった。勿論、小学生時代にペプシコーラも飲んだ記憶はあるが、既にこのボトルデザインではなかった。
 ペプシコーラの歴史をひもとくと、そもそも当初は清涼飲料水ではなく、米国ノースカロライナ州の薬剤師であるキャレブ・ブラッドハム博士が考案した消化不良の治療薬であった。主原料であるコーラナッツと消化酵素「ペプシン」から1898年に「ペプシコーラ」の名前が考案されたらしい。
 我が国には、1947年にGHQ専用に輸入された後、1954年に米国の統治下にあった沖縄で先行販売され、本土においては1958年に日本ペプシコーラ鰍ェ設立されたのと同時に192mlボトル1本35円で発売された。昭和で言えば昭和33年のことである。その頃のペプシコーラは、1950年代のブリキ看板に描かれたボトルデザインであったと思われる。それは、劇中に登場したボトルデザインと全く同じである。しかし、調べてみると、セブンの撮影当時、昭和40年代には既に新しいデザインのボトルに変わっていたはずなので、以下の謎が生じた。

謎その1
当時、沖縄などの一部地方を除いて、コーラと言えば「コカコーラ」が市場をほぼ独占していたのに、劇中に登場するのが「ペプシコーラ」なのは何故か。

謎その2
1967年当時のボトルは、既に新しいデザインに変わっていたはずなのに、劇中で飲んでいるのは、何故、約10年も前のデザインなのか。

2.謎の考察
 推測の域を出ないが、一応、考察してみた。
 まず、「謎その1」について、普通に考えれば、「企業とのタイアップ」又は「箱根のドライブインでペプシコーラを売っていた」の何れかであろう。神奈川県におけるペプシコーラの販売会社は、現在、日本ペプシコーラ販売であるが、当時の販売会社は分からない。静岡県と山梨県ではカゴメがペプシ製品を製造販売していたので、もしかすると劇中のペプシコーラはカゴメ製なのかもしれない。何れにせよ、仮にタイアップならば、ラベルをハッキリ見せるはずで、そのようなシーンは見受けられない。更に、タイアップならば、コーラの中身を捨てるとか、ボトルを地面に放り投げるような演出は絶対にしないはずである。 従って、タイアップであり得ないことは、明白である。次に、売店のない山の中ならいざ知らず、本物のドライブインが撮影場所なのに、わざわざ飲み物を用意しておく必要はない。当然、ロケハンの時点でドライブインに売っている飲み物くらいは事前にチェックしていたはずである。以上により、普通に考えれば、ドライブインに売っていたペプシコーラを購入したものと考えるのが自然であり、多分、それが正解だと思う。しかし、当時の関東地区ではコーラと言えばコカコーラが代名詞であった状況の中、ドライブインに売っていたのがペプシコーラであった謎は、未だ解けぬままである。

 次に、「謎その2」について、 その答えは実に単純なものかもしれない。つまり、当時のボトルが「リターナブル瓶」であったからだと思う。リターナブル瓶とは、繰り返し使用できる瓶のことで、私の子供の頃、ジュースを呑んだ後に空瓶を販売店へ持っていくと、10円で買い取って貰った記憶が蘇ってきた。つまり、販売当時のボトルを約10年間も繰り返して使用していただけなのであろう。

 以上が、劇中に登場したペプシコーラに関する私の考察結果であるが、事実と違っている部分もあるかも知れない。

3.アンヌ隊員に訊く
 当事者に訊くのが一番なので、ひし美ゆり子氏に当時のことを尋ねてみたが、「全く記憶にない。」との回答であった。
 アンヌの台詞にあるように、飲んだコーラが「冷たかったか、ぬるかったか」でも分かれば、真相の一端が判明できると思ったのだが、あのシーンで実際にコーラを飲んだ記憶はないそうだ。確かに、映像ではアンヌがコーラを飲んでいるカットは無い。
「監督が一(はじめ)さんだから、もう訊くことはできないね。」と、しみじみ語っていた。
記憶力が抜群に良いひし美ゆり子氏でも憶えていないのだから、当事者に確認するのは諦めるしかない。
 コーラはロケ地のドライブインで調達したと仮定して、それは、コーラでなければならない理由があったのだろうか。それはオレンジジュースではダメだったのだろうか。
 検証のために、第34話の台本で台詞を確認する必要が出てきた。

