大好評の市川森一シリーズ、第4作めは、キリヤマ&クラタ篇パート2。
今回のお題は、部下と上司です。
STORY
夜の月面は、闇と氷の世界…。
そんな場所にも防衛基地はあるのだ。
地球防衛軍月面基地である。
ところがある夜、月面基地は、突如、大爆発を起こした。
粉々に吹き飛ぶ、月面基地…。
原因は不明である。
宇宙ステーションV3。
宙に浮いたポットが誰の手も借りないで、カップにコーヒーを注いでいる。
「こいつはすごい…。まるで念動力だ」(クラタ)
「遠隔指示器としては最も小さいものですが、これの放つ超音波は10万キロの範囲まで到達可能です」(シラハマ)
「なるほど、そうか。後で教えてくれ…」(クラタ)
満足そうに、コーヒーを飲むクラタ。
そこに通信隊員が入ってくる。
「クラタ隊長、通信です」(通信隊員)
電文を読むクラタ…。
「なに、月で…」(クラタ)
たちまち表情の曇るクラタ。
作戦室。
「皆聞け!今、原因不明の爆発事件が起った月面基地の調査命令が出た」(キリヤマ)
「月世界基地、突然の爆発事故をキャッチした地球防衛軍では、キリヤマ隊長とダン隊員を調査に向かわせた」(浦野光)
ウルトラ警備隊、出動。
飛行中のホーク1号では、ダンが点検項目をチェック中。
「燃料タンク異常なし。観測計器異常なし。イオン加速管異常なし。水素ガス管異常なし」(ダン)
基地で交信するフルハシ。
「了解。基地よりV3へ。キリヤマ隊長他1名、只今、月の事故調査へ出発しました」(フルハシ)
「よしご苦労。こっちも今、出発する」(クラタ)
「ご健闘をお祈りします」(フルハシ)
「任しとけ。こっちはステーション特許の新兵器を持ってるから…。いいな、シラハマ」(クラタ)
無線をきったクラタは、シラハマを見て微笑む。
ステーション・ホークで月に向かう、クラタとシラハマ。
ホーク1号とV3の共同現地調査が始まった。
「ホーク1号、応答願います…」(クラタ)
交信中のクラタの目を盗み、遠隔指示器を操作するシラハマ。
「こちらホーク1号。…クラタ、しばらくだなぁ」(キリヤマ)
「ああ、一緒に宇宙に出るのは3年ぶりじゃないか」(クラタ)
久しぶりに再会できる嬉しさを隠し切れない二人。
「そうだなぁ…。そうだ、あれはヘルメス惑星のザンパ星人を全滅させた…、あれ以来だな…」(キリヤマ)
「あの時の戦いに比べりゃあ、楽な仕事だ」(クラタ)
←これぞ、軍人の会話である。
「ハッハッハ…クラタ、集合地点を確認しておくぞ、チコ・サンドームの通信室」(キリヤマ)
「よし、捜査時間は2時間。それ以上遅れると月の夜にまかれるから遅れるな」(クラタ)
「ハッハッハ…誰だって、零下180度の真っ暗闇なんて、ゾっとしないからなぁ…ハッハッハ…」(キリヤマ)
「…零下180度…」(ダン)
温度を聞いて、思わずビビるモロボシダン。
「クラタ、相変わらず大きなことを云っているが、大丈夫か?」(キリヤマ)
旧交を温める会話の横で、遠隔指示器を操作するシラハマ。
シラハマの操作で、ホーク1号の機器が動かされていく…。
「まあ心配するな。お前たちが着く頃には、調査は全部済ませといてやるよ…」(クラタ)
上機嫌なクラタ。
「ハッハッハ…そう願いたいもんだな」(キリヤマ)
グリーンからレッドへ、ランプの色が変わっていく…。
「ハッハッハ、任しとけ」(クラタ)
楽しそうなキリヤマとクラタ。
不敵に笑みを浮かべるシラハマ。
