6.ウィルス肝炎とは 【分類】 主にB型肝炎ウィルス及びC型肝炎ウィルスが殆どを占める。 【症状】 B型肝炎:感染力が強く、針刺し事故,あるいは母子間の垂直感染などで感染が成立する。 わが国のキャリア率は、20歳未満では0.4%にまで低下している。 しかし,成人になると、2%がキャリア(無症候性の持続感染者)となり、そのうち10〜15%が慢性肝炎に移行する。 主な所見として、全身倦怠感,食欲不振,GOT/GPTの上昇などがみられる。 その後、肝硬変,肝癌へと肝病変が進行する。 キャリアから肝炎の急性増悪をおこすことがあり、また、キャリアにならなかった 一過性の感染者の中に劇症肝炎の発症もみられる(年間1000人程度。劇症肝炎の死亡率は70〜80%と極めて高い)。 C型肝炎:B型に比べ,感染力は弱いといわれる。 感染がおこると、ほぼ全例がキャリアとなり、やがて慢性肝炎に移行する。 (我が国の慢性肝炎の70%を占める。)肝炎が成立した後、肝臓の障害は緩やかに何十年の経過をたどり、 肝硬変,肝癌に移行するが、劇症化,急性の変化はB型に比べ少ない。 【感染経路】 <B型肝炎> 針刺し等の少量の血液でも感染は起こりうる。また、母子感染,性交による感染も多く、血液,体液感染とされる。 <C型肝炎> 血液感染である。輸血や刺青,麻薬常習者など、何遍も針を刺す患者に感染が多いとされる。 (現在はHCV抗体のスクリーニングが整っており、輸血後の肝炎は少なくなった。) 【治療】 <B型肝炎> 基本的に二つの対応がある。 一つは一時的にHBVの増殖を抑えあるいは増殖を促して、それに対応する生体の免疫反応を誘導し、一挙に感染肝細胞を破壊させて、 HBVの増殖を結果として抑え自然経過を促進する方法である。 この場合には人為的に一過性の肝炎の急性増悪を引き起こさせるために、肝病変があまり進展しないことが前提となる。 これがこれまで行われてきたB型慢性肝炎の治療法であり、ステロイド離脱療法、インターフェロン(IFN)療法、抗ウイルス薬療法、 propagermanium(セロシオン)療法、thymosin α療法などがある。 もう一つは肝病変が進展している例に対する方法で、肝炎あるいはHBVの増殖を抑え続ける方法である。 それには、SNMC(強力ネオミノファーゲンC 通称強ミノ),漢方薬(小柴胡湯)などを用いるが、 インターフェロンと小柴胡湯を同時に使用すると間質性肺炎を起こすので禁忌である。 また、感染したと予想されるとき(例 針刺し事故)、キャリアの女性の出産であれば、新生児への出産直後の48時間以内, 及び2ヶ月後のワクチン筋注を行う。また、暴露が予想される医療従事者への予防としては、ワクチンを投与する。 現在垂直感染が、出産後のワクチン投与によりだいぶ減った。 <C型肝炎> 根治療法としてワクチン療法はしない。 感染したらほとんどが持続感染し、高率に肝炎に移行するため、肝炎の初期にインターフェロンを用いて、 ウィルスの根絶をはかるのが唯一の根治療法となる。ウィルスを完全に駆除出来る割合は、全体の20〜30%といわれる。 対症療法としては、SNMC療法が多く使用されている。 倦怠感等の自覚症状を抑え、GOT/GPTを正常に保つことにより、肝硬変,肝癌への進展を予防できるということが証明されている。 B型肝炎にくらべ、急性の変化は殆どみられず肝炎の状態が長く続くため、使用される期間も長い。