4.台本の検証
 以下に第34話の当該部分を抜粋して転載する。

 37 ドライブイン(昼)
      フルハシがコーラを持って、パークしてあ
      るポインターの方へ来る。
      フルハシ、一本をアンヌに渡す。
   アンヌ「サンキュ」
      フルハシ、美味しそうに一口呑んで、
  フルハシ「どうする?」
   アンヌ「どうするって・・・・・・・・」
  フルハシ「霊媒の言葉が出鱈目じゃないかと思うんだ。
      ビル街なんて何処にも見あたらんじゃないか。
      これ以上捜しても無駄だね。一休みしたら基
      地へ戻ろうぜ」
   アンヌ「ずい分、冷たいのね」
  フルハシ「ああ、よく冷えているだろう」
      と、コーラをのむ。
   アンヌ「(憤然と)コーラじゃないわ。拉致された二人
      の気持も知らないで・・・・・・・・・・よくこんなものが
      のめるわね」
      ザザーッとこぼす。
  フルハシ「お、おい、アンヌ!」
      と、アンヌの目が前方に釘付けになる。
      コーラのビンが手から落ちる。
      フルハシ、アンヌの目の方向を見て、ハッとなる。
      平野に、光の絨毯とでも表現すべき、発光現象が
      起こっている。
      目を見張るフルハシとアンヌ。
      やゝあって光芒がへ消えると、地底からビル群が
      ニョキニョキとまるで雨後の竹の子のように次々
      と出現する。
      蜃気楼を見ているような光景である。
      ドライブインから、若者たちがとび出して来て騒
      ぎ始める。
 (以下略)

 以上、アンヌとフルハシの掛け合い部分は準備稿、決定稿とも台詞の変更はない。

5.泡の正体
 これで、台本段階から「コーラ」の設定があったことが判明した。
 つまり、脚本家の金城哲夫氏は、突然高原に現れた「蒸発都市」をアンヌとフルハシが発見する際、敢えて「コーラを地面にこぼす」というシーンを挿入したことが確認できた。その理由は何か?
 キーワードは「泡」。
 宇宙生命ダンカンの実態は泡(台本では「白いフワフワとした奇妙な物体」)である。台本では具体的な指示はされていないが、演出として「コーラをこぼして地面に泡が立つ。その後、泡の中からダンカンが実体化する。」・・・・つまり、「泡」が、映像表現として繋がるわけだ。だから、あのシーンでは泡が立つ炭酸飲料水でなければならなかった。コーラじゃなければならなかった理由は、まさにそこにあるのではないか。実は、ダンカンの泡とコーラの泡との関係については、私よりも早く気がついていて、自身のHPで紹介している方もいた。

 以上の考察の結果、「ドライブインでたまたま売っていたコーラが、「ペプシ」であった。」と、いうのが私が出した結論である。

 最後に、助監督が事前にコーラを用意していたならば、当時の関東地域のシェアを考慮すると、それは「ペプシ」ではなくて「コカ・コーラ」であったはず。というのが、念押しの裏付け理由である。


nakamura_ani様、ありがとうございました。
ふと転がった空き瓶からのご考察、○タクならではの発想です。
まさか、箱根までペプシの空き瓶持っていったりしてませんよね?





                        





              「ウルトラセブン」ストーリー再録  第34話「蒸発都市」
    06/SEP/2001 初版発行  21/JAN/2002 第二版発行  11/JAN/2009 第三版発行
              Copyright (C) 2001 Okuya Hiroshima All Rights Reserved





脚本:金城哲夫  監督:円谷 一  特殊技術:高野宏一  制作35話
第34話
蒸発
都市
友
里
ア
ン
ヌ
真
理
ア
ン
ヌ