寒いと聞いて、心配なダン。
ホーク1号。
キリヤマ隊長の様子がおかしい…。
「隊長、どうしたんです?」(ダン)
「胸が、変な具合に苦しいんだ…」(キリヤマ)
「薬を持ってきます」(ダン)
気休めにタバコをくわえ、一服しようとするキリヤマ隊長…。
ライターを点火すると、もの凄い勢いで炎が出る。
「酸素だ…、酸素が流れすぎだ…」(キリヤマ)
遠隔操作を受けた計器は、レッドランプが異常に点灯している。
「空気調節器が…、早く酸素の排出を止めるんだ」(キリヤマ)
あわてて調整し直すダン。
(変だ…さっき確認したばっかりなのに…)(ダン)
「あれほどコックの調整には気を付けるように…」(キリヤマ)
言葉の途中に、機体全体を激しいゆれが襲った…。
「ダン…、方向コントロールが狂っている!」(キリヤマ)
懸命に復旧する二人。
「…ダン…お前、まさか…」(キリヤマ)
「隊長…僕は…」(ダン)
「ほかの部分も、もう一度よく点検するんだ!」(キリヤマ)
ゆれが止まった…。
ホーク1号は宇宙空間で停止してしまったのだ…。
「隊長、加速管が故障です!」(ダン)
「出発前に、なぜもっとよく点検しなかったんだ」(キリヤマ)
「それはちゃんと…」(ダン)
「言い訳は聞かん!すぐ連絡をとって救援隊を呼ぶんだ!」(キリヤマ)
「…作戦室応答願います、作戦室!…」(ダン)
BEE、BEE…
しかし、通信機も故障しているようだ…。
「ホーク1号…、ホーク1号…」(ソガ)
ヘッドフォンを置くソガ…。
「通信が、切れた……」(ソガ)
不安一杯のアンヌ…。
「この回は私の出番はほとんどありませんでした。そうですねェ、ダンと隊長が怒鳴り合うシーンを覚えている程度。『すごい迫力だナァ』と、あっけにとられて見ていましたネ。エッ、どうして怒鳴り合ったのかって!? エ〜ト、機会があったら、ビデオで確認してください」(ひし美ゆり子、※2)
疑心一杯のホーク1号。
「…ダン、どうした」(キリヤマ)
「連絡不能です」(ダン)
振り返ってダンの顔を見る、キリヤマ隊長。
「誰がこんなことを…」(ダン)
「この中には二人しかいない」(キリヤマ)
だからこそ力を合わせようじゃないか…。
「隊長!」(ダン)
「よし!補助ロケットで進もう」(キリヤマ)
ダンの肩を叩くキリヤマ隊長。
シラハマの工作は2人の信頼関係を壊すには、至らなかった。
通信途絶に緊張する作戦室。
「ステーション・ホーク、応答願います!」(ソガ)
「はい、こちらクラタ…」(クラタ)
「クラタ隊長。キリヤマ隊長との通信が切れたんです」(ソガ)
「そうか…、しかし時間がない…」(クラタ)
迷いを断ち切るような口ぶりで返答する。
「先に現場に行く。連絡を待ってくれ」(クラタ)
そして、同乗のシラハマへ。
「ホークが連絡を絶ったらしい…」(クラタ)
「どうしたんでしょう」(シラハマ)
「…キリヤマのことだ、何とか来るだろう…」(クラタ)
先に、月に向かうクラタ。
その頃、ホーク1号も月の引力圏に達した。
逆探レーダーが反応した。
「隊長!」(ダン)
「どうした?」(キリヤマ)
「超音波を逆探知しました。こいつが通信を妨害しています」(ダン)
「発信元はどこだ?」(キリヤマ)
「クラタ隊長のステーション・ホーク機内から流されています」(ダン)
「クラタの?」(キリヤマ)
「ええ…」(ダン)
顔を見合わせる2人。
「いったい何のために…」(ダン)
廃墟となった月面基地。
キリヤマチームの到着を待たずに、一足先に調査を開始したクラタとシラハマ。
廃墟を捜索するクラタの背後から酸素管を引き抜こうと手を伸ばすシラハマ…。
間一髪、背中に伸びる手の影に気付いたクラタは、身体をよじってかわす。
「何のまねだ?」(クラタ)
クラタに襲いかかるシラハマ…、揉み合う2人。
そのうちに、クラタの投げでシラハマは転倒する。
動かない…。我に帰ったクラタは、シラハマのもとへ。
「シラハマ…」(クラタ)
すると、転倒の衝撃で酸素管が抜けているではないか…。
「おい、シラハマ!」(クラタ)
目を閉じていたシラハマが、高らかな笑い声とともに、急に起き上がる。
「ファッファッファッファッファ…」(シラハマ)
驚愕するクラタ。
「シラハマなら、もう2日前に死んでいるよ」(シラハマ)
「…なにぃ…」(クラタ)
「安心しろ、私が人間だったら、お前は殺人者だ」(シラハマ)
不思議そうな表情のクラタ…。
「3年前、お前とキリヤマのコンビに撃墜された、宇宙艦隊の生き残りといえば、思い出すだろう…」(シラハマ)
「3年前、ヘルメス惑星の宇宙船団…。貴様は?」(クラタ)
「お前とキリヤマが組む機会を待っていたんだ!」(シラハマ)
「復讐か…。だったら、なぜもっと早く殺さなかった。機会はいくらでもあ
ったはずだ」(クラタ)
「お前を消せば、あいつらのことだ。きっと私を疑うだろう…。用心されては、厄介だからな」(シラハマ)
その時、瓦礫の中を歩く、キリヤマ隊長とダンの姿が見えた。
「さりげなく振舞え。さもなくば、これで宇宙に放り出す」(シラハマ)
遠隔指示器を取り出すシラハマ。
合流する4人。
「クラタ!」(キリヤマ)
再会を喜ぶキリヤマ隊長。
「キリヤマ、案外早かったな…」(クラタ)
その時、ダンは、クラタが丸腰なのに気づく。
そのうえ、シラハマは妙な機械を手にしているではないか…。
「隊長、ホークの故障の原因が、今わかりましたよ」(ダン)
「ハッハッ…、私にもわかったよ」(キリヤマ)
シラハマに銃を向けるキリヤマ隊長とダン。
「うっ…」(シラハマ)
「ハッハッ…、さあ、手を挙げてもらいましょうか」(キリヤマ)
←今回の隊長はホントによく笑います。
抵抗するシラハマ。
銃と遠隔指示器を狙撃して破壊するキリヤマ隊長とダン。
シラハマは正体を現わして、ザンパ星人の姿になる。
しかし、ダンのレーザー砲であっけなくやられる。
そこに振動が…地面が揺れている。
「危ない、退け!」(キリヤマ)
月面探索用の宇宙服。実はこの宇宙服も流用だったのでした。
オリジナルは、東宝がゴジラ・シリーズの総決算として製作した「怪獣総進撃」(68年8月公開)に使用されたものです。「怪獣総進撃」は、同年の3月下旬にはクランク・アップしていたので、劇中で使われた、SY−3号の乗員服に、TDFマークを添付して、TDFベルトを着けて使用しました。もっとも、クラタとシラハマのベルトはPDF表記になっていますが…。また、「怪獣総進撃」には、アンドロイドゼロワンの小林夕岐子さん、ツチダ博士の土屋嘉男さんらが、主役クラスで出演されています。
外に出た3人の目前に怪物が…。
「おい、あれは?」(キリヤマ)
ペテロの登場である。
「あいつだ、あいつが基地を…」(クラタ)
ステーション・ホークに向かうペテロ。
「クラタ!ホークが危ないぞ!」(キリヤマ)
「生きていたら、また逢おうぜ!」(クラタ)
「よし!」(キリヤマ)
右手でハイタッチ、左右に分かれる二人。
ホークに向かうペテロの前に、セブンが登場。
しかし、軟体生物のようなぺテロの体には、打撃系攻撃は通用しない。
逆に、液体を浴びせられるセブン。
そのうえ月には、夜が近づいていた…。
月の夜は、零下180度の極寒である。
窮地に追い込まれたセブン。
「無敵のウルトラセブンも零下180度の月の夜には敵わなかった」(浦野光)
点灯するビーム・ランプ。
同じ時、地球。
夜空に美しく浮かび上がった月を見つめるアンヌ。
しかし、月は見る見るうちに雲にかき消されていく…。
そして、アンヌの表情も険しいままだ。
月にはきっとダンがいる…。
交信が不能なため、不安げな面持ちなのだ…。
苦戦の続くセブン。
今度は白い息を吐きかけられる。
凍てつくような息だ。
倒れこんで、もがくセブン…。
その時だった、闇夜に閃光が。
「隕石だ!」(クラタ)
月面に衝突した隕石は、大量の光と熱をセブンに提供した。
そこからエネルギーを得たセブンは、復活して大反撃。
決まり手:隕石エネルギー満タンのワイドショット。ペテロ爆死。
ホーク1号で、ダンを待っているキリヤマ隊長。
機内を右往左往して、やきもきする隊長…。
「隊長ぉ」(ダン)
探しに行こうとした時、ダンが戻ってきた。
「ダン…」(キリヤマ)
肩を叩いて、ダンの無事を喜ぶキリヤマ隊長。
先に月から脱出したステーション・ホーク機上のクラタは、ホーク1号が続いてこないので落ち着かない。
意を決してUターンするクラタ…。
すると目の前から、ホーク1号が飛んでくる。
ホーク1号の操縦席で、戻ってきたステーション・ホークを指差して、いたずらっぽく微笑む、キリヤマ隊長。
「クラタさん、月に忘れ物ですか?…ハッハッハ…」(キリヤマ)
感謝をこめて、クラタ機に呼びかけた。
「やろぅ…」(クラタ)
からかわれても、親友の無事が嬉しいクラタ。
ザンパ星人の復讐を粉砕したキリヤマ隊長とクラタ隊長。
任務を全うした2人は揃って、月を後にした。
地上では、アンヌが月を見上げ続けていた。
「帰って来る…」(アンヌ)
さらに、自分に言い聞かせるように…。
「きっと、帰って来るわ…」(アンヌ)
月に祈るようにつぶやく、アンヌ…。
ダンの無事を信じようとしながら…。
ALIENS&MONSTERS
復讐怪人:ザンパ星人
身長:1m70p
体重:65s
出身:ヘルメス惑星
特技:機械発明
特徴:酸素があっても無くても大丈夫
弱点:強くない、人間と同等
※沖縄の激戦地「残波(ざんぱ)岬」からのネーミングですが、今ではリゾートホテルも建っています。
月怪獣:ペテロ
身長:60m
体重:7万t
出身:月
特技:冷水や冷気を吐く
特徴:イソギンチャクのような軟体生物
弱点:打撃系攻撃には強いが、あとは普通
※キリスト12使徒の一人「ペテロ」からのネーミング。…えっ、使徒ですか!…
ACTOR&ACTRESS
シラハマ隊員とザンパ星人には、鶴賀二郎さん。
後に、「刑事くん」や「特捜最前線」などに出演されました。なるほど、そういうお顔立ちですよね。
「ウルトラセブン」ストーリー再録 第35話「月世界の戦慄」
06/SEP/2001 初版発行 21/JAN/2002 第二版発行
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脚本:市川森一 監督:鈴木俊継 特殊技術:高野宏一 制作36話